放課後になり、部活に出る名雪を見送った後、俺はまっすぐに家へと帰った。
「ただいま〜。」
「お帰りなさい、祐一さん。」
笑顔で秋子さんが出迎えてくれた。
早速昼間栞から聞いた案を話してみる。
「・・・というわけで、イチゴジャムを用意して欲しいんです。」
「いいですよ。早速持ってきますね。」
あっさりと承諾を得て、俺は秋子さんからイチゴジャム入りの瓶を受け取った。
・・・なんか簡単にいきすぎてるような。
「それにしてもいい案ですね。好物で名雪を起こそうなんて。」
「でしょう?俺はこれになるほど納得しましたよ。」
「今まで気づかなかった事に悔やまれます。」
頬に手を当て、笑顔で告げる。
そこはかとなく、悔しそうにはさっぱり見えない秋子さんであった。
「頑張ってくださいね、祐一さん。」
「はい。」
「失敗してもめげちゃダメですよ。」
「・・・・・・。」
なぜ失敗?やっぱり悔しいんだろうか。
しかし秋子さんの性格を考えると、わざわざそんな言葉を紡ぐはずもないだろうし。
・・・考えるのはよそう。とにかく俺は、栞の案を実行するのみだ。
その後、遅くに帰ってきた名雪を加えた夕食を終えて部屋に戻る。
もちろんイチゴジャムの事は名雪には内緒だ。
知ればおそらく、効果が薄まるどころか無くなりそうだからな。
やがてそろそろ寝ようかという時刻になる。
目覚ましをセットし、その傍にイチゴジャム入りの瓶を置く。
さて、明日が楽しみだ・・・。
『朝〜、朝だよ〜。朝ご飯食べて学校行くよ〜。』
「・・・・・・。」
『朝〜・・・』
カチッ
いつもの目覚ましの音で起きあがる。
朝ご飯か。そう言えなくもないな。
のびをした後に俺は含み笑いを漏らす。うまくいけば今日で苦労とおさらばだしな。
隣の部屋で鳴っているたくさんの目覚ましの音をBGMに着替える。
支度をし、俺は部屋を後にした。当然イチゴジャム入りの瓶を忘れずに。
ドンドンドン
「おーい、名雪ー!」
戸を叩いて起こそうとする。しかし返事はなかった。
ドンドンドン
「朝だぞ、起きろー!」
「・・・うにゅ。」
中から聞こえる謎の返事。
普通ならここで更に呼び続けるところだが・・・
「入るぞー!」
俺は扉を開けて中に入った。
イチゴジャムを試したくてうずうずしていたからだ。
先ほどまでやかましかった部屋が嘘のように今は静かだ。
聞こえてくるのはただ、名雪の寝息だけ。
「くー。」
やはり寝ていた。
やはり謎の返事は当てにならなかった。
やはり例の目覚ましを使うしかない!
確信した俺は、わくわくしながらイチゴジャムの瓶を近づけた。
ふたを開け、においが名雪の元へと届くように。
「ほ〜ら名雪、イチゴジャムだぞ〜。」
「くー・・・。」
「お前の大好きな、幸せにしてくれるイチゴジャムだぞ〜。」
「くー・・・イチゴ・・・ジャム・・・。」
「そうだ、イチゴジャムだ。だから起きろ〜。」
「ジャム・・・イチゴ・・・ジャム・・・イチゴ・・・ジャム・・・。」
のそり
名雪は体を起こした。顔をしきりにイチゴジャムの瓶に近づけようとする。
「起きたか?」
「うん・・・イチゴジャム・・・。」
「よし、早く着替えて降りてこい。下で待ってるからな。」
「うん・・・イチゴジャム・・・。」
「・・・名雪?」
「うん・・・イチゴジャム・・・。」
「・・・・・・。」
なんだか、起きたというように見えない。
相変わらず目は閉じてるし、ひたすら同じセリフを繰り返している。
それでも俺はこの目覚ましの効果を信じたかった。
「名雪、起きてるよな?」
「うん・・・イチゴジャム・・・。」
「早く着替えて降りてこい、な?」
「・・・うん。」
こくりと頷く。
そして、俺が部屋を後にすると着替えをはじめたようだ。
うん、この様子なら多分大丈夫だろう。名雪はあれで起きたはずだ!
