真琴「うーん…」
名雪「どうしたの?真琴」
真琴「三尺って何かな、って思って」
名雪「尺ってのは長さの事でね、一尺は約30cmだよ」
真琴「30cmっていうことは、三尺は…」
名雪「約1mってとこだね」
真琴「ええっ!?…あぅーっ、ぴろ、顔が1mになったら嫌だよねぇ」
名雪「ぴろ?」
真琴「え!?あ、ううん、なんでもない」
名雪「そう?てっきり真琴に猫さんの知り合いが一緒に居るのかと思ったよ」
真琴「あ、あはははは(今傍に居るのがバレたら絶対やばいわよね、これは…)」
名雪「でもね真琴、大きな勘違いをしてるよ」
真琴「え?」
名雪「猫さんの顔が三尺になるわけないじゃない」
真琴「あ、そうだよね」
名雪「これはね“秋の雨でも盛大に受け入れようではないか”という寛大さのたとえだよ」
真琴「歓迎?」
名雪「そう。まず秋はスポーツの秋って言うよね?」
真琴「う、うん」
名雪「わたしは陸上部だからね。ばっちりスポーツなんだよ」
真琴「そういえばそうだよね」
名雪「でもね、雨が降るとさすがに陸上部はお休みなんだよ」
真琴「そりゃそうだよね」
名雪「それでも猫さんは、雨は大切だ、受け入れようって言ってるんだよ。凄いよね」
真琴「…ねえ、どの辺が受け入れてるの?」
名雪「さっき三尺について説明したよね」
真琴「うん」
名雪「猫さんの顔がそれだけ大きくなる!なーんて大げさに言ってることがそうなんだよ」
真琴「大きくなったら受け入れてるの?」
名雪「そうだよ。だって大きいと雨がたくさん当たるじゃない」
真琴「あ、そうか!」
名雪「そうそう」
真琴「なーんだぁ、そういうことだったんだぁ」
名雪「納得した」
真琴「うんうん、したした!へえ〜、猫って凄いのねぇ」
名雪「凄いも凄い、もの凄いよ。でもね、真琴」
真琴「なに?」
名雪「なるべくなら“猫さん”って呼ぼうね?」
真琴「え、う、うん…」
名雪「じゃないと、わたしの地獄の特訓につき合わせるよ」
真琴「な、何するのぉ?」
名雪「懸命に走るんだよ。地球を一周くらい」
真琴「あぅ…そんなに走ったら死んじゃうわよぅ!」
名雪「たとえだよ、たとえ。真琴ったらわかってないなあ」
真琴「あぅ…」
………………
香里「反応が良くても容赦ないわね…。さて『秋の雨が降れば猫の顔が三尺になる』ね。
これは“雨が降る日は暖かいので、寒がりの猫も顔を長くして喜ぶこと”よ」
栞「お姉ちゃん久しぶりの解説だね」
香里「折角だから終わりまで請け負ってあげるわ」
栞「わぁ、ありがとう」
香里「一つの言葉につきアイス一つ…」
栞「え?」
香里「を、没収してあげるわ。栞から」
栞「ちょ、ちょっと!」
香里「冗談よ」
栞「うぐっ…」
香里「それより栞、あんたにとって秋は何の秋?」
栞「そりゃあもちろん…」
香里「食欲の秋よねえ」
栞「違うもん!」
香里「次第に売れ行きが悪くなるアイスに哀愁を感じながら…」
栞「感じてないもん!」
香里「ひたすら食べ続けるのよね…」
栞「食べ続けてないったら!」
香里「まったく…太るわよ?」
栞「だから違うって!私の秋は芸術の秋!」
香里「あ、そうなんだ」
栞「そうそう」
香里「アイスのパッケージを見るのよね。今年はこんな新製品が出た〜とか」
栞「だから違うったら!」
<おしまいだよっ>