祐一「そりゃあ、鳴き声とかじゃないのか」
名雪「ふふふ、実はスゴイ道具があるんだよ…」
祐一「…なんだよそれは」
名雪「ある場所にね、一枚の板があってね…」
祐一「どこだよそれは」
名雪「それは猫さんしか知らないんだけどね。その板に爪でがりがりと書くんだよ」
祐一「…何をだ」
名雪「猫さん自身の文字を」
祐一「本当かよ…」
名雪「“猫さんのメッセージボード”という事だよ」
祐一「…たとえばどんな文字を書くんだ?」
名雪「残念ながらそれは教えられないね」
祐一「だろうと思った…」
名雪「なに?そんなに猫さんの文字を知りたいの?」
祐一「…別に」
名雪「ふふん、そこまで言うんならしょうがないね。わたしがヒントを出してあげるよ」
祐一「いや、別に…」
名雪「祐一、猫さんって家の柱で爪を砥いだりするよね?」
祐一「聞いちゃいねえ…。で。爪を砥ぐのがどうしたって?」
名雪「あれはね、実は文字の練習をしてるんだよ」
祐一「文字の練習?」
名雪「あ、文の練習って言う方が正しいかな。家の柱で練習してるんだよ」
祐一「………」
名雪「こう書こう…いや待てよ、こう書こう…ってね」
祐一「あれはただひっかいてるだけだろ?」
名雪「まるで恋人に出す手紙みたいだよね。何度も書き直したりみたいな」
祐一「また聞いちゃいねえ…」
名雪「ね、祐一。わかった?」
祐一「ああわかった」
名雪「じゃあ復唱してみて」
祐一「は?」
名雪「できなければ祐一を猫さんの文字書き練習台にしてあげるね」
祐一「な…」
名雪「すっごく光栄だよ。猫さんの文字を自らの体に書き込めるわけだからね」
祐一「やめろー!!」
………………
栞「…ちゃんと復唱出来たんでしょうか、祐一さん…。
『猫板』 “長火鉢の端にわたす引板。げすいた”ということで、
よく猫がうずくまるのでこう言うそうです」
香里「たまーにあるわね、名雪の方がしっくりくるのが」
栞「うん、そうだよね」
香里「でもそれで間違って覚えると大変なことになるから気を付けなさいよ」
栞「大丈夫だよ、私は」
香里「ま、こうやってきちんと解説してるから大丈夫かしら」
栞「うんうん、大丈夫大丈夫」
香里「…とか言ってる人が一番危ないんだろうけどね」
栞「お姉ちゃん!」
香里「あらどうしたの栞、そんなに目くじら立てて」
栞「ううー、今回のお姉ちゃんなんだか凄くヒドイ…」
<おしまいだよっ>