翔子と紀柳のパラレルワールド日記
(「カードキャプターさくら」編)


『不思議な・・・?』

「・・・そのまんまだな。」
「翔子殿、別にそういうことではないと思うが・・・。」
「だってさ、誰が見たってそのまんまじゃないか。他に何があるっていうんだよ。」
「う、うむ、それは・・・。」
キリュウが反論するのを止めた。ま、ここまで言えば当然だな。
何がそのまんまなのか。それは景色!扉に入った途端に目に入ってきたのは桜の木だ。
とっても綺麗に、と言わんばかりにずうっと並んでいる。それよりも!
ご大層な言葉がついてる割には、見た目にはただのさくらじゃね〜か。
何がカードキャプターだ。よし、こうなったら・・・。
「キリュウ、一本くらいちっちゃくしてよ。こないだ皆で行ったお花見の時みたいにさ。」
「そんな事をしてどうするというのだ。」
「憂さ晴らしだよ。一本くらいミニサイズな桜があったって、誰も不思議に思わないだろ。」
「翔子殿、私の力はそういうものの為にあるのでは・・・。」
「なんだって!?自分は花見の時にちっちゃくして遊んでたくせに。
そっか、キリュウって偽善者なんだ。なあんだ〜。」
おもいっきり嫌味げに言うと、キリュウはしぶしぶ扇を広げた。
そうそう、最初っからそうやってくれればいいんだ。
けれどなにやらためらっている。うーん、やっぱり憂さ晴らしなんて良くないかなあ。
なんとなくあたしの気が変わり始めたとき、向こうの方から“チリンチリン”というベルの音が。
なんだろうと思ってそっちを見ると、自転車二台とローラーブレードで滑ってくるやつが。
自転車に乗っているのは黒髪のにーちゃんと眼鏡をかけた銀髪のにーちゃん。高校生かな?
なんだかどっちも美形っぽい顔してるなあ。出雲のおにーさんよりかっこいいんじゃないか?
ローラーブレードの奴はなんとも元気いっぱいのような女の子。どう見たって小学生だな。
「何やってんだそんなとこで!」
黒髪のおにーさんが怒鳴る。そうか、ここは道のど真ん中だった。
「あぶない!キリュウ!」
慌ててキリュウを引っ張る。
が、なにやらぶつぶつやっていたキリュウを素早く避難させる事は出来なかった。
結局あたしもそれにつられて道の真中で立ち尽くす。
キキキキイーッ!!
激しいブレーキ音が鳴り響く。と、なんとか三人とぶち当たらずに済んだ。
「ふう、危ないとこだった。駄目じゃねーか、道の真中で突っ立って。」
黒髪のおにーさんに怒られる。
「ごめんなさい。たくう、キリュウがボーっとしてるから・・・。」
「翔子殿が憂さ晴らしなどと言うからではないか。翔子殿の所為だ。」
珍しく反論してきやがった。負けじとこっちも言い返す。
「なんだよ、横文字の意味もわからないくせに。」
「何を言う。だいたい翔子殿は深読みしすぎるのだ。もう少し考えられよ。」
そんなこんなで、三人をそっちのけで喧嘩していると、その三人のうちの女の子が叫んできた。
「もうー!!喧嘩しちゃ駄目ですよお!!」
その声にぴくっと振り返ったあたしとキリュウだったが、すぐに喧嘩に戻る。
「見ろ、こんな女の子にまで怒られちゃったじゃないか。キリュウの所為だ。」
「なぜ私の所為になるのだ。だいたい翔子殿は・・・。」
で、すっかり呆れちゃったんだろうな。黒髪のおにーさんがため息をついた。
「やれやれ。ゆき、もう行こうぜ。部活に遅れちまう。」
「そっか、朝練遅刻はまずいよね。それじゃあさくらちゃん。」
「あ、はい。私はそれじゃ・・・」
「「さくらって!!?」」
論争を止めていきなり二人で叫ぶ。当然だ。なんといってもタイトルの名前なんだから。
興味津々な目をするあたしとキリュウを見て、黒髪のおにーさんが言った。
「さくらってのはこいつの事。俺の妹だよ。」
「なるほど、そうか・・・。」
やっと真の手掛かりを発見した。ここはこの子に関係ある世界に違いない。
「あの、私がどうかしたんですか?」
「ちょっと聞きたい事があってさ。話聞いてもらえるかな?」
「でも、私学校に行かないと・・・。」
「少しの時間でも良いのだ。話を聞いて欲しい。」
キリュウと一緒になってその女の子、さくらを説得しにかかる。
おろおろとしていたが、そいつの手を黒髪のおにーさんがつかんだ。
「ちょ、ちょっと、おにーちゃん。」
「さっさと学校行くぞ!」
一言発したかと思うと、いきなり自転車を漕ぎ出してさくらを連れて行った。
さくらはローラーブレードをつけているから、別段問題なく去って行く。
それでも、なんだか危なっかしい様に見えたけど。
