「太助様、朝ごはんですよっ」 「うん…」 今日は日曜日。 七梨家に住み着いたシャオは朝から元気にメシなんぞ作ってくれてたりするんだ、これが。 『食材盗難、相次ぐ』 「…おいシャオ…お前この食材の出所は何だ?」 新聞の見出しを見て凍りついた太助は恐る恐るシャオを問いつめた。 「えぇ、私が持ってきました」 「窃盗は犯罪だアホぉっ!!」 「でもこの前太助様がやってたゲームでは平気でたい焼き盗んでる子がいましたよ?」 「なんで知ってんだコラ」 「しかもあれってパソコン版ですよね?太助様ってまだ14歳…」 「だぁぁぁぁぁぁぁ!!」 3話.お買いものってなあに?編“買い物くらい古代中国にだってあったろうに” つーわけでシャオにお買い物システムを伝授するべく外に連れ出すハメになったのであった。 「といってもシャオのあの格好では目立ちすぎるからな。姉貴の借りちゃおーっと。 …しかし姉貴もワンピースを探しにグランドラインに入ったっきり帰ってこないよなぁ…」 どこなんだ、この世界は。 「すげぇ…」 タンスを開けた太助は絶句した。 中に収納された衣装の数々に。 友枝小の制服、某中国刑事のチャイナ服、ゲーム屋のマスコットのネコミミ&メイド服… ってコスプレっすかーっ!? なんとかまともな服を用意し、ようやく出発。 「太助様!人がたーくさんいますわ!」 都会の人の多さにシャオははしゃいでいる。 「世界征服したらこの愚民共を掃討出来るんですね」 「いろんな意味で危ないセリフを吐くな」 ともかく太助のお買い物レクチャーが始まった。 「ここは八百屋だ。すいません、大根一本ください」 「うむ。うちの大根は新鮮で美味だぞ」 出迎えたのは威勢のいい親父…ではなく、無口な印象の赤毛の少女だった。 「…何してんだ、キリュウ」 「こら!実名は出すなと前回言ったのに!」 「お前…そんなに出番欲しいのか…みじめだな…」 「無様ですねぇ、キリュウさん」 「貴様ら…ここで死ぬか?」 目がマジだ、キリュウ。 キリュウいぢめもそこそこに、2人は買い物をすませていった。 「太助様、お買い物の仕方はわかりました。私1人で何か買ってきます」 「そうか…?じゃ、今流行りのたまごっちを」 バキッ! 「太助様、ふざけた事ぬかしやがりますと殴りますよ?」 「殴ってから言うなぁっ!」 「もう一度聞きます、何を買ってきてほしいですか?」 「じゃメイドロボ。HM-12型な」 ドバキッ! 「死にたいですか?」 「わかったよ…原作通り消しゴムを頼む…」 「早く言えよこのクソが」 この2人の関係って… 「ありましたわ。消しゴムを売ってるお店」 程なくシャオは文房具屋を見つけ、中へと入っていく。 「消しゴム…消しゴム…」 「ご、強盗ーっ!!」 「え!?」 突然の外からの叫び声に外に出てみると、近くの銀行から駆け出していく人物がいた。 「逃がしませんよっ!?」 それを見たシャオはすぐさま追いかけた! 「ふぅ…ここまで来れば追ってこないだろう…」 その人物が公園で一息ついていたその時。 「ライダーッキーック!!」 ドゴン!! 「うわっ!」 上空から現れたシャオがいきなりキックで突撃してきた! その人物は間一髪それをよける。 「誰だっ!?」 「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ!悪を倒せと俺を呼ぶぅっ!!その名も…」 「…関わり合いにならん方がいいな…」 「逃げるなぁっ!」 去ろうとする強盗をシャオは必死で呼び止めた。 「ドロボーは嘘吐きの始まりなんですよっ!」 「それ、逆だぞ。あたし強盗だし」 「…あははーっ、シャオリンは普通よりちょっと頭の悪い子ですからーっ」 「ごまかすな」 「しかし、銀行強盗さんがこんな小娘とはちょっと意外です」 シャオの指摘した通り、銀行強盗は太助と同年代くらいの少女だった。 「小娘と思って油断してると…こうなるよっ!」 バンッ! 少女は素早い動作で拳銃を取り出し、シャオに向け発砲した! 「ふんっ!」 パシッ! しかしシャオは少しも慌てず手で銃弾を受けとめてしまった。 「なにぃっ!?」 「銃を出してから撃つまでの動作の速さ…お見事です。惜しむらくは相手が私だということ… 北斗神拳の前には拳銃などただの玩具です」 「へぇ…やるね…それじゃこっちも…本気で殺ってやるよっ!」 