月天小説 生まれ変わりたちの生きる時

第II話『過去の夢と日常』


「太・・・様」
−だれ?
「た・・・様」
−また?
「あ・・・殿」
−なんなのいったい?
「太・・・しゃま」
−クスッ なにこのこえ。
「・・・坊主」
−ぼうずって、わたしはおんなのこよ。
「・・・僧」
−だから、わたしはおんなだって。
「・・・梨」
−あれ?
「・・・助」
−なんだか、
「太・・・君」
−さっきからきこえる、
「七・・・先輩」
−このこえ、
「太・・・」
−いつもきいてるような。
「・・・助君」
−でも、
「み・・・な」
−とってもなつかしい。



「・・・ちゃん」
今度はなに?
「お・・・ちゃん」
さっきからいったい。
「お姉ちゃん!」
「え?」
気がつくと私はベッドの上にいて、天がすぐそこにいる。
「おはよう。天」
「おはよう。お姉ちゃん」
今日は日曜日だから、天はすごく長いこと寝てるはず。
でも、その天が起きているということは。
「今、何時?」
「11時半くらい」
「え」
11時半ということは。
いつもみんなが来るのが1時くらいだから、それまでにお風呂と、ご飯、そして着替えを済ませているんだけど。
「完璧に寝坊した〜!!!」
私はベッドから飛び降りると、用意してあった服を引っつかみ、台所へと向かう。
フライパンをコンロにかけ、温めている間に材料を引っ張り出し、エプロンをつける。

ご飯が炊けていないため、パンをトースターに入れて焼き始める。
そんなことをしているうちに、フライパンが温まったきたので、油をしき、卵とハムを冷蔵庫から取り出しいれる。
天は料理がまったくできないし、うちは冷凍食品も、レトルトも、インスタントも置いていないため、ご飯は絶対に食べていない。
そのことを考え、普段より材料を多めに入れる。
そのうち、天が来て食器を出し始めるが、
パリン
落として割れてしまう。
「ごめん。箒と塵取り取ってくるね」
天はそう言うと道具を取りに行った。
天が帰ってくるころには料理もできていて、お皿に乗せている。
「私がやるからご飯をテーブルに運んでて」
「うん。わかった」
私は天から箒と塵取りを受け取り、割れたお皿を片付ける。


ご飯を食べ終え、食器を洗い、服を着替えて、洗濯物を洗おうとしているとみんなが来た。
そして、いつものように会話が始まる。
それにしても、あの夢はなんだったんだろう。
最後の言葉、あれはなんだか私が言ったみたいに思えた。
どうしてだろう。



「ゲームをしましょう。たくさん持ってきましたよ」
「あの、織姫ちゃん一ついい?」
「なんですか、お姉様?」
私は、ここにいるみんなの代弁を勤める前に講義をすることしよう。
「私はあなたのお姉さんじゃありません。それにあなたはかわいいとは思うけど、はっきり言って私もあなたのことあんまり好きじゃないの」
「いやですよ〜。将来の妹に向かってそんなに謙遜しちゃって(はぁと)」
徹底抗戦に切り替えようかと、一瞬思ったけど、
「それより、いつもどうやってこれだけのおもちゃしまってるの?」
「ナ・イ・ショ・です(はぁと)」
・・・このことは、あきらめよう。
「よし、それでどれをやるんだ?」
「もちろん全部ですよ」
「そんな時間ないって、織姫ちゃん」
「う〜ん。そう言われれば」
ふふ、私はこの悩みこむ姿とかは結構好きだな。
こういうときは、本当にかわいい後輩なんだけど、押しが無理やりすぎるからな〜。
だから、あまり彼氏ができないんじゃないかな?
押しの強さはかうけど、はっきり言って無茶苦茶すぎるからね。
「それじゃあ、これやらない?」
私は天が持っていた、『ミニボーリング』を指差した。
「これなら、みんなでやれるし、廊下でやれば問題ないじゃない」
「ナナ、たしかにそうだけど、ガーターはどうするんだ?」
あ、そうだった。
翔くんに言われて気がついたけど、ガーターは廊下にはない。
「そんなもの、問答無用でやります」
「そうだ。ナナちゃんが決めたことには、この俺が熱き魂にかけて文句は言わせない」

「意味不明だよ、魂くん」
「うっ」
なんだか、無理みたい。
ほかの事考えないと。
明日のこともあるし・・・そうだ!
「ねえねえ、みんな」
「なに?」
私はそれが不吉であるとわかっていたが、考えて思いついたのだから、仕方ない。
「明日・・・」

(つづく)



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