「太助様、お茶が入りました」
「お、サンキュー」
ひさひざの休日、太助達は自宅でのんびりとしていた。
戦い続ける戦士にも休息は必要だ…っていつから戦士になった。
ブゥーーッ!!
「まずぅっ!なんだこりゃあっ!?」
「青汁です。体にいいんですよ」
「まともなもんよこせっ!!」
「つーか飲む前に気付きなさいよ…」
横からルーアンがつっこむ。
ピンポーン
その時、玄関のチャイムが鳴った。
何故玄関のチャイムは必ずピンポーンなのだろう。
どうでもいいことだが。
「ちっ、誰だよ休みの日に。押し売りだったら殺す」
文句を言いながら太助は玄関に向かった。
「はい、どちら…様…」
太助は玄関の向こう側にいた人物を見て絶句した。
「やっほーい」
そこにいたのは日本人離れした褐色の肌のお姉さん。
太助の姉、七梨那奈その人であった。
バタンッ!!
「えっ!?」
次の瞬間、太助は慌ててドアを閉め、
「シャオ、ルーアン!てめぇらどっか隠れてろ!」
と、強引に蹴り飛ばした。
「おい、太助。何やってんだここ開けろ!」
外では那奈がドアをドンドンと叩いている。
「あたしを知っているならこの扉がなんの効力も持たないことが理解るハズよ」
さすが姉弟、ネタのパターン一緒だ。
「い、今開けるって!」
無駄に家を壊されたくない太助はすぐにドアを開けた。
「ひ、ひさしぶりだな…那奈姉…1年ぶりくらいか…」
「太助…」
ぐいっ!
「お前はお姉様にお帰りの一つくらい言えんのかぁっ!」
「い、痛い那奈姉!キャ○ルクラッチは勘弁!」
あっという間に太助を組み伏せ、技を決める那奈。
その様子を影から見つめるシャオとルーアン。
「太助様をああも簡単にねじ伏せるとは…かなりの手練ですね」
「ていうかお姉様って残虐超人だったのかしら」
「あー、お茶がうめぇ」
居間で那奈が茶を飲んでる隙に太助はシャオ達に説明していた。
「あの姉貴、昔っから鉄砲玉でさ…」
「どっか殴り込みに行ったんですか?」
その鉄砲玉じゃねぇ。
「とにかく無茶苦茶なヤツなんだ、那奈姉ってのは…」
ある時は、
『那奈姉…このギプスは…』
『七梨の男子たるもの、強くなくちゃね』
『俺は巨人○星目指すわけじゃねぇ!』
またある時は、
『那奈姉…もう3日寝てないんだけど…』
『明日入稿しなきゃ落ちるんだ!死ぬ気で描け!落としたら殺す!』
『ひぃ、どっちにしろ死ぬ』
さらにある時は、
『那奈姉…そこは…あぁっ…』
『ここか?ここがいいのかい?』
『ふあっ…あああっ…』
「あぁっ!!思い出しただけでも恐ろしいっ!!」
頭を抱える太助をシャオは冷ややかに見下ろしていた。
「…どこからつっこんだらいいんでしょう?」
対称的にルーアンにはある計画が出来上がっていた。
(そうね…ここは先生にでもなりすましてお姉様の前に姿を現しましょう。
お姉様を味方につければシャオリンにも勝てるかも…)
「ふぅ、ひさびさの我が家はいいねぇ」
「そ、そうか…」
居間に戻り、那奈の相手をする太助。
緊張してるのか冷や汗を流している。
「本当にひさしぶり…元気にしてたかい?」
いつの間にか近付いていた那奈が太助の体に触れる。
瞬間、太助の脳裏に嫌な予感がよぎる。
「どれくらい成長したのか…お姉様に見せてみろぉっ!!」
「いやぁぁぁぁぁ変態ぃぃぃぃぃぃ!!」
ピンポーン
「き、客だ、俺出るよ!」
幸運とばかり、太助は脱がされかけたズボンをなおして玄関へと向かった。
「はい、どちら…様…」
再び太助は絶句した。
「おや、太助くんこんにちは、あ、お姉さんですか?はじめまして」
「はい、はじめまして」
「私は太助くんの担任をしております、桐生蛮奈(きりゅう ばんな)と申します」
そう、原作ならルーアンのこのシーンをかわりにキリュウが出てきたのである。
視界の隅でルーアンが簀巻きになって転がってるのを太助は見逃さなかった。
(キリュウ…出番が欲しいのはわかるが…お前が先生役は無理がありすぎるぞっ!)