シュッ! 「なにぃっ!?」 今度はシャオが驚く番だった。 一瞬のうちに接近した少女が拳を放ってきたのだ! 「くっ!」 シャオは当たる寸前の所で少女の拳をかわしてみせた。 「へぇ…やるじゃないか。今のは殺る気だったのに…」 不敵な笑みを浮かべながら少女はシャオに向き合った。 「あたし山野辺翔子、よろしくな。あんたにちょっとばかしツラ貸してもらうぜ」 「シャオ!?あんな所に…」 帰りが遅いので探しに来た太助は異様な光景を目の当たりにした。 シャオが何者かと死闘を繰り広げているのだ。 自分以外でシャオと互角に殺れる奴、しかも女。 「あれは…学年一の問題児にして手配中の賞金首。 噂では敗北が知りたくて脱獄した死刑囚と言われる山野辺翔子じゃないかっ!」 ドゴォォォォォォン!! 「シャイニングフィンガー!」 「爆熱!ゴッドフィンガー!!」 太助の見てる前でシャオと翔子の死闘はなおも続いている。 互いの攻撃で2人ともボロボロだ。 「なんとか止めようか…おいお前ら…」 「「うるせぇよ!!」」 「ひっ!?」 止めに入った太助をシャオと翔子が睨み付けた。 目が殺気だってて滅茶苦茶怖い。 「勝負の…」 「邪魔だぁっ!!」 どかげしぼきぃっ!! 「うぎゃああああああ!!」 哀れ、太助は両者の攻撃を受けてぶっ飛ばされた。 あたかもMr.5のように。 「くぅっ…余計な邪魔が入りましたね…」 「どのみちこのままじゃ共倒れか…仕方ない…今回は引き分けにしといてやる…」 とりあえず止める事には成功したらしい。 ダメージと疲労で動けなくなった翔子の元にゆっくりとシャオが近付いてきた。 「これ…翔子さんにあげますわ」 そう言ってシャオが差し出したのは一冊の本だった。 「あんた…これどこから…」 「話の展開上出しただけです。お気になさらず」 無理矢理原作に戻そうという魂胆が見え見えだ。 「今日はとっても楽しかったから…そのお礼です」 「俺死にかけてんですけど…」 横で太助だったものが何かつぶやいているが無視。 「翔子さん、また一緒に遊びましょうね」 「あぁ…」 拳で語り合った2人の間には確かな絆が生まれていた。 つーかあれだけ殴り合って「遊び」と一言に片付けるのか。 (ほんっと変な奴…) 去っていくシャオ(と太助)を見送った後、もらった本の表紙を見てみた。 『ゾロ×サンジ新刊』 (理解できねー) なんでやおい同人誌なんだ。 「あっ、そうだ太助様」 「な、何?」 ようやく復活した太助の前でいきなりシャオが顔を突き出した形で目をつぶった。 どごすっ! 「ギャース!!」 そこへ間髪入れずに太助が頭突きをかましてきた。 「何するんですかっ!」 「いや、隙だらけだったんで」 「くっ…こっちが原作通りに進めようと思ったら…許さん!やはり貴様はここで死ね!!」 「おーっ!?やんのかコラァ!さっきみたいにゃいかんぞワレぇ!!」 再び始まる太助とシャオの死闘。 やはりこのSSはラブコメもどきに終わっちゃくれないらしい。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――― ネタ解説 >たい焼き盗んでる子 Kanonの月宮あゆ。うぐぅ。 >ワンピースを探しにグランドラインに もちろん、元ネタはワンピース。 那奈姉の懸賞金はいくらでしょうね。 >友枝小の制服、某中国刑事のチャイナ服、ゲーム屋のマスコットのネコミミ&メイド服… 順にカードキャプターさくら、スト2のチュンリー、デジキャラット。 >今流行りのたまごっちを やったことないです。 >メイドロボ。HM-12型 トゥハートのマルチ。はわわ。 >強盗ーっ 初出時は泥棒でしたがもっと悪くしたかったので強盗に。 >あははーっ Kanonの倉田佐祐理。あははーっ。 >敗北が知りたくて脱獄した死刑囚 バキです。死刑囚のメンツはやたら濃い。 >「シャイニングフィンガー!」「爆熱!ゴッドフィンガー!!」 すいません、元ネタ知らずに使ってました。 >『ゾロ×サンジ新刊』 初出時では「京×庵」でした。 後書き この回から「お話投稿所」での連載が開始されました。 新キャラとして山野辺翔子が追加され、ネタ的には少し広がりました。 凶悪犯、ということですが意外とこんなアウトローな役が似合うと思うのは私だけ?