懲りずに第二百十八弾です。
★観鈴
往人「そして俺がアシスタントらしい」
★往人
観鈴「往人さん、久々なのに愚痴」
★神奈
クーヤ「わかったぞ、其方は従者に遊ばれておるのだな」
★クーヤ
サクヤ「ううぅっ、クーヤさまぁ」
★住井
神奈・クーヤ「「失格」」
★サクヤ
住井「おお……」
★裏葉
住井「いいのか? これ」
<いいかげんにしてくださいぃ>
三文文誌第三十六号、という本を最近は読んでます。
これがまた分厚くて……小説本の中ではコストパフォーマンスは高位に入るでしょう。
それはそれとして肝心の内容は……本当にピンからキリまでって感じですな。
単純に好みの問題かもしれませんが、結構粗い……。
バラエティ豊富なのは間違いないですがね。これはどうかなぁ……読むの大変だし。
ただまぁ、下手に一冊薄いのを買うよりはいいかもしれません。恐らく一作以上は好みのものがあるはず。
最近読んだものでなんかいいなって思ったのは……
なんとかの世界の果てで浦島太郎はトラックの夢を見るか、とかって話(正確なタイトル忘れました)
浦島太郎、と引っ掛けてるのが上手いなって思いました。単純に見えて単純にあらず、って。
『4行小説』
「えっと、今回はかのりんに頼まれて観鈴ちんが司会」
「テーマは従者の心構え、だって」
「なんでも、前にやった四行争いに納得がいかないんだって」
「うーん、平和に終わったって聞いたからそれでいいと思うんだけどな」
観鈴「往人さん久しぶり」
往人「ってゆーか観鈴司会で俺がアシスタント、ってのが久しぶりってことだろ」
観鈴「にはは、そう」
往人「ったくそれにしても、納得いかないなんてぬかしてるのはどこのどいつだ……」
神奈「それは余だぞ」
観鈴「わ、神奈ちんいきなり登場」
クーヤ「それは余も同じだ」
観鈴「わ、知らない人もいきなり登場」
神奈「観鈴ちん、この者はクーヤと申す。存分に愛でるがよい」
観鈴「う、うん、わかった」
なでなで
クーヤ「ん……くふぅ……ええいっ、やめんか!」
クーヤ「おのれ、いきなり余に恥をかかせようとするとは……」
神奈「ふっ、先手必勝というものよ」
サクヤ「観鈴さまも神奈さまの部下なんですかぁ?」
裏葉「うふふふ、そのようなものかもしれませぬね」
観鈴「わ、観鈴ちん部下……?」
往人「ふむ、大体展開が読めたぞ。要するにこの偉そうなクーヤと神奈が言い争って……」
往人「お供の奴がそれに巻き込まれてるってわけだ」
観鈴「ふんふん」
往人「流れるままに前回は平和に終わったのだが……」
往人「後で思い返して納得がいかないなどと我侭を言いやがり」
往人「もう一人のお供は愛想をつかして今回は出ない、という事だな?」
観鈴「わ、往人さんすごい。はなまるあげちゃう」
往人「要らん。で、今回騒動の真っ只中にあげられている二人が……」
裏葉「うふふふ、さすがは往人さま。類稀なる洞察力にございますね」
サクヤ「ふえーん、クーヤさまぁ。こんなことしてたらおじいちゃんに怒られちゃいますよぉ」
往人「裏葉と……兎耳女ってやつか。さしずめ口癖は“失格”だろう」
サクヤ「何の話ですかぁ? あ、私はサクヤと申します」
往人「違ったか……。俺は国崎往人だ。ここの行く末を憂う発端者だ」
観鈴「憂うっていうより、もう諦めてるよね」
往人「それを言うな……」
神奈「役者も揃ったようだの。では早々に始めるぞ!」
クーヤ「望むところだ」
観鈴「裏葉さん、どうして神奈ちんは納得いかなかったの?」
裏葉「けじめはしっかりつけたいそうにございますよ」
裏葉「思えば神奈さま側としては柳也さまの敗退のみ。後は引き分け」
裏葉「これでは神奈さまとして納得しますまい。いくら後が平和的であろうとも」
往人「やっぱりただの我侭だな」
神奈「ええい、何を申しておるか。さっさと始めぬか!」
観鈴「わっ、わっ、えーと……ま、まずは往人さんからっ」
往人「ってゆーか四行で競うってのでいいのか?」
クーヤ「それがここの決まりならば仕方あるまい」
神奈「というわけだ」
往人「どこか人目のつかないところで勝手に言い争うなりすればいいと思うんだがなぁ……」
