『うぐぅ王国へようこそ』

それはあゆが夢から覚めたある日のことだった。
「ふわああ・・・。う〜ん・・・。」
大きなあくびをして、腕をめいっぱい伸ばす。
眠っていた体を揺り動かしての活動の準備だ。
「あ、あれ?」
と、周りを見てあゆは異常に気がついた。
何故か自分は座ったまま寝ていた。その証拠に、今は椅子に座っている。
肘掛けから飾りがたれている、やけに豪華な椅子だ。
しかし異常なのは椅子だけではない。周りが真っ暗だったのだ。
目を凝らしても何も見えない。かろうじて自分の近くが識別できる、という程度である。
「ここ・・・どこ?」
言いしれぬ不安を感じて、あゆは立ち上がろうとする。
しかしその時、さあっと光が射し込んだ。
強烈なものではなかったが、いきなりのことに彼女は思わず目を伏せる。
ようやくそれに慣れた頃に、自分が今居るところはだだっぴろいホールだと見てわかった。
それと同時に、自分の格好も再認識できる。
きらびやかな衣装、そして大量の金細工を身につけていたのだ。
そして・・・
「お目覚めか、うぐぅ様。」
「ゆ、祐一君?」
自分の座っている位置から2,3メートル離れた場所に、祐一が頭を垂れて膝をついていた。
彼の格好は至って普通。今まであゆが見てきた祐一そのものであった。
「祐一君、ここどこ?」
「何を言ってるんだうぐぅ様。会議の途中に寝やがって、俺は相当迷惑したぞ。」
様づけで呼んでいるものの、敬語では無い。
そんなことよりも、あゆにとって非常に気になることがあった。
「あ、あの祐一君。」
「なんだ、うぐぅ様。」
「うぐぅ・・・ボク、うぐぅじゃないよ。」
困ったように告げると、祐一はめまいを起こしたようにその場にばたりと倒れ込んだ。
驚いて駆け寄ろうとしたあゆだが、祐一はすぐにものすごい形相で起きあがる。
「今何と言った!?お前はうぐぅ様なんだぞ!!」
「う、うぐぅ様?」
「うぐぅ王国の王がそのようなことを言われるとは、なんて嘆かわしい・・・。」
「そんな急に言われても・・・って、うぐぅ王国!?」
「そうだ。おまえはこの国の王。将来の行く末を担う大事な・・・」
「でもボクはうぐぅじゃなくてあゆ・・・」
「なんだと!?まだそんなことを・・・舞!」
パチンと祐一が指を鳴らす。
すると、あゆの背後から髪の長い女剣士(制服だが)が現れ、あゆをはがいじめにした。
「う、うぐぅ!?」
「・・・・・・。」
「よーし舞、そのまま抑えてろよ。
さて、おいたがすぎたうぐぅ様にはそれ相応の罰を受けてもらわねばならないな。名雪ー!」
祐一が片手をあげて叫ぶと、今度は普段着の名雪が現れた。片手にびんを持っている。
「だめだよっ、うぐぅ様。ちゃんと政治を行わないと。」
「な、名雪さん。助けてー!」
「おしおきだよ〜。」
にこにこしながら、名雪はびんを片手にあゆに近づく。
そして、もう片方の手に持っていたスプーンで中身を一すくい。
「お母さん特製のおしおきジャムだよ〜。」
「わっ、わっ、わー!!」
暴れるあゆ。しかし舞にがっちり抑えられて逃げ出せない。
そうこうしているうちに口を無理矢理開かされ・・・
ぱくん
「!!!」
「食べたねっ。じゃあそれをちゃんと飲み込んで。」
「う、うぐぅ・・・。」
涙目であゆは言われるがままにジャムを食す。
不思議な不思議な味が口内を体内を満たしてゆく・・・。
そんな彼女の元へ、今度は祐一が歩み寄ってきた。
「どうだうぐぅ様。まだこれでも自分はうぐぅじゃないと言い張るか?」
「う、うぐぅ、わかったよ・・・。」
「よし。名雪、ご苦労だったな。舞もうぐぅ様を離してやれ。」
祐一の指示に、舞はあゆをぱっと離す。
あゆはへなへなと玉座に座り込んだ。
「ところで祐一、お母さんがさっき呼んでたよ。」
「なんだって?」
「さあ・・・。」
「部屋の掃除なら勘弁してくれ。」
「祐一、自分の部屋くらい自分で掃除してよ。」
「だからいつも言ってるじゃないか。わざわざ俺の部屋まで掃除しに来るなって。」
「ダニやシロアリとか沸いてそうだからわたしそういうの嫌だよ。」
「失礼なことを言うな!!俺の部屋は水瀬家一・・・」
「何?」
「すいません、不潔です、多分。」
一体何の会話をしてるんだろう?とあゆはしきりに首をかしげていた。
しかしそれと同時に、やっぱりこの二人は祐一君と名雪さんだと確証も得ていた。
そしてちらりと後ろを振り返る。
「・・・・・・。」
無表情で立つ舞を見て、改めて首を傾げた。
すると舞も同じように首を傾げる。まるで鏡写しだ。
「あ、あの・・・。」
「・・・?」
「キミは祐一君達とどんな関係?」
「・・・・・・。」
舞は答えなかった。いや、何かを考えているようにもみえる。
そのままの状態でいくらかの時間が経ったその時であった。
ずずーん!
