「たー様、質問するわ!」
「はいはい。食いまくったかと思ったら質問か。元気だなあ、ルーアン。」
「もう、いちいちそんな余計な事は言わなくていいの!」
新たな隠れ家での朝食が終わり、ただいまたー様への質問時間。
隠れ家内のふかふかのソファーにでんと座ってね。
「この隠れ家に入った時に言ってたわよね。他の目的があったって。
それって一体どう言うことなの?」
「昨日言ってたことだな。簡単な事さ。この地下屋敷をつたって、他の場所の味方を探そうって訳。」
味方・・・。えー?でもそれってこじつけじゃない。
「だいたい場所を変えたのは見つかったからでしょ。
別の場所に出口を作れば良いなんて言って。そこらへんはどうなのよ。」
するとたー様は慌てて頭を掻き出した。嘘って訳?
こんな一瞬で駄目になる嘘なんかついてんじゃないの。
「出口を変えるついでに味方を探す・・・なんてことじゃあ最初の質問は納得しないだろうな。
実は三種の神器の更に四つ目を探そうって魂胆なんだ。」
へえ、やっぱり最初のは嘘だったんだ。
でも味方を探すって事は良いことね・・・って、
「四つ目ぇー!?そんなものあるの!?」
あたしの大声にもまったく動じずに、たー様はまっすぐあたしを見て言った。
「一応言い伝えなだけだよ。偶然聞いたんだ。
“四つの方向の交わるところの地下深く。最後の神具が眠っている。”ってね。
だから、地下屋敷から何か手がかりが出ないかなって。」
なるほどねえ、地下深く・・・あれ?
「ねえ、四つの方向って事は、もう一つ更にあるんじゃないの?
ほら、今見つかっているのは三種の神器じゃない。」
「それは引っ掛けだよ。あの三つは方向を示しているもんじゃないしな。
でもまあ、あんまりこれも当てにしない方が良いかもな。
最後の神具ってのがどうも胡散臭いから。」
言われてみればそうね。だいたい何を基準にして最後なんだか。
それに三種の神器と関係が有るって決め付けられないし。
「ところでこれからどうするの?のんびりくつろぐの?」
「そんなわけないだろ。とりあえず最初言ったとおり味方を探すんだよ。
このノースシティに出てさ。」
「なーんだ、そうかー。」
まあ確かに、のんびりなんかしてられないかあ。
「で、どうやってその味方を探すの?」
「コイロー社長から以前から聞いておいた。ドーエン社のおとくいさんだよ。
ちっちゃな会社だけど、話をすれば喜んで協力してくれるはずだ。」
「ふーん、どんな会社なの?」
「あんまり詳しくは聞いてないんだけど、異次元処理システム会社って名前らしいぜ。」
異次元処理・・・。初めて聞くわね、そんなもの。
やっぱり場所が変わると会社も変わるってのは間違いなさそうね。
「すごそうな会社ね。でもなんでちっちゃいの?」
「だから俺は詳しくは知らないんだって。とにかく出かけようぜ。」
「よーし、それじゃあ行きましょ。今度は見つからないように。」
「うっ、わかってるよ・・・。」
痛い所を突かれたのか、たー様は少しショックを受けたみたい。
あらら、しっかり慰めてあげなきゃ。
「よしよし、たー様。しっかりしてね。」
「こ、こら、頭なんか撫でるなって。みっともないだろ。」
「あはは、じょーだんよ、じょーだん。」
慌てて手を引っ込めると、たー様はやれやれというような顔をする。
目で合図すると地上へ向かって歩き出した。
出たところは街のど真ん中・・・じゃなくて、地下鉄の駅。
何やら沢山の機械やらゴミやらが入り混じっている暗い部屋に出た。
なるほどねえ、こんな入り組んだところの扉じゃあ、誰にも分からないわね。
人知れずと言うか、何気ないそぶりで一般の人達に混じる。
そして普通の人のふりをして(あんまり必要無いような)駅の外へ出た。
「うっわあ~、すごい都会!」
サウスタウンとは比べ物にならないくらい、沢山の高層ビルが立ち並んでいた。