「ええと、従者の心構えってやつか」
「俺の立場からいうと……アシスタントがそれに相当するな」
「思うに観鈴くらいに素直じゃないとアシスタントはしてほしくないな」
「勝手に人をからかったりお米券を配ったりなんてのは冗談じゃない」
往人「これはお約束ってやつだろ」
サクヤ「大変なんですね……」
往人「……いい奴だなぁこいつは。それにひきかえ……」
裏葉「往人さま、私は何もしておりませぬが」
往人「……それもそうだな」
クーヤ「往人とやら。其方、サクヤをこいつ呼ばわりか?」
クーヤ「余の大切なサクヤをこいつ呼ばわりか!?」
神奈「落ち着くのだクーヤ。往人殿は無礼千万な人物ゆえ、そこで怒っていてはこの先耐えられぬぞ」
クーヤ「耐えるのはまた違うぞ。無礼な事に対しては見過ごすのではなくきっちり躾けることだ」
クーヤ「でなければいつまで経っても無礼なままであるぞ」
神奈「むぅ、お主の言う事ももっともよの……」
往人「……無礼なのはもうわかったからとっとと次いってくれ」
観鈴「往人さんかなり嫌そう」
往人「思いのほか破壊力が……」
観鈴「えっと、それじゃあ肝心の二人は最後で、次は神奈ちん」
往人「肝心なのは神奈とクーヤだろうが」
観鈴「それは別の会にするんだって。かのりんにそう頼まれた」
観鈴「その時はまた司会交代するけど」
往人「はた迷惑な奴らだな……。まぁいい、その時は俺も関わるまい。とっととやってしまえ」
神奈「む? うーむ、どさくさにまぎれて流されてしまった気がするのだが……」
観鈴「気にしない気にしない」
クーヤ「いいかげんとなっている元凶は色々といそうであるな……」
「心構えとして重要な事は、主人を立てるという事である」
「無礼な振る舞いをいくらしても、最後にはきっちりと……」
「……むぅ、あまりそういう気がせぬな。いいや、それはそれとして!」
「従者ならば主が気を回す事を含め、すべての事に気が利かねばならぬのだ!」
神奈「知ったふうな口をきくでないわ! ここで重要なのは、裏葉がいかに気の利く人物であるかということだ」
クーヤ「ほう、どのように気が利くというのだ?」
神奈「余の身辺の世話、まず衣食住は基本的に万全であるな」
神奈「旅に出ようとも住まいにいようとも、裏葉のそれで不自由をこうむった事は無い」
神奈「頼りにせずとも勝手に頼りになるという、まさに従者の見本であるな」
往人「そうなのか?」
観鈴「裏葉さんすごい」
裏葉「あらあらまぁまぁ、そんなに褒めないでくださりませ」
裏葉「斯様なところに気をつけていただき、裏葉はそれで満足にござりまする」
クーヤ「むぅ……」
サクヤ「く、クーヤさまぁ」
クーヤ「なんだサクヤ、情け無い声を出すでない」
サクヤ「私はそこまですべてなんてできませんよぉ」
クーヤ「あんずるな。余が同じような四行で済ますはずはない」
観鈴「えっと、それじゃあクーヤさんどうぞ」
クーヤ「うむ」
「従者はそもそも、身辺の世話をすべてまかなう必要はない」
「余は赤子ではないからな。余の足らぬ部分を補ってくれればよいのだ」
「サクヤは余の小さき頃より、ずっとそばに仕え、良き友となってきた」
「大事なのは世話ではない、余との、つまりは主との繋がりである」
クーヤ「どうだサクヤ。余もなかなかであろう」
往人「たしかに信頼は大事だな」
観鈴「強い絆で二人は繋がってるんだね」
神奈「むむぅ……いやしかし、それならば裏葉も負けてはおらぬぞ!」
クーヤ「ふふん、余とサクヤが過ごした年月とどちらが上かな?」
神奈「痴れ者が。たかが年月ごときではかるものではないわ!」
クーヤ「客観的に見てはかる人の絆の基準となるのは、まずは時間ではないか」
クーヤ「今の発言からして、余よりも神奈の方が年月は短いと認めたようなもの」
クーヤ「こたびの勝負は余の勝ちだ」
神奈「むむむ、そのようなことは断じて無い!」
神奈「ただだらだらと時を過ごすことなら誰でもできる」
神奈「余と裏葉は斯様な時は過ごしておらぬ!」
クーヤ「なんだと、余とサクヤがだらだらといたと申すか!」