「ああっ!!待ってくれってー!!追うぞ、キリュウ!!」
「心得た、と言いたいが、短天扇の力を使っても良いものか?」
「あ、それもそうか・・・。なんだ、さっきはそれでためらってたんだな。」
・・・とかやっているうちに居なくなっちゃったよ。
まったく、一体どうしたってんだろう。話くらい聞いてくれたっていいじゃんか。
「ところで翔子殿、走ってでも追わなくて良いのか?」
「歩いて行こうよ。どうせ追いつけないだろうし。それに近辺に同じ服着た奴が居るはずだ。
そいつの後を追えば済む事だよ。」
「なるほどな。では行こうか。」
というわけでのんびり歩き出したあたし達。案の定さっきのさくらと同じ制服を着た奴が大勢歩いていた。
と、それと同時に学校が見えてきた。なるほど、小学校と高校が隣り合ってるのか。
「ここに間違いなさそうだな。え―と、友枝小学校・・・。ふーん、なるほど。」
小学校の名前を読んでふむふむと頷くあたし。
それがキリュウには気になった様で、感心した様に言ってきた。
「翔子殿、何か手掛かりを発見したのか?小学校の名前から・・・。」
「いや、別に。なんとなく言っただけだよ。」
「・・・・・・。」
途端に呆れ顔になるキリュウ。なんだか変なものを見ているような目つきだ。
「なんだよ。別にいいだろ、少しくらい適当に居たって。」
「・・・まあいい。とりあえずこれからどうする?」
キリュウはそう言うものの、まだ怪訝そうな目つきだ。
何か気に触ったのか?・・・まあいいや、気にしない事にするか。
「一応中に潜入して・・・ってのはどうかな?」
「それよりはさくら殿が外へ姿を見せるのを待った方が・・・。」
「なるほど・・・って、そういう案があるんなら最初っから言えっての。」
「それもそうだな。」
文句を言ったものの、キリュウの案に従う事にした。見つかったらただ事じゃないし。
とは言うものの、問題がなにやら残っている・・・。
「どこで待つ?」
「屋上が良いのでは?」
「じゃあ潜入しなきゃ。」
「そうか・・・。」
うーん、なんだか変だ。さっきから会話がかみ合ってないっていうか・・・。
これもこの世界の影響なのかなあ?
「キリュウ、さっきから様子が変だって。言いたい事が有るんなら言えって。」
「いや、なんでもない・・・。」
「そうか・・・なんて納得すると思うなよ。いいから言えって。」
するとキリュウは大げさにも一つ深呼吸をして口を開いた。
「先ほど、憂さ晴らしとか言っただろう?あれは本心なのかと思って。」
なるほど。これは確かに深呼吸して尋ねるような事柄だな。
ここへ来る途中にでも言えば良いのに、今更って気がする。
「ただの冗談だよ。キリュウが迷ってる時に、やっぱり良くないかなあって思い出したんだ。」
「そうだったのか。ふむ、これですっきりした。では潜入する事にしよう。」
「どうやって?」
あたしの突っ込みにキリュウが周囲を見まわす。
この頃には沢山の生徒が登校中であって、とても潜入なんて真似は出来ない。
「ふむ、どうしたものか・・・。」
「出なおすか?」
二人で困っていると、一人の女の子が近づいてきた。
格好からしてこの小学校の生徒だろう。すっごく長い黒髪に、なんともお嬢様っぽい顔立ちだ。
「どうしたんですか?何かお困りの様ですが。」
思わず脱力しそうなのんびりとした口調で喋ってきた。誰かに似てるような・・・気のせいかな。
なにも言わずに黙っていると、キリュウが何か思いついた様に口を開いた。
「さくら殿と会って話をしたいのだが、案内してもらえぬか?」
あ、そういう聞き方もあるか。よく考えたら潜入なんてしなくてもいいんだよな。
さっすがキリュウ、普段からクールなのはだてじゃないってね。
でも、単刀直入過ぎるような・・・。
「まあ、さくらちゃんに御用なんですか?一体どうして?」
「深い事情は言えぬが、話をしてみたいのだ。というわけで会わせてくれぬか?」
「それじゃあ教室にご案内いたしますわ。」
「ありがたい。ではよろしく頼む。」
あ、あれっ?随分あっさりいったな・・・。
まあ気にしないことにしようか・・・と思ってたら、その女の子は校門とは反対側に。
なにやら黒いスーツにサングラスをかけたおね―さん達が居る所へと・・・。
「皆さん、この二人はさくらちゃんを付けまわす怪しい方ですわ。よろしくお願いします。」
「「え・・・。」」
キリュウと二人で目が点になっていると、その女の子はたたっと戻って行った。
やっぱりこういう事かー!!用心されないなんておかしいと思った―!!
