「祐一くんっ、たい焼きだよたい焼きっ」 「わかってるよ。言っておくが食い逃げはするなよ」 「うぐぅ、あれは仕方なかったんだもん」 あゆと二人で出掛けた俺達はたい焼きの屋台を見つけた。 それを見たあゆがはしゃいでいるのだ。 「ほらよ。落とすなよ」 「えへ、ありがと祐一くん」 せっかくなのでいくつか買ってやると、 あゆは早速たい焼きにかじりついた。 「んぐんぐ…おいしいね祐一くんっ」 「お前ホントにたい焼き好きだなぁ」 「うんっ、ボクたい焼き大好きだよっ」 嬉しそうにたい焼きを頬張るあゆ。 全く…幸せそーな顔しやがって。 「祐一くんにも一個あげる」 「俺の金で買った物だろうが」 あゆが差し出したたい焼きを受け取り、 俺も一口たい焼きをかじる。 「そういや俺がこの街に帰って来た時も お前にたい焼きもらったな…」 「そうだね…懐かしいね…」 「あれも食い逃げした物なのか?」 「うぐぅ…」 そうしてるうちにあゆは一個目のたい焼きを食べ終えた。 「んぐっ…そういやあの子どうなったかなぁ…」 「あの子?」 「うん。天国に友達がいたの。同じ見習い天使の子だったんだ」 「へぇ、そうなのか」 「今頃あの子も命題を届けるために天国を降りてるはずなんだけど…」 「ははは、そりゃ届けられるヤツは災難だな」 「うぐぅ、ボク迷惑だった?」 「いや…そんなことはないぞ」 そう言って俺はあゆの頭をそっと撫でた。 「おかげでこうして二人でたい焼き食ってられるんだからな」 「えへへ…なんか照れちゃうよ」 そう言いながらふと空を見上げたあゆは、 天国で別れてきた友人に思いを寄せ、小さくつぶやいた。 (上手くやってるといいな…みさおちゃん…) そしてあゆは二つ目のたい焼きに手をつけた。 「えっと…このへんだよね」 彼女の名は「折原みさお」。天使である。 天国から降りてきてようやく目的の街に辿り着いた彼女は 改めて渡されたターゲットの資料に目を通した。 『折原浩平。高校2年生。 自分勝手で子供っぽく、わがままな性格。 幼なじみの長森瑞佳に毎朝起こしてもらう始末。 父親と妹は死別、母親は蒸発、 現在は叔母と二人暮らし』 「…まさかおにいちゃんが相手だなんて…」 みさおは運命の皮肉というものを感じた。 よもやこんな形で兄と再会するハメになろうとは。 「ううん、頑張らなきゃ。あたしが おにいちゃんの事、立ち直らせなくちゃ。 それが天使のお仕事だもん」 気合を入れ直し、みさおは再び歩き出した。 「今命題届けるから、頑張ってよね、おにいちゃん!」 天国に一番近いONEに続く!(嘘です) 後書き ただのおまけなのに意外と反響の大きかった「天近ONE」(笑) 今回の再録のため、大幅に加筆修正しました。 突発で書いた掲示板バージョンよりは良くなってると思います。 実を言うと天近ONEのネタは多少ですが考えてます。 でも私のONEに関する知識が少なすぎるため いまだ執筆には至っておりません。 Kanonはゲーム以外にも資料や情報が多かったから なんとかなりましたがONEはちょっと無理です… 逆を言えばONEをプレイしさえすれば書けるかもしれませんが… それは当分ないと思いますので期待はしないでくださいね。