魔法天使☆パトリシア

「第1部 第1章 第1話 舞い降りた天使」

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「うわ〜」
ナイフを持った男が逃げ惑う。
なぜこのような大の男が逃げているかは、いまいち本人も分かっていない。ただ、本能が逃げろと自分に言い聞かせてるのだ。
「どこえ逃げる気?」
「うわぁ」
男は自分が逃げていた対象である少女がいきなり目の前に現れ驚きもと来た道を引き返そうとする。
「無駄よ」
少女は一瞬にして消え―――いや、正確には男の頭上を飛び越え―――男の目の前へと移動する。
「この街で盗賊なんて考えたのがあなたの敗因よ。ちなみ、捕まえる前に一つ教えておいてあげる。私の名前はグレーヌ・アイル。この王都の守人の末裔なの」
「も、守人」
男の顔に絶望が表れる。それはもう逃げれないと悟ったからであろう。
「それじゃあ、気絶してもらうね」
少女はそう言うと男の腹部に拳撃を叩き込む。


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道端で配られている号外新聞には、警備部隊の前に指名手配犯がいきなり落ちてきたということが書かれていた。
それを受け取った少女は内心不安であった。なぜなら、失敗すれば顔が世間へとあらわになり、国王のいる城へと勲章の授与のために行かなければならない。少女はそれだけは避けたかった。富や名誉に興味が無いわけじゃない。だが自分の―――本当の自分の―――正体が公になってしまう。そうなればこの国はひっくり返ることになる。だが、守人であるため指名手配犯を倒すことをやめるわけにはいかない。
「どうしようもないのよね。それに明日から学校か、どんなところだろう」
この少女は学校に通ったことが無いわけではない。だが、今度通うのは魔法学校である。したがってどのような場所なのか皆目検討がつかない。
「悩んでても仕方ない。寮の入寮手続きも終わってることだし。宿から荷物を運び込むしかないか。」

少女は古いつくりの宿屋に来た。この街のほとんどの建物が石造りなのに対してこの宿は木でできている。しかし、それでいてなお客足が鈍ることが無いのはそれだけ長い間信用されてきた証拠である。少女は受付に今日学校の寮へ移動することを伝え、自分の部屋へと向かう。
「セレヌ、居る?」
「あ、パトリシアお姉ちゃんお帰り」
セレヌと呼ばれた少女は帰ってきた少女の方に向かって笑顔で駆け寄った。
「セレヌ、この街ではその名前を呼んじゃ駄目。私の正体がばれちゃうじゃない」
少女は―――パトリシアは自分より1つ年下のセレヌを抱きかかえ、注意をする。
「ごめんなさい。でも、お姉ちゃんはいいんだよね?」
「うん。ごめんね。でも正式に国王様に―――いいえ、あの人に出会ってあのことを伝えたら、そのあとはいいからね。」
「うん。」
そのとき少女の手伝いに来た宿の従業員はその少女の背中に一瞬輝く何かを見たという。



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「ここが魔法学校本部魔法学園通称『魔法の宮殿』か・・・」
門の前で一人の少年が馬車から降りる。そして、それにつづいて同じくらいの年頃の少女が飛び降りる。
「ここがお姉さまのいる魔法学園なんだ・・・」
少女は隣の少年の手を握り、その少年のほうを向く。
「これから5年間はここで暮らすんだね。私の婚約者(フィアンセ)さん」
「レナ、そんな呼び方じゃなくてちゃんと名前で呼んでよ」
少年は少し照れながら、レナと呼ばれた少女の方を見る。
「うん。ごめんね、アル」

「え〜つづきましては5年生の・・・」
入学式は順調に進んでいき、次に入学生代表の挨拶になる。
「それでは、入学試験総合及び全分野においてトップだった、グレーヌ・アイルさん」

