「イギリス人おばあさん」

ある日、ちょっとした用事があって私は渋谷方面から表参道方面へ
青山通りを歩いていた。もちろん、行き先は原宿。なにしろ、私の
大好きなグッズやTOYを取り扱ったお店がたくさんあるから。

天気もよかったので、直接そっちへ行かずに表参道方面からまわろう
としていたのだ。そんなとき、ふと、正面におばあさん二人が見えた。

片方は50前後の日本人、もう片方は60前後の外国人。どうやら
道を尋ねているらしい。でも、日本人のおばさんは英語がまったく
駄目なようで、ひたすらに日本語で説明している。そりゃそうだ。
わかんないけど、教えてあげたい、そんな気持ちが伝わってきた。

でも、私は英会話が全然駄目。話せない事も無いけど、遅いし
自分で話していてイライラする。そこで、一緒にいたOちゃんに
頼んで助けてもらうことにした。そ、自分じゃなくてOちゃんに
話させようというのだ。他力本願だけど、ほっとけなかったし。

ここからはOちゃんの会話を元に会話を成立させて書いてみる。

「何か困ってるのですか? 私に何かできますか?」
「助かりました。私は表参道へ行きたいのですが....」

表参道なら、青山通りを真っ直ぐ抜ければいける、けど本当の
目的地は多分違うはずだよ、という私の問いを話してもらう。

「どこへ行きたいのですか?」
「オリエンタル・マーケット(確か)なんです」

これは表参道のとおり沿いにあるお店で、名前のとおりオリエンタル
なモノを多数取り扱っている。見たことしかないけど、知ってた。
ただ、Oちゃんがわからないので、説明をしようにもラチがあかない。
どうせ、私たちもそっちへ向かうから、ということで同行することに。

その人はイギリス人で、息子が品川に住んでいるので遊びにきた
らしい。んで、アメリカにいる孫(ややこしい)に頼まれている
プレゼントも探していると。それがなんと、「ポケモンカード」
向こうの本土風に言えば「ポッキモンカード」らしいんだけどさ。
じゃ、ちょうどいいや、「オリエンタル・マーケット」の先には
私の大好きな「KIDDYLAND原宿店」があるから、そこで
見たらいいね、みたいな事を話してもらう。どうせ、おばあさんじゃ
全然わからないだろうしね。たまたま時間もあった、ってのもあるけど。

テクテクと表参道までを歩く。時間にして15分ぐらいだけど
おばあさんなのに歩くの速い。意外なアクティブさに驚いた。
その間、Oちゃんはおばあさんとひたすら話す。単語とかの断片が
耳に飛び込んできて話の一部しか拾えないけど、英語がうまい、だの
大学はなんだ、だのとお互いの身の上を話しているらしい。私は
あまりわからないので、ひさびさの青山をのんびりと眺めて歩いた。

で、やっとたどり着いた「オリエンタル・マーケット」は定休日。
おばあさんがひどくガッカリしていたので、何かいい情報はないか
と探すと、どうやら成田空港にも同じ店があるらしい。しかも、
そっちは年中無休。そりゃいいわ、とおばあさんに教えると
とても喜んでくれた。そのまま手帳にメモしてるし。帰りには
成田を絶対に使うからねぇ、と寄る予定を立てているみたいだった。
なんにせよ、とりあえず明るい道があってよかった、よかった。

んで、そのまま「KIDDYLAND」を目指す。まぁ、歩いて
5分ぐらい。赤や緑の旗が翻っているのですぐわかる。本当は
そこで別れるつもりだったけど、おばあさんが「KIDDYLAND」
へ入っていっても、一人でウロウロしちゃうのが予想できたので
「ポケモンカード」売り場まで一緒に。ところが、ここで次の
問題が発生。「ポケモンカード」は日本では通常版とUS版との
2種類を売っているんだけど、アメリカの孫がどっちを欲しがって
いるのかわからないらしい。これがねぇ、難しいんだよねぇ。

