今日は夢ヶ丘中の全部活がそれぞれの部室を掃除することになった。
ということで、オレ達浪漫倶楽部の部員も部室へ行く。
「あうー。それにしても汚いね。」
とほとんど整理されていない部室を見ながらコロンが言う。
「そういえば、最後にこの部屋掃除したのっていつごろでしたっけ。」とオレが部長に聞く。
「たしか、半年近くは掃除をしていないと思うのだ。」
「どうりでこんなに汚いわけだよ。」と翔子ちゃんが言う。
「さっさと始めた方がいいんじゃない。」と月夜ちゃんに、
「そうだな。」と答えるオレ。そして、
「本当に今日掃除をするのか、火鳥殿。
私は暑くて死んでしまいそうなのだが。」とキリュウちゃんが聞く。
「試練だぞ、キリュウ。」と翔子ちゃんがキリュウちゃんに言うと、
「試練ならば仕方がないか。」とあっさり納得してしまった。
そしてオレ達は部室の掃除を始めた。掃除を始めてから間もなく、
「この人形みたいなの何、火鳥。」とコロンの声にオレはそっちの方向を向く。
とコロンはいくつかのわら人形を持っていた。
「これは呪いのわら人形と言って憎い相手を呪うことができるのだ。」と部長の説明に、
「へー、そうなんだ。」と納得するコロン。
だけど何でわら人形なんかがあるんだろう。
「コロンちゃん、私にわら人形を一つ分けて欲しいのだ。」と部長。
「別にいいけど。」と言いながら部長に1つ渡すコロン。
「どうでもいいけど誰に呪いをかける気なんだ、部長。」と翔子ちゃんが聞く。
「それはもちろん・・・」と言いかける部長。
まさか部長が呪いをかける相手って・・・
「我が宿命のライバル高橋由紀ちゃんなのだ。」
と部長。やっぱりそうだったか。
「我々浪漫倶楽部の邪魔をする由紀ちゃんに一度ギャフンと言わせてやるのだ。」
と力説する部長。部長はまだ何か力説しているみたいだけど、
もうほっといて掃除をしよう、と思ったオレは掃除を再開することにした。
見ると、他のみんなも部長を無視して掃除を再開している。
そして掃除を始めたオレ達に後ろから、
「みんな、無視するなんてひどいのだー。」
「試練だ、綾小路殿。」
と部長とキリュウちゃんの声が聞こえた・・・ような気がした。
そしてオレ達が掃除を始めてから約20分後、部室の掃除と片づけが終わった。
「やっと掃除終わりましたね。」と月夜ちゃんが言う。
「後はごみ捨てだけだな。」と翔子ちゃん。
「何人で行きます。」とオレ。
「この量だから2人ぐらいは必要だと思うのだ。」と部長。
「いや、1人で行くのも試練だ。」とキリュウちゃん。
「とりあえず2人残ったら2人で行って1人残ったら1人で行くってのは。」とオレ。
「それならかまわないが。」とキリュウちゃん。
「あうー。で、どうやって決めるの。」とコロン。
「ジャンケンでいいんじゃないか。」と翔子ちゃん。
「じゃあ決めるのだ。」と部長の一言でジャンケンをするオレ達。
そしてオレと月夜ちゃんがごみ捨てに行くことになった。
ごみを捨てに行く途中、
「それにしてもすごい量のゴミね、火鳥君。」
「そうだね。」などと月夜ちゃんと話をしていると、
「あら火鳥君に月夜ちゃんじゃない。」と後ろから由紀先輩の声がした。
「由紀先輩、風紀倶楽部も今からごみ捨てですか。」と月夜ちゃんが聞く。
「そうなのよ。ジャンケンで決めようとしたんだけど、
なかなか決まらなくてね、5分ぐらいかかっちゃったのよ。」
「そ、そうなんですか。」
「それにしてもすごいゴミの量ね。」
「最後に部室の掃除をしたのが半年ぐらい前で、
しかも1年近く真面目に掃除をしてなかったから、
何かいろいろな物が出てきちゃったんですよ。」とオレが言う。
「いろいろな物って。」
「例えば呪いのわら人形とか・・・」
「の、呪いのわら人形。何でそんな物が部室にあるの。」
「部長にもよく分からないらしいんです。他にもカビだらけのみかんとかが・・・」
「ちょっと何でそんなのが部室にあるのよ。」
