『三年になる鼠を今年生まれの猫子(ねこご)が捕らえる』だよっ


名雪「やってきたね、猫さんの世界を現す言葉の一つが」

真琴「これはどういう意味なの?」

名雪「その前に真琴、肉まん食べない?」

すっ

真琴「うわあ!いいの!?」

名雪「うん、いいよ」

真琴「やったあ!…でもなんで板の上に乗ってるの?」

名雪「それは気にしない気にしない」

真琴「ふーん…まあいっか。じゃあいっただきま〜す!」

名雪「めしあがれ」

ばちん!

真琴「あぅーっ!なんか手にはさまったあ!!」

名雪「まったく、こんな罠に引っかかるなんて真琴はまだまだだね」

真琴「痛い痛い!なによぅ、これぇ!」

名雪「世間では有名なネズミ捕りだよ。大丈夫、威力は抑えてあるから手が吹っ飛ぶことは無いよ」

真琴「吹き飛んじゃあたまらないわよぅ!」

名雪「でね、わたし達の場合こういう試練が存在するわけだけど」

真琴「こんな試練知らないわよぅ!」

名雪「猫さんの場合、生まれて一年以内に鼠を捕らえる試練をさせるんだよ」

真琴「そんな解説よりこれ取ってぇ!」

名雪「一人前になるか否か!シビアなんだよ〜」

真琴「痛いんだからぁ〜、取ってよぅ〜」

名雪「“立派に狩ができるようになるための試練”だよっ」

真琴「あたしのは絶対試練じゃないぃ!」

名雪「ちなみにわたしも体験したよ。お母さんから」

真琴「うそぉ!?」

名雪「朝起きられるようになるために…わたし頑張ったよ」

真琴「今全然起きられてないくせに…」

名雪「…さて、別のアシスタントさんにそろそろ交代かな」

真琴「わあああ!嘘嘘!冗談だから!!」

名雪「真琴、人の試練をあざ笑うのはよくないよ」

真琴「あぅ…って、いいかげんこれを取ってよぅ!」

名雪「試練だ、耐えられよ、だよ♪」

真琴「だからこんなの試練じゃないってばぁ!」



………………



香里「一体全体何やってんだか…」

栞「本当にあんな試練があったら嫌だな…」

香里「『三年になる鼠を今年生まれの猫子(ねこご)が捕らえる』ってのは、

   “すぐれた人物は、幼少の頃から並みはずれた才能を現すということ。

   また、大人が子供にやり込められること”よ」

栞「私の場合、どうすればいいかなあ?」

香里「そりゃあもちろん、辛いものを克服しなさい」

栞「え…」

香里「じゃんじゃん手伝ってあげるわ。だから心配しなくていいわよ」

栞「そ、そんなの遠慮するっ!」

香里「やあねえ、冗談よ。栞の場合…やっぱり絵かしら」

栞「でも、私まだまだ上手くない…」

香里「もっと練習しなさい。でもってルーブル美術館にでもこっそり飾るのよ」

栞「そんなことしたら捕まっちゃうじゃない!」

香里「たしかに。捕らえるなんて言葉のくせに自分が捕まったら本末転倒ね」

栞「そういう問題じゃなくて!」

香里「焦らなくていいのよ、栞」

栞「あのねえ、お姉ちゃん…」

香里「まだまだ子供なんだから大丈夫よ」

栞「だからどうしてそういう問題にいきつくの!」


<おしまいだよっ>


後書き:ああ〜もうなんなんだ。
なゆちゃんの台詞はつい流れで出てきました。なつかし〜(笑)

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