祐一「まあそうだな」
名雪「通学途中にわたしよく見てるもん」
祐一「で、烏も木の上に居るのをよくみる、と」
名雪「そう!でもね、いつもそこに居るとは限らないよ?」
祐一「そりゃそうだろうな」
名雪「いくら猫好きのわたしでも、猫さん探して屋根の上を渡り歩いたりしないからね」
祐一「…そうなのか?」
名雪「そうなのかって…失礼だよ、祐一。わたし忍者さんじゃないんだからね」
祐一「いや別に忍者じゃなくても…」
名雪「それでね、例えば飼ってる猫さんが居なくなったとするよね?」
祐一「ああ」
名雪「そんな時!“あちらこちらを探すよりはとりあえずそこを探してみろ”って事なんだよ」
祐一「ほうほう、なるほどな」
名雪「でもね、この言葉には穴があるんだよ」
祐一「どんな穴だ?言わなくともなんとなく分かるが…」
名雪「さすが祐一だねっ。手前にも言ったけど、猫さんはいつも屋根に居るとは限らないよ」
祐一「そうだな」
名雪「だから!“こんな言葉に惑わされて忍者になろうなんて考えてるそこの君は甘い!”だよっ」
祐一「………」
名雪「スゴイよね。一つの言葉に、一見わからない警告が含まれてるなんて」
祐一「無理があるぞ」
名雪「ええっ?どこが?」
祐一「まず!烏を飼ってる奴は居るのか!?…いや、居るかもしれないが」
名雪「別に飼ってなくても、探す時の目安って事に使われるんだよ?」
祐一「…ああ、言われてみればそうだな」
名雪「そんな事も気付かないなんて祐一だめだめだよ」
祐一「…もういい!次に、忍者っていう点だ!!」
名雪「時代に逆行してるって?そんな意見は却下だよ。忍者は海外でも有名なんだからね」
祐一「いや、俺が言いたいのは…」
名雪「そんなに反論するなら祐一、屋根で生活してみて?」
祐一「は?」
名雪「そうすれば、猫さんが常に居ないってわかるよ」
祐一「そんなことしなくてもそれは分かってるって。俺が言いたいのは…」
名雪「早速お母さんと相談するね。祐一を屋根の上に…」
祐一「待てって!!」
………………
香里「屋根の上で暮らすなんて…名雪もとんでもないこと言い出すわね…。
『猫の居るのは屋根の上烏の居るのは木の上』
“物にはそれに適した場所がある”ってことよ」
栞「例えばどんな?」
香里「そうねえ。例えば相沢君かしら」
栞「祐一さんが?」
香里「そ。寒いのが極端に嫌いみたいだから、屋外での生活は似合わないわね」
栞「でも夏とかなら…」
香里「あ、なるほどね。さすが栞、冴えてるわねえ。いい子いい子」
なでなで
栞「…お姉ちゃん、変な冗談はやめてよ」
香里「ま、この辺で許してあげるわ」
栞「お姉ちゃん…」
<おしまいだよっ>