「部長が言うには、
2年前の始業式の時に飾った鏡餅に乗っていたみかんらしいんですけど。」とオレが言う。
「なんかいろいろな物があるわね。」
「はは、そうですね。」とオレが言う。
月夜ちゃんや由紀先輩と適当に話をしながらゴミ捨て場の方に行くと、
「おおーっと。今度は浪漫倶楽部と風紀倶楽部だね。」と聞き覚えのある声がした。
その声を聞いて、
「西崎。あんたこんなところで何やってんの。」と由紀先輩が聞く。そうだ。
この声は新聞倶楽部部長の西崎先輩の声だ。
「何をやっているかって。見て分からないかな。
大掃除で各部活からどのくらいのゴミが出るかを新聞の記事にしようかと思ってね。ベイビー。」
そういうと西崎先輩はメモ帳と鉛筆を取り出すと、
「それにしても浪漫倶楽部は多いねー。こりゃ新記録だなー。」とか言うとメモをした。そして、
「おおーっと。どうやら別の倶楽部がゴミを捨てに来たようだね。
では浪漫倶楽部と風紀倶楽部の諸君、さらばだ。」
そういうと西崎先輩はどこかへ行ってしまった。
「な、何だったのかしら。」と月夜ちゃんが言う。
「さあ、何だったんだろう。とりあえずゴミを捨てに行こう。」とオレが言う。
そしてオレ達はゴミを捨てると部室に戻った。
ゴミ捨てを終えたオレと月夜ちゃんは部室に戻り、
そして由紀先輩も加わって部室でお茶を飲んでいる。
「まあ、掃除も無事に終わってよかったのだ。」と部長が言う。
「綾小路。もうちょっと掃除の回数増やした方がいいと思うわよ。
半年に一回はやっぱりまずいんじゃないの。」と由紀先輩が部長に言う。
「由紀ちゃんの言うとおりなのだ。今度から1ヶ月に1回は掃除をすることにするのだ。」と部長。
「ところで綾小路殿。1つ聞きたいことがあるのだが。」とキリュウちゃんが聞く。
「何だい、キリュウちゃん。」
「私が掃除をしていた場所でこんな物を見つけたのだが。これは一体なんだ。」
とキリュウちゃんは着ぐるみみたいなものを見せながら言う。確かあれは・・・
「あれは確か・・・」と部長は考えていたが、
「そうだ。思い出したのだ。あれは去年の文化祭の時の仮装行列の衣装なのだ。
確かうさぎとかめの衣装だったのだ。」と部長。
「へー、文化祭の時の衣装か。そうだ、2人とも着てみてくれよ。」と翔子ちゃんが言う。さらに、
「あ、私も見たいな。」
「私も。」と月夜ちゃんと由紀先輩が言う。
「そこまで言うならちょっと着てくるのだ。さあ、火鳥君着替えに行こう。」
「オ、オレはいいっすよ。部長一人で着替えてきて下さいよ。」と断るオレ。
「ははーん。何か嫌なことでもあったんだろう、火鳥。」と翔子ちゃんが言う。
「いや、別にそんなこと無いけど。」と否定するオレ。その時、
「そうだ、思い出したのだ。」と部長が言う。何で思い出すんですか、部長。
「で、何があったんだよ、部長。」と身を乗り出して翔子ちゃんが言う。
「あのときは私がかめで火鳥君がうさぎの衣装を着ていたのだが、
火鳥君のかぶっていたうさぎのフードが帽子ごととれてしまったのだ。」
「それで火鳥はやっぱりハゲだったの、部長。」とコロンまでが身を乗り出して聞く。
誰がハゲだって、コロン。
「それは・・・火鳥君が言ってほしくなさそうな顔をしているので秘密なのだ。
さあ、火鳥君着替えに行くのだ。」
「はい。」と部長に従うオレ。
ここで着替えないと何言われるか分からないからな。
そして着替えるために外に出ようとしたオレの耳に、
「やっぱり火鳥ってハゲなんだ。」とコロンの声が聞こえた・・・ような気がした。
だからオレはハゲじゃないって。
そしてオレと部長は外で着替えると部室に入った。
「へー、けっこう似合ってるじゃん。」
「あうー、似合う似合う。」
「2人とも似合ってるわよ。」
「それなりに、似合うのではないか。」
「ふーん。結構決まってるじゃない。」と言う5人。
その後オレ達は20分近くお茶を飲みながら談笑し、そして帰った。