『AIR偽小説第二百三十七弾』

懲りずに第二百三十七弾です。
最近宝くじを買い始めてます。
まーったく当たりませんけど。
つか、昔っからこういうくじ系は当たらないんだよねぇ。
パーティーでも、ビンゴ(そもそもビンゴをやる機会もまずないのですが)って
ぜっっっっっったいに一行も揃わないまま終わってますしね。


『4行小説』

★秋生
「ちっ、ヒマだなぁ」
「と、こんなうちで四行やるんだとよ」
「テーマはそうだなぁ……パン屋らしくパンの種類でいっか」
「まずはあんパンだ。渚の好物の一つだな」

早苗「秋生さんっ。司会就任おめでとうございますっ」
秋生「おぅ」
早苗「そして私がアシスタントなんですね。なんだか緊張しちゃいます」
秋生「つーかこれは誰の差し金だぁ? ったく、客を待てって、わざわざ招かれて……」
がららっ
みさき「こんにちはーっ」
秋生「おっと、いきなり客か。らっしゃい」
早苗「可愛いお嬢さんですね」
みさき「えへへ、ありがとう」
みさき「初めまして、川名みさきです。ここでパンが食べ放題だって聞いたんでやってきたんだよ」
秋生「ちっ、誰だぁんなデマ流したやつはぁ」
みさき「違うの?」
秋生「うちはパンを売ってはいるが食べ放題なんて提供は一切してねぇ」
みさき「残念……浩平くんに騙されちゃったよ」
みさき「でも折角だから食べていかないとね。どんなパンがあるのかな」
秋生「どんなパンって、それは……はん、そういう事かよ」
早苗「川名さん、私がパンの紹介をして差し上げますね」
みさき「ありがとう。でも、私の事はみさきちゃんって呼んでくれると嬉しいな」
早苗「はい、みさきちゃん」
みさき「ありがとう、えーとたしか……」
秋生「古河秋生だ」
早苗「古河早苗です」
みさき「秋生ちゃんに早苗ちゃんですね、よろしくお願いします」
秋生「ぐおっ」
早苗「まあ。秋生さんっ、私ちゃん付けで呼ばれちゃいましたっ」
秋生「嬉しそうだな、早苗……」
早苗「はいっ。とっても可愛らしいです」
みさき「えへへっ、そう言ってもらえると呼んだ側としても嬉しいよ」
秋生「早苗はいいとしてだ、俺が秋生ちゃんってのはどうにかならねぇのか」
早苗「ダメですか? 秋生ちゃん」
秋生「お前までそんな呼び方するなー」
みさき「折角可愛いのに……」
早苗「ですよねぇ……」
秋生「だああ、もいいから。そうだ、四行だ。早苗、四行やっちまえ」
早苗「あ、はいっ」

★早苗
「あんパンはこしあんとつぶあんがありますっ」
「私は、どちらにもそれぞれのよさがあって好きです」
「片方を好む人は、その良さをわかってあげてくださいね」
「あなたはどちら派ですか?」