慌てて追おうとしたものの、そのおね―さん達にがっちり囲まれてしまった。
「どうしよっか。」
「仕方ない・・・万象大乱!」
あたしが止める暇も無く万象大乱を唱えやがった。当然そのおね―さん達は一斉に小さくなる。
他に人が居なかったのが唯一の救いかな・・・。
「キリュウ、おまえって奴は・・・。」
「なんだ?文句があるのならあの少女に言うのだな。さっさと話をしに行くぞ!」
なんだか怒っているみたいだ。素早く短天扇を大きくしてそれに飛び乗るキリュウ。
あっけに取られながらもあたしもそれに乗る、と勢いよく空へと繰出した。
いきなりの事にびっくりして危うくそこから落ちそうになる。
「お、おいキリュウ!」
「笑顔で人を騙すとは許せん。きっちり試練を与えねば!」
「丁寧に聞かなかったキリュウが悪いんじゃ・・・。」
「何か言ったか、翔子殿!?」
「もうちょっと冷静になれって。小学生相手に切れてんじゃないよ。」
落ちついて返すと、キリュウは黙ったまま短天扇のスピードを速めた。
しばらくして学校の屋上へと到着。幸い空を飛んでいる所は誰にも見られなかったようだ。
「とりあえず落ち着け、な?」
「分かった、落ち着くことにする。それにしても結局潜入する羽目になるとは・・・。」
これぞ本末転倒ってやつだな。というよりキリュウが悪いんじゃないか・・・。
だいたい囲まれただけでこっちは被害を受けてないってのに。
ああいうのを過剰防衛って言うんだろうな。まったく、とんでもない・・・。
「・・・翔子殿?これからどうする?」
「あ、ああそうか。とりあえずさくらを探そう。というわけで階段を降り・・・なんだあれ?」
くるりと階段へ向いたあたしだったが、妙なものが目に入った。
黄色くって、・・・よくわかんないけど熊っぽい顔にライオンの体と尻尾、
そんでもって鳥の羽が生えている。
ぬいぐるみ・・・にしてはなんだかしっかり動いているような・・・。
それが階段の所で何やらうなったり寝っ転がったりとしている。
キリュウと顔を見合わせて頷き合い、そおっとそれに近寄った。
「おーい。」
「うわあ!!」
ちょっと声をかけると、びっくりしてそいつは大声を上げた。
そして勢い余って壁に激突。ふらふらと地面に降り立った。
「イタタタ・・・はっ!!?やばい、見つかってしもうた!!」
見つかった?どういう事だ?
「なあ、あんた一体何もんなの?喋れて動けるぬいぐるみ?」
するとそいつはぱあっと顔を輝かせ、ちょこんとポーズを取った。
「その通りや―。ちょっといろいろ有ってこんな所におるんやー。」
「・・・・・・。」
驚くと同時にあたしは呆れてしまった。喋れて動けるぬいぐるみって割には空を飛んでたような。
だいたいそれって立派な生き物じゃないのか?それよりどうして大阪弁・・・。
と、横からキリュウが質問した。
「名前はなんというのだ?」
「わいの名前はケル・・・ケロちゃんや―。お二人さんの名前は―?」
「こちらは山野辺翔子殿だ。そして私はキリュウ、大地の精霊だ。」
「よろしゅうー。ほなさいなら・・・なんやて!?大地の精霊やと!!?」
何処かへ飛んで行こうとしたそいつは急にこっちに反転してきた。
なるほど、大地の精霊に反応したのか。それにしても今回のキリュウはなんだか強気だなあ・・・。
「その通り。ところでそなたは何者なのだ?ただのぬいぐるみではあるまい。」
「・・・なるほどな。隠しても無駄やっちゅうことやな。とりあえず話をしたる。」
あれで隠してるつもりだったのか?なんだか頭悪そうだな・・・。
呆れながらも見ていると、そいつはいろいろな事を語ってくれた。
こいつの本名はケルベロスといって、この世に禍をもたらすといわれるクロウカードの番人。
本人曰く、「封印の獣」という事らしい。
ところがある事件がきっかけでそのクロウカードがどこへともなく散らばったらしい。
で、それを集める事が出来る奴は、カードがしまわれていた本を開ける事が出来た少女・・・
「「カードキャプターさくら!?」」
「そ、そうや・・・。なんや二人ともえらい驚きようやなあ。
ほんでもって、普段わいは家におるんやけど、今日は特別嫌な予感がしたからさくらに付いて来たんや。
けど学校へつくなりさくらに見つかってしもうて、それでさくらがごっつい慌ててしもてな。
で、屋上で他の連中に見つからん様におとなしゅうにおった、というわけや。」
「なるほどそういう事だったんだ・・・。」
「うむ、これは・・・。」
二人して真剣な顔になって考え込む。
とりあえずこの時点であのタイトルの意味が全てわかった。
ともかくクロウカードの捕獲者って事だったんだな。なるほどねえ・・・。
「どや?二人とも事情わかったかいな?」
「ああ、ばっちり分かったよ。すごいんだなあ、あんたって・・・。」
「いやー、それほどでもあらへんけど。ほなこっちから質問してもええか?」
「言っておくが私達の素性に関しては聞かぬようにな。」
おいおい、いきなりそんな事言ってんじゃね―って。
向こうが洗いざらい話してくれたってのに、それじゃああんまりじゃね―か?