クーヤ「無礼な、訂正せよ!」
裏葉「だらだらなら裏葉も同じようなものでは……」
サクヤ「えーと、多分私の方も似てると思いますよ」
神奈・クーヤ「「お主(其方)らは黙っておれ!」」
サクヤ「ひいいっ!」
裏葉「あらあら」
往人「収拾つかなくなってきたな……。観鈴、さっさと次へ行け」
観鈴「が、がお、思ったより大変……」
ぽかり
観鈴「イタイ……」
往人「久々に聞いたな、その口癖」
サクヤ「あのう、どうして往人さまが観鈴さまの頭を殴るんですか?」
往人「これは常識ってやつだ。サクヤもちゃんとまねをしろ」
観鈴「わああ、初対面の人にそんな嘘教えちゃだめ」
観鈴「えっと、ここでゲストさんを呼ぶよ。どうぞー」
住井「うしっ、なんとか出番を確保できたぞ」
往人「よぉ、名字表記」
住井「黙れ!」
観鈴「えっと、住井君に四行やってほしいな」
裏葉「なるほど、新たな人を迎えることにより気を改めようと」
サクヤ「えっと、この人は……」
住井「未来の主人公、住井護だ」
往人「ただの脇役その2だから気にするな」
住井「おいこら!」
サクヤ「2ということは、1の人もいらっしゃるんですか?」
往人「北川潤とかいう名だった。二人は華麗なる脇役同盟らしいぞ」
住井「合っているがお前が言うととげがあるな……」
往人「まぁ無駄な努力だろうがな」
住井「なんだと!」
サクヤ「えっと、初めまして。サクヤと申します」
裏葉「そして、あちらで神奈さまと言い争いをされておられるのが、クーヤさまにございます」
観鈴「フルネームだと、アムルリネウルカ・クーヤさんだって」
住井「……長い名前だな。よし、とにかく四行やるぞ!」
「従者の心構え……それは野望だ」
「主の心を確実に読み取り、そして陰ですべてを支えるという……」
「いわば陰の支配者!」
「至福の時はそこで味わえる……」
住井「ちょ、いきなりなんだよ!」
神奈「余という主を差し置いて支配者だと? 何をたわけたことを」
クーヤ「思い上がりも甚だしい。謹慎を命ずる」
住井「え、えーっ!?」
サクヤ「まぁまぁ、クーヤさま」
裏葉「ただの悪ふざけにございますよ。ここは私の顔に免じて許してくださいませ」
神奈「う、むう……」
クーヤ「かばい立てするのは気に食わぬが、ただの悪ふざけなら許さぬわけでもないな」
往人「……と、このように部下に対しても優しく接するのは中間管理職の宿命の一つだ」
往人「何でもかんでも首をはねるよう言いつけをする主に対して意見をしたりな」
観鈴「往人さん、神奈ちんもクーヤさんも首をはねてなんて命令してないのに」
往人「もののたとえだ。さて、変なやつの介入で場が改まったところで、さっさと最後の二人やってしまえ」
往人「俺はもう終わりたい……」
観鈴「最近往人さんサボり気味」
往人「なんとでも言え」
住井「ってか、俺の立場って一体……」
神奈「おほん。では……クーヤの方からするがよい」
クーヤ「ん? 余に先手を譲ると申すか」
神奈「裏葉が先にやってしまっては負けを即座に認めるしかあるまい?」
クーヤ「言ったな……その言葉、後悔させてやるぞ。サクヤ!」
サクヤ「は、はいいっ!」
クーヤ「見事余の期待に応えてみせよ。さあ!」
サクヤ「さあ、と仰られましても……」
観鈴「サクヤさん、ふぁいとっ」
往人「まぁ気張らずに頑張れ。ってかとっととやってとっとと終われ」
住井「お前そればっかだな」
裏葉「うふふふ」
「従者として……というかどうかは分かりませんが……」
「主にとってかけがえのない大切な存在となること」
「当たり前のようにいつもそばにいること」
「私は、それが一番大事だと思っています」
往人「真面目だな」
観鈴「もう、元々真面目なテーマだってば」
クーヤ「素晴らしいぞサクヤ。それでこそ余の……いや、これ以上は言うまいな」
神奈「しかし、従者が斯様な存在ばかりでは大変ではないか?」
裏葉「そうにございますね。私のように少数でお仕えする場合にはよいのでしょうが……」
裏葉「クーヤさまには部下は何人いらっしゃいますか?」