根拠のない確信を胸に、一階へと降りてゆく。
食卓では、秋子さんが料理を並べていた。
真琴の姿はなかった。きっとまだ寝ているんだろう。
「おはようございます。」
「おはようございます、祐一さん。名雪は起きましたか?」
「ええ、ばっちりだと思います。」
「それなら良かったわ。さ、どうぞ。」
「いただきます。」
勧められるまま、俺は朝食をとり出した。
しかし数分後、降りてきた名雪により手が止まる。
なぜなら、私服でテーブルに突っ伏してしまったからだ。
「くー。」
手にトーストとイチゴジャムを塗るためのナイフを持ったまま動かない。
それも当然だ。寝ているのだから。
「名雪、また寝ちゃいましたね。」
「失敗か・・・。」
「しかも制服じゃないですね。」
「くそ、起きたと思ったのに。」
「困ったわね。」
笑顔で言われてもあまり説得力がないような。
そんなことよりも、このままだと遅刻する!!
「起きろ名雪!」
「くー。」
「遅刻するだろうが!!早く朝食終わらせろ!!」
「うにゅ・・・イチゴジャム・・・おいしい・・・。」
「食ったか?食ったな?食ったんなら早く行くぞ!!」
「うん・・・。」
幸運にも、朝食を食う夢を見てくれたようだ。
慌ててひっぱり起こし、食卓を後にしようとする。
「じゃあ秋子さん、このまま行ってきます。」
「あっ、待ってください祐一さん。」
「はい?」
「これをお守り代わりにどうぞ。」
そういって秋子さんが手渡してきたのは、目覚まし用にと使用したイチゴジャムの瓶であった。
「いや、あの・・・。」
「役に立つはずですよ。」
何の役に立つかは理解できなかったが、とりあえずそれを受け取ることにした。
「では行ってきます!」
「行ってらっしゃい、気をつけてね。」
笑顔で手を振る。名雪もそれに応えて寝ながら手を振り返す。
そんなこんなで、ちゃんと制服にも着替えてもらい、家を後にした。
・・・お守り。
なぜ秋子さんがそんなことを言っていたかは、通学中にやっとわかった。
眠ってふらふらしている名雪を、イチゴジャムで誘導してやるのだ。
俺が瓶を手に持ち走っているだけで、名雪はしっかりとその後をついてくる。
なるほど、こういう使い方があったな。気づかなかった。
やはり秋子さんはただ者ではないと悟った。
そして学校。なんとか間に合った。
当然ながら俺はイチゴジャムを持ってきていた。
「・・・これを四六時中携帯しなきゃならなくなったら嫌すぎる。」
「あ、あれっ?」
昨日と同じく、名雪はここで目を覚ました。
「また気づいたら学校・・・。わたしってすごいね・・・。」
「ああそうだな、すごいな。」
「この調子だと、今度から祐一も安心して登校できるね。」
「・・・・・・。」
「どうしたの?」
「なんでもない。」
何が安心して、だ。一体誰がお前を学校まで連れてきたと思ってるんだ。
ふざけたこと言ってると明日から寝たままかまくらの中に放り込むぞ。
・・・と、喉まででかかった言葉を飲み込む。
とりあえず作戦の練り直しをしないとな・・・。
「・・・そうですか、失敗しましたか。」
「ああ。見事に失敗した。」
「残念です。」
昼休み。中庭で俺と栞は再び頭を悩ませていた。
昼食も箸がなかなか進まない(実際パンとバニラアイスだから箸なんて使ってないが)
と、意を決したように栞は俺に目を向けた。
「やっぱり、第二段階を実行するしかないと思います。」
「時間が来たらイチゴジャムを食わせる仕掛け、か?」
「そうです。」
「けど汚れそうだよな。」
