月天小説 生まれ変わりたちの生きる時

第III話『闇鍋と少女』


月曜日(祝日)AM 12:00
「ここにあの子たちが――ううん、あの子たちの子孫がいるんだ」
私は久しぶりに来た町を眺める。
それにしても、
「戦争でその姿を消さずにいられた、この人間界に17つしかない町のひとつ」
私は初めてこの町に来たときに、ある少女たちに助けられた場所に来た。
「鶴ヶ丘」
私はそう言ってあたりを見回す。
「あまり変わってないや。それにこの道にある家もそのまま残ってる」
私はそう言って少し嬉しくなり、笑った。



前日PM 5:30
「それじゃ、午後6:00に私の家に集合ね」
わたしはそう言って次の日の準備を始めた。
「ねえ、お姉ちゃん」
「なあに、天?」
声をかけてきた天に笑顔で問う。
「明日ってことは、預かる予定の、あの・・・えっと・・・・・・従妹の・・・・・・・・・」
「ああ、たしか天空(あまぞら)さん、って所の娘だったっけ?」
わたしは明日からこの家の住人になる、まだ会ったことのない少女を思う。
「うん。それで、いきなりこんなの、大丈夫なの?」
「大丈夫!歓迎会は「闇鍋パーティーで、デザートにお饅頭」って手紙が来てたから」

わたしは笑顔で即答する。
「そ、それならいいんだけど」



月曜日 AM 5:30
ここはスーパームサシ。
そして、今私がいるのはお菓子コーナー。
バサッ、バサッ、バサッ、とお菓子を買い物籠に山積みにする。
周りの人がなにするんだ、などと言っているので、人のすることに文句を言わないで、と言おうと振り向く。
そしてそこには想像を絶する光景があった。
「やっぱり、お鍋でもフルーティーに、あ、このカレールー新しいやつ、買っておこう」

鍋・・・カレー・・・そしてフルーティーなどといって、果物を籠に詰める少女がいた。

なんだか、過去の闇鍋の味の原因を知ったような気がした。
そして、それだけでは終わらず、すぐ後ろで、
「画期的な鍋を考えたぞ、食べながら歯も磨ける、ミガキ鍋だ〜!」
「いれるのは食べ物だけだって、言われたよね」
・・・・・・もしかしてこの人たちって、あの時の・・・いや、考えちゃ駄目だ。
まだ決まったわけじゃない。
もしそうだとしたら、私はあの地獄を思い出してしまう。
折角忘れていたというのに・・・。
「あ、骨あった」
無理、忘れられない。
とりあえず、今は何か買い物をして気を紛らわそう。
うん。
「えっと、出汁に使う材料は・・・」
それすら無理なの?
って、あれってもしかして、
「ねえ」
「え、誰?」
「たぶん、あなたの従妹だよ」
「え、じゃあ」
「うん、天空飛(あまぞらふぇい)。フェイって呼んでね」



月野家 PM 6:00
「それじゃ、フェイの歓迎闇鍋パーティーを開催するぞ〜!」
「お〜!」
なんで那奈さんが仕切るんですか?
この家の家主は、現在わたしなんですけど・・・。
「1番、炎魂、歌います!」
え、いきなり!?
「うおぉぉぉぉぉ!俺の熱き魂の叫びがあぁぁぁぁぁ!!!」
うう、み、耳があぁぁぁぁぁ!
誰か助けてえぇぇぇぇぇ!!
「2番、花園織姫、歌いま〜す!」
デュエット!?
「3番、フェイ、歌うよ」
そこ乗らないで!
「4番、宮内那奈、いくぞ!」
カルテット〜〜〜!?
「5番月野天、歌います」
天まで〜!?
っていうか、クインテットだよ〜。
「僕はもうだめ」
「私もです」
「俺も」
わ〜、一くん、出雲さん、翔くんが次々に脱落〜!
誰か私をこの人外魔境から連れ出して〜。
「がつがつがつがつ」
陽子先生、この中でも普通に食べてるよ。
しかもあの闇鍋を。
「ねえ、琉姫ちゃん、わたしを助けてよ」
「試練だ、耐えられよ」
そ、そんな〜。
理不尽だよ、さすがに。
「それにしても、甘すぎて辛すぎて・・・(以下略)」
や、屋根の上に逃げよう。


「死ぬかと思った」
「それは大げさだよ」
「フェイちゃん、なんでここに!?っていうか、歌ってたんじゃ?それに加えて、その巨大おにぎりはどこからの産物!?」
わたしは当然の疑問を連発した。
おにぎりは顔くらいだし。
「逃げ出してきた」
「パーティーの主賓の台詞じゃないよ」
なんでこんな・・・。
っていうか、それなら歌わないでよ。
「わかった、次は歌わない」
そういう意味じゃ・・・って読心術!?
「違うよ」
また!?それじゃ、テレパシー!?
「それも違う」
だから読まないでよ!
「わかるんだもん」
なんで!?
「精霊だし」
えぇ!?
「あ、それは違った」
じゃあいったい・・・。
「精霊の子孫で生まれ変わり」
さらに非科学的事実!?
「精霊の主様の子孫で生まれ変わりが、なにを言ってるの?」
わたしも超常現象体現してるの!?
「ちょうじょ・・・・なにそれ?」
「待って、それおかしい!」
わたしは耐え切れず声を上げる。
「なにが?」
「精霊だとか、生まれ変わりだとかわかるのに、なんで超常現象知らないの!?」
「だって何千年も精霊界にいたし」
「どこそれ!?」



月野家 PM6:30
みんなお饅頭をもぐもぐ食べてる。
それにしても、
「フェイちゃん、あんな発言して、わたしの日常突き崩しておいてよく食べるね」
「おなか空いたんだもん」
わたしがフェイちゃんに屋根の上で聞いたこと、それはわたしたちが伝説の生徒さんと、その周りの人たちの生まれ変わりであるということ、そしていつかフェイちゃんと同じように記憶を取り戻し、精霊さんたちの生まれ変わりの人は、能力が目覚めるということらしい。
まだ、わたし以外の人が知らないだけに、自分だけ日常から脱したような気分になる。

「まあ、いいじゃない」
そんな言葉で片付けないで。

あとがき
フェイちゃんの生まれ変わりの登場です。
そして、問答無用で真実を突きつけます。
いやはや、なにをしでかすのやら。
それでは、フェイのプロフィールです

天空 飛

6歳(小1)
ナナたちの従妹
すでに記憶も能力も戻っている
好きな言葉は『好き』


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