「はい。」
自分の名前を呼ばれ、大きな声で返事をして、演説台の上に立つパトリシア。
(グレーヌ・アイル・・・守人かな?)
レナは自分と同じ年頃の少女を見上げて、この街の守人のことを思い出す。
(グレーヌ・アイル・・・あいつか。まあ、とりあえずどこかに呼び出して確かめてみるか)
アルはなにか気になることがあるようで、それについて考え始めた。
「今しがた紹介に預かりました、グレーヌ・アイルです。私はあなたたち同じ新入生に言っておきたいことがあります。」
パトリシアの言葉で会場がざわつき始める。
「いいですか、よく聞いておいてください。私がトップだと先生が先ほど言いましたが、この学園でそれが何の役に立ちますか?この学園の入学試験の問題は確かに難しかったです。しかし、それはこの学園において何の役にも立たないことはそのうち分かってきます。ですが、ここで言っておきたいと思います。」
ざわつきが上級生にも広がる。
「入学試験は今までの学校でやってきたことでした。つまり、それにおいては私が皆さんよりひいでていることになります。ですが、ここは魔法学園です。つまりこの学校ではいままで私たちが習ってきた常識は通用しません。なにかの才能にひいでているものもいれば、全てのものを平均的に使いこなし、得手も無ければ不得手も無い人だっています。つまり、私たち新入生はまったく同じスタートラインにたっているということです。上級生の人たちにしてもそうです。魔力が大きすぎて下級の魔法では魔力が暴走してしまう人はその分他の人より大きな魔法を使いやすくそれを長時間または連続で使うことができます。すなわち、卒業するときに下手なままでも、さらに上の魔法が使えることがあります。つまり、私たちは新入生も上級生もいまだに可能性は無限に広がっているのです」
パトリシアの挨拶は、もうすでに魔法の学会の論文の領域までに達しており、全ての同席者からの拍手が送られた。
(やっぱりあいつだな。式の後で探して会うか)
アルは拍手をしながら自分の考えに確信を持っていた。
しかし、パトリシアはその後30ほどつづけて熱弁を振るっていた。

「それでは私たち、1−Aの学級委員を決めようと思います」
パトリシアのクラスの担任のレンガル先生がHRで、それぞれの委員を決める際に、取りまとめ役となる学級委員を最初に決めようと持ち出した。だがしかし、入学式の演説―――もとい挨拶で盛り上がっている生徒たちにとってそれは愚問だった。クラスのほとんどのものがパトリシアを推薦した。だが、本人は硬直、そして1人だけ意義を唱える者がいた。
「新入生の挨拶からしてそうじゃったが、なんで王女である妾が選ばれんのじゃ!?」
自己紹介のときにしっかりとそのことをアピールしていた第3王女アリスである。2人同じ年の姉がいるのだが、その2人は王の妃と5年前に行方不明になっているため、現在唯一絶対王位継承者となっていて、小さいころから甘やかされて育ってきている。ちなみに入学試験では王の紹介状を入れてぎりぎり合格でさらに強制的に1つ飛び級しているのだ。
「アリス、昔っからおまえってわがままな性格が変わらないんだな」
「え?アル、どうして」
アリスは驚いて聞く。
「さあ、どうしてだろうね。それより、こっちにとったら、おまえのほうがどうしてだよ」
「どういうこと?」
「こういうこと」
アルはナイフを取り出し、パトリシアを押さえつけた。
「5年間どこに言ってたんだよ」
「!!!」
「ん?知り合いか」
「ええ、5年前ちょっと旅行にいくとか言って今日まで僕の目の前に戻ってこなかった知り合いですよ」
レンガル先生の問いにすばやく応えるアル。そしてパトリシアに周りに聞こえなようにそっとささやく。
「応えろよ、パトリシア」
「アル、その名前はみんなには言わないでよ」
「ああ、いいよ」
アルはナイフをしまい、手を放した。
「さあ、話してくれよ」
「えっと、ログネストまで行ってきてそのあと封魔の村で生活してたの」
アリスはよく分かっていなかったが、「昔の友達かな」と思っておくことにした。

「えっと、僕たちの部屋はここだね」
「うん。いったいどんな生活が始まるのかしら?」
新婚したばかりの夫婦みたいな会話をしているアルとレナ。
「しつれいしまーす」
2人の声が見事にハモる。
「あ、こんにちは」
ドアを開けて入るとパトリシアがセレヌを寝かしつけながらベッドにいた。
「あ、グレーヌさん。よろしくお願いします」
「・・・なんでこうなるんだろう」

余談であるが、この入学式は魔法の神様のお言葉をいただいたと言われ世界的に有名になる。


4/12
「起きなさいアル!レナ!」
早朝からパトリシアはバカップルをたたき起こす。
「ふぇ〜、おはようございます」
「うるさいな。パトリシア」
「ア〜ル〜。今なんて言った?」
「うるさいって」
「その後なんだけど」
「パト・・・あっ!」
「その名前で呼ぶなって言ったでしょうが!!!」
この声により1年生寮の全員が起き、全ての部屋に謝っていくことになった。

