隠して寄贈小説!
ここに置かれてあるのは、人に贈ったけど表立って載せて無い小説です。
まあ様々な理由がありましてね・・・こういう場所においてるわけですよ。
改めて読み直して見ると・・・人をナメた小説ばっかだな。(汗)

★翔水さんへ贈った小説。

『ぺったんぺったん』

一月のある日。寒さがそろそろ和らごうかという時間、つまりもうそろそろお昼という頃。
七梨家の庭ではいつもの面々が勢ぞろいしていた。
「これから、毎年恒例のもちつき大会を始めるぞ〜!!!」
大声で気合ばっちりなたかし。もちろん、このもちつき大会は彼が提案したものである。
「毎年恒例って・・・毎年やってたっけ?」
「少なくとも統天書にそんな記述は載ってないけど・・・。」
「野村先輩って元気だもんね。思いついたら即実行!って感じで。」
「それにノってここに来てるわたし達もわたし達だけど。」
花織、ヨウメイ、ゆかりん、熱美がひそひそと言葉を交わす。
他の皆もそんな感じで、やる気満々なのはほんの少しのようだ。
太助は、なんだか迷惑そうに庭に置かれてあるきねと臼を見ている。
シャオは、少しばかりの鼻歌を歌いながらもち米の用意。
ルーアンはなぜかうつらうつらと居眠り中。で、その横に幸せを満喫している乎一郎が座っている。
キリュウは寒そうに震えながら座りこんでいる。
那奈と翔子はだるそうに連中を見物。
そして出雲は“何故私が・・・。”とぶつぶつ呟きながら餅をこねる位置に居るわけだ。
更に彼の横に、慰め役か助手かはわから無いが、離珠の姿もある。
「さて!!もうすぐつく餅の準備が出来ると思うけど・・・。」
「はい、もう少し待ってくださいね、たかしさん。」
たかしがちらりと見やったところへシャオの声がする。
後少し経てばもち米が蒸しあがるという事だ。
「というわけだ!!出雲がしっかりとこねる役をやってくれるから、
餅をつきたい!って奴は是非名乗り出てくれ!!」
「しつも〜ん。」
すいっと手を挙げるヨウメイ。
それに対し、たかしはエラソーな監督っぽく質問を受け付けた。
「なにかな、ヨウメイちゃん。」
「もちをつく事になんの意義があるんですか?」
質問を聞いてがくっとなるたかし。しかし、すぐに態勢を立て直して力説する。
「だから競技なんだって!1番華麗にもちをつく事が出来た奴が優勝!という訳だよ。」
「そんな事最初は言って無かったくせに・・・。」
「せ、説明忘れだよ。とにかく・・・」
「説明忘れですって!?他人に物を教える人がそんないいかげんでどうするんですか!!
だいたいね、自分が仕切ってるんならそれなりに落ち度が無いようにしないと駄目でしょうが。
ただ力を入れて気合を入れて喋ればいいってものじゃないんですよ。教えるという事は・・・。」
くどくどとたかしに説教を始めたヨウメイ。
返す事も出来ずにただただ俯いたままのたかし。他の者はそれを見ているだけであった。

