『AIR偽小説第二百三十八弾』

懲りずに第二百三十八弾です。
ハイスクールD×Dって本(借り物ですけど)を最近読破。
中盤まで(いやそこまで到達しなくてもですが)読んで思い返すに……
話し相手って必要だよねぇ……って事がふつふつと。
いや、テンションがやたら高い主人公だけ喋ってても寒くてかなわん。
森沢さんっていう話し相手がいた辺りからようやく見れる話になったかなって印象でした。
分かりやすい?にくい?でいうと……後者に一票。
ま、色々とお約束を忘れずにこなしているところは、一般的に評価すべきとこでしょう。


『4行小説』

★早苗
「早苗ですっ」
「今回は私が司会です」
「テーマは、古河パンらしくカレーパンです」
「カレーとパンの見事なコラボ、ですよねっ」

みさき「うんっ、あれは美味しいよね。私は大好きだよ」
早苗「そうですかっ。それは何よりです」
みさき「カレーも大好きでね、学食で何皿もよく平らげるんだよ」
早苗「まあまあ、沢山食べるっていいことですね」
みさき「でもね、食費が大変なんだよ。よくお小遣いがピンチになるんだ」
早苗「それは大変ですね。バランスを頑張って考えましょうね」
みさき「うん。なんとか頑張ってるよ」
早苗「ちゃんとやっているんですね、えらいです」
秋生「……」
秋生「早苗よぉ……」
早苗「はい?」
秋生「どうしてみさきがこんな所に居座ってるんだ?」
みさき「居座ってるんじゃなくて、座敷わらししてるって言ってほしいな」
秋生「同じだろーが」
みさき「ちがうよ。私は見た目はお嬢様だからね」
秋生「……ちっ、なら仕方ねえな」
早苗「そうですねっ」
ガラララっ
秋生「客か、らっしゃい」
浩平「どうしてあんたらはそれで納得できるんだっ」
みさき「あ、浩平君だね。久しぶり。いいお店を教えてくれてありがとう」
秋生「てめえか……こんな大食魔人に情報をリークしやがったのは」
浩平「怒ってる割にはみさき先輩をしっかり受け入れてるじゃないか」
秋生「……ま、義理と人情はある店だからな」
浩平「話聞いてるとたしかにそうだな」
秋生「お前が代わりに金払うんだろ? ほら、財布見せてみろよ」
秋生「隠しても無駄だぞ、最近のガキは小遣いだけはいっちょ前にもらってやがる」
浩平「そんな大それた金は持ってないぞ」
秋生「札束無くても小銭抱えてんだろ、ほら、ジャンプしてみろ」
浩平「あんたのその言動のどこに義理と人情が含まれてるのか説明してくれ」
秋生「いいから黙って金をだしな。命が惜しければな」
浩平「うを、脅迫だ……」
みさき「浩平君から脅し取るなんてしちゃだめだよ秋生ちゃん」
早苗「そうですよ。お客さんなんですから、秋生ちゃん」
ずるっ
秋生「だあああ、変な呼び方にコケちまったじゃねえかぁ!」
浩平「みさき先輩のちゃん付けが変な風に伝染してるな……」
秋生「ま、いい。四行だ、四行をやりやがれ」
早苗「先に秋生さんですよ」
秋生「おう」

★秋生
「カレーパン、それは一つの浪漫だ」
「カレーは米でしか食わねぇと言い張ってる奴の度肝を抜く」
「すっぽり包み込まれたその形状が」
「ますます食欲を掻き立てるってもんだ」

