懲りずに第二百十五弾です。
★神奈
あゆ「あれっ?」
★あゆ
志野母「まぁ、そうですか?」
★八百比丘尼
志野母「ありがとうございます。そう言っていただくと実に嬉しいですね」
★志野母
八百比丘尼「いい心構えですね」
★郁未
志野母「なんだか複雑な表現をしますね」
<母とはかくも……>
一人暮らしが始まったら古本屋から揃えようかなぁと思ってる小説があります。
それは「マリア様がみてる」すっかりハマってしまっちゃいました。
つってもまぁ……ただ作品読んで好きっていうくらいですがね。
とはいえ、冊数多いのでどうしたもんかなぁって気もしますが。
『4行小説』
「今回は余達の出番であるぞ」
「人物語り。今回は以前招いたしのさいか殿やまいか殿の母君であるぞ」
「病に伏せる幼きさいか殿をいたわり、またさいか殿を心配するまいか殿に安心を与えるよき母だ」
「もちろん、余の母上も負けてはおらぬぞ」
神奈「あれ、とはなんだあゆ殿」
あゆ「えっと、さいかちゃんまいかちゃんのお母さんに……会ったことあったっけ?」
神奈「無論、ないぞ」
あゆ「そ、そうだよねぇ?」
神奈「うむ。それがどうしたのだ」
八百比丘尼「あゆは神奈がかくも見事に四行をこなしたから驚いているのですよ」
神奈「おお、そうなのか」
あゆ「いえ、あの……見事っていうか、まるで初めて会った気がしないくらいに知ってて……」
あゆ「あっ、誰かから事前に聞いたの?」
神奈「何を申すか。余はさいか殿とまいか殿の語りから、母君の事を察したのだ」
神奈「それくらい当然であろ」
あゆ「……そんなに詳しくお母さんの事言ってたっけ?」
神奈「言わずとも雰囲気で分かるではないか。もちろん、多少は招く時に事情も聞いたしの」
あゆ「そ、そっかあ……。へええ、なんだかボク神奈ちゃんを見直しちゃったよ」
神奈「どういう事だ?」
あゆ「いくら神奈ちゃんでも、無貌に知らないまま語るばっかりじゃないんだね、って」
神奈「褒められてるのかけなされておるのかわからぬ……」
八百比丘尼「褒めているのですよ。そして、今後も同じようにしてくれることへの期待でしょうね」
あゆ「あ、はい」
八百比丘尼「頑張らなければなりませんよ、神奈」
神奈「う、うむっ」
神奈「それでは、その母君殿の登場であるぞ!」
志野母「こんにちは」
あゆ「うぐぅ、こんにちは……って、どういう表記なの、これは」
志野母「すみません」
あゆ「あ、い、いえ、お母さんに言ったわけじゃなくて……神奈ちゃんっ!」
神奈「実は名前を知らぬのだ。というわけで、二人の名字そして母君であることから、こうなった」
八百比丘尼「ちょっと苦しいですが、仕方ないのでしょうね」
あゆ「もう……冒頭ちょっと良かったと思ったらこんなオチだなんて……」
志野母「はぁ、すみません」
あゆ「うぐぅ、お母さんが謝らないで」
神奈「おほん。ではあゆ殿の四行からであるぞ」
あゆ「うぐぅ……」
「えっと、すごくいいお母さんだよね」
「ここにくるお母さんは大抵いい人なんだけど……」
「初めてでも物怖じしないで丁寧っていうか……」
「安心して接することができるよね」
あゆ「あ、はい。第一印象ですけど」
神奈「あゆ殿、ごますりというやつであるな?」
あゆ「うぐぅ、人聞きの悪いこと言わないでよ。ボクは素直にそう思っただけだよ」
八百比丘尼「しかし、発言を見返してみるとそう感じるにはなかなかに厳しいと思われますが」
あゆ「うぐぅ、それは……」
志野母「遠慮なさらなくていいんですよ。でも、まだ会ったばかりでは仕方ないかもしれませんね」
あゆ「そうですよね。もう、だからボクは初対面で語るなんて反対なのに……」
神奈「しかし此度はその方針の企画ゆえ……」
あゆ「だいたい、ちゃんとした会話すらできないでしょ?」
八百比丘尼「いいえあゆ。会話は徐々に形作ってゆくものです。最初からそう気張らずともよいのですよ」
八百比丘尼「きっと、この方もそれを望んでいるはずです」
志野母「そうですね。いきなり深いところではなく、徐々に語るという事で」
志野母「お心遣い、痛み入ります」
八百比丘尼「そうかしこまる事でもありません」
八百比丘尼「しかしわらわは母であるゆえ、娘の応対を助けるのは至極当たり前の事です」
志野母「ありがとうございます」
あゆ「なんだか大人の会話っぽいね」
神奈「つ、次は母上の四行であるぞ」
八百比丘尼「あらあら。神奈、少し拗ねてしまいましたか?」
神奈「拗ねてなどおらぬ」
あゆ「なんで拗ね……ああ、八百比丘尼さんに助けてもらったから?」
志野母「子供は親に甘えて当然なんですから、拗ねずともいいんですよ?」
神奈「ええいっ。母上、早く!」
八百比丘尼「ふふふ、しようのない子ですね」
「縁は遠かれど、人の付き合いというものをわきまえている様子」
「わらわは、斯様な人ばかりと接する事ができるのであれば、満足です」
「……と、感じた人達の一人、と表しておくことにいたしましょう」
「そう、是非ともわらわとも深い付き合いを重ねてほしいのです」
八百比丘尼「是非母親同盟に。そう思ったのです」
志野母「母親同盟? そのようなものがあるのですね……」
八百比丘尼「どうですか、そなたも」
志野母「それはもう、喜んで」
志野母「どは言っても、どう参加すればよいのでしょうか?
