真琴「方法?」
名雪「あ、方法っていうか、心構え、に近いかな」
真琴「ふーん…。それで、どういう意味なの?」
名雪「どういう意味だと思う?」
真琴「うーん…あんまり猫さんのことを心配しすぎちゃいけないってことかな」
名雪「基本はそういうことだよ。じゃあどういう心配の仕方だといけないと思う?」
真琴「どういう…って、どういうこと?」
名雪「事故とか病気の心配はして当たり前だよね」
真琴「そうよねぇ」
名雪「だからといって、つきっきり過ぎるのもよくないよ」
真琴「たとえば?」
名雪「街中にいる猫さんを思い出してごらんよ。誰かが必ず傍に居る、ってことはないでしょ?」
真琴「そりゃあ、中には野良猫さんもいるんだし」
名雪「細かいことを気にするのはよくないよ」
ぶにゅ
真琴「あぅーっ!」
名雪「こんな時のためにすらいむを用意してたんだよ」
真琴「そんなために用意しないでよぅ!」
名雪「役に立ってよかったよ」
ぶにゅ
真琴「あぅーっ!気持ち悪いぃ!顔に付けないでぇ!」
名雪「さて、話を元に戻すよ」
真琴「あぅーっ、これ取ってぇ~」
名雪「極度の心配で四六時中傍に居られるとさすがに猫さんも迷惑なんだよ」
真琴「あたしも迷惑してるわよぅ。だから取ってぇ~」
名雪「“ある程度の距離はお互いに必要”ということだよ」
真琴「あぅーっ、スライムを取って~」
名雪「ダメだよ。しばらくそうしてるといいよ」
真琴「どうしてよぅ~」
名雪「近くに居られすぎることがいかに嫌なものかよくわかるからね」
真琴「そんなことしなくてもわかるわよぅ!」
名雪「けど…取ろうとすると今度はわたしの手にひっついちゃうよ」
真琴「へ?」
名雪「だからわたしは取らない。ふぁいとっ、だよ」
真琴「ふぁいとっ、じゃないわよぅ!」
………………
香里「栞もあんまりべたべたしすぎないようにね」
栞「誰にべたべたするの…」
香里「さあ?さて『心配は猫をも殺す』ってのは、
“猫でさえ心配事が多いと死ぬことがあるのに、
人間ならなおさら心配事で命を縮めてしまう”ということよ」
栞「名雪さんが言ってるのは、当たらずとも遠からずって感じなんだね」
香里「そうなるわね。真琴ちゃんは相変わらず悲惨だけど…」
栞「そんなことよりお姉ちゃん、私が誰にべたべたするっていうの?」
香里「自分で考えなさい」
栞「どうせまたアイスとか言って…」
香里「違うわよ」
栞「あれ?違うの?」
香里「アイスはたしかにべたべたするけどね」
栞「違うんだ…。うーん…」
香里「昔はこぼしまくってて大変だったわねえ」
栞「こぼしてないもん…」
香里「開けたすぐのカップをぺたん、って膝の上に。あの時の悲惨さって言ったら…」
栞「だからこぼしてないもん!」
香里「毎回あたしはハラハラしてたわ。おかげで寿命が縮まったじゃない。責任取ってよね」
栞「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!」
<おしまいだよっ>