「今日は家庭訪問なんですか?」
「えぇ、そうなんですよ」
何の疑問も持たずに那奈はキリュウを案内していく。
(えぇっ!?信じてる!?)
居間に入った所でキリュウが口を開いた。
「そうだ、太助くんの部屋を見せてもらおうか」
「え゛!?」
(いきなりそっちでくるか!?)
話の急展開に焦る太助。
「ちょ、ちょっと待ってな、部屋片付けてくる!」
慌てて太助は那奈達を居間に残して単身部屋に戻っていった。
「シャオ!…あ」
そこで見たのはベッドに寝転んで眠っているシャオの姿だった。
「へぇ…こんなヤツでも寝顔はけっこう可愛い…」
「むにゃ…おれのなをいってみろぉ〜…」
「…どんな夢見てんだ…」
シャオの寝言に突っ込んでみたり。
「って、それどころじゃない!起きろシャオ!」
なんとか起こそうと太助はシャオを揺り動かす。
「うにゅ…地震だおー」
「えぇぃ、ベタなボケをかますな!起きんかこら!」
しかしいくら揺すってもシャオは一向に目を覚ます様子はない。
「くそっ…ザメハが使えれば一発で起こせるのに…」
カツンカツン…
その時ドアの向こうで那奈達が階段を登ってくる足音が聞こえてきた。
「やばい、時間がない!やむをえん、窓から捨てる!」
そう思い、太助がシャオに触れようとした時。
「我が眠りを妨げるのは…」
寝ぼけたシャオは太助の胸ぐらを掴み、
「誰だぁっ!」
物凄い力と速度で太助を投げ飛ばした。
「なぁーーーっ!?」
バキィッ!
「ぐはぁっ!!」
投げられた太助は天井を人型に突き破り、空高く飛んでいった。
キラーン☆
星になるのはお約束。
「あれ、私どうして…」
ようやくはっきりと目覚めたシャオ。
太助をぶっ飛ばした自覚はないらしい。
「おぃ、太助。どうし…た…」
そこへ那奈とキリュウが部屋に入ってきた。
シャオも部屋に入ってきた人物に目を向ける。
その瞬間、シャオと那奈の目があった。
((こいつはっ…!!))
二人の間に緊張が走った。
優れた格闘家(グラップラー)は互いの実力を瞬時に判断出来るという…
((こいつ…できるっ!!))
まさにこの時二人は互いを強敵だと瞬時に見切っていたのだ。
「はぁっ!!」
先に仕掛けたのはシャオの方だった。
シャオのパンチが床を叩き割る。
それをかわした那奈はすぐさま反撃に出る!
「たぁっ!」
だがそれもシャオによって防御される。
「えいっ!やぁっ!」
「ていっ!このっ!」
パンチとキックが至近距離で次々と繰り出されるがどれもよけられるか防御されるかで全くダメージにならない。
まさに互角の戦いであった。
「でぇぇぇぇぇいっ!!」
シャオの大降りのパンチをかわした那奈がシャオから間合いをとる。
だがそれはシャオの作戦だった。
すぐさまシャオが次の攻撃に移る。
「眼魔砲!!」
ドゴォォォォォォン!!
シャオの手から発射された高出力のエネルギー波がまともに那奈を直撃した。
「ふふ…パワーはまずまずってことか…」
だが那奈は多少傷を負っただけでまだまだ余裕の表情を見せている。
「那奈サン…あなたまだ本気を出してませんね?」
「わかる?ふふ…」
シャオの言葉に那奈は不敵に笑った。
「あたしはね…弟より一回多く変身できるのよ…」
「クウラ!?」
那奈の言葉にシャオは戦慄した。
「見せてやるわ…あたしの最終形態…」
那奈はポーズを構え変身のモーションに入った。
「はあああああああああああああああああ!!!!」
げしっ!
「はぶっ!」
シャオの蹴りがまともに変身中の那奈にヒットした。
「なにすんのぉっ!変身中は攻撃禁止というルールがあるでしょおっ!」
「そんな旧世紀のルール捨てちまえっ!」
作者も長々と変身シーンを書くつもりはない。
「くうっ…ならばこれはどう!?」
那奈が取りだしたのは一本の短い棒だった。
だが次の瞬間、棒から細長いビームが飛び出し、剣のような形に変わった!