「なんや、えらい無愛想なね―ちゃんやなあ。つーか大地の精霊なんやろ?
なんで大地の精霊がこんな所におるんか聞きたいんやけど。」
「試練だ、自分で考えられよ。」
「・・・・・・。」
キリュウ、おまえって奴は・・・。
「はっきり言っておくぞ、それは汚い以外なんでもないってな。」
「ではどうしろというのだ。まさか全てを喋ろというのか?」
「そうは言ってないよ。せめてクロウカードを集める手伝いをするとかさ。」
「なるほど、その手があったか。というわけでケルベロス殿、私達で良ければ手伝うぞ。」
二人で納得してケルベロスを見る。と、ぽかんと口をあけたまま。
しばらくしてようやく我に帰ったのか、慌て気味に喋り出した。
「あ、ああ、そら手伝ってもろうてもかまへんけど・・・って、何ができるんや?」
「試練だ、考えられよ。」
「おいキリュウ・・・。」
「冗談だ。物体の縮小と拡大、とまあそんな所だ。」
一瞬唖然となったケルベロスだったが、後のキリュウの言葉にばっと飛びあがる。
「物体の縮小と拡大!?そらまたごっつい能力やなあ。十分手伝えるやないか。
よっしゃ、お二人さんよろしく頼むでえ。」
「あ、ああ・・・。」
あたしってばなんだか余計な事言っちゃったような・・・。
まあいっか、頑張ってカード集めをするぞー!
「・・・とはいうものの、どうすれば良いんだ?これから。」
「とりあえずさくらが来るのを待とうか。今のところはクロウカードの気配もせんし。」
気配だって。へえ、そんなものが分かるのかあ。
うーん、あたしもそういう能力が欲しいよなあ。シャオやおに―さんの気配が分かるような。
そうすればもっとシャオのためにいろいろ動けるんだけどなあ・・・。
少し考え事をしていると、チャイムが鳴った。そして・・・。
バタン!!
と屋上の扉が開くと二人の女の子が顔を見せた。
どっちも見た事あるような顔・・・二人ともここへ来る前に会ったじゃないか!!
「ケロちゃん、大変な事が・・・ああ―っ!!あなた達は!!」
「さくらちゃんを付けまわしていた方たちですわ!!」
「なんやて!?さくらを付けまわす!?」
「誤解だって―!あたし達はただ・・・」
「そなたは!!許さぬぞ、よくも私達を・・・!!」
弁解する前にキリュウが短天扇を広げて二人に近づく。やばい、これは止めないと!!
急いであたしは、後ろからキリュウをはがいじめにした
「キリュウ、さっき落ち着いたんじゃなかったのかよ!扇たためって!」
「離せ、翔子殿!私はあの少女が許せぬのだ―!!」
じたばたしているキリュウを見て、ケルベロスが近づいてきた。
「どういう事や?ねーちゃん達、さくらをねろうとるって事か?」
「だから違うんだって―!!あたし達はただ話がしたかっただけなのに―!!」
「それなのにそこの黒髪の少女はさくら殿を付け回すだのと言って、許せぬ!!」
「だからそれはキリュウが悪いんだろうが!!ちゃんと説明しろって―!!」
「なんだと!?私なりにちゃんと説明したつもりだ!!」
「あれのどこが説明だって言うんだよ!!それにいきなり万象大乱使いやがるし!!」
「あの状況では仕方が無いだろう!!だいたい翔子殿が・・・」
「喧嘩しちゃ駄目―!!!」
いきなりさくらに怒鳴られて、あたし達は喧嘩をぴたっと止めた。
「見ろ、また怒られちまったじゃないか。キリュウの所為だ。」
「いいや、翔子殿の所為だ。」
「なに反論してんだよ、キリュウの所為だ!!」
「反論もなにも正しいことを言っているだけだ!翔子殿の所為だ!!」
またもや喧嘩に戻るあたしとキリュウ。途端に呆れ顔になる三人。
と、ケルベロスがなにやらさくらの方へと飛んで行った。そして三人でごそごそと話をしている。
もちろんあたし達はそんな事にはお構いなし。口喧嘩を絶やすことなく・・・。
「キリュウが悪い!!」
「いいや、翔子殿が悪い!!」
とその時、さくらがなにやら首飾りを構えて前に出た。
そしてなにやら真剣な目つきで詠唱を始める。
「闇の力を秘めし『鍵』よ、真の姿を我の前に示せ。
契約のもと、さくらが命じる。『レリーズ』!!」
途端に辺りが光り輝き、飾りが大きな杖に化けた!!
一瞬驚いて喧嘩を止めたあたしとキリュウだったけど、さくらは構わずに続ける。
「二人に大量の花を、フラワー!」
と、なにやら髪の毛にカールをかけた女性が出現。
次の瞬間、そこらじゅうが花で埋め尽くされた。当然あたしとキリュウは花で埋まる・・・。
「落ち着いた!?もう喧嘩なんかしちゃあ駄目ですよ!!」
訳も分からず、二人でこくこくと頷く。一体なんだったんだ?