パトリシアとアルはレナに事情を全て説明してから朝食をとることになった。
「へ〜、じゃあ、グレーヌさんってすごいんだね〜。あ、パトリシア様かな」
「さん付けなんてしないでよ。敬語もだめ。あと、皆には黙っててね」
「了解です♪」
「それじゃ、食べようか」
「あんたは朝ごはん抜き!!」
「え〜!?」
1人我慢できずにすでに食べ始めていたセレヌはその様子を見ながら小さくつぶやいた。

「アルはやっぱり昔から墓穴ほってるね♪」


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「水の盾(ウェル・セル)」
「土の柱(ガル・ガナ)」
今日は半日使って魔法の訓練。覚えた魔法を使って2人の先生に捕まらないように逃げる。
「無駄だよ。水の檻(ウェル・カロン)」
「うわっ!」

「結構つかまってるね〜♪」
「まったく、どこで遠見鏡なんか覚えたんだ?」
「放課後自分で勉強して」
「やっぱりすごいな〜、パトリシアは」
「そんなことないって」
パトリシアは遠慮がちに言っているが、遠見鏡はかなり高度な術で使えるようになるには大人でも数年を有する。もしかするとパトリシアは探査系魔法の素質があるのかもしれない。っというよりこの洞窟は逃げ道が無いが遠見鏡を使えばそんな心配など要らなくなる。先生が近づいて来たらすぐ分かるのである。
「あ、近づいて来た。逃げるよ」
「わかってるよ〜♪」
「レナってやっぱり能天気・・・」
「ん〜、何か言った?」
「いや、別に。」
「あ〜、そうなんだ。じゃあ、空耳だね」
(・・・おまけに天然だし)

「もうすぐお昼だけど、私たち以外ってみんな捕まってるね」
「先生も集合場所に戻り始めてるよ」
「それじゃあ」
「もちろん作戦決行するよ〜♪」

「あとは3人だけですが、おそらくともに行動してると思います」
「そうですか、ありがとうございます。ギルガ先生、あの3人がこれで終わると思いますか?」
「まあ、逃げ続けるだけじゃないと思いますが」
2人がこのあと3人を探すか検討しているところに。
「先生!この守人である私が王女が捕まっているのに、黙っていると思いましたか?」

「誰も思わないだろうけど。これぶつければあの結界消えるんだよな?」
「うん。私が先生をやるから2人は開放をお願い」
「了解」
「まかせてよ〜♪」
2手に別れて行動を開始する。
「水よ、風よ、我に力を与え、刃となれ(ウェル・フェン・ギー・パル・フェロ・ジア・グロ)。水風刃・散烈波(ウェル・フェン・ジア・バム・イリ・ガナ)」
「な、1年生であんな魔法を」
「ギルガ先生しっかりしてください。火よ、地と、我が盾となれ(メリ・グー・ギー・セル・グロ)。火地波動の盾(メリ・グー・バーン・セル)」
水は火と、風は地と対になる力で相殺される。
「やっぱり先生はすごいな。でも、もう時間終了だし、みんな解放されてるよ♪」
「なに」
レンガル先生が後ろを振り返るとすでに開放された生徒たちがいた。
「すみません。私がしっかりしていなかったために」
「ギルガ先生、しっかりしないと♪」
レナに言われ少しショックを受けたギルガ先生だった。

昼食を食べているときの生徒たちの会話はパトリシアの背中に翼が見え、一瞬天使と勘違いしたというものが多かった。



あとがき
こんにちは。
作者のYUです。
これは以前作っていてボツにした自作小説(本当は劇の台本が1作目に含まれる)の第三作品『魔法少女 パトリシア』の設定を元に設定を改良し、ストーリーを変えた、いわば新verなんです。
その最初がこれです。
『舞い降りた天使』というのは分かっていただけましたか?
第1章が終わるまでにはパトリシアが本名を隠す理由を明かせると思います。(以前もそうだったし{話の内容グタグタだったけど})
それでは感想お待ちしております。(できればメールにてお願いします)
それから、この作品は日付けを付けていこうと思います。
作成開始日/作成終了日/改正日時(回数)
11月5日/11月5日/現在は無し


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