いいかげん時間が経った所でキリュウが迷惑そうに叫ぶ。
「ヨウメイ殿、それくらいにされよ。」
「こういう場合は・・・はあ?キリュウさん、なんか言いましたか?」
不意に声をかけられて振り向くヨウメイ。
それと同時に、たかしはホッと胸をなでおろすのだった。
「だから、説教もそこまでにされよというのだ。今はもちをつくのが先決だろう。」
「そりゃまあそうですが・・・まあいっか。」
考え込んだ後に息をつくヨウメイ。御説教の時間はここで終わりのようだ。
「というわけで野村さん、また今度御話しますので。」
「げっ・・・。わ、分かったよ。」
嫌そうな顔をしたたかしだが、しぶしぶとそれを引きうける。
唖然として見ていた皆だったが、あちらこちらからくすくすと笑い声が。
「積極的だね、楊ちゃん。」
「ほんと。さっすがこだわりが違うよ。」
言うだけ言った後にヨウメイがひそひそ話をしている親友の元へ。
そこでちょっとした小付き合いが始まった頃、シャオがもち米を持ってきた。
「たかしさん、用意できましたわ。」
「あ、うん、ありがとう。それじゃあ開始!!
・・・とと、途中になってたな。
見事優勝できた奴には、俺が用意した素敵な品物をプレゼントしよう!!」
先ほどの一件から戸惑っていたものの、シャオが来た事によって元気を取り戻すたかし。
きっちりと気合の入った説明をした所で、ルーアンが眠りから覚めたように勢いよく立ち上がった。
「だったらあたしが陽天心を使うわ!!」
「ちょ、ちょっとルーアン先生・・・。」
今にも黒天筒を回さんばかりの勢いのルーアン。
彼女を止めた乎一郎にたかしは心で感謝しながら、更に彼女をなだめる様に告げた。
「言っときますけどルーアン先生、陽天心を使ったら、陽天心に商品をあげなきゃならないでしょう?」
「あ、そうか・・・。いいわ、一番手はあたしよ!!」
何が良いのかは分からないが、もち米を臼に入れたシャオと入れ替わるように、
素早くきねを担いで傍に寄った。
「審査員は野村君と言うわけね。」
「え、ええ・・・。」
あまりにも一人でどんどん進めるその姿にたかしもたじたじである。
出雲に至っては、ますます疲れた顔でため息をついたのだった。
「いっくわよー!!それっ!!!」
思いっきりきねを振りかぶるルーアン。そして・・・
ドン!
・・・彼女が叩いたのは臼そのものだった。
「あ、あぶねー・・・。俺少し離れてよっと。」
「の、野村君、それは卑怯ですよ、ちゃんと近くで審判を・・・。」
「失敗しちゃったけどもう一回行くわよー!!」
怯えるたかしと出雲に構わず第二撃を繰り出すルーアン。
今度はちゃんともちをついたようだ。
「ふう、だる・・・。」
「あの、ルーアンさん、力み過ぎなのでは・・・。」
二回きねを振るったルーアンは早くも息が荒い。
出雲が言うまでも無く、力みすぎだという事は誰の目にも明らかだった。
「もうあたしいいわ、食べる方に専念するから。誰か他の人やって。」
投げやりにきねを放り出すと、すたすたと元いた位置に戻るルーアン。
呆れ気味な太助達の視線もどこ吹く風のようだ。
「太助様はいかないんですか?」
「いや、遠慮しておく・・・。」
体を動かしたくないというじじくささから、引き下がる太助。
と、そんな情けない弟を見かねてか、那奈がすっと前にでた。
「な、那奈ねぇ?」
「見ていろ翔子、弟に代わってこのあたしが行く!!
当然いい所見せられたら後から太助から色々やってもらう事にするよ。」
「は、はあ・・・。」
妙なタカリを見せる那奈に少したじっとなる翔子。
“ヨウメイの影響かな・・・”などと彼女が考えている間に、那奈が臼の傍に立った。
「行くぞ、宮内。」
「ええ、お願いします。」
心なしか安心そうに構える出雲。しかしそこでヨウメイの茶々が。
「那奈さ〜ん、紅白餅なんて作らないでくださいね。」
「紅白餅?・・・なるほど・・・って、失礼な事言ってんじゃ無い!!
あたしは・・・待てよ、それも面白いかもな。」
怒鳴り返した那奈だったが、少しにやっと笑う。
その笑みにびくっとした出雲はあわてて臼から手を離す。
「ちょちょ、ちょっと那奈さん!!真面目にやってくださいよ!?」
「何いってんだ。例え紅白に成ったとしてもそれは事故だよ。さあ。」
「さあじゃないでしょうが!!」
迫る那奈と、後ずさる出雲。茶々を入れたヨウメイは親友達とたかしから文句を言われていた。
ヘンな雰囲気になって来た所で、良く分からなかったシャオが太助に尋ねる。
「太助様、紅白餅ってどういう事ですか?」
「さあ・・・。」
太助も良く分かっていないようだ。と、そこで乎一郎が後ろを振り返る。
「つまり、出雲さんの手を間違ってついちゃうと血で真っ赤に染まるでしょ。そういう事だよ。」
「へええ、なるほど。さすが乎一郎・・・って、なんだそりゃー!!!」
感心したと思ったらおもいきり叫んだ太助。もちろんシャオも驚きの顔だ。
当然と言えば当然の反応なのだが・・・。

