「ライオンビル」

今から何年か前の話。友人Sが就職活動をしていた。
まぁ、就職氷河期といわれている昨今、小さな会社が
結構大事だったりして、合同説明会が頻繁に行われている。

さて、ある日、また合同説明会があるということで
出掛けることになったS。その場所へと向かっていた。

だが、探せど探せど目的の場所に到達することが出来ない。
あいにく、目的の場所は書面でもっておらず、聞いたことしかない。
頭に残っている言葉を頼りに目的地を目指す。

時間はこく一刻とせまっているのに、到着することができない。
このままではまずい。仕方なく交番で尋ねてみることにした。

「すいません、ライオンビルってどこにあるんですか?」
するとおまわりさんは「ライオンビル?」と逆に聞き返す。
「いやー、聞いたこと無いなぁ。ライオンビルねぇ。」

焦るS。だが、Sの頭にはライオンビルしかない。
「この辺にあるって聞いたんですけどぉ・・・・。」
「うーん、地図にもそんなの載ってないねぇ。」とつれない返事。

すると、交番にいたおじさんが一言。
「それ、第4ビルちゃうんか?」
第4ビル!!おぉ、なんとも似た響き。

「第4ビルなら、近くにあんで。ちゃうんか?」
動揺するS。確かに似ている。それにあるというのは
かなり信憑性が高い話だ。しかし、間違っていたというのか。

「あのー、その第4ビルっていうのはどの辺なんですか?」
地図で説明してもらう。うん、探している場所だ。
「一応、行ってみます。どうも。」と照れ隠しに言ってみて
その場をすばやくあとにするS。

行ってみたらそこでやってましたよ、説明会。
第4ビルとライオンビル、似ていて否なるもの。

これこそまさに、百聞は一見にしかず。


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