2人は座るなりお互いの食べたいものを口にだし、
店員は慌てて覚えて戻っていった。
しばし無言のあと、おもむろに男の方が口を開いた。
「ところでさぁ、カデンマック、どう?」
「あ、元気だよ。」
私は話が見えなかった。カデンマック? なんだろう。
物の名前かなぁ。カデンマック、口に出してもピンとこない。
「でもすごいよね、台所だもん。」
「炊飯器の隣だもんね。」
「ガス台のそばで食卓の上。これ以上の置き場所ないよね。」
んー、カデンマックの具体的な説明が出てこない。
まるでこっちが聞いているのを見透かすような遠回しのヒント。
「でも、あそこで使ってんの? ちゃんと。」
「使ってるよ。料理の時とか。レシピにいいらしいよ。」
料理でレシピ? 何だろう、ますます気になってきた。
なんかもう、自分の食事なんかどうでもよくなってきた。
「とりあえずさ、あれだけの条件で動けるなら、あとは風呂場だけだね。」
「それは無理でしょ、いくらカデンマックでもさ。」
「まぁねぇ、一応パソコンだしね。」
パ・ソ・コ・ン!! マックはMacなのか!!
そうか、そうか、わかったぞ。これですべての謎は解けた!
じっちゃんの名に掛けて!!
カデンマック、正式名称は家電Mac。すなわち、読んで字の如し。
台所において、炊飯器、ガス台と肩を並べ、食卓に陣取り、
まるで自分が家電であるかのように振る舞っているMacintosh。
そうなのか、まさにこのカップル内用語。にしてもすごいかもー。
なんでそんな場所でパソコンなのか。しかもMacだし。
「他、移せないの? どうしても?」
「邪魔だからね、しょうがないのよ。」
って、そんな理由かい!!