「もういい、か弱い女性のあたしは辞退するよ。」
「そういう問題では・・・。」
結局は出雲が那奈をなだめた事によって那奈が引き下がったようだ。
遠くからそれを見ていた翔子が、呆れながら那奈に告げる。
「那奈ねぇ、いくらなんでもあれは・・・。」
「たく、宮内の奴ジョークが分かって無いんだから。」
「聞いてる?」
翔子の声など何処吹く風。残念そうに呟く那奈であった。
「よしっ、あたしが行きます!!」
名乗り出たのはゆかりん。元気良く杵を手に取ったが・・・。
「お、重い・・・。」
「やっぱり女性の方は無理しない方がいいですよ。」
先ほどのルーアンや那奈の件はもはや眼中に無いのか、出雲がゆかりんを支える。
しかし、ゆかりんはきねを置くとぶんぶんと首を横に振った。
「そんな事無いです!!これから楊ちゃんがそれを証明します!!」
「ゆ、ゆかりん!!」
慌てて逃げようとしたヨウメイの腕を掴む花織と熱美。
ゆかりんとアイコンタクトを取ったようだ。
「は、離してよ〜。」
「さっきじゃんけんしたじゃない、だから頑張りましょ。」
「そうそう。負けたものは絶対にやりに行くって。」
「できたらやりに行くってことだったじゃない〜!!」
密かにじゃんけんなどをやっていた事に少し驚く面々。
先ほど茶々を入れた事もあり、ヨウメイに別の意味で期待しているようでもあった。
「・・・分かったよ、やるから。」
「さっすが!ほらほら。」
諦めたように告げるヨウメイの体を押す花織。
よろめきながらも臼の傍に立つヨウメイ。そしてきねを持ち上げる。
「大丈夫ですか、ヨウメイさん。」
「ふえ・・・。ありがとうございます。」
ぺこりと御辞儀するヨウメイ。
先ほどの件で迷惑をこうむったにも関わらずに相変わらずの態度の出雲に感心したのであった。
「それでは・・・!」
大きくきねを振りかぶるヨウメイ。だが・・・
ズドン!
きねを支え切れなかったのか、後ろに勢い良く倒れてしたたかに頭をぶつけてしまったのだった。
慌ててそこに駆け寄る花織達。
「だ、大丈夫、楊ちゃん?」
「大丈夫・・・じゃないよ〜。うえーん!」
正直にも泣き出したヨウメイ。これ以上続けるのは無理の様である。
おとなしく引き下がった花織達。と、まとめるようにたかしが前に出た。
「しょうがないから俺がやる。行くぞ出雲!!」
「はいはい。」
途端にめんどくさそうな顔になる出雲。その横ではしっかりと離珠が慰めている。
「“出雲しゃん、御元気だしてくだしゃい”ですって。
さてと、しばらく時間がかかるでしょうから家に入ってようっと。」
「その言葉を待っていた。さあ早く!」
統天書をちらりと見たヨウメイが告げると同時に元気良く立ち上がったキリュウ。
よほど家の中に居たかったのだろう。しかし一人最初に入るのはどうも、と遠慮していたのである。
ささっと駆け込んで行くキリュウを見て、他の皆はやれやれと息をつく。
「じゃあ野村、頑張れよ。おにーさんも。出来たら呼んでくれや。」
「へ?あ、あのー・・・。」
「ちょ、ちょっと待てお前ら〜!!」
出雲とたかしの呼びかけも空しく、皆はぞろぞろと家の中へと入っていった。
“困った人達ですねえ”と、離珠と共に肩をすくめる出雲は良かったが・・・。
「なんなんだよー!!!もちつき大会はどうなったんだよー!!!」
たかしはいかにも近所迷惑になりそうな大声で叫んでいた。
それでももちつきは無事に終了し、皆で美味しく餅をいただいたようである。
ちなみにたかしの用意した商品は来年に持ち越されたようだ。

「ええ〜!?来年もやるんですかー!!?」
「そうだ!!来年こそは・・・!!」
「どうせ野村さんの一人演技で終わるでしょうに・・・。」
「ん?なんか言った?ヨウメイちゃん。」
「い、いえ、別に・・・そうだ!!教えるという事について話がまだ途中でしたね。」
「げっ・・・。そ、それはまた来年・・・」
「駄目です!!いいですか、いつも私が言ってる様に、教えるという事は・・・。」

<おしまい>


★9月の猫娘さんへ贈った小説(年賀メールにて)