大きな音とともに部屋がゆれる。
立っていた者達は思わずひざをついた。
「な、何事だ!?」
一番に叫んだ祐一。
と、そこへたたたたっと一人の女性が駆けてきた。
ここにいるメンバーの中ではおそらく最年長である・・・
「秋子さん!一体何が!?」
「大変よ、祐一さん!あ、うぐぅ様はちゃんと起きたのね。」
慌ただしい現実から一気にずるっと引き戻される様に、あゆはこけた。
「うぐぅ・・・秋子さんまでひどい・・・。」
ぽかっ
「うぐぅ、イタイ・・・。」
「うぐぅ様、まだそんな事を言ってるのか?名雪、もう一度ジャムだ。」
「了解。」
瓶を片手に、名雪があゆに近づく。
「わ、わわっ、冗談だよっ!ボ、ボクはうぐぅ。」
「良かった、やっぱりうぐぅ様は正気だよ。」
「う、うぐぅ・・・。」
やっぱりあゆは泣きそうな顔だ。
「ところで秋子さん、改めて一体何が?」
「そうそう、それそれ。実はね、隣のあぅーっ帝国が攻めてきたのよ。」
「なんですって!?」
思わず祐一が聞き返したその時、部屋の扉がバン!と開く。
するとそこに、肉まんの座布団に乗ったあぅーっ・・・もとい、真琴が居た。
座布団には棒が付いていて、それを左右でお供のものが支えている。
一人は天野美汐。そしてもう一人は・・・
「佐祐理!!」
「舞・・・。」
倉田佐祐理であった。
彼女を見つけるや否や、舞は駆けてゆく。
だが、祐一の制止によって踏みとどまった。
「あぅーっ帝国の帝王あぅーっだな!王自らがくるとは・・・。」
「ふふん、観念しなさいよ。あたしの手にかかればもうこの国はおしまい。
・・・と思ったけどうぐぅを倒さないと駄目みたいね。美汐、ちょっと降ろして。」
「自分で降りなさい。」
ちらっと下を見た真琴に対し、美汐は冷ややかに言い放った。
ちなみに反対側の佐祐理はじっと舞を見たままである。
どうやらあぅーっ帝国でも王に容赦はしないらしい。
「た、高いんだけど・・・。」
「あぅーっ様、甘えは許されませんよ。」
「あぅーっ・・・。」
しぶしぶと、真琴は台座から降り始めた。
足先をふらふらと確かめるようにゆっくりと。
しかし途中ですべらせ、ぺちんと地面に尻餅をついた。
「あ、あぅーっ・・・。」
「ほらほら、泣いちゃ駄目です。」
「あぅーっ・・・。」
涙ぐむ真琴の目を、美汐がハンカチでぬぐう。
あゆ達は、彼女らのそんな光景をじっと見ていた。
「やるな・・・。見事なあぅーっだ。うぐぅ様、油断するなよ。」
「うぐぅ・・・。祐一君、言ってることがよく分かんないよ。」
「あのあぅーっに対抗できるのはうぐぅ様しか居ないってことだ。」
「対抗って・・・何をするの?」
「うぐぅだ。」
「う、うぐぅ?」
「そう、うぐぅだ。」
「ふぁいとっ、だよ。うぐぅ様。」
「頑張ってくださいね。」
「・・・・・・。」
「う、うぐぅ・・・。」
必要以上に期待がこもった皆の視線が非常にイタイ、あゆはそう思った。
そしてさっぱりわけがわからなかった。一体自分は何をすればいいのか。
困った顔で真琴の方を見やる。すると・・・
「あぅーっ様。まずは佐祐理に任せてください!」
お供の一人である佐祐理がこちらに駆けてきた。
それと同時に、あゆ側からも一人の女性が駆け出す。
「佐祐理!」
舞だった。剣を両手に構えている。そして・・・
ざん!