もし名雪が起きなかったらあっという間にベッドはイチゴジャムだらけ。
そんな騒ぎになると、ますます遅れてしまいそうだ。
「大丈夫です。ちゃんと対策を練ってきました。」
「対策?」
「ええ。祐一さんが直に食べさせればいいんです。」
ぽんっ
「なるほど!無理矢理鼻の穴にねじ込めばいいんだな!」
「わ、そんなことしちゃだめですよー。」
「冗談だ、冗談。」
「ふう、びっくりしました。」
ほっと胸をなで下ろす栞に笑って答える。
しかし、今のは良い案だと言えなくも・・・って、さすがに怒られるか。
それにしても直接食べさせるという簡単な方法に気づかなかったとは迂闊だった。
「・・・あっ。」
「どうしました?」
「いっそのこと、嫌いなもので起こすってのはどうだろう。」
「そんな事したら本気で怒りますよ。」
「なんで栞が怒るんだ?」
「それもそうですね。」
「ちなみに栞の嫌いなものはなんだ?」
「辛いものです・・・あっ!祐一さんひどいですー!」
冗談じゃなく本気で怒り出した。
誘導尋問がうまくいきすぎたせいだ。
「いや、別に栞にそれを食べさせるわけじゃないし。」
「ぐす・・・。」
「な、泣くなって!」
「ぐす・・・はい。」
泣かれると非常に困る。というか俺、何か悪い事したか?
「そ、それはともかくだ。俺の案はどう思う?」
「ひどいです。起きるために嫌いなものなんて食べたくないです。」
「いや、だから・・・」
「そんなことする祐一さん嫌いです。」
「頼む、話を聞いてくれ。」
かたくなに拒絶する栞をなんとか説得した。
そして、俺の案についての意見を聞く。
「私は嫌ですけど、起きるにはすごく効くと思います。」
「そうか。」
「多分好きなものよりは効果的です。」
「おおっ!」
「でも祐一さん、食べ物の恨みは恐ろしいと思います。」
「・・・わかった、これは非常手段にとっておく。」
「ええ、それがいいと思います。」
最後には笑顔で念を押された。
栞があれだけ取り乱したものだ。そりゃあすぐには試さない方がいいだろう。
そんなところで、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「じゃあまた明日な。」
「はい。朗報を待ってます。」
期待を含んだ笑顔に見送られ、俺は中庭を後にした。
午後の授業を終え、家に帰って、夕飯を食べて、布団に入る・・・。
「明日こそ、見てろよ。」
やる気満タンで、俺は目を閉じた。
いつもの目覚ましで俺は目覚める。素早く支度を終え、瓶を片手に部屋を飛び出した。
ドンドンドン!
「おい名雪、起きろー!」
扉を叩く。何度か叩く。今朝は返事がなかった。
「入るからな!」
もはやしょうがないことのように叫ぶ。
予想通りというか、名雪はやはり寝ていた。
改めて呼びかけるよりも早く、俺の手は動いていた。
瓶のふたをあけ、スプーンでイチゴジャムを一すくい。
「おーい名雪〜、イチゴジャムだぞ〜。」
「うにゅ・・・。」
言葉に、物体に反応した。
それにお構いなしに、そのブツを名雪の口へと運ぶ。
・・・もぐもぐ。
「どうだ?イチゴジャムはおいしいか?」
「・・・イチゴジャム、おいしい。」
なんとも幸せそうな顔に変わる。
今更だが、寝ながら食うなんて行儀が悪いことだ。しかしそうも言ってられない。
続けて二口目を名雪の口に放り込む。
もぐもぐ
「どうだ名雪、おいしいか?」
「うん、おいしい。」
「よし、美味しいもの食べたなら起きような。」
「うん。」
のそりと名雪が体を起こす。
おっしゃ!!成功だ、ばっちり起きたぞ!!
