『猫の歯に蚤』だよっ


名雪「不届き千万な言葉が出たね」

真琴「だいたい想像はつくけど…どういう意味?」

名雪「想像がつくなら言ってみてよ」

真琴「え…。え、と…」

名雪「ほらほら、早く言わないとわたし怒るよ?」

真琴「あぅ、なんで名雪が怒るの…」

名雪「後10秒、9、8、7…」

真琴「わわっ!え、えっと、ちっちゃいことをいいことに狭い所に隠れてしまう?」

名雪「…少し近いけどかなり遠いね」

真琴「あぅーっ、どっちなのよう」

名雪「正しくは“自分の体型を利用して踏み込んではならない場所に逃げるたとえ”だよ」

真琴「そ、そうなんだ…って、結構惜しかったんだ」

名雪「イマイチ惜しくないよ」

真琴「どうしてよう」

名雪「踏み込んではならない、が抜けていたからだよ」

真琴「そう…」

名雪「猫さんのあんな所に隠れるなんて…絶対許せないよ」

真琴「えっと、名雪がもし蚤の立場だったらどうなる?」

名雪「ええっ!?そ、そんなこと言うなんて…真琴は鬼だよ!悪魔だよ!」

真琴「ちょっとお!少したとえてみたらどうなるか聞いただけなのに!」

名雪「冗談じゃないよ。あんな蚤なんかにたとえられて黙っていられないよ」

真琴「あぅ、ごめん…」

名雪「…素直に謝るところが真琴はえらいね」

真琴「う、うん」

名雪「でもわたしをたとえたところはやっぱり許せないよ」

真琴「あぅ…」

名雪「だから逆にたとえ返しちゃうよ。真琴が蚤の立場だったらどうする?」

真琴「あぅ、理不尽だぁ…」

名雪「ほらほら、どうするの?」

真琴「えっと、秋子さんの傍に逃げる」

名雪「………」

真琴「どうしたの?」

名雪「ズルイよ真琴。そんな答えだったらわたしもそう答えるよ」

真琴「一体どう答えると思ったのよぅ…」

名雪「だって、蚤って言ったし…」

真琴「蚤になんてなれるわけないじゃない。真琴はそういう意味でいったんだから」

名雪「うーん、少しやられた気分だよ」

真琴「あ、もしかして真琴の勝ち?」

名雪「そうなるね…」

真琴「わーいっ」



………………



香里「平和でよかったわね、はいはい。『猫の歯に蚤』ってのは、

   “猫が自分の歯でノミをかむことはめったにないことから

   まれなことや不確かなことのたとえ”ってことよ」

栞「どうやって蚤なんてかめるのかな…」

香里「上手く当たればかめるんじゃないの」

栞「難しそうだよね」

香里「そんな事気にする前に別のこと気にしてよ」

栞「え?何?」

香里「栞の頭に毛じらみがたくさんいたわよ」

栞「えええっ!?」

香里「なんてのは嘘だけど」

栞「…もうっ!お姉ちゃん!」

香里「そうじゃなくて、ノミとりしてあげるからそこに座りなさい」

栞「ええっ?」

香里「ほらほら、猿山の猿になった気分で。栞ならすぐでしょ?」

栞「ならない!」


<おしまいだよっ>


後書き:どうでもいいことなんですが、
なゆちゃんの“正しくは”って書いてる最中に、
“正しくねーやろ!”って思わずツッコミそうになりました。

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