まるでビルのジャングルに来たみたいね。さっすがシティ。
「おーいルーアン、あんまりきょろきょろすんなって。
迷子になるから俺の手をつかんどけよ。」
「ええっ!?キャー、喜んでつかむわよ~。」
そして遠慮無くたー様の腕に、自分の腕を絡ませる。
「あの、ルーアン。俺は手をつかめって言ったんだけど・・・。」
「もう、いちいちそんな細かい事は気にしないの。
それにこっちの方が絶対に迷子にならないわよ。」
「はいはい・・・。」
道ですれ違う人達の注目を浴びてたみたいだけど、そんなことはお構いなし。
どんどん見てって頂戴。これでたー様&ルーアンがラブラブカップルだと世間に知れ渡れば、
もうこれは幸せいっぱいになるしかないわね。
知らず知らずのうちに鼻歌が出てくる。
たー様はなんだかあきれたように見てたけど、それでも顔を少し赤らめてたわ。
もう、恥ずかしがり屋さんなんだから。
「ところでたー様、このまま歩いて行くの?」
「そのつもりじゃあなかったけど、タクシーでも拾おうか・・・。」
そう言ってタクシーを捜し始めるたー様。ここで、思わずこう言っちゃった。
「きゃー、タクシーの中で抱き着いちゃおうっと。」
「・・・やっぱり歩いていこう。」
そして無言のまま歩き出すたー様。
なによなによー、別に良いじゃないの、運転手に見せつけたって。
でもまあ、このまま腕を組んで歩いて行くのも良いかもね。あ~ん、幸せ~。
思う存分周りに見せつけていると、あたし達のほかにもう一組のカップルが目に入った。
男性の方はりりしいって感じの顔ね。でもまあ、たー様にはかなわないわ。
女性の方は、これまた美人だこと。それでも、あたしにはかなわないわね。
ふふん、あたし達のほうが上ってことよ。お~っほっほっほ。
「・・・どした?ルーアン。」
「へ?う、ううん、別に。」
不思議そうな顔をするたー様に、慌てて平静を装う。
いくらなんでも他人と比べてるなんてあからさまに言えないわよねえ。
そしてそのカップルとすれ違おうとした時、男性のほうがあたし達に話しかけてきたの。
「あの、すいません。異次元処理システム会社ってどう行けば良いか分かりますか?」
もちろんあたしもたー様もぴたっと立ち止まった。
異次元処理システム会社って・・・あたし達が行こうとしている場所じゃない!
「・・・どうして俺達にそんな事聞くんですか?」
慎重にたー様が聞き返す。当然よねえ、ダークムーンの手先とかだったら命にかかわるもの。
すると、女性の方がにこやかに答えを返してきた。
「だって、お二人ともとっても仲がよさそうなんですもの。
なんだかあたし達とにてるかなあって、だからですよ。」
「ええ~、そんなあ。確かにあたしとた―様はラブラブだけど~。」
「ルーアン・・・。」
頬に両手を当てて喜んでいると、たー様が呆れ顔であたしを見る。
もお、いいじゃないのお。ダークムーンの手先がこんな事言わないわよ~。
「そういうわけです。道順を教えてもらえませんか?」
男性が再び尋ねてきた。けれど、まだたー様は疑惑のまなざしをしてる。
「とりあえずどういう目的で、とかを話してくださいますか?」
「た、たー様・・・。」
その二人は困ったように顔を見合わせる。当然よねえ、ただ道を聞いただけなのに。
それにそんなに警戒してるとかえって怪しまれると思うんだけど・・・。
「何か重要なことでもあるんですか?私達は、ただ雇い主に言われてそこへ行く途中なんです。
あ、自己紹介してませんでしたね。私はコーサン、こっちはエミリー。
機械カウンセリングの助手をしてます。」
「よろしく。」
ぺこりと頭を下げる二人に、あたしは慌ててお辞儀した。
「よ、よろしく。」
でもたー様は今だ疑いを晴らそうとしない。もう、なんでそんなに頑固なのよー。
「たー様・・・」
あたしが言いかけると、たー様はいきなり銃を取り出してコーサンに発砲した!