みさき「私も両方派ですよ」
早苗「まあ。でしたら私と同じですね」
みさき「はいっ」
秋生「両方派ってなんだ両方派って……」
早苗「そうだ。そんなみさきちゃんにはお勧めのパンがあるんですよ」
みさき「お勧め?」
早苗「ええ。今週の私の自信作で……」
ガララッ
秋生「いいタイミングだ。らっしゃい」
あゆ「うぐぅ、本当にみさきちゃん来たんだ……」
あゆ「あ、ボク月宮あゆです」
早苗「こんにちは。古河早苗です」
秋生「古河秋生だ」
秋生「って、誰かが来るたびにいちいちこの挨拶をせにゃならんのかよ……」
秋生「しかもてめぇは一度会ったやつじゃねえかー!」
みさき「しばらくはしょうがないよ、秋生ちゃん」
秋生「だぁ〜かぁ〜らぁ〜、その秋生ちゃんってのをやめろー!」
みさき「こんにちは、あゆちゃん」
あゆ「相変わらずだね、みさきちゃん……」
あゆ「浩平くんに言われて来てみたんだよ。どんな様子かなって」
みさき「なんだ。あゆちゃんもパン食べ放題が気になってきたんだね」
あゆ「うぐぅ、ボクは食べ放題のためにきたわけじゃないから」
みさき「そうなんだ。残念なんだよ、ここは普通のパン屋で食べ放題の店じゃなかったんだよ」
あゆ「いや、雰囲気でわかるでしょ。そもそも浩平君がそういう殊勝な事言うとは思えないんだけど」
みさき「……」
あゆ「どうしたの?」
みさき「あゆちゃんに一本とられちゃったよ。さすが普段遊ばれているあゆちゃんは違うね」
あゆ「うぐぅ、なんかひどい物言いだよぅ」
早苗「あの、お二人はお友達なんですよね」
あゆ「あ、はいそうです」
みさき「大食仲間だよ」
みさき「違った、食通仲間だね」
あゆ「それは神奈ちゃんだから……」
秋生「友達っていうわりには、遊ばれてるとかなんとか言ってるのはなんだ?」
あゆ「それはですね、みさきちゃんの友達に折原浩平くんって男の子がいてですね」
みさき「浩平くんはよく人で遊んでいて、あゆちゃんはその対象の一人なんだよ」
あゆ「うぐぅ……そういう事です」
秋生「女の子で遊ぶ、ねえ……」
秋生「どんな遊びなんだ。いや、聞いちゃいけねぇことか」
みさき「うん、そこは私に免じて聞かないであげてほしいよ、秋生ちゃん」
秋生「だ・か・ら、その秋生ちゃんってのをやめろってんだろ!」
早苗「まあまあ、秋生さん」
あゆ「うぐぅ、みさきちゃん。ちゃん付けする相手は選んだ方がいいよ」
みさき「うん。だから浩平くんだけは特別にくん呼びだよ」
あゆ「いや、浩平くんだけじゃなくて……」
みさき「でも、秋生くん、なんて失礼じゃないかな」
あゆ「だから、秋生さん、でいいじゃない」
みさき「それは私のアイデンティティに反するよ」
あゆ「うぐぅ……」
秋生「はあ……頑固だな、てめぇは……」
秋生「もいい、秋生ちゃんでいい」
みさき「よかったよ、秋生ちゃん」
秋生「ちっ……」
早苗「ズルいです。やっぱり私も秋生ちゃんと呼びたいです」
秋生「好きにしろ……」
早苗「はいっ、好きにします」
みさき「そうだ。まとまったところで四行をしないとね」
秋生「あーあー、そうだったなぁ。テーマはあんパンだこのやろう」
あゆ「なんだか秋生さんが凄く投げやりに……」

★みさき
「あんパン、大好きだよ」
「好きすぎて100個は軽いよ」
「というわけで、あんパンをご馳走してほしいよ」
「そのために私は来たんだよ」

あゆ「うぐぅ、ご馳走をたかりに来るって……」
秋生「まったく、おめぇはほんと何しに来てるんだか」
秋生「パンを買いにきたんじゃなかったのか」
みさき「お小遣いがちょっと厳しいから見境なく買えないんだよ」
早苗「そうなんですか、それは大変ですね」
秋生「早苗、甘やかしてんじゃねぇっての」
みさき「けれどここでは食べ放題は無理だっていうから……」
みさき「閉店間際の半額セールを狙うことにするよ」
早苗「まあ。主婦の知恵、ですね」
みさき「えっへんだよ」
秋生「……なぁお前」
あゆ「ぼ、ボクですか?」
秋生「あのみさきって子はどのくらい食うんだ」
あゆ「たくさんです」
秋生「四行でも百個とか言ってたがそんだけ食うのか」
あゆ「多分、それくらいは余裕で……」
秋生「かぁーっ。とんでもねえ奴に目ぇつけられちまったなぁ……」
あゆ「あ、き、気晴らしにボクが四行しますね」
秋生「好きにしろい」

★あゆ
「あんパン……たしか、パン食い競争で使われたりするよね」
「ボク、そういう競技に出てみたいなって思うよ」
「だって、何かを食べながらだと力がわいてもっと早く走れるんじゃないかって」
「そう思うんだよね」

