あゆ「うぐぅ、そうなの?」
名雪「まず上手。…これはどういう事かわかるかな?」
あゆ「作業とかが上手って事じゃないの?」
名雪「ちっちっち、もっと大きいんだよ」
あゆ「もっと大きいの?」
名雪「そう。これは生き方なんだよ」
あゆ「生き方?」
名雪「そう。世界の中の一つの存在としていかに生きていくか…これを指してるんだよ」
あゆ「うぐぅ、大きいね…」
名雪「そして猫さんは言うまでもなく猫さんなんだけど…」
あゆ「…だけど?」
名雪「まあこれは代表者、って事だね」
あゆ「何の代表者?」
名雪「生きとし生けるものすべて、だよ」
あゆ「うぐぅ…」
名雪「そして爪。これはなんだと思う?」
あゆ「武器、かな?」
名雪「そうだよ、正解。じゃあ、たとえばどういう武器だと思う?」
あゆ「えーと、生きていく為に必要とか」
名雪「うんそうだね。半分はそうなんだよ」
あゆ「…半分は違うの?」
名雪「実はね、密かに“余計な武器”という意味も含めてるんだよ」
あゆ「ふ、ふーん」
名雪「最後に隠す。これはどういう事だと思う?」
あゆ「隠すんだから…あ、もしかして無くすってことかな?」
名雪「そう!へえ、今日はあゆちゃん鋭いね」
あゆ「うぐぅ、“今日は”は余計だよ」
名雪「さてさて、ここでまとめてみて」
あゆ「えっ?」
名雪「今まで言ってきた事柄をまとめてみて、って言ってるんだよ」
あゆ「え、えーと…生きるのが上手な人は余計な武器は無くす、かな?」
名雪「うーん…まあいっか。それで?」
あゆ「それで、って?」
名雪「結局この言葉は何を言いたいかって事だよ」
あゆ「何って…余計な争いは止めましょう、かな?」
名雪「まあおおよそはそういう事だよ」
あゆ「正確には違うの?」
名雪「これはね“人類への警鐘”なんだよ」
あゆ「うぐぅ…け、警鐘?」
名雪「そう。たとえば一度使えば死の大地にしちゃう、なんて武器は持つのやめなさい、ってね」
あゆ「それって…」
名雪「自然の中で生きてる代表者、としてならそんな力は持つのやめなさい、だよ」
あゆ「…そっか」
名雪「そうだよ。あ、ちなみにわたしあるスイッチを持ってるんだけどね…」
あゆ「す、スイッチ?」
名雪「これを押すとね、今言った様な武器がアシスタントに向かって一斉に降り注ぐんだよ」
あゆ「う、うぐぅ!?」
名雪「なんて、冗談だけどね」
あゆ「うぐぅ…タチが悪すぎるんだけど…」
名雪「堪能した?」
あゆ「するわけないよ!…うぐぅ、折角真面目だったのに」
名雪「心配しなくても、仮にこれが冗談じゃなくてもわたしは決して使わないよ」
あゆ「…どういう事?」
名雪「ちょっと考えればわかることだよ」
あゆ「うーん…?」
………………
栞「今回はいつになく真面目だった気がします。『上手の猫が爪を隠す』これは、
“優れた才能のある者は平素むやみに其の力を人に示さない”ことのたとえです」
北川「相変わらず意味はまったく違うけどな」
栞「いえ、そうでもありませんよ」
北川「…そうか?」
栞「はい。今回の名雪さんを私は少し尊敬してしまいます」
北川「へえ…」
栞「潤さんも頑張ってください」
北川「何をだ?」
栞「お姉ちゃんと一緒に言葉の解説などしてはどうでしょう」
北川「えっ!?あ、い、いや、それは…」
栞「冗談です」
北川「………」
栞「あれ?どうしたんですか?」
北川「そんな冗談なんて言うなよ…」
<おしまいだよっ>