「びしょ濡れいい人」

私はある週末に繁華街へと車で出かけていました。その日は
久し振りの土砂降りの雨で、ワイパーを使っても良く見えない
くらいの日でした。そういう日は、出かけない方がいいんですけどね。

当然、繁華街は車でごったがえしていて、とても混んでいました。
私は、適当な所に路上駐車(だめだって!)しようと、側道を進んでいました。

まぁ、同じような目的の人がたくさんいるせいか、側道はすごい
混みようでなかなか進みません。のろのろと進んでいると、急に
まったく進まなくなってしまったんです。天気が悪く、しかも
だいぶ夜遅くなので、暗くてよく見えないためなにが起こっているのか分かりません。

信号が5回くらいかわったころ、ふと前の車の運転席へ、傘をさした
女の人が寄っていきました。しばらく話した後、その前の車の運転席から
運転していた男性が降りてきて、一緒に前の方へいったんです。

何をしてるのかなぁ、とぼんやりと自分の車の中からながめていると、
前の車の助手席から女性が降りてきて、反対側の運転席にうつりました。

で、そのまま前の車はゆるゆると進んでいき、少し先の空いたスペースへ
入ってきました。すると、小さな軽自動車が、中途半端な状態で
横を向いてとまっています。よくよくみると、さっきの男性が一生懸命
その軽自動車を押しているではないですか。もしかして、バッテリーが?

私は、いつもそうなんですけど、親切をしようとするときは、スタートが
遅いんですよ。何かのポスターで見たんですけどね、「親切はされると
うれしいのに、するのって難しい」とかなんとか。確かにそうなんです。

でも、その男性は雨が土砂降りにもかかわらず、傘もささずに一所懸命に
車を押してるんです。もう、いてもたってもいられなくて私も表に出ました。

近づいていって「どうしたんですか?」とたずねると、持ち主の女性は
困り顔でいるだけでしたが、その男性が「バッテリーがあがってしまったんです。」
と、変わりにしかも、申し分けなさそうに答えてくれました。

私は、そこで待つようにいって自分の車に戻り、「ブースターケーブル」を
とってきて、渡しました。このブースターケーブルというのは、2台の車の
バッテリーをつなぐことで、バッテリーをある方から、無い方へ送れるものです。

一端をその男性に渡し軽自動車につないでもらって、もう片方を私は
自分の車のバッテリーにつなぐつもりでした。でも、悲しいことに
どんなに近づけても届かなかったんです。もう、がっくり。

そこで、近くを走っている車のバッテリーをもらうことにしました。
幸い、すぐ横にいた車の人がいい人で、すぐボンネットを開けてくれたので
すばやくブースターケーブルをつないで、バッテリーをもらいました。

なんとか軽自動車のエンジンがかかったので、その車の人には御礼をいって
先へ進んでもらいました。あとは、この軽自動車が安定して動いてくれる
のを祈るだけです。いい人が他にもいてよかったって、ほんと思いました。

さて、例のびしょ濡れの男性。ほんとにびしょ濡れ。かわいそうなくらい。
せっかく彼女とデートの途中だったのに、こんなハプニング。まぁ、人助け
ですから、いいことなんですけど、あの2人の週末は終わったわけです。

私は私で、軽自動車の人に、絶対に気をつけて運転するように、それと
信号待ちでは、出来るだけ空吹かしさせて、バッテリーを貯めるように
することを念押しして、自分の車へと戻りました。

軽自動車の人はすっごく恐縮して、名刺でもあれば、とかすっごく
繰り返して言ってたけど、なんか別にそんなつもりじゃなかったから
自分のことを気にしなさい、って言って、とっととその場を離れました。

なんだか、善行の自慢みたいですけど、久し振りに人助けしたのと、
普段何も出来ずに終わることが多い私が出来たことがうれしくて書きました。


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