ガララッ
郁未「さすが食い逃げのスキルを持つあゆね」
秋生「らっしゃい。って今度は初めましてだな」
郁未「天沢郁未です。古河秋生さんと早苗さんですね、名前は聞いてるわ」
秋生「そりゃどうも。手間が省ける」
早苗「ありがとうございます」
秋生「ん? 今あんた、食い逃げがどうとか言ってなかったか?」
郁未「そこのあゆはね、食い逃げの天才なのよ」
あゆ「うぐぅっ、違うよっ!」
郁未「わざわざパン食い競争なんて挙げたのは、食い逃げをするぞっていうフラグ立てでしょ」
あゆ「だからそんなことしないよっ!」
みさき「勇気あるねあゆちゃん。店主の前で食い逃げを宣言するなんて……」
あゆ「うぐぅ、みさきちゃんまで煽っちゃだめだよぅ」
秋生「……はぁん、なるほどな」
あゆ「うぐぅ?」
秋生「こうやって遊ばれてきた、ってわけか……よしよし」
なでなで
あゆ「えっ、あっ……」
早苗「大丈夫ですよ。あゆさんは食い逃げなんてしないって信じてますから」
あゆ「うぐぅ、なんだか複雑な気分……」
郁未「随分と察しがいい人たちね」
みさき「うん。私は閉店間際のセール待ちだけどね」
郁未「いや、私そんなこと聞いてないから」
郁未「ま、とりあえず四行するとしましょうかね」
秋生「おぅ。やれやれ」

★郁未
「あんパン……同名のものにやばいのがあるけど……」
「そんなのを出すのはやぼってものよね」
「あんパンといえば、刑事に牛乳と一緒に食されたり……」
「パンチを繰り出してバイキンをやっつけたりするのよね」

秋生「何の連想ゲームだそりゃあ」
郁未「ふぃ、フィーリングってやつで……」
早苗「秋生さん。女の子を威嚇してはいけませんよ」
秋生「わーってるよ。ちょっと睨みきかしただけじゃねぇか」
あゆ「睨みだけでも十分恐いと思うけど……」
秋生「……」
みさき「郁未ちゃんのそれは、どう反応すればいいのかな」
みさき「やっぱり、うぐぅボクのたい焼き好きなだけ食べていいよ、かな」
郁未「台詞変わってるし別人物でしょそれ」
あゆ「もしかして……」
郁未「もしかしなくてもあゆじゃないの」
あゆ「うぐぅ……」
ガララッ
観鈴「にはは、こんにちは」
みさき「その声は観鈴ちゃんだね。いらっしゃい」
秋生「って、てめぇが挨拶すんのかよ」
みさき「てめぇじゃないよ。みさきだよ」
秋生「……みさきが挨拶すんのかよ」
みさき「ちょっと言ってみたかったんだよ」
あゆ「どうしたの? って聞くだけやぼかな」
観鈴「うん。四行をしにきたの」
観鈴「あ、神尾観鈴です。初めまして」
秋生「おぅ。古河秋生だ」
早苗「古河早苗です。まあまあ、いらっしゃい。さ、遠慮なくどうぞ」
郁未「そりゃ店なわけだしねぇ」
観鈴「早速やりますっ」

★観鈴
「あんパンは、よく往人さんが買ってました」
「朝食ぬいてお腹がすいたからって」
「でもパンだけだと喉につまるからよく飲んでたのが……」
「どろり濃厚ピーチ味〜」