理由は、アメリカの子供達では日本版の「ポケモンカード」が
ひそかなブームらしい。US版と絵柄が違うから、ってことらしい。
となると、やっぱりアメリカでも手に入るUS版じゃなくて、
日本版が欲しいのかも、ってなるんだけど、実は全然初心者で
新しく始めたい、だけど家の近くにはないんだよ、グランマム!
みたいな感じだとUS版が欲しいわけでしょ。その辺がねぇ、
本人がいないし、本人からの希望も「ポッキモンカード!」だけじゃ
全然駄目。私が無い頭をフル回転させて出したのが「US版購入」
とりあえず、サイアクの事態に備えないとね。これなら、買って
いっても遊べない事はないからね。普通に買うのと変わらないかも
しれないけど。でも、日本語が全然わからなくて、日本版なんか
全然欲しくなかった場合、日本版を買っていっても「わかんないよ」
で終わっちゃうじゃん。それじゃ、おばあちゃんかわいそうだし。

んで、購入したので、そこでバイバイになった。エレベータを
待っている時に振り返ると、一人でゴソゴソ何かを見てる。
なんかすごく寂しそうに見えてしまった。んで、ふと思ったのが
「おばあちゃん、コレすごいよ!」みたいな状態にするには
どうしたらいいのかと。余計なお世話全開だけど、ここまで
来てるし、自分のスキなおもちゃ分野ということもあって
ちょっと一生懸命(話すのはOちゃんだけどさ)。そこで思い
ついたのが「ポケモンカードNEO」。これは日本でしか売ってない
し(大体、ポケモソ金銀自体メリケンではまだだし)、自慢の
種になる。見たことの無い絵柄だろうけど、あくまで「ポケモン
カード」だからわかってもらえるだろうしね。というわけで
戻っていって、おばあさんに勧めてみることに。やっぱりね、
せっかく日本で購入していく以上、日本じゃなくちゃ手に入らない
ものを入れておかないと! とか思ったから。世話焼きすぎ?

それも購入することになったんだけど、そこでおばあさんが
品川に住む息子の孫に「トーマスグッズ」を買っていきたいと
言い出した。「トーマス」は私の守備範囲外。とはいえ、やっぱり
おもちゃだし、乗りかけた船だし(こればっか)ということで
一緒に見だした。ミニハンドタオルとかディッシュプレートとか
コップとか散々見て数点を決定。私たちの意見をここまで
受けいれていいのか、とかちょっと思ったけど、おばあさんは
「ワンダフル」とか「ビューティフル」とか連発してたからOK?

レジで並んでいたら「一緒にコーヒーとか飲まないか?」と
誘われた。私はどっちでもよかったけど、全面的に話していた
Oちゃんが「もう英語が疲れてきた」という白旗をあげたので
丁寧にお断りした。確かに、このペースだと1日一緒にまわって
しまいそうだったし。そこで、おばあさんが「おいしい寿司屋は
ないか?」って聞いていた。これまた難しい。カウンター形式の
お寿司屋じゃ頼むのも一苦労だろうけど、回転寿司じゃ本当に
おいしいお店って一部だろうし。そこで食べた寿司がこの人に
とってのジャパニーズ・スーシーになるんだろうから責任重大。
さんざん迷った結果、手帳に漢字で「寿司」と書いて、その下に
日本語で「おいしいお寿司屋さんを探しています。どこかいい
所を知っていたら教えてください」って書いてあげた。誰かに
見せれば、きっと教えてくれる人がいるはず。あわよくば、私たち
みたいに同行してくれる人もいるかもしれないし....。

で、「バイバーイ」と別れた。エレベータの中でOちゃんが
「やっぱり疲れるよ〜」とか言ってた。ん〜、私は全然疲れて
ないんだけどね(当たり前か) でも、あのおばあさんにとって
楽しいひとときであってくれたらいいな、って思う。日本に来た
思いでの1つとなってくれれば。ここで気づいたんだけど、お互い
名前とか全然名乗らなかったんだよね。住所とか聞いておけば
手紙ぐらい出せたかもしれないなぁ、とか今更ながらに思った。


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