みさき「うんうん、まったくその通りだね」
浩平「ってかすっかりなじんでるんだな、四行に」
浩平「それはそれとして、みさき先輩はなんでこんな所に居座ってるんだ?」
秋生「てめえ、俺様の四行にそんなコメントかこらぁ」
浩平「か、カレーパンは美味しいですね、はい」
浩平「俺も、よく食ってますから、ええ」
秋生「脈略無い意見だが、まぁいいだろう」
浩平「ふぅ……」
早苗「秋生さん、脅迫してはいけませんよ。優しく諭してあげないと」
秋生「いいんだよ、こういう奴は付け上がるのが世の常ってやつだ」
秋生「なめられちまったらな、あっという間にパン屋がのっとられちまう」
みさき「えっ……」
みさき「浩平くん、古河パンをのっとりにきたの?」
浩平「いや、そんなことしないから」
みさき「のっとってくれたら浩平くんのことだから私にパン食べ放題を毎日約束してくれるよね?」
浩平「だからのっとらないって。つーかそんな事したら店つぶれるだろ?」
みさき「残念。期待してたのに」
浩平「……やっぱり、みさき先輩がここにいるのってパン食べ放題のため?」
秋生「らしいな。てめぇが食べ放題の店があるなんて教えやがったんだろうがこら」
浩平「俺は、こういうパンなら多分沢山食わせてくれるって教えただけだよ」
秋生「こういうパン?」
浩平「こそっ(早苗さんのパン)」
秋生「こそっ(ああ、なるほどな)」
早苗「お二人とも、何をこそこそ話してらっしゃるんですか?」
秋生「いんや何も」
浩平「古河パンのお勧めを聞いていたんだ」
みさき「違うよ。早苗ちゃんのパンは食べ放題なんだろうへへへへ、って不気味に笑ってたよ」
早苗「そうなんですか……?」
秋生「い、いや早苗、違うからな」
浩平「っていうか不気味になんて笑ってないだろ。みさき先輩冗談がきついよ」
みさき「不気味には笑ってなかったかもしれないけど、早苗ちゃんのパンが食べ放題だってのは間違いないよね?」
秋生「うー、あー、まぁそれはそうかもしれんが……」
早苗「……私のパンは、私のパンは」
秋生「さ、早苗?」
早苗「食べ放題だったんですねーっ」
ダダダダッ
秋生「ちょ、早苗、いつもこのみさきが食べ放題してるだろ!?」
秋生「くそっ、仕方ねぇ……」
がしっ
浩平「うをっ、パンを咥えた」
秋生「……俺は大好きだあああーっ!」
ダダダダッ
みさき「……二人とも走り去っちゃった」
浩平「みさき先輩のせいじゃないのか?」
みさき「そうかな」
みさき「でも大丈夫。店主がいない間は食べ放題だーなんて思ってないからね」
浩平「当たり前だろ……」
みさき「じゃあ先に四行やっちゃおうかな」

★みさき
「カレーパンはね、ある意味私の憧れなんだよ」
「本当は、もっともっと大きいものを食べてみたいんだ」
「けれどね、あまりに大きいと中身が漏れちゃって食べにくいだろうから」
「ちゃんと食べやすいのを浩平くんが開発してね」

浩平「できん」
みさき「浩平くん、冗談がきついよ」
浩平「いや、本当に無理だから」
みさき「そういう事を言いながら今まで不可能を可能にしてきたのが浩平くんだよ」
浩平「そんな実績無いから。みさき先輩こそそういうの作ればいいじゃないか」
浩平「食の不思議な力で実現するかもしれないだろ」
みさき「いやいや、浩平くんの力にはかなわないよ」
浩平「俺にはそんな力無いって」
みさき「謙遜している浩平くん、四行をやってくれないかな」
浩平「変なかわし方だな……まぁいいけど」

★浩平
「カレーパン、カレーパン……」
「なんかのアニメでも見た気はするな」
「しっかしよく考えた奴もいるもんだ」
「パンと合わせてなんて、よく気がついたよな」

ガララッ
秋生「知恵の勝利ってやつかな」
早苗「ひらめき、ですね」
浩平「って、戻ってきたっ!」
みさき「お帰りなさい」
早苗「すみません、取り乱してしまって」
秋生「ま、今回はすぐに追いつけたぜ。でもって客もゲットだ」
往人「ふっ」
浩平「なんだ、目つき悪い奴じゃないか」
往人「お前、目で殺されたいか」
浩平「目からビームでも出るのか。そりゃすごいな」
往人「ふっ、居候サイコキネシスをなめるなよ」
秋生「おいこら。なんだかしらねえが物騒なことやろうとすんな」
秋生「店の外でホームランの的にしてやるぞ」
往人「……」
浩平「……あのさ、秋生さん」
浩平「客っていうか、こいつは無一文だぞ」
秋生「何?」
みさき「そうだね。往人ちゃんはいっつもお金が無いよね」
往人「……腹減った」
秋生「かーっ、折角つかまえたのになんだそりゃあ」
浩平「っていうかそもそも客を捕獲すんなよ……」
早苗「それにしてもさっきから気になっているんですが……」
早苗「みさきちゃんは声で誰か分かるんですか?」
みさき「雰囲気、かな。往人ちゃんは独特の目つき感があるしね」
早苗「目つき感……」
浩平「いや早苗さん、みさき先輩と同じようにはいきませんって」
浩平「そっちの秋生さんもやめとけって」
秋生「ちっ……。おい往人ちゃん」
往人「つーかお前までそんな名で呼ぶな。俺は国崎往人だ」
秋生「てめぇは何ができるんだ。タカりに来たってんなら容赦なく身包みはいでやるからな」
浩平「どこの追いはぎだこの店は……」
往人「人形劇だ」
秋生「人形劇?」
往人「ああ、カレーパンで人形劇をやってやる」
早苗「まあ、それは楽しみですね」
浩平「ってかどんな人形劇だそりゃあ……」
往人「このパン借りるぞ」
秋生「お、おう」