みさき「私は要らないからね」
観鈴「が、がお……」
あゆ「っていうか観鈴ちゃんも布教熱心だね」
郁未「なるほどねぇ。たしかにここの人たちは知らないわねぇ」
早苗「あの、何ですか?」
観鈴「どうぞっ。これを是非、お近づきの印に」
秋生「はーん。どろり濃厚ピーチ味ねぇ……」
早苗「戴いていいんですか? ありがとうございます」
観鈴「早速飲んでくださいっ」
早苗「そうですね。タイミングもいいですし」
観鈴「え?」
ガララララッ
秋生「今日はもう店じまいだ」
みさき「やったよ。いよいよ特売セールの始まりだね」
早苗「その前に、こちらのパンを食べてくださいますか」
秋生「ちょっと待った早苗! ……あ、いや、やっぱいいわ」
あゆ「うぐぅ、もしかして……」
郁未「何? この黒い……いや、黄色い?」
観鈴「なんかとがってる……」
早苗「今週の新商品。蜂さんパンです」
あゆ「って、思いっきり針が見えてる気がするんだけど……」
秋生「針のようだが、ちゃんと食えるからな。生地を細く延ばしてるだけだ」
郁未「なるほどねぇ」
観鈴「いただいていいのかな」
秋生「ああ、食え。たーんと食え。俺は俺でこのジュースを飲んで一息つこう」
みさき「わーい。いただきまーす」
あゆ「うぐぅ……」
郁未「形はあれだけど、味は……」
観鈴「いただきますっ」
ぱくっ
早苗「どうですか?」
あゆ「うぐぅ……固い、じゃなくて……その……」
郁未「蜂……蜂?」
観鈴「が、がお……」
早苗「皆さん、あまりおいしそうじゃありませんね……」
秋生「ま、現実はそんなもん……」
どろっ
秋生「ぶほあっ! な、なんじゃこりゃあ」
早苗「秋生さん、汚いですよ。……うん、どろりとした懸命な喉越しが伝わってきますね」
秋生「懸命な喉越しって……」
観鈴「どろり濃厚気に入ってもらえたみたいだけどパンが……観鈴ちん、なんか複雑」
郁未「微妙な結果ね……」
あゆ「うぐぅ、ボクもういいよ……あれっ、みさきちゃんは……」
ぱくぱくぱくぱく
みさき「うんうんっ、ごちそうさま。これは美味しいね」
みさき「うっかり全部食べちゃったよ」
秋生「ってぇー! 並んでる分全部食いやがっただとぉー!?」
郁未「えっと、私のもいる? 食べかけだけど」
あゆ「ぼ、ボクのもどうかな」
観鈴「わたしのも……」
みさき「いいの? 遠慮なくいただくよ」
ぱくぱくぱく
みさき「うん、ご馳走様でした」
早苗「まあまあ、お粗末さまです」
秋生「って、食うのもすげぇ早いな」
みさき「えっと、売れ残り他に食べていいものあるかな?」
あゆ「閉店セールタカりから売れ残りをタカりに変わってる気がするんだけど……」
早苗「いいですよ。どれでも好きなだけ食べてくださいね」
みさき「えっ、いいの?」
観鈴「にはは、早苗さんご機嫌」
郁未「ご機嫌ってので売れ残り全部食べさせちゃっていいのかしら……」
秋生「まぁ、あんなに早苗のパンを喜んで食べた奴は初めてだからなぁ」
秋生「って何? 全部?」
郁未「みさきだったら食べると思うんですけど……」
秋生「くあ……」
みさき「どれもこれもすっごく美味しいよ」
早苗「はい。良かったらまた来てくださいね」
みさき「できれば毎日食べに来たいんだけど、いいかな」
早苗「ええ、もちろんですよ」
みさき「いっそ、古河パンで座敷わらししちゃってもいいかな?」
早苗「ええ、構いませんよ」
みさき「やったぁ。ありがとうございます、早苗ちゃん」
早苗「いえいえ。秋生さんも構いませんよね?」
秋生「……」
あゆ「秋生さん固まっちゃった」
観鈴「秋生さん、秋生さんっ」
秋生「……ん? あ、ああ。ちっ、早苗がこんなに喜んでるしな……」
秋生「いいか、ちゃんと手伝いしろよ。でもってあくまでてめぇが食うのは残りものだけだからな」
みさき「てめぇじゃなくてみさきだよ」
秋生「みさきが食っていいのは残りものだ。主に早苗のパン……はっ」
早苗「……ぐす」
観鈴「わ、早苗さん涙目」
早苗「わたしのパンは、わたしのパンは……」
早苗「古河パンの残り物だったんですねーっ」
ダッ
観鈴「……外に駈けてっちゃった」
郁未「残り物は事実だと思うんだけど……」
秋生「真実はいつだって残酷だ」
秋生「だがな、ここの住人は早苗のパンを美味い美味いと言って食う……」
みさき「うん。事実美味しかったよ、とっても」
秋生「くっ……俺は大好きだあああ―――っ」
ダダダッ
観鈴「……秋生さんも行っちゃった」
郁未「どうすんのよ、店の片付け」
あゆ「ボク達でやろうか。わかる範囲だけでも」
みさき「頑張ろうね。私は残り物片付けてるから」
ぱくぱくぱくぱく
郁未「あんた……みさきは少し遠慮なさいっての」

<お手伝い壱号みさきだよ>


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