『2000年で・・・』

一年も終わりに近付いたある日の夜。
紀柳と楊明の部屋ではちょっとした会話が交わされていた。
「楊明殿、世間で騒がれている二〇〇〇年問題についてだが・・・。」
「はい、なんでしょう?」
「一体何が起こるんだ?あれだけ言われると気になってな・・・。」
不安そうな顔の紀柳。確かに彼女にとっては未知の恐怖でもある。
「わかりました、統天書でそれなりに調べてみましょう。
ただし述べるのはあくまでも私の予想です。これは未来の事柄は解らないので。」
「うむ、よろしく頼む。」
任せろと言わんばかりに頷く楊明。そして統天書をめくりだす。
いつものようにぱらぱらぱらと。しばらくしてとあるページで手を止める。
ふむふむと頷く。納得したようにパタンと統天書を閉じる。
これは、いつも楊明が統天書を扱っている時の行動だ。
「解ったのか?」
「ええ。とりあえず予想と致しまして・・・扇風機が止まるのでは?」
「扇風機?」
「そうです。夏の暑い時にそれが使えないとなると・・・。
紀柳さんに死ねという事でしょうね。」
「なんだと!?」
勢い良く楊明に詰め寄る紀柳。その顔は必死だ。
「扇風機が止まって・・・そんな!!私はもう御終いだ!!」
天に向かって叫ぶ紀柳。その姿に慌てたのか、楊明は恐る恐る言った。
「あのう・・・冗談です。」
「そう、冗談・・・なんだと!?」
またもや楊明に詰め寄る紀柳。今度は別の意味で必死だ。
「冗談など言うな!!」
「す、すいませんって。まあ大丈夫ですよ。
例え何か起こったとしても、私が万象復元を唱えれば!」
「おお、なるほど!」
「多分無駄でしょう。」
「そう、無駄・・・待て!!」
詰め寄りすぎたために、今度は楊明の服を掴んだ紀柳。
さすがに必死さは抜けたが、心なしか怒り顔だ。
「無駄とはどういう事だ?」
「私の万象復元は壊れたものを直すものですから。
壊れてなくて誤作動を起こしたものは論外です。」
「なんだと・・・。」
「でも大丈夫、即座に私が対応策を考えます。」
にこっと告げた楊明。その顔を見て紀柳は手を離したが・・・。
「まさかルーアン殿の陽天心を利用しようなどという考えでは無いだろうな?」
怪訝そうな目つきで楊明を見る。と、楊明は目線をそらした。
「そうなんだな!?」
「わ、そ、それは非常手段ですよ!!大丈夫、なんとか済みますって!!」
「どうやって済ますと言うんだ。」
「うーん・・・。世界全域のコンピュータにアクセスして、
私がちょちょいっといじればいいかな・・・って。」
「それを何というか知っているか?」
「くっきんぐですか?」
「そう、くっきん・・・ではない!まったく・・・はっきんぐだ!」
「はいきんぐ?」
「違う!もういい、とにかくそんな事をすれば御尋ね者になってしまうぞ。」
呆れながら呟く紀柳だったが、楊明はにやっと笑う。
「何をおっしゃる。御尋ね者にならずにハッキングする方法くらい、この統天書に載ってますよ。」
「ほう・・・なに!?だったら早速!!」
「まあ待ってくださいよ。この家にはパソコンがありませんし。」
「そうか・・・。ぱそこんとはなんだ?」
不意の紀柳の質問に、楊明は途端に呆れ顔。
じと〜っと紀柳を見て尋ねる。
「・・・紀柳さん、ひょっとして私をからかってますか?」
「どうしてだ?」
「・・・まあいいです。とりあえず主様に言わないと。」
「そうだな、どうせならCPUの処理速度がかなり早いものがいいだろう。
ふむ、あと容量も10ギガは欲しいな。」
「・・・やっぱりからかってるんだー!!紀柳さんの馬鹿ー!!」
「か、からかってなどいない!!
ほら、ここにしっかりとパソコンマニュアルがある!これを見たんだ!」
「・・・パソコンを知ってるじゃないですか。」
「しまった・・・。」
「うわーん!!」

・・・おしまい。


★よしむらさんへ贈った小説(年賀メールにて)

『とある村にて。』

「よう、今帰ったぞ。」
「御帰り〜、って、とうちゃん、何それ?」
「すきゃな、って言ってな。これを使うと絵が取りこめるそうなんだ。」
「へええ・・・どうやって使うの?」
「ぱそこんってやつがいるらしい。」
「家にあったっけ?」
「心配するな。ばっちり買ってきた!!」
「すっげー!!良く1人でそんなに沢山持てたね。」
「はっはっは、これくらい軽い軽い。それじゃあ早速使うぞ!!」
というわけで取りつけ作業。そして使える状態となった。
「よし、早速絵を持ってきてくれ。」
「うちに絵なんてあったっけ?」
「あるじゃないか!!あの壁に飾ってあるやつが!!」
父親が指差したのは額縁に飾られてある油絵だった。
「・・・無理じゃないの?」
「何を言う、スキャナに不可能はないはずだ!なんと言っても文明の利器だからな!」

<おわり>


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