『バン!』
という音と共に崩れ落ちるコーサン。
突然何が起こったのか分からなかったあたしとエミリーだったけど、少し遅れてエミリーが悲鳴を上げる。
そして倒れたコーサンに駆け寄った。
「キャー!!コーサン、コーサン!!」
当然あたしはたー様につかみかかった。
「たー様!!なんてことしたのよ!!」
「ルーアン、離れてろ。この二人はダークムーンの手先だ!」
「ええっ!!?」
驚きの表情で二人の方を見る。たー様の声に反応したのか、エミリーが観念したように立ちあがった。
「どうして・・・分かったんですか?」
「その二人は確かロボットのはずなんだ。だから俺達と普通に話なんて出来ない。
うまく化けたんだろうけど、俺達は姿なんて知らないしな。」
「なるほど、せっかくカオリーノ様に術をかけてもらったのに無駄骨だったわけですか・・・。
こうなったら・・・。」
そしてそのエミリーが次の行動に出る前に、たー様はまたもや発砲。
エミリーもそこに崩れ落ちた。
「・・・くっ、カオリーノ様、申し訳・・・。」
そして絶命する。と同時に、二人の姿が黒い影に変わりすうっと消え去った。
何がなんやら訳が分からず、あたしはたー様を見る。
「一体なんだったの?カオリーノって確かダークムーンの手先だったわよね。
その更に手下ってことなの?ねえ、たー様。」
たー様は銃をしまいこむと、険しい表情であたしを見た。
「影に術を施して、それ自身が自由に動けるようにしたんだと思う。
とんでもないな、こんなところまでかぎつけてくるなんて。
これで油断できなくなった、特にカオリーノに関して・・・。」
深刻そうな顔になっちゃった。でもまあしょうがないか。
なんといっても影が襲ってきたんだものね。しかもこんなに早く・・・。
「さ、いつまでもボーっとしてないでさっさと行こうぜ。一刻も早く会社へ。」
「え、ええ・・・。」
たー様があたしの手を引っ張って歩き出す。普段なら喜んでそれに付いて行くんだけど・・・。
なんだか普段と違って立場がまるで逆よね。あたしよりいち早く敵だって事に気付いて。
そりゃあ、プロのボディガードだって事はわかってるけど。
あたしはたー様にただ守られるだけの存在でしかないのかしら・・・。
「・・・アン、ルーアン。」
「え?」
「どうしたんだよ、難しい顔しちゃって。いつものルーアンらしくないな。」
「いつもって・・・。会ってから一日と経ってないじゃない。」
「細かい事は気にするなって。それよりどうしたんだ?何かまだ心配事が?」
「ううん、別に。なんでもない。」
少しうつむいて答えると、たー様はがしっとあたしの肩をつかんだ。
な、なに?どうしたのよ、いきなり・・・。
「ルーアン、言っておくが隠し事をしている様じゃあ俺はおまえを十分に守れないんだ。
不安要素があるなら全部俺に言ってくれよ。遠慮無く。」
「たー様・・・。」
・・・っきゃー!なんて頼もしいのかしら!こんなたー様にあたしは守られてるんだわ!!
あたしはしばらくの間たー様の目を見つめ、そしてにっこり笑った。
「ありがとうたー様。もう大丈夫、心配ないわ。」
「・・・そうか?ならいいけど。」
不思議に思っていたたー様だったけど、あたしの笑顔を見て安心したみたい。
やがてたー様自身も笑顔になって、再び二人で歩き出した。
もちろん腕を組んで!あたしはたー様にべたべたべた・・・。
「ルーアン、あんまり引っ付かないで欲しいんだけど・・・。」
「も~う、なに照れちゃってんのよお~。遠慮なくってさっき言ったじゃないのお~。」
「そういう意味じゃないんだけど・・・。」
たー様の言葉もお構い無しに、やっぱり遠慮無く引っ付く。
周りのみんながすっごく注目してるって感じだわ。
うーん、やっぱりあたしとたー様って恋人同士以外何者でもないのね♪
上機嫌に成っていると、向こうの方から別のカップルが・・・!!
「たー様、あの二人って・・・。」
「ああ、エミリーとコーサンだな。今度は本物か、はたまた偽者か・・・。」
動きやすい様に体制を整え、向かってくる二人にゆっくりと近付く。
距離が約二メートルとなった時、エミリーの方が笑顔でお辞儀をしてきた。
つられてこちらもお辞儀・・・って、そんな事やってる場合じゃないじゃない!
