まもパロ64

 それは昨日、太助とシャオが二人で買い物に出掛けていた時の事だった。
「シャオ…」
「はい?アニメの予約録画ならちゃんとしておきましたよ?」
「いやそうじゃなくて」
「違うんですか?じゃあボスの弱点ですか?それなら肩の後ろの2本のツノの真ん中にあるトサカの下の鱗の右です」
「そんなマニアックな事も聞いてない」
「まさか!私がキリュウメインの同人誌を買い占めてこっそり処分した事がばれた!?」
「そんな事しとったんか!いいから聞いてくれ」
 仕切りなおして太助は話を切り出した。
「あのさ…決闘…しないか…明日」
 との誘いに、シャオは特に考えたそぶりもなくあっさり
「はい!」
 と答えた。



64話.南極寿星の思い編“最終血戦”



 そして今日。
 二人は決戦の地へと向かっていた。
「あなたが本気で私に勝てると思っていたとは」
 シャオは太助に向かってそう告げた。
 その表情は余裕に満ちている。
 やがて二人は町外れの小さな広場に辿り着いた。
「さぁ…いよいよですね…」
「あぁ…俺達二人だけの…戦いだ…」
 周囲には誰一人としていないこの場所で、二人はまさに最後の戦いを始めようとしていた。

 その時。

「待てぇーっ!!」
 突如として響きわたる声。
 いつの間にか、そこにはルーアンや出雲をはじめとした、主要メンバー達がいつの間にか集まっていた。
「あんた達!勝手に最終決戦をやっていいと思ってるの!?」
 その筆頭であるルーアンが怒鳴り散らす。
「というか私の出番はどこ行ったんですか!?」
 愛原花織の悲痛な叫びが轟く。
 そういや今まで出番なかったな。
「…お前ら、なんでここに?」
 太助は至極当然の疑問をつぶやいた。
「儂が呼んだのじゃ」
「南極寿星?」
 そこにいたのは星神、南極寿星。
「みんな、お主達と決着をつけたがっておるんじゃよ…」
「そうかい…」
 太助はふとメンバーの数を数えた。
「えーと…全部で8人か…じゃ7人は俺が殺すからシャオはあと一人頼むわ」
「逆でしょ…私が7人で太助様が一人です」
「…まぁ前座にはちょうどいい…」
「行きましょうか」
 太助とシャオは互いにうなづくと一気に突撃していった!


