懲りずに第八十三弾です。
前回の続き…っていうか、なんで続けてんねん。
このままいくと非常にやばいんだけど…。
★香里
「さて、ここは神尾家の前よ」
「栞があることをやっちゃってくれるから来たわ」
「ちなみにテーマは殴り、ね」
「さ、張り切ってやって頂戴」
栞「ほ、ほんとにやろうとするなんて…」
香里「ちなみに何をやろうかっていうのは、国崎くんを殴りにいくのよ、栞が」
栞「え、えっと、蹴るんじゃなかったっけ?」
香里「あ、そうだったわね。じゃあ殴る蹴るってことで」
栞「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」
雪見「ねえ…そんな物騒なことやるためにわたしを呼んだの?」
香里「本当は手段のみだったんだけど、やっぱりあたしは雪見に来てほしいし」
雪見「ま、香里の頼みだからしょうがないけど…。で、殴りこむの?」
香里「そうよ。まあ全部栞がやってくれるから、あたし達はのんびり四行でもやってりゃいいわ」
雪見「ふーん…じゃあまずはわたしから」
栞「うう、二人ともどうしてそんななの…」
★雪見
「殴るという演技は…」
「結構難しいのよ」
「いや、難しいのは殴られる方だっけ」
「そうだ、ちょっと練習してみましょうか」
香里「何を練習するの?」
雪見「殴る振りの練習よ」
香里「うーん、それじゃあ栞にプラスにならないんじゃないの?」
雪見「やってみなくちゃわからないわ。さあ栞ちゃん、丁度あそこに人が居るじゃない?」
栞「え、でもあれって…」
雪見「あの人に殴る振りをかましてきてちょうだいね」
香里「栞の門出よ。頑張ってね」
栞「何も知らない人にそんなことできません!」
雪見「ちゃんと事情を聞けば分かってくれるわよ。あ、わたしが話をつけてきてあげようか」
香里「甘いわよ雪見。栞が一人でやってこそ意味があるのよ。これは成長の場でもあるの」
栞「お姉ちゃん言ってること無茶苦茶…」
雪見「…さすがね、妹想いだわ」
栞「ゆ、雪見さんまで…」
香里「あら?向こうの方が気付いたみたい」
雪見「もう、栞ちゃんがおろおろしてるから…」
栞「そういうこと言われても…」
河原崎「こんにちは。若いお嬢さんがたで何をやってるんだい?」
香里「ちょっとこの家に遊びにきたんです」
雪見「正確にはあることをしに、ですけどね」
香里「で、ものは相談なんですが…」
雪見「そのあることの前の下準備というものをしたいんです。それで…」
栞「ちょ、ちょっと待って!」
河原崎「下準備と言われてもねえ…こっちは出番も少ない、しがないおばさんだしねえ…」
香里「…ちょっと、栞。今の言葉聞いた?」
栞「え?」
香里「あんた出番が少ないとかで嘆いてたけど、こんな健気なおばさんもいるのよ?」
雪見「出番が少ないって…わたしはもっと少ないわよ?」
香里「そうよ。だのに栞ったら…」
栞「うう、なんで私ばっかり攻められなきゃいけないの…」
河原崎「事情はよくわからないけど、そんなに悲観的になるもんじゃないわよ?まだまだ若いんだし」
香里「そうですね。…うん、それだけ聞かせてくれたなら十分です」
雪見「そうね…。すみません、下準備のことは忘れてください。わたし達だけで頑張ります」
河原崎「?…よくわからないけど、力になれたのならよかったわ」
香里「はい、ありがとうございます」
河原崎「それじゃあね」
雪見「どうも、ありがとうございました」
栞「…行っちゃった」
香里「さあ栞、ゴーよ」
雪見「もう突撃しなくちゃ」
栞「ううー、私やっぱり嫌ー!」
香里「何嫌がってんの、今更」
雪見「ほらほら、ピンポンダッシュ」
栞「え、えええーっ!?」
香里「ちょっと雪見、そんなことしたら殴れないでしょ?」
雪見「ちょっとした冗談よ。緊張をほぐすためのね」
香里「あ、そういうことね。じゃあ栞、そのほぐれた緊張感で突撃しなさい」
