あゆ「そうなの?」
名雪「この草はね…悪者の行く手を遮るんだよ」
あゆ「…どういう事?」
名雪「たとえばあゆちゃんが食い逃げするとするよね」
あゆ「うぐぅ…そんなたとえヒドイ…」
名雪「けれどね、猫さんはすべての悪を見透かしてるんだよ」
あゆ「うぐぅ…」
名雪「犯人が自首する気が無いと判断した時、人気の無いところで…!!」
あゆ「な、無いところで?」
名雪「にょきにょきっと生えてくるんだよ」
あゆ「そうなの…?」
名雪「しかも猫さんの目に茎が付いただけの様な草だからね、とってもコワイよ〜」
あゆ「うわあ、ほんと恐そう…」
名雪「そしてテレパシーで語り掛けるんだよ。自首するにゃ〜…って」
あゆ「………」
名雪「“悪者に罪を再認識させる正義の草”だよっ」
あゆ「あのう、それで自首した人っているの?」
名雪「居るよ。でも中にはしない人もいてね…」
あゆ「うんうん」
名雪「そういう人は大抵周囲の皆から犯罪者のレッテルを貼られるんだよ、一生」
あゆ「うぐぅ、そうなんだ…」
名雪「たとえばあゆちゃんだね」
あゆ「え!?」
名雪「食い逃げしたのに猫目草の呼びかけ無視したでしょ」
あゆ「うぐぅ!ボクそんな声聞いてないし草も見てないよ!」
名雪「だから食い逃げといえばあゆちゃん、あゆちゃんと言えば食い逃げ、となってるんだよ」
あゆ「だってボクあの後ちゃんと謝りに行ったよ!」
名雪「呼びかけが来た時点で自首しないといけないんだよ?手遅れだよ」
あゆ「うぐぅ、そんなあ…だって本当に見てないし聞こえてないのに!」
名雪「まあ自業自得だね。食い逃げあゆちゃん」
あゆ「うぐぅ!ヒドイよぉ!!」
………………
美汐「…なるほど、月宮さんは食い逃げの常習犯でしたか」
栞「常習犯ではないと思いますが…。
えと、説明しますね。『猫目草』とはユキノシタ科の多年草です。
“山地の渓流の岸に生えて、高さは約20センチ。
全体はらかくて淡緑色で、葉は卵形です。
早春に、頂に淡黄色の小花を集めて開きます。
果実はサクカで縫線があり、ここから2裂するさまがネコの瞳孔に似るのでいいます。
また、ハナネコノメ・ツルネコノメ・ミヤマネコノメソウなど
数種の総称でもあります”」
美汐「色々種類があるのですね」
栞「そういう事ですね」
美汐「…困りました」
栞「どうしたんですか?」
美汐「面白い事が浮かびません」
栞「…浮かべなくてもいいと思いますけど」
美汐「そうだ。栞さんは月宮さんの食い逃げについてはご存知だったのですか?」
栞「え、ええ、まあ。でも、美汐さんも知ってると思ってましたけど…」
美汐「そうかもしれませんね」
栞「どういう事ですか?」
美汐「いえ…。では、栞さんは食い逃げとかしたことありませんか?」
栞「ありません」
美汐「アイスもないのですか?」
栞「ありません」
美汐「本当ですか?」
栞「そんな事言う人嫌いです」
美汐「ですが…好物というものがある以上…」
栞「だからそんな事言う人嫌いです」
美汐「仕方ありませんね…後日お願いします」
栞「そんな事言う人本当に嫌いです!」
<おしまいだよっ>