社労士って?


このサイトに訪れているということは、既に「社労士」というものを知っていて、それなりの理解もされているはずです。とはいえ、社労士というのがどのような人で、どのようなことをするのかといえば、やっぱりよく分からないという人もいらっしゃると思います。
「社労士」というのは、正式には「社会保険労務士」という名前の職業です。平成28年3月末時点において、全国におよそ4万人の社労士がいるとされており、「社会保険労務士法(以下、「社労士法」)」という法律に基づいて様々な仕事を行なっています。
そして、この「社労士法」の第1条に、社労士の目的として以下の条文が明記されています。
第1条 この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もって労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
これだとよく分からないので、ものすごく簡単に言えば、社労士は、事業所や従業員にとって大切な労働保険や社会保険の加入その他に協力することで、事業所の発展と従業員の福祉を今よりもっと上向かせるお手伝いをしますよ、ということでしょうか。さらにもっと簡単に言うと、社労士は、事業のお金や物を扱うのではなく、「人」を扱う仕事とも言えるでしょう。
では、「人」を扱う仕事というのは具体的にどういうことなのかというと…これはまた少し長い話になりそうなので別の機会でお話しします。ごめんなさい。
さて、この社労士という職業、どこかに就職したり、お店を作るような気軽な感覚だけで(?)なれるものではありません。法律に基づいた仕事を行うのですから、それなりの知識が必要になってきます。
どのような知識が必要なのかといえば、ざっと挙げただけでも、「労働基準法」、「労働安全衛生法」、「労働者災害補償保険法(以下、「労災保険法」)」、「雇用保険法」、「労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下、「労働保険徴収法)」、「健康保険法」、「国民年金法」、「厚生年金保険法」といった法律知識だけでなく、これらの法令に関する周辺知識として「労働及び社会に関する一般常識」も必要なので、とにかく広い知識と理解が必要になってきます。
そして、これらの知識を担保するために試験があります。年一回行われていて、社労士を志すならば、ますはこの試験に合格することから始めないといけない人がほとんどです。ちなみにこの試験、筆者が合格した平成25年度試験の合格者率は5.4%で、当時は最も低い合格者率と言われて話題になったのですが…2年後の平成27年度試験ではさらに低い2.6%の合格者率とのことで、あっさりと更新されてしまいました。
難しい試験に合格したらさあこれで社労士に!…と思ったらそうではありません。試験に合格する知識があっても、事務に従事する力がなければどうしようもありません。しかも、事務に従事した期間が通算2年以上も必要です。既に総務の仕事や社労士事務所に勤めている人はともかく、そうでない人にとってはあてもなくハードルが高すぎて困ってしまいます。その場合には、年一回行われる事務指定講習を受講して修了すれば従事したことと同じということにしています。講習は試験の合否発表直後から始まり次の社労士試験が開始する頃まで続くので、やっぱりそれなりに長い時間がかかります。
試験を合格し、実務に関するとりあえずの力も身につけ、さあこれで…と思ってもすぐに社労士を名乗ることは出来ません。今度は社労士としての登録をすることになります。登録をすることで「全国社会保険労務士会連合会」と都道府県にそれぞれある「社会保険労務士会」に入会し会員にならないといけません。ここで初めて「社会保険労務士」を名乗ることが出来ます。筆者は奈良県で開業しているので、「奈良県社会保険労務士会」に所属しています。当たり前のことですが、しっかりと年会費を払って研修にも積極的に参加しています。
また、社労士は法律に基づいて仕事を行なっていることから社労士制度の発展に対する政治活動を行なう団体を結成しています。とはいえ、社労士個人の思想信条は様々なので、入りたい人が任意で加入する団体です。これも「全国」と「各都道府県」にそれぞれの団体があります。筆者もこの団体に所属しています。
さて、社労士にはいろんなタイプの人がいまして、「開業社労士」の他、社内勤務の社労士として「勤務社労士」、開業でも勤務でもない「その他社労士」がいます。さらに、開業社労士でも事務所形態によって「個人」と「法人」というのがあります。法人事務所に関しては平成28年1月より一人法人が可能となりました。なお、筆者は「個人開業事務所の社労士」として日々活動しています。