『猫目石』だよっ


名雪「猫さんの瞳ってうるうるとしてうっとりしちゃうよね」

あゆ「そうだね」

名雪「どんな乱暴な人でも、見つめられればイチコロだよ」

あゆ「そ、そうなんだ」

名雪「“見た相手を石化させてしまうほどの強烈な目線”という事だよ」

あゆ「せきか?」

名雪「そう、石化だよ」

あゆ「うぐぅ、それって危険なんじゃ…」

名雪「ギリシャ神話にそういう魔物が登場するよね。それはこの猫目石を携えていたからなんだよ」

あゆ「…うーん、ねえ名雪さん」

名雪「何かな?」

あゆ「猫目石なら、目線じゃなくて、石、じゃないのかなあ?」

名雪「そんな事言う人嫌いだよ」

あゆ「………」

名雪「猫さんの目線により石になる。何がおかしいっていうの?」

あゆ「だから、それだったら石猫目とか言うんじゃないかなぁ…って…」

名雪「えいっ」

こつん

あゆ「うぐぅっ!」

名雪「悔しいから小石で攻撃するよ」

あゆ「どういう理屈なの…」

名雪「言葉に偽りはないんだよ。間違いないんだから!」

ごすっ

あゆ「うぐぅっ!!…な、なんか石がおっきくなってるような…」

名雪「次は岩に挑戦するよ」

あゆ「わ、ま、待って!猫目石でばっちり合ってるよ!うん!!」

名雪「…遅いよあゆちゃん」

あゆ「え?」

名雪「もう取り返しはつかないよ。わたしは気合いを入れるよ」

あゆ「え、ええっ…」

名雪「はぁぁぁぁぁぁ…」

あゆ「うわっ、むちゃくちゃやる気になってる…」

名雪「気合いを入れれば岩でも投げられるって誰かが言ってたんだよ」

あゆ「や、やめた方がいいと思うけど」

名雪「絶対投げるからね」

あゆ「………」

ダッ

名雪「ああっ!逃げた!」

あゆ「うぐぅ、結局こんなオチなんてぇ!」

名雪「諦めるべきだよあゆちゃん!はぁぁぁぁ!」

あゆ「気合い入れながら追いかけてこないでぇ!」



………………



栞「名雪さん…酷いです…。えーと『猫目石』ですが、金緑石の一種ですね。

  “蜂蜜色で、結晶中に多くの線状の細孔が平行に集まり、

  磨くと猫の目に似た蛋白光の色彩を放ちます。装飾に用いる宝石の一つ”ですね」

美汐「そしてこれはキャッツ‐アイとも呼びます」

栞「はあ…」

美汐「どうかしましたか?」

栞「名雪さん酷いです…」

美汐「真似をされてしまったことですね」

栞「私の口癖って…そんなに使いやすいですか?」

美汐「それはもう、天下一品です」

栞「そういう事言う人嫌いです…」

美汐「ところで、栞さんは実際に猫目石を見た事はありますか?」

栞「いいえ…」

美汐「ではいずれお見せしましょう」

栞「本当ですか?」

美汐「本当ですよ」

栞「嬉しいです」

美汐「代償は何を望みますか」

栞「…代償がいるんですか?」

美汐「もしかしたら…」

栞「だったら見たくありません」

美汐「もう遅いです。契約してしまいました」

栞「契約?」

美汐「はい。たしかあれは名状しがたきもの…」

栞「そ、そんな危険な事なんかやめてください!」


<おしまいだよっ>


後書き:別の意味の強引度がどんどん増しています。
こんな調子じゃあ、新シリーズは多分無理だろうなあ。
っていうか、多分ことわざに限定しなかったのが問題ありだったんでしょうね。

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