 それは凄まじい戦いだった。

 太助のカメハメ波がたかしと乎一郎を吹き飛ばし、

 シャオの地竜走波が花織とルーアンをぶっ飛ばし、

 太助のサイコガンが出雲とキリュウを貫き、

 シャオのゴルディオンハンマーが翔子と那奈を光にした。


「はぁ…はぁ…4人ずつ…か…」
「まぁ…前哨戦としてはまずまず楽しめましたか…」
 再び、向かい合う太助とシャオ。
 その周囲には他のメンバー達が倒れて死屍累々となっている。
「太助様、始めましょうか…」
「あぁ…いよいよだな…」
 二人は今度こそ決闘を始めるべく、構えた。
「さぁ…行きますよ」
「来い」
 タンッ!
 まずシャオが太助に接近して拳を撃ち込んだ!
「北斗百烈拳!!」
「いきなりか…だが無駄な事!俺は不死身だと言ったはずだ!」
 シャオの攻撃に太助は全く動じていない。
「ならばこれはどうです…無想転生!」
 メイホアを葬った、あの技が繰り出された!
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「むぅっ!?」
 さすがに強力な技なのか、太助も厳しい表情だ。
「はぁっ!」
 最後の一撃が太助に撃ち込まれる!
「うぐっ!」
 それを受けた太助は大きく後ろに飛ばされた!
「…さすがに強力な技だな…だが同じ事だ!これでは俺は倒せないぞ」
 だが太助はそれでもほとんどダメージを受けた様子はなく、怯むことなくシャオと対峙している。
「たいしたものですね…これでなお倒れないとは」
「主人公だからな…お前こそ、こうして今まで何人の主を殺してきたんだ?」
「100人から先は覚えてませんね」
「そっちかよ。てっきり『貴様は今までに食ったパンの枚数を覚えているのか』で来るのかと」
「ふふふ…」
 不敵に笑うシャオは北斗神拳の構えを解いた。
「…いいでしょう。パクリの戦いはこれまでにしてここからは私のオリジナルでやらせてもらいます」
「オリジナル!?」
 意外な言葉に太助は驚いて見せた。
「この私の…『星神拳法』で…」
 シャオはゆっくりと言葉を続ける。
「太助様…あなたを殺します」
 次の瞬間、太助に一瞬で接近したシャオが拳を放った!
「車騎!!」
 ドゴンッ!
「ごふっ!?」
 シャオの右ストレートが太助のボディを直撃した。
「軒轅!!」
 続いてシャオの回し蹴りが太助を蹴り飛ばす。
 ゲシィッ!
「ぐああっ!!」
 まともにくらった太助、さすがにダメージがでかいのかその場に膝をついた。
「くそっ…この俺が…」
「いかにあなたといえど、この技でノーダメージとはいかないようですね」
「くっ…くはははは…なるほど…」
 太助は不気味に笑いながら再び立ち上がった。
「お前はどうあっても俺をぶちのめしたいらしい。そして俺もお前を邪魔な敵として認めよう。
主としてではなく、戦士としてだ…」
 太助はどこからか短いナイフを取りだした。
 その柄には七夜と書かれている。
「武器ですか」
「一端の戦士ではあるようだな…戦士の戦いに卑怯なんて言葉は存在しねぇ。
常に生き残りをかけた戦いだ。これが最後だ。ケリをつけようじゃないか!」
 太助はそれだけ言ってナイフで斬りかかってきた!
「軍南門!!」
 それをかわしたシャオのチョップが太助を直撃する!
「くそっ!」
 太助の振るったナイフがシャオの頬をかすめる!
「離珠!!」
 それにも怯まずシャオのアッパーカットが太助のアゴを打つ!
「この野郎っ!」
 太助も負けずにナイフを向けるが、
「瓠瓜!」
 シャオのハイキックが太助の手を蹴り、
「しまった!」
 その衝撃で太助はナイフを飛ばされてしまった!
「天鶏!」
 そこへシャオが追い討ちをかける!
「ぐあっ!」
 まともにくらって大きく吹っ飛ばされる太助!
「てめぇ…!」
 怒りに燃えた太助は起きあがると同時にシャオに殴りかかる!
「この俺を誰だと思ってる!」
「あなたがどこの誰だろうと!私はあなたを越えていく!」
 シャオは太助のパンチをかわして、さらに攻撃を続ける!
「天陰!!」
 シャオの踵落としが太助の脳天を貫いた!
「がふあっ!!」
 激痛にうずくまる太助にシャオはいよいよ必殺技をぶちこむ!
「虎賁!!」
 怒濤のパンチの連打を太助のボディに叩き込んだ!
「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 さすがの太助もこれはかなり堪えたようで全身ボロボロ、鼻や口から大量に出血している。
 もう立っているのが不思議なくらいフラフラである。
 しかしそれでも太助は戦う事をやめようとしなかった。
「はぁ…はぁ…まだだ…まだおわらんぞ…」
「太助様…もうやめた方が…!」
「俺は七梨家の長男にして…帝王…引かぬ…媚びぬ、省みぬ!帝王に逃走はないのだぁーっ!」
「そうですか…」
 少し悲しそうな表情を浮かべてシャオは構えた。
「…ここまで耐えた主は本当にひさしぶりです…でも…これで終わりです。これをくらえばいくら太助様でも絶対に死にます」
 そう言ってシャオは最後の技を太助に向け、一気に放った!
「星神拳法最終奥義!!」
 その瞬間、シャオの体がまぶしく光った!
「北斗七星!!!」

 ドカバキゲシグシャァッ!!

「ぐあああああああ!!!」
 フラフラの太助はよける事もままならず全ての攻撃をくらってしまった。
「あ…あああ……!!」
 太助はもはや白目を向いていて口から血がドロドロと流れ出している。
「人体の7つの急所を的確に打ち抜くこの技…これをくらって立ち上がってきた人間は…いません」
 淡々と説明するシャオ、その表情には少しばかり寂しさが漂っていた。
 だが次の瞬間!
「あああああああああああ!!!!」
「まさかっ!?」
 慌ててシャオが振り向くとそこには決死の表情で突撃してきた太助の拳が迫っていた!
「なっ…!?」

 グシャァッ!!

