就業規則は会社の憲法


突然ですが、この日本国で最も強い決まり事とは何でしょうか?答えはもちろん「日本国憲法」です。この日本国憲法を基本として様々な法律や政省令、行政規則等々が存在しています。
例えば、労働に関する法律では「労働基準法」あたりが一番強い法律といえるかもしれません。「かも」というのはそうじゃない場合がたまにあるからですが…その辺りのお話はまた何か別の機会でお話しします。
労働基準法をそのまま事業主や従業員が守るのは当然ですが、あくまでも「労働」の「基準」の「法」律にすぎないので、各々の事業所にはそぐわない内容も多くあったりします。もしかしたら法律よりも基準が上かもしれないですし、法律に明文されている事業形態がなかったりするかもしれません。その場合は、各々の事業所に合ったルールが必要になってきます。
以前にもお話しましたが、ルールも契約なので、口約束だけで済んでしまいます。ただし、口約束だけだと後々のトラブルになってしまう可能性も考えなくてはいけません。
労働契約には「労働契約書」という書面がありました。では事業所のルールを書面で明示しておけばその書面を盾にトラブルを防ぐことができるかもしれません。この事業所のルールを明示した書面を「就業規則」と言います。つまり、就業規則とは従業員が事業所で必ず守らなければならないルールの中で最も強いもの。これこそが「会社の憲法」と呼ばれる所以です。
さて、この就業規則、当たり前のことですが日本国の法律に違反したものではいけません。しかも、労働基準法では必ず記載しないといけないもの(絶対的必要記載事項)と、記載して初めて効力があるもの(相対的必要記載事項)の二つがあります。また、事業主が任意に定めるものもあります。
それぞれの記載事項の内容は以下の通りです。
<絶対的必要記載事項>
 1.始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
 2.賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 3.退職に関する事項(解雇の事由を含む)
<相対的必要記載事項>
 1.適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
 2.臨時の賃金等(退職手当を除く)及び最低賃金額に関する事項
 3.労働者に食費、作業用品その他の負担をさせることに関する事項
 4.安全及び衛生に関する事項
 5.職業訓練に関する事項
 6.災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
 7.表彰及び制裁の種類及び程度に関する事項
 8.事業場の労働者すべてに適用されるルールに関する事項
それぞれの記載事項の具体的な説明は話の都合上割愛しますが、これだけのものを定める必要があります。しかも、常時労働者が10人以上の事業所は事業所最寄りの労働基準監督署に届出書と意見書を添付して必ず届け出ないといけません(変更する時にも!)。ちょっとどころかかなり大変ですね。国もその辺りは分かっている…のかどうかはわかりませんが、厚生労働省のページにあるモデル就業規則を作成の参考にしてみるのも良いかもしれません。
ちなみに、常時労働者10人未満の事業所は労働基準監督署への就業規則の届出義務はありませんが、届け出ること自体は任意で可能です。
さて、就業規則を定めたといっても従業員に知ってもらわなくては意味がありません。周知が必要です。
周知は労働基準法により、各従業員への配付、事業所での掲示や備付け、電子媒体への記録という方法が定められています。
また、事業所によっては、就業規則に連なるものとして「規程」というものが存在しています。代表的なものとして、パートタイマー規程、賃金規程、ハラスメント防止規程、育児介護休業規程等があります。これらの規程も就業規則のひとつなので、考え方は就業規則と同じです。