呆然としていると、ケルベロスがこちらにやって来た。
「どうや、これがカードキャプターさくらの力って訳や。
今まで集めたカードの力をつこうて、いろんな事ができるんや。
今回の花はそのうちの一つって訳やな。」
「という訳なんだけど、どうして私を追いかけてきたんですか?
ただ話がしたいのかと思ったらクロウカード集めを手伝うとか・・・。」
「とりあえずお二人とも、訳を詳しく話してくださいませんか?
あらぬ疑いをかけた後で申し訳無いとは思うのですが・・・。」
さくらに続き、黒髪の女の子も不思議そうな顔で尋ねてくる。
これはきっちり話した方がいいかなって思い、とりあえず改めて自己紹介。
さくらのフルネームは“木之本桜”だそうで、黒髪の少女は“大道寺知世”。
で、他の世界から来たという事は伏せて、とにかくカードキャプターさくらを探していた、
というなんともいいかげんな理由を告げた。もちろんそれなりに説得。
「・・・というわけなんだ。三人とも、それで納得してくれる?」
「いまいち良くわかんないけど・・・いいよ。別に悪い人じゃないみたいだし。」
「最初っからそうおっしゃってくだされば良かったのに。でもとりあえず安心しましたわ。」
「それにしてもようここまで来たもんや。どっから来たかは知らんが敬意を表したるで。」
「そんなに言うほどのものでもないがな・・・。」
一人だけ少し赤くなっているキリュウ。今まで気にしてなかったけど、今ごろ照れてるって感じだな。
それよりもうちょっと知りたいことがあるんだ。
「カードってどんな感じなの?ちょっと見せて欲しいなあ、なんて。」
「えーとね、今まで集めたのはいろいろあって・・・。」
そしてカードを取り出して並べて見せてくれるさくら。
先ほど喧嘩を止めるのに使った、色んな花を出せる「フラワー」、
風の力を操れる「ウィンディ」、空を飛べる「フライ」、などなど・・・。
「これは・・・?」
「それは“ウッド”って言って、木を自在に操れるの。」
「なるほど、これは興味深いな・・・。」
キリュウはなんだか興味津々とそのカードを見ていた。
そりゃまあ、樹々達の力を借りて人探ししたりするもんな。
いいかげんカードを紹介してもらったところでチャイムが鳴る。
「いっけない、授業に遅れちゃう!」
「それじゃあ皆さん、また後で。」
そっか、今は休み時間だったんだな。
カードを片付けて、さくらと知世は駆け足で屋上から去って行った。
それにしても、授業が全部終わるまで待ってなきゃ駄目なのかなあ・・・。
「あのさあ、ケルベロス。あの二人を待たなきゃなんないの?」
「いや、クロウカードの気配が出て来しだい行動を開始するつもりや。
当然さくらにも連絡を取って来てもらうし、二人にもそれなりに手伝ってもらうで。」
「心得た。ところでどんなカードが出てくるのだ?」
「それがようにわからへん。厄介そうなのには違いないと思うけどな。」
そういえば嫌な予感がして無理に付いてきたとか言ってたよな。
大丈夫かなあ。とんでもないもんじゃなきゃ良いけど・・・。

でも、今更心配してもしょうがないので、のんびりとくつろぐ。
隣に見える高校のグラウンドを見下ろす、と、最初に出会ったあのにーちゃんのコンビが。
随分と仲が良いんだなあ。友達って言うよりは親友ってレベルだな。
しかも二人とも運動神経がかなりいいみたい。多分頭も良いんだろうな。
おまけにかなりかっこいい(一般的に見れば)。あの二人をおに―さんに会わせてみたいな。
ひょっとしたら出雲ファン倶楽部なんてあっさり崩れるかもな。
くうう、その現場見てみたいなあ。けど駄目だろうな。他の世界から人を連れて帰るなんて・・・。
あれ?よく考えたら帰るには二人だけの時に念じないといけないんだっけ。
なあんだ、それじゃあどっちみち無理じゃないか。ちぇ、残念。
チラッとキリュウの方を振り返ると、ケルベロスとしきりになにやら話し合っている。
ちょっと聞き耳を立ててみると、おやつは何が好きかとかいう話。
あたしに限らずおまえらものんきだよなあ。ふああ、なんだか眠くなってきた。
あくびを一つして目を閉じる。そしてすぐさまあたしは眠りに入ってしまった。
まあいいやあ、クロウカードが出たら起こしてくれるさ・・・。

何時間ここに居たろうか。終業を告げるチャイムが鳴り響く。
放課後か。結局クロウカードとやらは出なかったな。翔子殿はいつのまにか眠っているし・・・。
「なんやなんや、翔子はんはよう寝とるなあ。まあこんだけ退屈やったら仕方あらへんか。」
「結局クロウカードは出現せず。どうするのだ?ケルベロス殿。」
「まあとりあえずさくらが来るんを待とうや。それから考えよう。」
考えるも何も・・・。うーん、私には一つ不安な事がある。
それは本日の寝場所をどこにするかという事。事件に巻き込まれているのは確実だろう。
つまり、クロウカードを一枚でも捕まえない限りは帰れないという事だ。
さてさて、一体どうしたものか・・・。
なんとなく悩んでいると、屋上の扉が開く。
「おお、さくらに知世・・・それに小僧!?」
「ごめん、ケロちゃん。李君をごまかしきれなくって・・・。」
見ると、さくら殿と知世殿に加わって新たな人物が。
なんだかきりっとした目の少年。随分と殺気立って居るような・・・気の所為か?