剣が真上から振り下ろされる。
しかしそれを、佐祐理は受け止めていた。真剣白刃どりというやつだ。
「舞・・・佐祐理は、舞を説得しに来たんだよ。」
「説得なんか要らない・・・。私は・・・うぐぅ様に従う!」
「まだそんなこといってるの?あぅーっ様の元でがんばろ?
仲がよかった昔に帰ろう?ね?」
「駄目・・・。」
「祐一さんが居るから?」
「・・・・・・。」
「いずれうぐぅ王国が滅ぼされたら、結局一緒には居られなくなるんだよ?」
「・・・・・・。」
「だから、一緒に舞も説得して、祐一さんを。」
「・・・・・・。」
二人は語り合いながら、お互いに一歩もひかない。
そんな光景をただ唖然と、あゆは眺めていた。
「な、なんなのこれ。こんな戦い、ボクにはできないよ。」
「あぅーっ!」
「しまった!帝王がやってくる!!」
「お母さん、一旦逃げよう?」
「だめよ。うぐぅ様の戦いを私たちは見届けないと。」
「え?ボク!?」
真琴が猛ダッシュでやってくる。あゆのところまでやってっくる。
そして・・・
「あぅあぅあぅーっ!」
猛り出した。
「あぅあぅあぅーっ!」
「う、うぐぅぅぅぅ!!」
声がうるさすぎるわけでもない、力で押さえつけられているわけでもない。
ただ真琴は叫んでいるだけ。あゆの目の前で。
それが非常に恐ろしいものであり、あゆは頭を抱えてうずくまっていた。
ただひたすら、うぐぅを連発していた。
「あぅーっ!あぅーっ!あぅーっ!」
「うぐぅ!!」
「あぅーっ!あぅーっ!」
「うぐぅ!」
「あぅーっ!!!」
「うぐぅ・・・。ボク・・・なんかもうへろへろ・・・。」
耐え切れなくなったのか、あゆの力が次第に抜けてきた。
もはやなすがままに真琴の攻撃を受けているだけである。
「大変だ!うぐぅ様が!」
「うぐぅ様、ふぁいとだよー!」
「負けちゃ駄目よ、うぐぅ様!あなたが倒れたらこの国はお終いなのよ!!」
「う、うぐぅ、そんな事言われても・・・。」
「あぅあぅあぅーっ!!」
「うぐぅ!」
訳も分からず、あゆはやはり力が抜けて行った。
やがて意識が遠のく・・・
「そんなこと言う人嫌いです!」
「!!??」
突如部屋に響き渡る新たな声。
その場に居た全員が水を打ったように静かになった。
見ると、扉の傍にストールを羽織った少女、美坂栞が立っていた。
その両脇には姉の香里、そして北川が・・・。
「おおっ!あ、あれは世界各地を巡礼しているそんな事言う人嫌いです教の教祖!」
いかにも説明っぽい祐一のセリフ。それで皆はいっせいに彼女に注目した。
「話はすべて聞かせてもらったわ。うぐぅ王国にあぅーっ帝国が攻め入ったのね。」
「世界は平和になるためにある!今から教祖様が二人の王に説法をする!よく聞け!」
学制服姿の教徒二人(香里と北川)が栞に向けて一礼すると、
栞は軽く頷いた後に歩き出した。
しかしそんな彼女の前に立ちふさがるものが居た。天野美汐だ。
「そんな事言う人嫌いです教教祖さん、あうーっ様の邪魔はしないでください。」
「天野さん、あなたこそそこをどいてください。」
「どうしてもというなら私を倒してからにしなさい。」
「・・・そんな事言う人嫌いです。」
びしっ!
栞の一言は、不思議と美汐にクリティカルヒット。
彼女は“くっ”とひざをついた。
再び歩き出した栞。今度は、いまだ対峙しつづけている舞と佐祐理の傍へ。
「あははーっ、とうとう教祖様がきちゃいましたねーっ。」
「佐祐理・・・。」
「そんな事言う人嫌いですー!」
びしびしっ!