栞、俺はやったぞー!!!
「くー。」
「・・・・・・。」
寝ていた。
「名雪。」
「くー。イチゴジャム・・・おいしいよ〜。」
「起きろー!!」
「くー。・・・うにゅう。」
幸せそうな笑みを浮かべている。それは変わらなかった。
そして寝ているということも変わらなかった。
そういえば、ずっと前もトーストくわえたまま寝てたっけ。
「失敗か・・・。」
「くー。」
「くそ、こうなったら非常手段をとるしかないな。」
「くー。」
「名雪、とりあえずそのままでいいから一階に降りてこい。そこで起こしてやる。」
「くー。」
「ほらほら〜、イチゴジャムだぞ〜。」
「うにゅ・・・イチゴジャム・・・。」
昨日通学時に行った誘導方法で、名雪を一階まで連れてゆく。
食卓まで来たときに、やはり名雪は突っ伏してしまった。
「おはようございます、祐一さん。名雪は・・・。」
「おはようございます。見ての通りです。」
「そう・・・。」
困ったように頬に手を当てる。しかしとりあえず俺は先を急いだ。
「秋子さん、お願いが一つあります。」
「なんでしょう?」
「あの、例のジャムを・・・。」
「まあ。ちょっと待っててくださいね。」
ぱあっと顔を輝かせる。
そしていそいそと台所へと姿を消した。
済まない栞、そして名雪。俺にはもうこの手段しか残されていないんだ。わかってくれ。
十数秒の後、秋子さんはオレンジ色のジャムが入った瓶を片手に戻ってきた。
「どうぞ。」
「は、はい。」
改めて見ると手に取るのもためらわれた。
しかしまずはおとなしく自分の分のトーストにそれを塗る。
そして一口かじった。
「うん、美味しいな〜。名雪も是非このジャムを食べてみろ〜。」
本当は美味しいと言うよりは別の味がしたのだが、とりあえずこう言っておく。
その時の俺の顔は・・・果たしてどんな顔だったろうな・・・。
次に瓶の中からひとすくい。相変わらず寝ている名雪の口元へ持ってゆく・・・。
「ほら名雪、食べてみろ。」
「う、うにゅ・・・。」
本能的に危険を感じているのか、かたくなに口を閉ざしている。
「遠慮するな。お前の大好きなジャムだぞ。」
「うにゅ・・・。」
むりやり口開けさせ、スプーンをその中に差し入れた。
もぐもぐ
「よし、食べたな。」
「・・・・・・。」
「どうだ、名雪。」
「・・・うわわわっ!!!」
ワンテンポ遅れて、名雪が体をはね起こした。
間違いない、これは完璧に起きた!