早速翔子殿も起こして自己紹介をする。この少年の名は李小狼(リシャオラン)。
香港からクロウカードを集めるためにやって来たのだとか。
つまりはさくら殿のらいばるという事らしい。
「で、クロウカードは見つかったのか?」
「気配がないっちゅうとろうが。自分も見つけてへんくせにいちいちうるさいで。」
「ふん。」
なんだか仲が悪そうだな。大丈夫なのか?
私が心配すると同時に翔子殿が李殿に近寄った。
「まあまあ。とにかく一緒にクロウカードを集める事になったんだろ?
だったら仲良くしなきゃ。な?」
最初の私とのいざこざも忘れて随分偉そうな・・・。まあ仲が良いのが一番だがな。
ところが、そんな翔子殿の言葉を無視するかのように李殿が言ってきた。
「そういう問題じゃない。こんな何も知らないような奴にクロウカードを集めるなんて無理だ。
だいたいあんたらも妙に首を突っ込み過ぎだ。素人なんだから怪我しないうちに帰れ。」
「な、なんだとお―!!」
今にもつかみかかりそうになる翔子殿を慌てて押さえる。
まったく李殿は口が悪いな。それより一つ言い返したい事が出来た。
「李殿、さくら殿はカードキャプターなのだろう?なにも知らない奴などと言うのは失礼ではないか。」
「その通りや!小僧は黙って見ておったらええんや!」
ケルベロス殿が一緒になって怒鳴ると、李殿はそっぽを向いた。
「俺はまだ認めたわけじゃないんだからな。」
認めた?ううむ、李殿も偉そうな・・・。
翔子殿しかり、もう少し謙虚になろうとかいう考えは無いのだろうか・・・。
と、そんな事を考えながら知らず知らずのうちに翔子殿を見る。
「なんだよキリュウ。あたしの顔になんかついてるか?」
「いや別に・・・。ところでクロウカードはどうやって捕まえるのだ?」
話を元に戻そうという意志で質問してみる。と、さくら殿が答えてくれた。
「とりあえずはカードの気配が無いと・・・。でも、なんにも感じないし・・・。」
さらに続けて李殿も。
「それもそうだな。ま、封印の獣といえどたまには勘違いもあるってことだな。」
「なんやと!?わいの勘に間違いは無い!!」
今度は李殿につかみかかりそうになるケルベロス殿。当然私がなだめ役となったが。
まあまあと言いながらも、私は先ほどの不安にかられていた。
一体どこで寝泊りすれば良いのか・・・という事だ。
「どうしたんだよキリュウ、難しそうな顔しちゃってさ。」
「いや、今日の寝場所をどうしようかと思って・・・。」
「心配要らないって。なんとかなるよ。」
「・・・・・・。」
相変わらず楽天的だな、翔子殿は。どこからなんとかなるなどという自信が出てくるのやら。
ひょっとしてさくら殿達を当てにしているということなのか?
しかし今日会ったばかりの人間を、そう気安く泊めてくれるはずが無いだろうに・・・。
ますます難しい顔になっていると、突然ケルベロス殿が舞い上がった。
「これは・・・クロウカードの気配や!やっぱりわいの勘に狂いは無かったでえ!!」
「本当だ!でも、これって一体なんだろう・・・?」
「良く分からない。なんだか初めての様な気も・・・。」
ケルベロス殿に続いてさくら殿と李殿も気配を感じた様だ。
しかし私を始め、翔子殿や知世殿もそんなものは感じていない様子。
ふーむ、やはり特別な人間にしか分からないという事か。
そういえばケルベロス殿が言っていたな。魔力の強い者が感じる事が出来ると。
なんとなく空を見上げる。と、一つの光が目に入った。
やがてそれは大きくなり・・・!!
「危ない!!」
とっさに翔子殿の手を引っ張ってそこから離れる。その刹那、
ドオオオオオン!!
