2人は私のすぐそばの扉のところの両端に立った。
ひとりは、いかにもなパンチパーマのちょっと怖い系。
もうひとりは、従順そうな感じのサラリーマン。不思議な組み合わせ。
おもむろに、サラリーマンが口を開いた。
「先輩、子どもさん、どうですか?」
「子どもね、もう、最高だよ。ほんとに。」
パンチは子どもの話を切り出されると、上機嫌で話し出す。
「もうな、なんでも出来そうだよ。どんなことでも。」
すると、サラリーが不思議な質問をした。
「鼻水とか、全然平気ですか? なんでもって。」
「もうな、全然余裕。なんでもすすれちゃうよ。」
「そんなにかわいいんすか? 似てるんすか?」
「もうな、俺にそっくり。昔の写真と全く一緒だよ。」
パンチは、相当うれしそう。よっぽど子どもがかわいいらしい。
サラリーは、ふむ、ふむと、うなずきつつ、さらに質問する。
「子ども、持ったことないからよくわかんないんすけど、
そこまでいいもんなんすか? わずらわしくないっすか?」
「お前、男は働かなきゃ駄目だ。子どもが出来てよくわかったよ。」
かっこいい。こういうことを、さらっと言えるのは本当にかっこいい。
パンチはさらに、かっこいいことを続ける。
「あれだ、子どもがな、100万人の中に埋もれても、
俺は一発で自分の子どもがわかるよ、気持ちでは。」
かっこいい、ほんとに。どんな人数に埋もれても、自分の
子どもを一発で見つけるなんて。よっぽど好きらしい。
でも、この会話で一番、気持ちがこもってて、でも、一見
怖そうな人なのに、いいなと思ったことがある。それは
「気持ちでは」のところ。
ちょっと控えめな感じがいい。こんなお父さんなら、守ってくれそう。
幸せな子ども生活が送れるのだろうなぁ、とか思った。