『AIR偽小説第二百十九弾』

懲りずに第二百十九弾です。
「こちらリリアンかわら版編集部」のシリーズ最終巻を最近読み終えました。
このシリーズの個人的お気に入り点としては、
とにかく続きが気になる! という展開を見せているところです。
取り扱っている話題も、その世界のみならず現代とリンクするような、
そこを実に感情豊かに描いているのがまた面白い。
惜しむらくは、激情の登りを見せておきながら、収束がやけにあっさりに感じる、
なんてところかもしれません(まぁそこは読者の感性ですけど)
ただそこが、また“新聞”らしいのかも、と思いましたけどね。


『4行小説』

★みさき&美汐&観鈴
「みさみさみさき」
「みしみしみしお」
「みすみすみすず」
「三人合わせて…さしすせ相談室!」

観鈴「今回も始まりだよ〜、にはは」
美汐「どんな質問も悩みもお聞きします」
みさき「みんな、遠慮なく訪ねてきてね」
観鈴「さてさて、今日の相談者は…」
エルルゥ「こんにちは、エルルゥです、よろしくお願いします」
ぺこり
観鈴「わ、丁寧。えっと、神尾観鈴です」
ぺこり
美汐「挨拶も終わったということで、早速ご相談をお伺いいたします」
みさき「報酬としてご馳走を用意してね」
エルルゥ「え……」
美汐「川名さんの事は気にしなくていいですからどうぞ」
エルルゥ「は、はあ」
みさき「うー、ひどいよ美汐ちゃん」
エルルゥ「それでは……」
観鈴「あ、待って待って。四行でお願いするね」
エルルゥ「えっ、あ、はい」

★エルルゥ
「相談というのは、ハクオロさんの事なんです」
「一国の皇という立場であって、なおかつ色んな女性の方が周囲にいらっしゃって……」
「もちろんハクオロさんの事を皆慕ってて……」
「けれど私は、もっとこう、その……」