意味不明なままに、今度は舞と佐祐理にクリティカルヒット。
膠着状態がとけ、二人はぺたんと地面に座り込んだ。
「お、おそるべし、そんな事言う人嫌いです教教祖。」
「祐一、うぐぅ様大丈夫かな?」
「見守るしかないだろ。」
「でも・・・。」
「相沢君の言う通りよ、名雪。」
「お前らはおとなしく教祖様の行動を見ていろ。」
「「!!!」」
いつのまにか、香里と北川は祐一達の傍までやってきていた。
下手に邪魔をするなら容赦しないぞということであろうか。
そんな二人の気迫に押され、祐一も名雪もやはりじっと見入るだけになる。
一方、真琴とあゆ。あゆはともかく、真琴はすっかりおびえていた。
有能な部下二人が一瞬にしてやられてしまったのだから。
「あ、あぅーっ・・・。」
「うぐぅ・・・。」
いや、やはりあゆもおびえていた。
すっかり争いを止めている。そこへ栞はやってきた。
「お二人とも。」
「あぅーっ・・・。」
「し、栞ちゃん・・・。」
「さて、あぅーっさんにうぐぅさん。」
「うぐぅ、ボクはあゆなのに・・・。」
あれだけジャムを食べさせられたが、あゆはやはり否定の意をとった。
「そんな事言う人嫌いです。」
びしっ!
「あ、あぅーっ・・・。」
あゆに向けられたはずの言葉だったが、それは真琴にクリティカルヒット。
あぅーっ帝国のあぅーっ帝王はあっさりとその場に崩れ落ちた。
「・・・うぐぅさんは何故平気なんですか?」
「う、うぐぅ、ボクはうぐぅじゃなくてあゆ・・・」
「そんな事言う人嫌いです。」
しーん
「あ、あれっ?」
「うぐぅ・・・。」
「さすがですね。困りました・・・。」
人差し指を唇に当て、考え込む。
あゆはあゆで、どうしたらいいかわからずその場に立ち尽くしていた。
遠くから見ていた祐一たちも同じく立ち尽くしている。
特に香里は驚きを隠せない。
「そんな・・・なんでそんな事言う人嫌いですが通用しないの?」
「それは、うぐぅ様だからな。」
「やっぱりうぐぅ様ってすごいんだね。」
何故か胸を張って答える祐一。名雪は素直に感心している。
そんな中で、北川は不安の色を顔に浮かべていた。
「しかしこのままじゃまずいな・・・。」
「しまった!バニラアイス!!」
ハッと気付いた様子の香里の声。
それと同時に、栞は胸を押さえて苦しそうにし始めた。
「ど、どうしたの、栞ちゃん?」
「アイスが・・・切れてきました・・・。」
「アイス?」
「苦しい・・・。」
かくんとひざを地面につく。それを慌ててあゆは支えた。
「だ、大丈夫?」
「うう、アイスを、バニラアイスを。チョコレートでもいいです。
イチゴでもいいです。アイスを・・・。でも辛いのは駄目です・・・。」
「・・・・・・。」
辛いアイスなんて果たしてあっただろうかと考えながらもあゆはおろおろとするばかり。
と、そんな彼女たちの傍に、すっと人影が現れた。
頬に手を当て、にこやかに笑っている・・・。
「秋子さん?」
「うぐぅ様、こうなったら私の本当の力を見せてあげますね。」
「・・・・・・。」
まるで救いの女神の様に思ったが、“うぐぅ様”と呼ばれる事にはやはり納得がいかないあゆ。
それでも、彼女に栞を任せることにした。
一度目を閉じ、やはり頬に手を当て、こう言った。
「了承。」
ぱああああーっ!!
