『兄の物は猫の椀まで』だよっ


名雪「祐一お兄ちゃん」

祐一「…殴るぞ」

名雪「うー、ネタなのに…」

祐一「そんなふざけたネタをかますな!!」

名雪「怒るところじゃないよ。祐一、そう呼ばれると嬉しいんでしょ?」

祐一「誰からそんなガセネタを…」

名雪「栞ちゃんだよ」

祐一「あれは、栞が年下だから冗談で言ってみただけだ」

名雪「うー、じゃあわたしは呼んじゃいけないの?」

祐一「なんでそう呼びたいんだ」

名雪「解説のためだよ。兄が居ないと駄目なんだよ」

祐一「…わかったわかった、許してやる」

名雪「やったあ、さすが祐一お兄ちゃんだよ」

祐一「…変な気分だ。で、これはどういう意味だって?」

名雪「うん。実はね、兄弟姉妹の中でも、お兄ちゃんは極限に我慢をしてるんだよ」

祐一「どういことだ」

名雪「猫さんからの授かり物。椀までをお兄ちゃんはゲットできるんだよ」

祐一「意味が分からん…だいたい猫さんからの授かり物ってなんだ」

名雪「お家騒動があった時にね、猫さんが家族にそれぞれ物を授けてくれるんだよ」

祐一「そんな事実俺は聞いたこと無いぞ」

名雪「あれ、そうなの?まあ、なかなか巡り逢えないしね」

祐一「巡り逢えるもんなのかよ…」

名雪「でね、猫さんから小判だとか鈴だとか鰹節だとか、色んなお宝が支給されるんだよ」

祐一「何者だ、その猫は…」

名雪「その中でお兄ちゃんだけ決められてるんだよ。お椀まで…って」

祐一「…その、お椀までってのはどういうことだ」

名雪「“密かに実行されてるお兄ちゃんとしての我慢”だよっ」

祐一「おい名雪、俺の疑問は…」

名雪「祐一お兄ちゃん、気にしちゃ駄目だよ」

祐一「いいや、気にする」

名雪「…酷いよお兄ちゃん」

祐一「うっ…わ、わかった、気にしない」

名雪「やったよ」

祐一「…やっぱり気になる」

名雪「もう、仕方ないねお兄ちゃんは」

祐一「………」

名雪「お母さんに頼んで今度お家騒動を起こしてもらうよ」

祐一「それはちょっと…って、そもそもお家騒動って何を指すんだ?」

名雪「それは企業秘密だよ」

祐一「………」



………………



香里「相沢くんがお兄ちゃんなんて呼ばれる意味あったのかしら…。

   『兄の物は猫の椀まで』昔は長子が親の財産をそっくり相続する事になってたんですって。

   田畑、家屋はもちろん、家財一切猫の椀にいたるまで…。

   “家の財産はみんな長兄のものである”というわけなのよ」

栞「ということは、うちの財産はお姉ちゃんのもの?」

香里「実はね、生き別れの兄が居るのよ」

栞「また冗談言って…」

香里「ふっ…。それより栞、あんた相沢君の事お兄ちゃんなんて呼んでたの?」

栞「呼んでないって」

香里「呼んで相沢君を喜ばせてたんでしょ?もう…」

栞「だから私は呼んでないって!!」

香里「そこで実はお姉ちゃんなんて呼んでたのなら、怒るどころじゃ済まないいわよ?」

栞「うぐ、呼んでないのに…」


<おしまいだよっ>


後書き:兄…思えば居ないな(北川はそうかもしれない、なんて)
少し意識がもうろうと(謎)

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