観鈴「えっと、途中で止められるとよくわかんないんだけど」
美汐「要するに、もっと親密に、恋仲に、果ては夫婦になりたい、という事ですね」
エルルゥ「えっ!」
美汐「違うのですか?」
エルルゥ「い、いえ、そうです……けど、そんな、夫婦だなんて……恥ずかしいです」
美汐「恥ずかしがる事も無いと思いますが」
みさき「美汐ちゃんよくわかったね。エルルゥちゃんが言いたいこと」
観鈴「ほんとほんと」
美汐「ただの推察です。慕う、周囲に女性が、この二点から少しぴんとくるものがありました」
美汐「これぞ運命、というやつではないかと」
観鈴「にはは、すごいね」
みさき「それで、エルルゥちゃんとしては何が問題なのかな。ハクオロちゃんに想いを告げて一緒になれないのかな」
みさき「あ、でも汪様って言ってたよね。それで物怖じしてるのかな」
エルルゥ「身分については特に……ハクオロさんも、そういうのは気にしない方ですから」
エルルゥ「一番問題なのは、やっぱり環境だと思うんです」
みさき「沢山の女性に囲まれてウッハウハってとこ?」
美汐「誰もウッハウハなんて言ってませんが……」
エルルゥ「そう、それです! 誰に対しても優しいから、誘いも断れず……」
エルルゥ「というか、ハクオロさんが誰が一番かはっきりしないから!」
観鈴「が、がお、落ち着いてほしいな」
エルルゥ「すみません……」
美汐「なるほど、そのハクオロさんは八方美人なのですね」
エルルゥ「いえ、八方美人とは違いますけど……」
エルルゥ「来るもの拒まず、なので大変なんです」
みさき「けど、それだったらエルルゥちゃんが積極的にアタックしたらどうかな」
みさき「沢山女性が居るって言っても、一番一緒に居る時間も長くて接する機会も多いわけだよね?」
美汐「いえ、エルルゥさんはそこまでできないから悩んでいるのでは」
みさき「そっかぁ。恥ずかしいってことだね」
観鈴「が、がお、二人ともすごい……」
美汐「さて、そこでエルルゥさんとしては、この奥手な性格をどうしたら積極的にできるか、でしょうか」
みさき「それとも、ハクオロちゃんを自分に振り向かせるには何が効果的か知りたい、かな」
エルルゥ「えっ、と……りょ、両方で……」
美汐「おずおずと積極的ですね」
みさき「じゃあまずはエルルゥちゃん改造計画、略してEKKからだね」
観鈴「そこは略さなくていいと思う……」
美汐「積極的にアタックというのならば、そういう行動の方を参考にされてはどうでしょうか」
美汐「身近な方に、見習うべき方はいらっしゃいますか」
エルルゥ「積極的っていうならカルラさんですけど……」
美汐「どう積極的なのでしょう」
エルルゥ「ハクオロさんの寝室に勝手に入ったり、そういえば倉も平気で盗みに入ったりしますね」
エルルゥ「毎度毎度お酒をあさっていくのは勘弁してほしいです。もう……」
エルルゥ「っていやいや、そういうことじゃなくて……そうですね、お色気でよく迫ってます」
エルルゥ「ハクオロさんもいいかげん断ればいいのに……」
観鈴「びっくり。素で4行やっちゃった」
美汐「場の空気を読まない方ですね」
エルルゥ「す、すいません、つい興奮しちゃって」
みさき「気にすることは無いよ。さてと、これはなかなか手ごわいライバルだね」
美汐「そうですね。話から察するに、ハクオロさんが落とされるのは時間の問題」
みさき「つまりラスボスだよね」
エルルゥ「ラスボス、って……いやいやちょっと待ってください。問題なのはカルラさんだけじゃなくて」
美汐「そうですね、飛躍しすぎでした。しかし……」
みさき「困ったよね。色恋沙汰は私達には荷が重いよ」
観鈴「つまりどういう事かな」
美汐「私の結論としては、そのカルラさん以上の積極性を見せればよいという事です」
みさき「けれども、私達にそういう案は思いつけない。という事だね」
観鈴「なるほど、観鈴ちん理解した」
エルルゥ「えっと、その観鈴さんは相談を受ける側ではないんですか?」
美汐「しょうがありません。三番目ですから」
観鈴「にはは……」
エルルゥ「そういう問題なのかしら……」
みさき「とにかく、このままじゃ拉致があかないから、ここは助っ人さんを呼ぶことにしたよ」
みさき「母親でもあり、という事は恋愛には詳しいはずの、秋子ちゃんだよ」
秋子「皆さんこんにちは。こんなにもジャムを切望されるなんて、嬉しい限りです」
美汐「……川名さんはどういう呼び方をされたのですか。ジャムはここでは関係ないのですが」
観鈴「が、がお、恋愛の話じゃないのかな……」
みさき「その話の後でジャムを食べる約束をしたんだよ。これぞ一石二鳥だね」
美汐「差し引き一石零鳥という気がするのですが……」
エルルゥ「は、初めまして、よろしくお願いします」
秋子「いえいえ。色恋についてはあまりアドバイスできませんが」
エルルゥ「……え?」
観鈴「ねえねえみさきちゃん、本当に大丈夫なの」
みさき「ああそうだった」
みさき「途中にあった、積極的どうこうと、ハクオロちゃんを振り向かせるための効果的方法」
みさき「その、後者を秋子ちゃんが持ってるから助っ人として呼んだんだったよ」
美汐「随分といいかげんな……。では、その後者を先に聞くべきでしょうかね」
秋子「はい。これをどうぞ」
エルルゥ「えっと、これは……」
秋子「恋愛ジャムです。これを食べた殿方は、またたく間に食べさせた方に夢中になるでしょう」
秋子「という事を予想して作ったものです」
エルルゥ「予想……ですか?」
秋子「ええ。まだ誰にも試してませんから。つまりは試作品ですね」
エルルゥ「うーん……」
美汐「これもまた保証のできないものが飛び出しましたね」
観鈴「みさきちゃん、ますます本当に大丈夫なの?」
みさき「でもジャムを出したのは私じゃないしねえ」
観鈴「が、がお、そういう問題じゃない……」
エルルゥ「折角ですけど、遠慮します」
秋子「あら、どうしてですか?」
エルルゥ「試作品をいきなり実践投入だなんて、薬師として見過ごすわけにはいきませんし」
エルルゥ「何より、こんなものでハクオロさんの心を得るなんて……私にはできません」
美汐「正論ですね」
観鈴「にはは、少し安心した」
エルルゥ「あと、思ったんですけど……積極的にって事を無理しないで」
エルルゥ「私なりに、というところを大事にしないと、私が私でなくなってしまいそうで」
みさき「それもそうだね。カルラちゃんの真似をして済む話でもないしね」
秋子「うふふふ、いい言葉ね」
エルルゥ「はい?」
秋子「エルルゥさんの、その純粋な気持ちがあれば、きっといい結果が出るはずよ」
秋子「ありきたりだけど、これは大切な事。慌てるのはもう少し後でもいいの」
秋子「でないと、捏造した結果に後悔するはずですからね」
観鈴「ふぇ〜、なんだかとってもいい言葉」
観鈴「観鈴ちん、感激」
美汐「人道を逸してはいけないということですね」
みさき「そんな大げさな事かなぁ。けど、うん、それが一番だよね」
美汐「以上から、結論は次になります」
みさき・美汐・観鈴「「「今までどおり接してみましょう」」」
エルルゥ「はい。ありがとうございました」
エルルゥ「って、これだと何のために相談にきたのか分からないんですけど……」
美汐「最近の若い人は贅沢ですね」
エルルゥ「いや、貴方も若いんじゃないんですか?」
秋子「多分、ここへ相談にやってきたという事そのものが、積極性の表れですよ」
観鈴「にはは、そうそう。今後の行動のきっかけになるんじゃないかな」
エルルゥ「要するに、それくらいの気持ちを以ってして接すればきっと大丈夫、ですか?」
みさき「いいまとめだね、それいただきだよ」
エルルゥ「相談者からまとめをもらってどうするんですか……」
美汐「それでは、まとまったところで終わりにしましょう」
みさき「そうだね。ジャムのご馳走が待ってるよ〜」
観鈴「えっと、わたしは先に帰るね。みさきちゃんだけでどうぞ」
美汐「そのとおりです。あ、エルルゥさんは戴いてもいいと思いますよ。折角の記念に」
エルルゥ「え、あ、ちょっと!」
秋子「止める間もなく行ってしまいました。何か急用でもあったんでしょうか」
みさき「仕方ないね。ジャムを二人締めだね、エルルゥちゃん」
エルルゥ「最初から気になっていたことなんですが、ジャムって……」
秋子「食べてみればわかりますよ。さあうちへどうぞ」
みさき「うん。楽しみだよ〜」
エルルゥ「うーん……じゃあ、およばれします……」
秋子「そう緊張しないで。気軽にしてくださいね」
みさき「そうだよ。絶品だからね。まるでこの世のものとは思えないくらいにね♪」
エルルゥ「は、はあ……」

<未だ見ぬ薬の材料として>


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