「赤ちゃん大好き!」

ある日の会社帰り。いつもの電車に乗って、ぼんやりと外を
ながめていると、停車駅で2人連れの男の人が乗ってきた。

2人は私のすぐそばの扉のところの両端に立った。
ひとりは、いかにもなパンチパーマのちょっと怖い系。
もうひとりは、従順そうな感じのサラリーマン。不思議な組み合わせ。

おもむろに、サラリーマンが口を開いた。
「先輩、子どもさん、どうですか?」
「子どもね、もう、最高だよ。ほんとに。」

パンチは子どもの話を切り出されると、上機嫌で話し出す。
「もうな、なんでも出来そうだよ。どんなことでも。」
すると、サラリーが不思議な質問をした。
「鼻水とか、全然平気ですか? なんでもって。」

「もうな、全然余裕。なんでもすすれちゃうよ。」
「そんなにかわいいんすか? 似てるんすか?」
「もうな、俺にそっくり。昔の写真と全く一緒だよ。」

パンチは、相当うれしそう。よっぽど子どもがかわいいらしい。
サラリーは、ふむ、ふむと、うなずきつつ、さらに質問する。

「子ども、持ったことないからよくわかんないんすけど、
そこまでいいもんなんすか? わずらわしくないっすか?」
「お前、男は働かなきゃ駄目だ。子どもが出来てよくわかったよ。」

かっこいい。こういうことを、さらっと言えるのは本当にかっこいい。

パンチはさらに、かっこいいことを続ける。
「あれだ、子どもがな、100万人の中に埋もれても、
俺は一発で自分の子どもがわかるよ、気持ちでは。」

かっこいい、ほんとに。どんな人数に埋もれても、自分の
子どもを一発で見つけるなんて。よっぽど好きらしい。

でも、この会話で一番、気持ちがこもってて、でも、一見
怖そうな人なのに、いいなと思ったことがある。それは

「気持ちでは」のところ。

ちょっと控えめな感じがいい。こんなお父さんなら、守ってくれそう。
幸せな子ども生活が送れるのだろうなぁ、とか思った。


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