★往人
「ふんっ。と、まずは人形がパンを抱える」
「ほいっ。と、人形がパンを放り投げる」
「ぱくっ。と、人形から受け取ったパンを俺が食う」
「ぺこっ。と、人形は貧しい人にパンを与えて幸せ。以上だ」

早苗「まあ……凄い、人形がひとりで動きましたね」
みさき「そう、往人ちゃんの人形劇は凄いんだよ」
浩平「今回は普通に劇になってたな」
往人「いつも普通だろうが」
秋生「ふむ。凄いってのは分かった。だがな……」
ごんっ
往人「いきなり殴るな。何をするんだ」
秋生「勝手に店の商品を食ってんじゃねえ!」
往人「これはおひねりだ」
秋生「あ、そ。じゃあ古河パンからのおひねりはカレーパンのみな」
秋生「後は勝手に食ったらおろすぞ、コラァ」
往人「……できればもう少しほしいです」
早苗「でしたらこちらを……」
ガラッ
佐祐理「こんにちはーっ」
みさき「あっ、いらっしゃい佐祐理ちゃん」
浩平「よう」
往人「おお、早速弁当をわけてくれ」
佐祐理「すみません、今日は弁当持参じゃないですので」
往人「残念だ……」
秋生「いらっしゃいの言葉を取られちまったな」
早苗「可愛い声で立派にお仕事してますねっ」
佐祐理「あ、初めましてですね。倉田佐祐理と申します」
秋生「古河秋生だ」
早苗「古河早苗です」
佐祐理「早速ですが、四行をしちゃいますねーっ」
みさき「テーマはカレーパンだよ」
佐祐理「了解しましたーっ」

★佐祐理
「ちょっと前の話ですが……」
「お弁当に、カレーパンを作ろうと挑戦したことがあります」
「いやはや、あれは素人が手をだしてはいけませんねぇ」
「食パンが何枚無駄になったことか……」

