懲りずに第二百十三弾です。
★佳乃
柳也「武士、という表現はまた違う気がするがな」
★柳也
佳乃「もぉ、勝手にテーマを変えちゃだめだよぉ」
★裏葉
ベナウィ「な、なるほど……」
★クロウ
柳也「な、なんで俺に?」
★ベナウィ
クロウ「総大将には感謝してもしきれやせんからねぇ」
<大雑把に、なるべきでしょうか>
最近読んだ市販の小説としては涼宮ハルヒの憂鬱、灼眼のシャナ、が挙がります。
どっちも借り物ですけどね。で、共通事項としてあげておきたいのは……
自身が仮にその世界の中で一般人として混ざっていたとしても、
決してその中心を認識するに至らないであろう可能性もある設定、という事かと。
前者は、ハルヒに関わる人間達じゃないと気付けない事項。
後者は、封絶なりトーチなりにて、見えない気付けない世界での出来事に置き換えられる。
どちらも、“違和感なく”溶け込めるという事が非常に設定として上手いなと。
何が上手いかって、そこが現実世界から引きずり込もうという意図であり、
“読者が、絶対に無いとは言えない”という設定なのですから。(いわば気付いて無いだけだし)
まぁ、それゆえに“ずるい”設定ではありますけどね(一般人には決して気付けないという事とか)
『4行小説』
「さあて、今回も特別ゲストさんを招くよぉ〜」
「でもってアシスタントは、柳也くんに裏葉ちんだよぉ」
「そしてテーマは、武士、だよ」
「丁度柳也くんがそうだからねぇ。きっと話が盛り上がることうけあいだよぉ」
佳乃「わかった、戦士さんだぁ」
柳也「うーん……」
裏葉「神奈さまの忠実なる剣、という事でよいではありませんか」
柳也「言いえて妙だな」
佳乃「わかったぁ、神の騎士ってことでどうかな?」
柳也「かみのきし?」
裏葉「あらあらまぁまぁ、なんという荘厳な響きでありましょう」
裏葉「これならば、不可視の力も翼人の力も凌ぐことができましょうね」
柳也「お、おいおい、そんな大げさなものは困るぞ」
佳乃「うーん、普通に剣豪でいいんじゃないかな」
柳也「それはそれで大げさだ」
裏葉「まぁまぁ柳也さま、謙遜なさらなくても」
柳也「謙遜じゃなくてだな、これは……」
佳乃「さあって、侍の柳也くんはおいといて、ゲストさんを招くよぉ! どうぞー!」
ベナウィ「どうも」
クロウ「ういっす」
佳乃「侍大将のベナウィさんとクロウさんだよぉ」
裏葉「これはこれは、遠路はるばるようこそいらっしゃいました。私は裏葉と申します」
裏葉「このたびは柳也さまと勝負をなさってくださるとか、どうぞよろしくお願いいたします」
柳也「おいっ! 俺はそんなこと一言も聞いて無いぞ!?」
佳乃「挑戦者だねぇ、柳也くん。クロウさんもベナウィさんも強いよぉ?」
柳也「だから勝負なんぞせんっつーに。大体、ここでやるのは四行と語りじゃないのか?」
ベナウィ「ええ、そう聞きました。それに、無益な殺生は好みません」
クロウ「弱いものいじめになっちまうとつまんねえしな」
ベナウィ「クロウ、口を慎みなさい」
クロウ「へーへー」
佳乃「ほらほら柳也くん、挑発されてるよぉ? ここはびしっと戦う宣言しないと」
柳也「悪いが……遊びで剣をふりたくは無いからな」
ベナウィ「……なるほど。少しは場をわきまえているようですね」
柳也「ってゆーか、もしかして佳乃からたきつけるように言われたんじゃないだろーな?」
佳乃「もぉ、ひどいよぉ。あたしそんなこといわないよぉ」
ベナウィ「どちらかというと、そちらの裏葉殿に」
裏葉「あらあらまぁまぁ、初対面なのにそのような事は」
ベナウィ「目で」
裏葉「あらあら……うふふふ、さすが優れた武人さまは違いますね」