クーヤ「む、部下となると……ええい、題目は従者であろうが」
クーヤ「サクヤの立場を考えるに、このくらいが丁度よいのだ!」
神奈「ふむ。当たり前の事柄ではあるがな」
クーヤ「なに?」
神奈「一生仕えるのだから、大切な存在となって当然だと余は言うておるのだ」
神奈「心構えという話ではない。自然となるべきだ」
クーヤ「ふん。心なくしてそんな存在になどなれるものか」
クーヤ「何も考えずに傍仕えしてなるならば、誰にでもなるというものだ」
神奈「何も考えないとは言っておらぬ。考えを持っていて当たり前だと言うておるのだ」
クーヤ「ほほう、つまりは下心か」
神奈「下心だと!? ……そうか、サクヤは下心ありでクーヤの部下をしておるのだな」
クーヤ「断じて違うぞ! その言葉、撤回せよ!」
神奈「お主が言い出したことではないか!」
クーヤ「いいや、元はといえば神奈、其方がサクヤの四行に文句をつけたのが始まりだ!」
裏葉「あらあら、仲のおよろしいことで」
サクヤ「あ、あのう、どうしたらこれがそう見えるのでしょう……」
裏葉「喧嘩するほど仲がいいと申すではございませんか。神奈さまにはいい相手でございますね」
サクヤ「は、はあ……」
裏葉「では、次は私めの四行。往人さまが急かしてらっしゃるので早々に片付けまする」
往人「早々にって……」
「従者の心構え、実は数えても数えても足りぬほど、たくさんございまする」
「神奈さまのお世話、神奈さまへの心配り、神奈さまがすべて、神奈さまこそ我が人生……」
「ああ……と、それほどに主を愛おしく思い、愛おしく仕えさせていただく……」
「すべては、純粋な心次第、にございまする」
往人「いいんじゃないか」
観鈴「にはは……」
クーヤ「随分と過激な発言であるが……これならば先ほどのサクヤの方がまだ……」
サクヤ「はうううぅ、わ、私の負けですぅ」
クーヤ「さ、サクヤ?」
サクヤ「裏葉さまの四行の姿が、とても眩しく見えました。到底私には敵いません……」
裏葉「うふふふ、ありがとうございまする。ですが主を思う気持ちはきっと、同じにございますよ」
サクヤ「は、はいっ!」
クーヤ「……納得いかん」
神奈「であろうな。余も納得いかん」
クーヤ「納得いかんのならやり直せ」
神奈「そうはいかん。これはこれで裏葉の勝ちであるぞ」
神奈「だが……裏葉が悪影響を及ぼしておらなければよいのだが……」
クーヤ「悪影響?」
神奈「ま、まぁそれについては追々教えてやるぞ。……人目のつかぬところでな」
クーヤ「な、なるほど」
サクヤ「あははは」
裏葉「うふふふ」
住井「……終わった、のか?」
往人「終わったみたいだな。裏葉さんの勝ちのようだ。よくわからんが」
観鈴「にはは……」
往人「じゃあ観鈴、さっさと終わってくれ」
観鈴「あ、一つ忘れてた」
往人「何をだ」
観鈴「かのりんから言われてたんだけど、クーヤさんの愛称はあっちゃんなんだって」
往人「あっちゃん?」
神奈「あむるりねうるか、とかいうから略してあっちゃんではないのか」
クーヤ「余は斯様に呼ばれたことなどないが……」
観鈴「名前かららしいよ」
往人「はあ?」
神奈「おかしなことを申すな。何故クーヤであっちゃんになるというのだ」
クーヤ「まったくだ。佳乃の発言はおかしいぞ」
往人「佳乃の発言はいつもおかしいから気にするな」
観鈴「わ、往人さんもひどい」
往人「余談は終わりだな? とっとと終わってしまえ」
観鈴「う、うん。次回、司会を変えて神奈ちんとクーヤさんの三回目の勝負だって」
クーヤ「今回までの戦績は一勝一敗。次で決着をつけてくれる」
神奈「のぞむところだ」
サクヤ「はわわわっ、クーヤさまぁ。また来られるんですかぁ?」
クーヤ「当たり前だ! サクヤもついてくるのだぞ」
サクヤ「ふええぇ……」
裏葉「神奈さま、私も是非ご一緒しますゆえ。神奈さまあるところ裏葉あり、でございます」
神奈「うむ。……いや、やはり」
裏葉「では、また次回」
神奈「むう……」
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