という音と共にその光の元が落ちてきた。屋上の床に大きな穴をあけて・・・。
その跡を見ていると、なんだか妙な違和感が私を襲った。それはすぐに消え去ったが・・・。
「ほえええ!な、なんなの、今の・・・。」
「なんだか隕石みたいでしたわ・・・。」
「クロウカードか?けど、隕石のカードなんて聞いた事無いぞ・・・。」
落ち着いた所で、翔子殿も“大丈夫だ”という様子を見せた。
「ひゅう、危なかった。さんきゅうな、キリュウ。」
「いや、偶然目に入ったから良かったようなものの・・・。
ん?ケルベロス殿はどこに行った?」
隕石が落ち始めた時からその姿が見当たらなかった。
空を飛んでいたはずなのだから被害は受けてないはずだが・・・。
みんなと一緒になってきょろきょろと探していると、足元の方で音がした。
丁度隕石(?)が落ちた辺り。がらっと何かが崩れる音と共にケルベロス殿が顔を出した!
「ぷはぁ!やれやれ、ほんまに死ぬかとおもたで・・・。」
「ケロちゃん!!どうしてそんな所に・・・ひょっとして巻き込まれたの!?」
さくら殿が慌てて駆け寄ると、ケルペロス殿は“なんとか”という感じで舞い上がった。
「さくらの言う通り巻き込まれたんやが・・・なんか妙なんや。」
「妙って、何が?」
「落っこちてきたもんが近づいた途端、なんか引き寄せられるような感覚に襲われてな。
ほんでなすすべも無く巻き込まれてしもうたって訳や。」
引き寄せられた?あれはただの隕石などではなくて、なにか特別な物だという事か?
みんなで寄って考え始めると、知世殿がひらめいた様に言った。
「やはりさっきの隕石がクロウカードなのでは?
なにか物を引きつける・・・そう、例えば磁石みたいに。」
「そうか!でもわいは鉄や無いで。」
「ケロちゃん、それって関係無いよ・・・。でも知世ちゃんの言う通りだよね。
なんのカードかはわかんないけど、とにかく周りのものを引きつける力を持つんだ。」
「ふーん、なるほどねえ・・・。」
さくら殿の言葉になんとなく納得したような感じの返事をする翔子殿。
引きつける、か・・・。たしかにそうだと言えない事も無いが。
しかし、さっき私が感じた妙な違和感はなんだろう・・・。
みんなが納得している中、私だけ疑問にかられていると李殿が校庭の方を指差した。
「クロウカードだ!!」
「ええっ!?」
慌てて皆で駆け寄ると、確かにそれらしい怪しい者が逃げ去っている姿を見る事が出来た。
全身を真緑のローブで覆っている少年の様な姿をしている。
ふむ、クロウカードとはああいう姿なのか・・・。
「追うんやさくら!」
「うん!『レリーズ』!!」
今朝と同じようにさくら殿が叫ぶと、一本の杖が出現した。
「フライ!」
「あ、さくらちゃん待ってください!」
途端に杖に羽が生えた!かと思うと知世殿が待ったをかけた。
「どうしたの、知世ちゃん。急がないと逃げられちゃう!」
「私も傍まで。せめてカードを元に戻す所をビデオに撮りませんと。」
言うなり知世殿がビデオカメラとやらを取り出した。
こんな切羽詰っている時によくそんな物を・・・。それだけ余裕があるということか?
「行くよ、しっかり掴まっててね!」
「はい、準備OKですわ。」
さくら殿は杖にまたがって、知世殿と共にクロウカードの元へと飛んで行った。
そうか、あんな事が出来るのなら私の力も使って違和感は有るまい・・・。
「俺達も急いで行くぞ!」
李殿も後を追うように駆け出そうとしたが、翔子殿がそれをがしっと捕まえた。
そして無言のまま笑うと、私に目で合図する。
なるほど、私の短天扇を使う事はもう決定の様だな。
「何するんだよ、逃げられちゃうじゃないか!」
「まあまあ、それじゃキリュウ、頼むぜ。」
「うむ、では・・・!」
短天扇を取り出してそれを巨大化。そして私は腰掛けた。
「では翔子殿。」
「ああ。ほら、おまえもさっさと乗れよ。」
「こ、これで飛べるって事か?」
安心していたものの、やはりというか李殿はなんだか驚きの表情だった。
うーむ、常識というのは難しいものだな。
なんとなく考えながらも、短天扇を空へと繰出した。
少し遅れをとってしまったようで、さくら殿はすでにクロウカードへ回り込む形に。
「どうする?さくらはとっくにクロウカードに追いついちゃってるよな。」
「ならば挟み撃ちという形にしようか。私達は後ろから!」
言うなり短天扇の高度を下げる。さくら殿も高度を下げ始めた様だ。
どうやらあっさり捕まえられそうだな。良かった良かった・・・。
ほっとしながらもさらに距離を縮めてゆく。と、少年がなにやら両手を掲げた。
「・・・何やってんだ?あいつ。降参のつもりかなあ。」
「馬鹿かあんた。クロウカードがそんな事するもんか。」
「なにー!?あたしが馬鹿だとお!?」
「う、うわっ、やめろって!」
私のことも忘れて何やら後ろで喧嘩を始めてしまった。
いくらなんでも翔子殿に馬鹿と言うのも馬鹿だという気がするが・・・。
それでも止めるのは馬鹿らしいので、そのまま短天扇を進める事にした。
だが、距離にして約五メートルというところまで来たその時、少年は掲げた両手を“ブン!”と振り下ろした。
途端になんだか短天扇が沈む!なすすべも無く地面へと激突してしまった。
「うわっ!!」
当然バランスを失っていたので三人とも地面へと投げ出される。
向こうの方を見ると、どうやらさくら殿達も同じ状況の様だ。
杖を持ったさくら殿、ビデオを構えた知世殿、そしてケルベロス殿も地面に放り出されている。
だが、事態はそれだけでは終わらなかった。
体がすごく重く感じられ、なんと地面へと沈み始めたのだ。
抵抗しようにも体が重い事に耐えきれずに、何も出来ないでいる。
六人ともじたばたともがいているだけであった。
「くっそー、なんてこったー!」
「キリュウ!助けてくれ―!」
「くっ、短天扇が・・・。」
そう、地面に投げ出された瞬間に短天扇を手放してしまったため、今は手元に無い。
「あーん、こんな状態じゃあビデオが撮れませんわ―!」
「知世ちゃん、そんな事言ってる場合じゃ・・・重いよ―・・・。」
「そうか、思い出したで。こいつは“グラビィティ”『重』のカードや!