ベナウィ「しかし、柳也殿も仰られたように、ここは戦いの場ではありません。此度は剣を収めます」
裏葉「うふふふ、でしたら仕方ありませんね」
柳也「裏葉……どういうつもりだ」
クロウ「鍛えてやりたいとかそういう事じゃねーの」
クロウ「お前さん、腕は立つようだが随分と剣をふるってないだろう?」
柳也「……分かるのか?」
クロウ「どれだけなまってるかなんてのは実際に剣を交えねーとわかんねーが……」
クロウ「常に自身を鍛錬の場に居合わせているかどうかは、見てすぐにわかるもんさ」
柳也「ふーむ、さすが……。その腰にさげている刀はだてではないな」
佳乃「と、そんな侍大将の二人だよぉ。是非とも柳也くんは参考にしようね」
柳也「そう言われてもな……」
佳乃「ま、今回は四行だからね。この二人はちゃんと要領がわかってくれたらしいから説明楽だったよぉ」
佳乃「けど、とりあえずは柳也くんの四行だからね。張り切ってどーぞ!」
裏葉「柳也さま。武力では敗退しても、せめて四行では勝利を収めてくださいませ」
柳也「これでどうやって勝利するんだ……」
「お題は武士だっけか」
「もうちょっと違うお題にしてくれと思ったが……たとえば侍とかな」
「そう、主人にさぶらうという意味を持つこの名は」
「俺にとっては実にぴったりな言葉……そちらの二人もそうではないかな?」
裏葉「似たようなものではありませぬか?」
佳乃「言葉そのものが変わっちゃうと、それこそ大変だよぉ」
柳也「たしかにそうだな……侍というお題で話すべき事柄であった。済まない」
裏葉「柳也さま……」
佳乃「うわわっ、珍しく柳也くんが殊勝な心がけだよぉ」
柳也「俺にどうしろってんだ……」
べナウィ「意が似たものであり、かつ意図が同じであれば、そこはよろしいのではと思いますが」
佳乃「おおっと、べナウィさんの擁護論だぁ。かのりんぴーんち!」
クロウ「なんか大げさに言ってるみてーだけど、特に怒り心頭じゃねーってことは、構わないってことじゃねーの?」
佳乃「おおっと、クロウさんにかのりんの心の内を半分読まれてしまったよぉ。こりゃもう譲るっきゃないね」
柳也「なんなんだ一体……」
裏葉「さてと、それでは私が次はまいるといたしましょう」
裏葉「柳也さまとは一味違った、裏葉の華麗なる四行、とくとご覧あれ」
クロウ「ほほ〜う、そりゃすげぇや」
柳也「華麗な四行……?」
「武士というからには、その心意気やいかに」
「献身的に君主へと手向けるその想いは」
「如何に強靭な力といえど曲げられるわけはありますまい」
「そうして、柳也さまは神奈さま一筋となったのでありまする」
柳也「……おいベナウィ、こんなものに素直に頷かなくていいぞ」
クロウ「華麗っつーより、なんか煙に巻いた四行ってやつじゃねーか?」
裏葉「あらあらまぁまぁ、見た目に惑わされるは武士の名折れというものですよ」
佳乃「うんうんそうそう、裏葉ちんは天声人語に一問一答で言語壮大っ」
ベナウィ「……柳也殿」
柳也「ん?」
ベナウィ「心中、お察しいたします」
柳也「おお……ありがたいことだ」
クロウ「えぇーと、そいじゃあ次は俺がやりやすかね」
佳乃「待ってましたっ。もうばっちりだねっ」
クロウ「いや、まぁやり方はわかりやしたんで……」
佳乃「うんうん、微笑ましい部下を持ってベナウィさんは幸せだねっ」
柳也「微笑ましい、ってそれは違わないか?」
裏葉「うふふふ、いいのですよ、それで」
佳乃「そうだよぉ。微笑ましくって笑っちゃって、福来るっ! 鬼も内っ! 豆を食べるっ!」
裏葉「うふふふふふ」
柳也「……」
ベナウィ「クロウ」
