それからというもの、太助は毎晩屋上にやってきては沙織に会っていた。
シャオにそっくりな彼女にはどうも親しみがあるのだ。
当然シャオ達には秘密であったが・・・・
そんなある夜。ルーアンがこっそり太助に会いに病院にやってきた。
この日も太助は屋上で沙織と会っていた。そこへ
「たー様みっけ!!」
「ルーアン!?いや、違うんだぁ!!この子は・・・」
「たー様こんな所で一人で何やってんの?」
「へ?一人?」
辺りを見まわしてみるが、沙織の姿が見あたらない。
翌日、いつものように医者が検診に来た時、
思い切って沙織のことを聞いてみた。
すると、
「・・・・なんで君が彼女のことを知っているんだ?」
「だって俺何回か彼女に会ってますよ、昨日の夜だって・・・・」
「そんなはずはない!彼女は・・・半年前に亡くなってるんだ・・・・」
「!!・・・・嘘でしょお?」
「嘘じゃない。記録にも残ってるし、何より僕は彼女の主治医だったから・・・・」
半年前
「ねぇ、今日は体の調子もいいし、屋上に行ってもいいですか?」
「そうだね。たまにはそういうのもいいだろう」
「綺麗な月・・・・あたし月って大好きなんです。
なんだか心が落ち着いて・・・・」
「そうかい・・・・」
「本当に・・・・月って・・・・綺麗・・・・・・」
「沙織ちゃん?」
「沙織ちゃーーーーーーん!!」
「シャオちゃんが見舞いに来た時は驚いたよ。
彼女が生き返ったのかと思ったよ」
「そんな・・・・」
今日も太助は屋上にやってきた。
やはりそこにはいつものように沙織がいた。
「来てくれたんだ・・・・」
その頃、家にいるシャオ。
「!・・・・呼んでる・・・」
「今日は新月なんだね・・・」
「うん・・・」
今日はどうにも会話が進まない。
なにか遠慮があるようにも見える。
太助は迷った。
(ど、どうしよう・・・)
「太助君」
「な、何?」
いきなり話しかけられ動揺する太助。
「今日で・・・お別れなの・・・」
「え・・・」
「ここは・・・太助様のいる病院・・・?」
シャオはその足で病院へとやってきていた。
「どういうことなの・・・」
「新月の日・・・それが私がここにいられる時間のタイムリミットなの・・・」
「なんで・・・」
「わかってるんでしょ?私はもういない人間だって・・・」
「・・・・・・・」
太助は答えることができなかった・・・
「でも・・・私嬉しかった・・・
こうして・・・太助君に逢えて・・・すごく楽しかった・・・」
「沙織さん・・・」
その時
「太助様!」
「えっ!?」
屋上にシャオが現れた。
「私が呼んだの・・・」
「え!?」
「ごめんね・・・私も本当はわかってた。
あなたにはこの子がいるんだってこと・・・」
「沙織さん・・・」
「でも良かった・・・だって私の想いを受け継いでくれる人がいるんですもの・・・」
そう言うと沙織はシャオの前に歩み寄った。
こうして並ぶと本当にそっくりだ。
「あなたは・・・」
「私は沙織。初めましてだけど・・・もう行かなくちゃいけないの・・・」
「えっ・・・」
「太助君のこと・・・お願いね・・・」
「え!?」
シャオはよくわからないという表情だ。
そして沙織は再び太助に近づく。
「太助君・・・さよならだけど・・・私は空からいつでも見守ってるから・・・」
そう言って沙織は太助の頬に自分の唇を軽く押しつけた。
「さ、さささ沙織さん!?」
「じゃあね・・・」
沙織の体が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間いなくなっていた。
「さ・・・沙織さん・・・」
「キリュウ。たー様どこ行ったか知らない?」
「知らぬぞ。私は」
「シャオリンもいないのよ。どこ行ったのかしら。
せっかくたー様が退院したってのに・・・」
太助とシャオはとある墓地に来ていた。
「月守沙織・・・・ここだ・・・」
それは沙織の墓だった。
「沙織さん・・・」
太助とシャオは墓の前で手を合わせた。
(沙織さん・・・俺約束するよ。必ずシャオを幸せにしてみせる・・・)
「・・・行こうか、シャオ」
「はい」
そうして太助は沙織の墓を後にした。
忘れないよ・・・・
終