名前の通り、重力を自在に操る事が出来る。その気になったら相手を重さで押しつぶす事も可能や!」
重力を自在に!?そうか、それで急に体が重くなったり、違和感を・・・。
空から降ってきたものは重力を操作して呼び寄せた物だな。
くっ、なんとしてでも短天扇を拾わねば!!
懸命に手を伸ばすが、重さで体がほとんどいう事をきかない状態だ。
こんな所でやられるわけにはいかない・・・!!
「さくら―!なんとかキリュウを助けてくれ―!」
翔子殿が後ろから叫ぶ。と、さくら殿がそれに答えるかのようにカードを取り出した。
「一瞬気をそらすだけなら・・・。彼の者の姿を映し、もう一人の彼女となれ。ミラー!!」
さくら殿がカードを使った直後、鏡を持った少女が出現。
そして、なんと私と同じ姿になってその場に現れた。
それはクロウカードの少年を挑発するような行動をとる。
少年はそれに対して慌てて攻撃を始めた。と、一瞬だけ私の体が軽くなる。
この機を逃さず、私はすかさず短天扇を拾い上げた。
再び慌てる少年よりも早く、例の呪文を唱える。
「万象大乱!」
途端に少年の体が小さくなる。術の力も弱まり、普通に体を動かせるまでになった。
「おおっ、体が自由に動くで―!」
「ビデオ撮影もしっかり出来ますわ―!」
「ふう、酷い目に遭った・・・。」
「おい!ぼさっとしてないでさっさと封印だ!」
「う、うん!」
やはり偉そうな李殿。そんな風に言われてもちゃんとやろうとするさくら殿は立派だな。
「なんじのあるべき姿に戻れ!『クロウカード』!!」
さくら殿が杖を振り下ろす。と、“パアアア”という現象と共に、少年は一枚のカードへと姿を変えた。
なるほど、こういう仕組みか。カードキャプターが呪文を唱える事によって本来のカードの姿に戻す。
「へえー、そうやってカードを集めるんだ。なんかカッコいいなあ。」
「翔子殿・・・。ともかくご苦労だったな、さくら殿。それにありがとう。
そなたの力が無ければ今ごろは・・・。」
「ううん、キリュウさんがこの子の力を封じてくれたおかげだよ。
ありがとう、キリュウさん。」
なんと笑顔でお礼を言われてしまった。当然のごとく私は真っ赤になってうつむくのだった・・・。
「とりあえず無事カードも封印できた!いやあ、良かった良かった。」
「それにしても万象大乱か。空も飛べるし、すごい事が出来るんだな、あんた。」
李殿が追加に感心の言葉を・・・。ますます私は赤くなる。
「一時はどうなる事かと思いましたけど、本当に良かったですわ。
今度からは翔子さんやキリュウさんも、ばっちりビデオに収めますからね。」
「おおっ、そりゃいいねえ。」
知世殿の言葉に浮かれる翔子殿。そんな事を言っても・・・。
もう私達は帰るのだがなあ。
「あんまり当てにしちゃいけないと思うんだけど、またよろしくね。
翔子さん、キリュウさん!」
改めて笑顔で告げるさくら殿。そんな事を言うもんだからますます翔子殿は張りきって・・・。

という事で、私達が元の世界へと帰ったのはこの事件よりも何日か後の事である。
寝場所?それは知世殿の家だ。なんとも広い家で、ゆったりとさせてもらった。
最初の方で小さくした女性達は、もちろんちゃんと元に戻したぞ。
そしてカード集めをしているうちに、私は一応試練を思いついた。
だがしかし、これは主殿に達成できるものなのだろうか・・・。
複雑な思いにかられながらも、その内容を試練ノートに書きとめるのであった。