クロウ「ういっす! 早くやっちまいます!」
「主君に仕えるっていう意味じゃあ、俺は立派な武士ってことにならあな」
「けど、ただ仕えてりゃあいいってもんじゃない」
「戦で手柄をあげてこそ武人って事だ!」
「そうだろ? 柳也」
クロウ「折角だから、ここで一戦交えねーか、って誘ってるわけよ」
柳也「なるほどな……たしかに、鈍った体を鍛えるにはいいかもしれないが……」
クロウ「本気でいくぜ?」
柳也「手加減くらいはしてもらいたいが……そういうわけにはいかないようだな」
クロウ「おっ、その目はやる気の目だな。そうこなくっちゃな」
佳乃「うわわっ、柳也くんとクロウさんが真昼の決闘をしようとしてるよぉ」
裏葉「真昼の決闘?」
佳乃「うんっ。お互いに背を向けて、数えながら10歩進んで……」
佳乃「10数えきったところで振り向いてばーん!」
裏葉「まぁ、何やら物騒にございますね」
佳乃「勝負は一瞬だからねぇ。油断ならないよぉ」
裏葉「剣呑剣呑」
柳也「っていうか待て、お互いに10歩も離れたら刀が届かないだろうが」
クロウ「しかも“ばーん”って何ですかい」
佳乃「まぐなむフォーティーフォーだよ」
柳也・クロウ「「??」」
佳乃「わかんないんじゃあ決闘はおあずけっ! というわけでベナウィさんだよぉ」
ベナウィ「……なるほど、貴女はなかなかの扇動力をお持ちのようで」
佳乃「ふふふ〜、かのりんはひそやかにすごいのだぁ」
クロウ「何のことですかい?」
ベナウィ「いえ。それでは、私の四行と参りましょう」
「武勲もあり、戦果もあり。ですが……」
「最も大事なのは、誇り、ではないかと私は思います」
「そして、己が信ずる道を進む……」
「私が今こうしてそれを全うできているのも、すべては聖上のおかげ」
ベナウィ「ええ。あの戦場で出会えたことは、私達にとって僥倖でした」
柳也「聖上?」
ベナウィ「ハクオロ皇の事です」
柳也「ああ、あの仮面の……そんなに凄い奴だったのか?」
裏葉「柳也さま、奴などとは失礼にございますよ。一国の王様に向かって」
柳也「む、そうだな、失礼した。しかし……そこまで慕われているとは、もっと敬って接するべきだったか」
クロウ「まぁ、総大将は誰かれ隔てなく接する人柄のよさも持ってやすから」
ベナウィ「ただ、もう少し政務を真面目にこなしていただきたく存じますがね」
佳乃「武士から力ちゃんの話に移っちゃってるけど、誇りってとこについてはどうかなぁ?」
柳也「誇りか……。俺はそこまで頑ななこだわりはないが……」
柳也「少なくとも、仕えた主君を悲しませるような事は断じてしないという想いはあるな」
裏葉「うふふふ、それが柳也さまの誇りなのでございますよ」
柳也「そんな大げさなものでもないさ。そう、信じる道ってやつさ、ベナウィが言った、な」
ベナウィ「そうですね。……ときに柳也殿」
柳也「なんだ?」
ベナウィ「当然のように“力ちゃん”という言葉を流されましたが」
柳也「ああ、なんだかしらんがそのハクオロの愛称らしい。佳乃がそう呼んでる」
クロウ「総大将が、力ちゃん? ……力がある者を親しみをこめてってことですかい?」
佳乃「そうじゃないよぉ。力也さんだから力ちゃんだよぉ」
ベナウィ「どういう、ことですか?」
クロウ「さっぱりわけがわからないんだが?」
柳也「二人とも気にするな。佳乃の呼び名なんて気にしていたら身がもたんぞ」
裏葉「さて、そろそろおしまいにいたしませぬか。四行は無事終わりましたゆえ」
佳乃「そうだね。それじゃあこれにておしまいっ!」
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