栞「全然ほぐれてないんだけど…」
雪見「うーん、ちょっと冗談が悪かったかしら」
香里「だったら四行やりなさい。終わったら殴りこみ、いいわね?」
栞「よくないんだけど…」
香里「つべこべ言わずさっさとやる!」
★栞
「うう、どうして、こんなことに…」
「だいたい殴るとかだったらお姉ちゃんの方が…」
「メリケンサックとか持ってるんだし…」
「…やっぱり私帰る!」
がしっ
香里「逃がさないわよ」
雪見「栞ちゃん、往生際が悪いわよ?」
栞「離しておねえちゃーん!」
がらららっ
晴子「ええーい!人んちの前で何二人で騒いでんねんー!!…ってあれ?三人?」
香里「ああっ、晴子さん!…ほら、栞がもたもたするから家の人出てきちゃったじゃない」
栞「うぐ、そう言われても…」
雪見「えっと、それより気になるのは…どうして二人と間違われたのですか?」
晴子「いや、その二人の声が一緒やったから」
香里「一緒?」
雪見「わたしと香里が?」
香里・雪見「「ご冗談を」」
晴子「…やっぱちゃうなあ。うちの空耳やったかいな。そういや新シリーズでは声がちゃうんやったな」
栞「な、なんなんですか?その新シリーズって…」
晴子「楽屋的内容や。居候から聞かせられた事やし」
香里「あ、その居候…国崎さん居ますか?」
晴子「おらんで。っていうかいつもの四行小説会に出とるんちゃうか?」
雪見「いえ、今回は香里が司会ですから」
晴子「へえ~?…まあとにかく居候はおらん。…なんか用やったん?」
香里「えっと、それはですねえ…」
栞「聞いてください晴子さん!」
晴子「な、なんや?」
栞「お姉ちゃんも雪見さんも、私に往人さんを殴れって言うんですよ!」
香里「そうそう。前回そう決まったから」
栞「決まってないもん!それでですね、晴子さんにこれを止めていただこうと…」
晴子「いい案やないか…」
栞「…はい?」
晴子「もうちっとましな企画をやるように、びしっと言うためにも!」
雪見「そういう衝撃的なものが必要だ、ですね?」
晴子「おお、そうやそうや。あんたわかっとるやないか」
雪見「いえいえ」
晴子「というわけで、えーと、栞ちゃんやったな。遠慮せんでええ、ぼかっとかましたってくれや」
香里「だそうよ、栞」
栞「うう、なんでこうなるの…あんまりだ…」
雪見「ますます特訓しないとね」
栞「特訓…」
雪見「そ。わたしがびしばし仕込んであげるわ」
栞「そんなこと言う人嫌いです…」
香里「あ、そうだ。晴子さんも四行どうぞ」
晴子「四行?テーマはなんや?」
香里「殴る、ですね」
晴子「よっしゃ!」
★晴子
「うちが殴るんは…」
「観鈴のがお、やな」
「けどな、なんべんたたいてもなおらへんねん」
「もう直すんは無理かもしれんなあ」
香里「がおで叩くんですか?」
晴子「そうや。口癖直すためにな」
香里「じゃああたしも殴ろうかしら」
雪見「誰を?」
香里「栞が“そんな事言う人嫌いです”とか言ったら」
栞「え、ええっ!?」
香里「これはさすがに冗談よ」
栞「ふう…」
香里「それをとったら栞じゃなくなるものね」
栞「…そんな事言うお姉ちゃん嫌い…」
雪見「決め台詞にもなるわね」
晴子「決め台詞ぅ?」
雪見「そうです。国崎くんを打ちのめした後に“そんなこと言う人嫌いです!”ってね」
晴子「なるほど…けどほんなら殴る前がええんとちゃうか?」
雪見「あ、それもそうですね。突然目の前に現れて…」
香里「相手が何か喋ったら…」
晴子「“そんなこと言う人嫌いですー!”って言うて殴るんやな」
雪見「ばっちり!うん、それでいこう、栞ちゃん」
栞「ひ、酷い…どんどんシナリオが決まっていってるし…」
香里「じゃあこの続きは次回ね。まずは居る場所を特定して…」
晴子「栞ちゃんが殴りこみ、と」
雪見「よおーし。じゃあ細かい作戦練るわよ!」
栞「だ、誰か助けて…」
<ツヅク…←続くなよ>