“了承”という一言が飛び出した途端、辺り一面優しい光に包まれる。
すると、あれだけ苦しがっていた栞が元気いっぱいの顔を取り戻した。
栞だけではない。倒れていた皆が起き上がったのだ。
それぞれ不思議そうに辺りをきょろきょろとしている。
やがて各々の視線は、神々しい光を放っている秋子に集まった。
「あなたはひょっとして・・・了承神様ですか?」
おののきながら栞が尋ねると、彼女はこくりと頷いた。
「ええそうです。隠しててごめんなさいね。」
にこりと笑い、手を頬にあてる。おなじみの動作であった。
ほとんどのものはただ呆然と見ているばかり。
その中で名雪はぽつりと呟いた。
「わ、びっくり。お母さん神様だったんだ・・・。」
「名雪、あんた全然びっくりしてるように見えないわよ。」
「うー。」
「でもほんと凄いわね。あれだけの力を持ってる・・・神様なんだから。
奇跡って起こるものなのね。」
「しかもつかの間じゃないですね。永遠の・・・。」
「わ、美汐ちゃん。」
会話する名雪と香里の傍に、いつのまにか美汐がやってきていた。
そして、それぞれの手をとりあう。
「争いは、もう終わりです。了承神様がいらしたなら、もう・・・。」
「美汐ちゃん・・・。」
「そうね。これでやっと、あの子も教祖という堅苦しいことから解放されるのね。」
三人はお互いに笑い合っていた。
それを遠くから見ていた、舞と佐祐理。
同じように、手を互いにしっかりととりあう。
「舞、今までごめんね。でも、佐祐理は、佐祐理は・・・。」
「もう言わなくていい。佐祐理の気持ちは、分かってるから。」
「舞・・・。」
二人とも、実に幸せそうな表情を浮かべていた。
「相沢、お前これからどうするんだ?」
「どうするって・・・秋子さんがあの了承神だって分かった今、争いは無意味だしな。
ほんと驚きだ。あの、伝説の、すべてを受け入れてしまう了承神がこんな身近に・・・。」
「だよな。もはやそんな事言う人嫌いです教も解散だろうしな。」
北川と祐一。ぱっと見笑顔ではなかったものの、二人は何かを決意したようであった。
穏やかになった皆を見回しながら、光源の女性はにこやかに呟く。
「さて、あぅーっ帝王・・・いいえ、真琴。」
「え・・・?」
「もう、侵略などしてはいけませんよ。」
「う、うん。」
こくりと頷く。そして笑顔になる。
“これが了承神様の力なんですね”と、栞も静かに笑顔をたたえていた。
「あ、あの、秋子さん。」
「うぐぅちゃん、辛い思いをしましたね。
でももう大丈夫、これからは平和な世界が訪れるでしょう。」
「う、うぐぅ、ボク、あゆなんですけど・・・」
「さて。」
あゆの訴えを無視し、秋子は手を天に翳した。
「これからも私はこの地を見守りつづけます。」
「お母さん・・・。」
「心配しないで、名雪。私は人の姿を借りてずっとここに居続けるから。
あなたは私の大切な娘ですものね。」
「良かった。」
ホッと胸をなで下ろす名雪。
秋子はそんな彼女のそばにより、そっと抱きしめる。
そして、皆の間で拍手が沸き起こった。
全員が彼女の元へと寄る。
と、次の瞬間には、秋子は光を失っていた。元の人間に戻ったということだ。
「秋子さん。」
「なあに、真琴。」
「これからは、うぐぅ王国を中心として皆暮らしていこうと思うの。」
「それはいい案ね。さあうぐぅ様、玉座に座って。」
「う、うぐぅ・・・。」
全員に注目され、あゆは戸惑った。
「あ、あの、ボクは・・・。」
「さ、うぐぅ様。」
「遠慮しないで。」
「座ってください。」
「うぐぅ・・・。」
背中を押され、結局あゆは玉座へと腰掛けた。
「さあうぐぅ様、平和のために一言!」
祐一が呼びかける。
それに、もはやヤケになってきたあゆは口を大きく開けた。
「うぐぅ!!」
≪ばんざーい!!うぐぅ王国ばんざーい!!≫
「う、うぐぅ・・・ボク、一体どうなるの?」
歓声と万歳が沸き起こる中、あゆは孤独に宙を見つめていた。
それでも皆の頑張りにより、うぐぅ王国は末永く繁栄したそうな。






「ではうぐぅ様、今日の予定を言うぞ。」
「うぐぅ・・・祐一君、ボクいつまでこんなことやってればいいの?」
「心配しなくてもタイヤキはしっかりおやつに入ってる。
えーと、この後うぐぅ会議、そしてうぐぅ予算案の検討。そして・・・」
「うぐぅ、誰か助けてー!!」

<うぐうぐぅ>


あとがき:・・・ノーコメント(爆)と言いたいけどそういうわけにはいかないか。
つーかねえ、自分で書いててもわけがわかりません。
なんなんだ、この世界設定は・・・。
あゆは一体どんな策略にはまったんだ・・・。
つーか呼び方失敗したかな・・・。まあいっかあ、うぐぅ様で。
ちなみに冒頭にあった“最初に”は削除しました。
なんつーかまあ、やっぱりこれも一つの作品、ですしね。
しかし・・・本当に訳がわからん・・・。

2001・5・25