「ビームサーベル!?」
「ダーンダーンダーンダーンダダーンダーンダダーン」
「ダースベ○ダーのテーマまで!?」
自分で歌ってるあたりいまいち情けないが。
「くらえっ!」
那奈はビームサーベルで斬りかかってきた!
「くっ…そっちがそうくるなら…」
ここでシャオは支天輪を取りだした。
「来々、離珠!!」
シャオが呼び出したのは何故か、離珠だった。
「そんなチビで何をする気!?」
構わず那奈は突っ込んでくる。
「行きますよ…離珠」
そう言ってシャオはどこからか取りだした赤い本を開いて呪文を唱えた。
「ザケルっ!!」
その瞬間、離珠の口から巨大な電撃が飛び出した!
「なっ、なにぃぃぃぃぃぃぃっ!!?」
予想外の攻撃に慌てて防御するも間に合わない!
ビシャァァァァァァァン!!
「ぐあああああああああ!!」
那奈はまともに電撃をくらい、その場に倒れ伏した。
「ぬかった…まさか魔物の子がいたなんて…」
その様子を見守っていたキリュウはつぶやいた。
「私の出番…終わり?」
次の日。
「那奈姉はもう行ったのか?」
昨日星になった太助がようやく帰ってきた。
「えぇ、すでに那奈さんは新たな旅へと出発しました」
「そうか…で、何持ってるんだ?」
「那奈さんから預かった手紙です」
そう言ってシャオは那奈の手紙の封を開け、その中身に目を通した。
『シャオへ。あんたみたい強い子が太助と一緒に住んでるなんてね!このあたしが不覚をとるなんて思いもよらなかったよ。
あんたなら太助を任せられそうだ。押しつけるわけじゃないけどシャオがいてよかった。
シャオ、これからも太助の事よろしくね。殺すなり犯すなり好きにしていーから(笑)
PS.とりあえず、いい技教えといてやるよ。やり方はね…』
「ふむふむ…背中に跨って相手の両腕をひねるように後ろに…」
さっそくシャオは太助相手にその技を実戦していた。
「ぐはっ!そ、それは那奈姉の得意技パ○スペシャル!何故シャオが…ぐぁぁぁぁぁぁ!!」
16〜17話.隠れて守護月天編“七梨家超人列伝”でした。
「え!?今頃!?」
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ネタ解説
>「青汁です。体にいいんですよ」
飲んだことない。
>何故玄関のチャイムは必ずピンポーンなのだろう。
あと学校のチャイムもな。
>「い、痛い那奈姉!キャ○ルクラッチは勘弁!」
キン肉マンネタ。ブロッケンを殺した時のラーメンマンは今じゃ考えられない程非道ですよね。
>『那奈姉…そこは…あぁっ…』
まもパロは18禁ではありません(笑)
>桐生蛮奈(きりゅう ばんな)
名字はともかく名前は無理矢理(汗)
キリュウの専門教科は「試練」に違いない(爆)
>「むにゃ…おれのなをいってみろぉ〜…」
北斗の拳、ジャギのセリフ。
ケンシロウの兄の中で唯一のヘタレだった男(笑)
>「うにゅ…地震だおー」
今回ギャルゲーネタがないと思い急遽入れました。
>ザメハ
ドラクエの呪文、眠った仲間を起こす。
マイナーな呪文でもある。
>「眼魔砲!!」
パプワくんは柴田亜美センセの名作です。
アニメも大好きで見てました。
>「クウラ!?」
今回特にやりたかったネタです。
劇場版ドラゴンボールに登場したフリーザの兄です。
>「なにすんのぉっ!変身中は攻撃禁止というルールがあるでしょおっ!」
某制服戦士は変身のモーションが長すぎです。
>「ダースベ○ダーのテーマまで!?」
スターウォーズです。
たまには映画ネタもやってみたくて。
>「ザケルっ!!」
離珠まもパロ初登場がこんな役(笑)
サンデー連載の金色のガッシュネタ。
今はまだマイナーですが私はこのマンガ
ブレイクしそうな気がします。
(追記)
と、当時の解説に書きました。
ホントにブレイクしてやんの。
>那奈姉の得意技パ○スペシャル!
またキン肉マンネタ(笑)
ウォーズマンといえばこの技ですよね。
後書き。
那奈姉登場編でした。
旧まもパロシリーズでは一番気に入ってるネタです。
この頃某サイトで見た月天壊れギャグにも影響受けました。
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