八百比丘尼「同盟の長が秋子という人なのです」
八百比丘尼「わらわから伝えておきましょう」
志野母「それは是非。ところでどのような活動を?」
八百比丘尼「母親故の……実は、まだわらわもそう活動などしていないのです」
志野母「そうなのですか。けれども、きっといい同盟なのでしょうね」
八百比丘尼「それはもう」
志野母「それは楽しみです」
あゆ「……うぐぅ、完全に二人の会話だね」
神奈「今回は思ったより母上が前に出ておるの……」
神奈「おほん。それでは、まいか殿の母君の四行であるぞ」
あゆ「なんでそんな呼び方なの?」
神奈「だから、名前がわからぬからと申しておろうに」
あゆ「うぐぅ、そういえばそうだったね……」
八百比丘尼「なるほど、そなたは今年で……」
志野母「はい。ですから大変なんですよ」
八百比丘尼「苦労しているのですね」
志野母「でも毎日が楽しいんです。やはり母親としての特権ですね」
八百比丘尼「素晴らしい事ですね。気持ちをそこに持てるというのは」
志野母「ええ。母親同盟もきっとそこにモットーがあると思いますよ」
八百比丘尼「そうかもしれませんね」
あゆ「……二人とも聞いてないね」
神奈「うむむ、さいか殿の母君の四行であるというのに……」
志野母「さて、そろそろ私の四行ですね」
八百比丘尼「そういえば……。神奈、宣言はしたのですか」
志野母「いえいえ、ここは大人から率先してあげなければ」
八百比丘尼「しかし、そう甘やかしてばかりでは……」
神奈「甘やかされてなどおらぬ! 余はしっかり申したぞ!」
八百比丘尼「何ですか神奈、そんな大声を出して」
八百比丘尼「母にとがめられた事でいちいちそう反応していてはこの先思いやられますよ」
志野母「まあまあ、八百比丘尼さん。少しくらいは大目に見てあげないと」
八百比丘尼「ふう……しようがありませんね」
神奈「む、むむむむ……母上達が聞いてなかっただけであるのに……」
あゆ「おさえておさえて、神奈ちゃん」
「私は……そうですね、たしかに母親です」
「それは当たり前なのですが、母親だからこその心構えがあります」
「それは、我が子を大切に思うこと。そして……」
「我が子の気持ちをしっかり汲む、という事ですね」
志野母「けれども、これは母として当たり前の事なのでしょうね」
八百比丘尼「当たり前だからこそ、こうして語るのは大切な事ですよ」
志野母「ふふ、そうですね」
神奈「余の気持ちももっと汲んでほしいものだ」
あゆ「か、神奈ちゃん……」
八百比丘尼「何か言いましたか、神奈」
神奈「なんでもないっ」
八百比丘尼「まったく、陰でこそこそ申すのは実に見苦しい事ですよ」
神奈「むううう。ええいっ、客人を招くぞ。さあ参れ!」
郁未「ご機嫌斜めねえ……」
神奈「将来は母になる天沢郁未殿だ」
郁未「また随分先の話を……」
あゆ「あれれ? 誰のお母さん?」
郁未「そんなところは気にすることではないわ。さてと……この人について語ればいいのね」
志野母「ええ、よろしくお願いします」
「普通のお母さん、よね」
「何が普通かってのはもうよくわからなくなってきてるけど……」
「それでも、私は普通、って言葉を使わせてもらうわ」
「だって、普通にお母さんって見えるお母さんですものね」
郁未「曰くありのお母さんがここは多いですからね」
志野母「そうなのですか?」
八百比丘尼「わらわは翼人の母、という事ですか」
郁未「そうね。あとは、育ての母だったり死産を経てたりジャムの名手だったり……」
あゆ「郁未さん、ストップストップ」
郁未「まぁ、このくらいにしておくわ」
神奈「しかし郁未殿の言うとおりでもあるの……たしかに曰くはある」
あゆ「そりゃあ、どんなお母さんだって何がしかのエピソードは持ってると思うよ」
郁未「限度があるでしょ。挙句私のお母さんだって……ま、もういいわね」
志野母「何か、私は気に障ってしまいましたか?」
郁未「いいえ、そんな。貴女は普通に立派なお母さんだと思う。それだけですよ」
志野母「そう……」
八百比丘尼「これから母親になろうという事への心構えなのですかね」
郁未「だから、まだ母親なんて……」
あゆ「神奈ちゃん、そろそろ終わろ?」
神奈「そうであるな。むぅ、何だか今回は余は狭苦しく感じたぞ」
八百比丘尼「何に不満があったのです、神奈。後で母に話しなさい」
神奈「むむむうう……これにてお終いとする!」
八百比丘尼「神奈」
郁未「まぁ、気持ちは分からなくもないけどね」
志野母「子供心は難しいですからね」
あゆ「うぐぅ……」
戻る