 太助のパンチは見事にシャオの顔面に命中していた。
 油断していたシャオはそれをくらって大きく吹き飛ばされていた。
「ぐふっ!」
 地面に倒れ込んだシャオはダメージよりもむしろ驚きの方が大きかった。
「バカな…あれで何故…立ち向かって来られるの…!」
 なんとか起きあがったシャオは再び拳を構える。
 だが。
「あっ…」
 そこで見たものは、最後の力を使い果たし、地面に倒れてぴくりとも動かない太助の姿だった。
「太助…様…」






















 その後、七梨家の自宅で太助の遺言が発見された。
 内容は自分の死を世間に知らせて欲しい事と、葬儀の手配をシャオに一任するというものだった。



 太助の死はその日のうちに鶴ヶ丘全体に知れ渡った。
 太助の葬儀は数日後静かに行われ、弔文もシャオ自らが読んだ。



 その後日、シャオは旅に出た。
 どこへ行くのかと尋ねられるとシャオはこう答えた。
「中国の知人の所に…」



 そうしてシャオは中国のとある地方を訪れていた。
 その手には太助の遺言書が握られている。
 遺言書の最後にはこう書かれていた。



『全てが終わったら中国奥地にいるある男を訪ねて欲しい。そいつは君もよく知る人物だ。
絵と甘い物をこよなく愛する男なので是非手みやげを持っていって欲しい』



「はぁ…」
 シャオはふとため息をついた。
 やがて彼女の目の前には男の後ろ姿が見えてきた。
 シャオはその男の後ろ姿に向かって一言こう叫んだ。




















「太助様っ!!」




















「いやー、バレバレですわ」
「やっぱり?」
 太助は苦笑混じりにそうつぶやいた。



まもパロ・終


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ネタ解説

>ボスの弱点
魔法陣グルグルより、カセギゴールドの弱点。

>「というか私の出番はどこ行ったんですか!?」
すまん。

>シャオの地竜走波
ドリキャスこみパより、すばるの技。
やったことないけど。

>太助のサイコガン
コブラネタ。懐かしいなぁ。

>ゴルディオンハンマーが翔子と那奈を光にした。
ガオガイガー…でしたっけ?
話題になったロボアニメだけど私は見た事がない(死)

>俺は不死身だと言ったはずだ!」
2でも使った北斗の拳、聖帝サウザーネタ。
私はわりと気に入ってる敵なんですが世間一般での知名度は低いらしい…

>こうして今まで何人の主を殺してきたんだ?」
>「100人から先は覚えてませんね」
北斗の拳の…えーと誰のセリフだったっけ。
ラオウ編以降はどうもマイナーで…
それはそうとシャオの主が100人以上いたのかなんてツッコミは却下しますので。

>『貴様は今までに食ったパンの枚数を覚えているのか』で来るのかと」
上のネタとどっちにしようかと思い、両方無理矢理使いました。
こっちはジョジョでしたっけ?

>「この私の…『星神拳法』で…」
星神の名前がそのまま技名になってる拳法があったら面白いなって…
なんかこれだけで別のネタにできそうだけど。

>「太助様…あなたを殺します」
痕より千鶴さん。
ゲームとパロディの差がこれほど凄いキャラもいないよなあ。

>「お前はどうあっても俺をぶちのめしたいらしい。
ワンピースよりクロコダイルのセリフ。
書いた当時はまだ単行本になっていなかったので雑誌で読んだ時の記憶から…(笑)

>七夜
月姫ネタです。きっと太助は直死の魔眼を持っている。

>「はぁ…はぁ…まだだ…まだおわらんぞ…」
さりげなくガンダムネタ。

>引かぬ…媚びぬ、省みぬ
これも聖帝サウザー、最後まで北斗ネタかよ。

>「人体の7つの急所を的確に打ち抜くこの技…
7つの急所を線で結ぶと北斗七星の形に違いない。

>「いやー、バレバレですわ」
太助が死んだ所からはバキ外伝のオチのパロディ。
いや、なかなか面白かったのよ。



後書き
ラスト3部作、二つ目は64話のパロ。
当初の予定ではこいつが最終回の予定でした。
なーんかギャグなのかマジなのかよくわからんオチでしたな(笑)

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