「あんたたち、しょー懲りも無くまたやって来たのね!」
いきなり喧嘩腰で怒鳴ると、たー様に慌てて引っ張られた。
「ちょっとたー様、何するのよ。」
「いきなり相手を挑発してんじゃない!見ろ、今にも襲いかかって・・・?」
二人を見ると、なにやら顔を見合わせたままおろおろとしている。
いや、これは作戦なんだわ。これで相手を油断させて・・・。
と思っていると、コーサンの方が懐から紙切れを出してきた。
思わず二人して身構えると、コーサンはそれをばっと広げて見せる。
そこにはなにやらうにょうにょしたような文字が・・・。
「えーと・・・なんて書いてあるんだ?」
読もうとしたたー様が目を細める。無理も無いわねえ、こんな汚い字・・・。
とりあえずは襲ってくる気配が無い様なので、それを読んでやる事にした。
もちろんあたしが読むのよ。普段教師をやってるっていう実力を見せ付けてやるわ。
「えーと、『いぢげんしょりしすてむがいしゃはどこですか?』ですって。」
ひらがなだってのが救いだったわ。それでも誤字はあったけど・・・。
あたしの言葉を聞いたたー様だったけど、それでも油断無く構える。
「お二人さん、そこへ行って何をしようってんだ?」
今度はエミリーの方が紙を取り出そうとする。
けれど、なんだか上手く行かない様で、がさがさやっているうちにばさっと・・・。
一気に道端に紙切れの山が。もーう、なにやってんだか。
呆れながらも一つ一つを四人で手分けして拾い上げる。
まとめてそれをエミリーに渡すと、何度も会釈してきた。
・・・ひょっとして喋れないからこんな事を?
「ねえたー様、この二人は本物なんじゃないの?」
「いや、まだ油断はできない。これはただの演技かもしれないしな。」
「な、なるほど・・・。」
さっきの事もあって随分慎重になってるみたいね。
けどねえ、演技するにしたって普通ここまでやるかしら・・・。
今度エミリーが見せてきたものは・・・。
「なになに、『まゆうみさんにいわれてひととおはなしができるようになるためなんです』ですって。
・・・意味わかんないわねえ。もうちょっと分かりやすいの無いの?」
たー様が反応する前にエミリーに告げると、
コーサンと顔を見合わせてあたふたと別の紙を取り出した。
「えーと、『きょうのおかずははんばあぐです』。ちょっと、それって関係あるの?」
あたしがそう言った途端、二人とも顔を真っ赤にして別の紙を取り出す。
あのねえ、人に見せる前に自分達で確認くらいしなさいって。
「えーと、『まいんどなんたらそうちをつけてもらいにいくんです』か・・・。
なるほどね、会社に行くのはそういう目的なんだ。
「マインドなんたら装置って何?」
またもやごそごそと紙を取り出そうとする二人。
すると、今度はたー様がそれを制した。
「もういいよ。二人とも完璧に本物だ。
いくらなんでもここまでやってごまかそうとする奴は居ないだろうしな。
疑って悪かったね。実は俺達も異次元処理システム会社に行く所なんだ。
俺はタスケード、そしてこっちはルーアン。よろしくな、コーサン、エミリー。」
いきなりどんどん言ったかと思うと、たー様は握手せんが為に手を差し出した。
二人は戸惑いながらも、やがて笑顔になって握手をした。
やれやれ、なんだってこんな苦労を・・・。
それもこれもダークムーンの所為だわ。いや、怒るべきはカオリーノか。
今度会ったらおもいっきり灸を据えてやるんだから。
ともかく、そんなこんなで四人一緒に例の会社へ向かう事となった。
で、しばらくしてその会社へと到着。でも・・・。
「すんごくちっちゃい会社ねえ。こんなのが遠藤君の会社のおとくいさんなの?」
「いやいや、見かけと中身は違うもんさ。それよりなんでドーエン社って呼ばないんだよ。」
「何言ってんの、誰がそんなだっさい名前で呼ぶもんですか。」
「だっさい名前・・・。まあいいや、それじゃあ行くぞ。」