浩平「ちょっと待て」
佐祐理「ふえっ?」
浩平「あんたは何を作ろうとしてたんだ」
佐祐理「カレーパンですけど?」
秋生「カレーパンは食パンじゃ作れねぇだろが」
浩平「そうだ、秋生さんの言うとおりだ」
早苗「まあっ、そうだったんですか?」
みさき「これは一本とられちゃったよ」
浩平「そこ、余計なボケで話を中断させない」
みさき「ボケなんて失礼だよ、浩平くんは」
早苗「そうですよ」
秋生「まぁともかくだ。根本的にカレーパンの作り方が間違えてる、こう言いたいわけだが」
佐祐理「そうだったんですか〜。祐一さんが首をかしげていたのも納得ですね〜」
浩平「つーかちゃんと言ってやれよ祐一の奴……」
みさき「浩平くんはずばずばと嘘を言うもんね」
浩平「言わないっ!」
往人「そうだぞ。こいつは冗談は悪質だが、嘘はたまにしかつかない」
浩平「微妙なフォローはするなよな……」
佐祐理「納得がいきました、ありがとうございます」
秋生「ああ、まぁ、食ったこともなかったら仕方ないよな」
早苗「問題解決ですねっ、よかったです」
浩平「問題解決ねぇ……」
みさき「お客さんはこれで全部じゃないかな」
みさき「早く店じまいしてパン食べ放題タイムに入ろう」
秋生「こらこら、お前が決めてんじゃねぇよ」
みさき「お前じゃなくてみさきだからね」
秋生「……みさきが決めてんじゃねぇよ」
浩平「容赦ないな……」
佐祐理「きっちりしているって言わないといけませんよーっ」
往人「そういうもんなのか」
がらっ
渚「わ、お客さんいっぱいですっ」
早苗「渚、お帰りなさい」
秋生「おお、愛しき我が娘よ」
渚「すみません、忘れ物をとったらすぐに出かけます」
早苗「忘れ物?」
渚「はい。学校でだんご大家族の可愛さをアピールする会を開くんです」
往人「積極的だな、頑張れ」
浩平「お前の差し金か?」
往人「いや、ここの住人は誰も彼も何かをしたいってのが多いぞ」
往人「俺は容認した」
浩平「てめえ……俺の時は美凪と佳乃の連携を超えろとか言ってたくせに……」
往人「時代は変わったんだ。町は変わってゆく、人もだ。そしてルールもな」
佐祐理「シブい事言っていますけど要するに逃げですよねーっ」
みさき「しかもそんな事言いながらパンをくすねて食べてるなんて姑息だよ」
秋生「あんだとこらぁ?」
往人「ま、待て、そんな姑息なまねはしてないっ。こらみさきっ!」
みさき「座敷わらしの嗅覚を誤魔化せると思えるなんて甘いよ」
浩平「嗅覚なのか……」
秋生「証人もいることだ。遠慮なくやらせてもらうぞ」
秋生「いっぺんやってみたかった技があるんだよなぁ」
往人「うおおおおっ!?」
渚「あの……」
佐祐理「あっ、失礼しましたっ。私は倉田佐祐理といいますっ」
みさき「川名みさきだよ。よろしくね、古河渚ちゃん」
浩平「よく名前わかったな、みさき先輩」
みさき「さっき早苗ちゃんが呼んでたからね」
浩平「なるほどな。俺は折原浩平だ」
渚「は、はいっ。よろしくお願いしますっ」
渚「って、初めましての挨拶をしようと思ったわけではないですっ」
渚「……って、今凄く失礼な事を言ってしまいました、すみませんっ」
浩平「随分あわてんぼうだな」
早苗「渚、落ち着いていいんですよ。気晴らしに四行やってみませんか?」
渚「は、はいっ」

★渚
「だんご大家族はカレーも大好きです」
「家族みんなで、美味しく揃っていただきます」
「カレーパンはもう、皆をとりこにしてしまいます」
「なぜなら、丸いからです」

佐祐理「ふえぇ〜、すごいんですねぇ、カレーパンって」
浩平「そういう話か? これ」
早苗「渚、いい調子ですよ」
渚「えへへ」
みさき「ところで渚ちゃん、だんご大家族って?」
渚「だんご大家族は、誰もが知っている国民的キャラクターで……」
往人「異議ありっ! それを始めると長くなるから裏でやっておいてくれっ!」
往人「ってギブギブッ! 腕が折れるー!」
秋生「人間の体は結構丈夫だからこんくらいじゃ折れやしねぇよ」
往人「少なくとも痛いからやめろー!」
渚「お父さん、お客さんに乱暴はいけませんっ」
みさき「渚ちゃん、往人ちゃんはお店のパンを盗み食いしたから気にしなくていいんだよ」
みさき「でもこの状態だとお客さんもこれ以上は入れないよね」
浩平「外でやってもらえばいいんじゃないの」
佐祐理「というより止めるべきだと思います」
早苗「秋生さん、そのくらいで勘弁してあげてください」
早苗「これから皆で私特製のパンを……」
ギュギュっ
往人「いてててててっ!! なんで更に力をこめるんだあっ!!」
秋生「うるせぇ、男には引けねぇ時ってもんがあるんだよっ!」
佐祐理「なんだかしばらく続きそうですねぇ」
早苗「仕方ありませんね……」
早苗「渚、忘れ物をとって出かけてください。お店の方は気にしなくていいですからね」
渚「はいっ、分かりました」
渚「お父さん、ほどほどにしてくださいね」
秋生「おぅ、娘よ、元気に行ってこい」
往人「挨拶より俺をまず放せーっ」
浩平「……今のうちに終わったらどうだ。というかどうすれば終わりなんだ?」
佐祐理「みさきさんが終わり宣言をするんですか?」
みさき「私じゃなくて早苗ちゃんかな」
早苗「ではこれにて、お開きにしますね」

<そしてパンです>


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