「まあ・・・。おはよう名雪。」
「え?え?ここ、食卓?」
「そうだ。おはよう名雪、いい目覚め方だな。」
「う〜・・・。」
少し驚いた顔の秋子さんとホッとしている俺に見られ、名雪は混乱気味だ。
それでも現在の状況を理解し、挨拶の後に朝食を取り始める。
と思ったら、例のジャムを目に留めた後、
イチゴジャムを意図的に手にとって素早く朝食を終えてしまった。
「わたし着替えてくるねっ。」
明らかに動揺していた。俺があのジャムを食っていたからだろうか。
ふっ、お前も食ったんだぞ。
しかしあそこまで効くとは思わなかった。これからはこの手で起こすとしようか。
「祐一さん。」
気がつくと、秋子さんがにこやかに俺を見ていた。
その顔とは別に強烈なプレッシャーを感じた俺は、慌てて姿勢を正す。
「な、なんですか?」
「このジャム、お弁当に是非どうぞ。」
「あ、いや、俺は・・・。」
「目覚ましの案を出した栞ちゃんにも振る舞ってあげてくださいね。」
「・・・はい。」
何故か俺は逆らえなかった。
素直に瓶を受け取るしかなかった。
栞、済まない・・・。本当の意味で済まない・・・。
「祐一っ、早く学校行こう。」
「あ、ああ。」
着替え等の支度を終えた名雪に連れられ、瓶を片手に俺は学校を目指すのだった。
昼休み。
寒空の下、中庭で、俺と栞は並んで石段に座っていた。
結局最終手段を使ってしまったことに、栞はえらく落胆していたが、
それでも笑顔で“良かったですね”と祝福してくれた。
「ところで祐一さん、嫌いなものって何を食べさせたんですか?」
「知りたいか。」
脅しをはらんだ言葉を発してやる。
それを感じ取ったのか、栞はびくっと後ずさる。しかし・・・
「え、ええ。」
と、こくりと頷いた。
あっさり覚悟を決めたか。それなら隠すこともあるまい。
そう思って、俺は例の瓶を取り出した。
「これだ。」
「これって・・・ジャムですよね?」
「ああ、食ってみるか。食パンもここにあるぞ。」
「わざわざ持ってきたんですか?」
「秋子さんから振る舞ってくれって言われたからな。
心配するな、辛くない。」
「辛いジャムなんて聞いたこと無いですけど・・・。」
不思議そうな顔をしながらも、栞はパンを受け取った。
そしてそれにジャムを塗ってやる。
「ではいただきます。」
「ああ。」
彼女は謎ジャムがつけられた食パンをひとかじりした。
「・・・・・・。」
「どうだ?」
「・・・うぐ。」
「凄く独創的な味だろう?」
これ以上は耐えられなかったのか、栞はほんの一口かじっただけでパンを口から離した。
やはりというか涙目だ。辛いものを食べた時とは別の涙に違いなかった。
しばらくむせていた栞ではあったが、落ち着いたのか質問をしてくる。
「祐一さん、このジャムの原料って何ですか?」
「秘密だ。」
「ひどいですー、教えてください。」
「そう言われても、俺も知らないんだ。」
「食べられるものですよね?」
「そうだと秋子さんは言っていたが・・・。」
「はあ・・・。なるほど、これだと確実に起きますね。」
「はは、やっぱり?」
もはや苦笑するしかなかった。
結局その後はパンを片手にジャムを食す。
といってもわずかだ。せいぜいパン一枚程度。
なんというか、あんまりな食事をとってしまった気がする。
けりが付きそうな頃、栞は神妙なおももちでこういった。
「祐一さん、やっぱり食べ物の恨みは恐ろしいです。」
「・・・・・・。」
その言葉は、あまりにも多くの意味を含んでいた気がした。
しかし俺には、それ以上何も答えることは出来なかった。
エピローグ
朝、名雪はちゃんと起きるようになった。
「毎朝あんな起こし方されたらたまらないよ。」
ということだ。
それは俺も納得できる。
まあ俺としては名雪がちゃんと起きる様になっただけでもありがたい。
だが、その代償はあまりにも大きかった。
「今日もこのお弁当をどうぞ。」
「は、はあ・・・。」
お弁当と果たして呼んでいいかどうかわからない、謎ジャムを今日も俺は受け取る。
量はそれほど多くない。食パン二枚に塗れば全部無くなるだろうという量だ。
しかし毎日それが続いていた。
「祐一さん、今日もそれですか?」
バニラアイスを食べながら栞が尋ねてくる。
それに俺は“ああ”と頷くしかできなかった。
「頑張って食べてくださいね。」
「たまには栞も食べないか?」
「他人のお弁当をとるなんてことはできません。」
「いや、俺があげるって言ってるんだしさ。」
「いいえ、遠慮します。」
「バニラアイスと一緒に食べてみたらどうだ?結構いけるんじゃないか?」
「要りません。」
笑顔で拒絶すると、最後に栞はこう付け足した。
「食べ物の恨みは恐ろしいですから。」
<おしまい>