たー様がドアをノック。ほどなくして中から返事がし、がちゃりとドアが開いた。
「いらっしゃいませ。・・・あなたは?」
中から出てきたのは見た事の無い女の子。多分受け付け譲か何かね。
「俺はタスケード。そんでもってこっちはルーアン。
俺達二人ははコイロー社長に言われてきたんだ。」
「まあ、ドーエン社の!いつもいつもお世話になってます。
あたしはここ異次元処理システム会社社長の、サトリーヌ・ジュセンです。
どうぞよろしく、タスケードさん、ルーアンさん。」
「ああ、よろしく・・・」
「しゃ、しゃちょー!?」
思わず叫んだあたしの顔を二人して注目する。
サトリーヌが不思議そうな顔で尋ねてきた。
「どうしたんですか、ルーアンさん。あたしが社長だなんて、そんなに意外ですか?」
「だってねえ、まさか社長がいきなり出てくるとは思わないじゃない。
社長なら社長らしく・・・そう、遠藤君みたいに・・・。」
「ルーアン、遠藤君じゃなくてコイロー社長・・・。」
理由を説明している所へたー様の突っ込み。
もう、どうでもいい・・・わけは無いか。あたしだってルアーヌなんて呼ばれたくないしね。
「悪かったですね、社長らしくなくって・・・。
もともと小さな会社なんです。ドーエン社と同じようにはいきませんよ。」
「そ、そうよね。ごめんなさい。」
ふてくされるサトリ―ヌをまあまあとたー様がなだめる。
そして自己紹介の続きを始めた。
「で、後ろに居る二人はコーサンとエミリー。この二人はなんか装置を付けてもらいに来たらしい。
ここに来る途中偶然で会ったんだよ。」
コーサンとエミリーがぺこりとお辞儀。
喋る事が出来ない分顔で伝えるしかないのよね。
「ああ、マインド送信装置を・・・。でもまだ出来てないですよ。
マユーミさんから依頼されたのは今日だしねえ・・・。」
「マインド送信装置?ああ、そういえばそんな事説明してくれたわねえ。」
「とりあえず中へ入らせてくれないかな?俺達はこの二人とは別に頼みが有って来たんだ。」
「ええどうぞ。なんといってもコイロー社長のお知り合いですしね。」
にこっと笑ったかと思うと、サトリ―ヌはあたし達四人を中へと招き入れた。
で、中に入って思った事は・・・。
「・・・狭いわねえ。ほんと小さな会社だわ。」
「ルーアン、そんな事言ったら失礼だろ・・・。」
不機嫌な顔をしているサトリ―ヌを見たのか、たー様が横からひじで突ついてきた。
いいじゃないの、本当の事なんだから。
「それではとりあえず座って待ってて下さいね。あたしは作業の続きをしなければいけないから。」
「ああ、ゆっくり待たせてもらうよ。」
「お菓子とかは無いの?お腹が空いちゃって・・・。」
サトリ―ヌは呆れ顔になったかと思ったら戸棚からクッキーやらを取り出してきた。
「どうぞ。」
「うわあ、ありがとう。さっすが社長だわ♪」
「あのね・・・。」
ますます呆れ顔になって、サトリ―ヌはその場を去って行った。
途端にクッキーをほおばるあたし。
「ルーアン、もうちょっと遠慮するとか・・・。」
「ふぁっふぇふぁーはまあふぁひはほほひふるふぁふぇ・・・」
「もういい、あとでな。」
ぷいっとたー様がそっぽを向く。
慌ててあたしは口の中を飲みこんで言った。
「えー?私を守ってくれるっていうんならこれくらいは理解してよ―。」
「無茶いうな。大体物食いながら喋るなんて行儀悪いぞ。」
「なに言ってんの。コーサンとエミリーの言葉を読み取る訓練よ。」
「こじつけは止めろよ。」
ありゃ、失言だったみたい。
まあいいわ。あたしはとにかく食べてようっと。
がつがつがつがつ・・・。
他の三人をそっちのけでひたすら食べる事に専念する。
美味しいわあ、このクッキー。普段和菓子ばっかり食べてるけど、こういうのも良いわね。
唖然としてあたしを見つめる三人。呆けてる顔ってどうしてこんなに面白いのかしら。