「七夕ファンタジー」

7月7日、七夕の日のことだった。

「はぁ・・・あちぃ・・・」
太助は一人町を歩いていた。
天気は快晴。太陽が照りつけるまさに真夏日である。
「えーと・・・ジュースは買ったから・・・あとはお菓子だな・・・」
手にジュースの缶のたくさん詰まったビニール袋をぶらさげている。
と、その時。
「ん・・・あれは・・・」
目の前に見知らぬお姉さんが倒れている。
「ちょっと大丈夫ですか!?」
「うぅ・・・・・・」
意識はまだ残っているようだ、しかしかなり弱っている。
わずかな力を振り絞って彼女は一言こういった。
「のどかわいた・・・・」
「へ?」

「ぷはーっ、助かったわぁ」
「はぁ・・・」
太助の買ったジュースを飲んで彼女は元気になった。
「あたしはベガ、ありがとう。おかげで助かったわ」
「俺は七梨太助です。この暑いのによく何も飲まずに歩いてましたね・・・」
「そう?ところで太助君、このへんで男の人を見かけなかった?」
「男の人・・・・いや知らないですけど・・・何か?」
「あたしね・・・・その人を探してるの・・・」
この時太助の中の優しさがついつい発動してしまった。
「あの・・・よければ一緒に探しましょうか?」
「ほんと!?ありがとう!!」


「遅い!」
ここは学校の屋上。
何故かたかしがいる。
たかし以外にもシャオ、ルーアン、キリュウ、翔子、乎一郎、花織とおなじみの面々が・・・・
いや、出雲だけは来ていなかった。
「確かに出雲さん遅いですねぇ・・・」
「シャオちゃん、出雲はめずらしく仕事が忙しくて来るのが遅れるってさっき言ったでしょ。
そうじゃなくて俺が言ってるのは太助の方だよ。買い出しにいつまでかかってるんだ!?」
実は今日ここで七夕パーティーを開催することになっていた。
パーティーとは名ばかりでただ飲んで食べてバカ騒ぎするだけなのだが。
その準備のため学校が終わった放課後、こうして屋上に集まっているのだ。
そしてジュースやお菓子の買い出しに太助が向かったのだが。
「そういえばそうですねぇ・・・私探してきましょうか?」
「ああいやいや!それはいい、どうせそのうち帰ってくるって」
太助も出雲もいない今、たかしにとってシャオと仲良くなる絶好のチャンス。
それを逃したくなかった。
しかし世の中はそう甘くはない。
「野村せんぱーい!そんなとこで話してないで笹の飾り手伝ってくださーい!」
「そうよー!でないと一学期の成績下げるわよー!」
「くそっ、こんな時だけ息ピッタリあいやがって・・・」
花織とルーアンに呼ばれ渋々準備にかかるたかし。
乎一郎はしっかりとルーアンのそばで準備を手伝っている。
「暑い・・・・死ぬ・・・・・」
キリュウは日陰で座り込んで短天扇で扇いでいる。
「精霊のアイテムをうちわにすんなよ・・・」
と翔子の突っ込み。

ガチャッ
「あれ・・・・いないのか・・・」
「!?」
いきなり屋上のドアを開けて見知らぬ男性が現れた。
「にぎやかな声がしたからもしかしたら・・・と思ったんだけど」
「あの・・・なんでしょうか・・・」
シャオが男に話しかける。
「ああ、このへんでベガって女の子を見かけなかったかな?」
「いえ・・・あのどちら様で・・・」
「ああ。僕はアルタイル。そのベガって子を探してるんだけど・・・」


「んーー。なかなかいないですねぇ」
太助はベガと共にその男を探していた。
「なんとか今日中に見つけないと・・・」
ベガは若干焦っているようだ。
「そういえばその男の人とはどういう関係なんですか?」
「うん・・・あたしと彼は恋人同士だったの」
「こ・・・恋人!?」

「でも一身上の都合で別れなければいけなくなったのです・・・」
「そんな・・・」
「でも僕とベガは誓いました。7月7日のこの日、もう一度会おうって・・・
だからどうしても今日会いたいんです」
屋上ではアルタイルが同じように事情を話していた。

「ベガさんはその人がすごく大切なんですね」
「そりゃもう・・・・もちろんよ・・・って何言わせるのよぉ」

「アルタイルさんはベガさんがすごく大切なんですね」
「ああ・・・そうだ・・・」

二人して似たような会話をしていることなど知るよしもなかった。


そうこうしているうちに日が暮れ始めた。
放課後から準備を始めたのだから当然といえばそうなのだが。
「ベガ・・・君はどこにいるんだ・・・」
アルタイルが寂しそうな目をしたその時。
「あーーーーーーーーーーーっ!!!!」
「なんだよルーアン先生!いきなり大声出して!」
「たかし君が言えないと思う・・・・それよりどうしたんですか!?」
「たー様の帰りが遅いからコンパクトで見てみたのよ!そしたら!」
ルーアンが差し出したコンパクトを見つめる面々。
そこには太助と見知らぬ女性が映っていた。
「あの野郎・・・シャオちゃんがいながら・・・」
「七梨の奴・・・何やってんだ・・・」
「太助様・・・・」
その時コンパクトから音声が流れてきた。
『はぁ・・・これだけ探してるのに・・・一体どこにいるの・・・』
『ベガさん、諦めちゃ駄目ですよ。最後まで頑張りましょうよ、俺手伝いますから』
「ベガさん・・・・」
その言葉に一同ははっとした。
「太助の奴ベガさんと一緒だったのか」
「じゃあさっそく呼んできます!来々軒轅!」

「もうすぐ日が沈む・・・そしたらもう・・・」
「まだです!まだ諦めるには早いですよ!」
必死の捜索を続ける太助とベガ。しかし時間は無情にも過ぎていく・・・
その時!
「太助様ぁーーー」
「え?」
空から声が聞こえてまさかと思い上を向くと、
「軒轅・・・ってことはシャオ?」
すぐさま軒轅は太助の前に降り立った。
「太助様・・・・」
「はっ!いやそのこれは・・・」
ベガの存在に気づき慌てて説明しようとする太助。
「二人とも軒轅に乗って下さい」
「へ?」
「え?あたしも?」

「ゴメンよベガ・・・・約束したのに・・・・」
失意に陥っているアルタイル。
その時!
「ちょっと待って!あれは・・・」
「え?」
その時上空に太助達を乗せた軒轅が現れた!
「アルタイルー!」
バッ!
「わぁぁぁぁぁぁぁ危ない!!」
なんとベガは空中の軒轅から飛び降りてアルタイルに向かっていった!
「ベガ!」
どさっ
見事にアルタイルはベガを受けとめた。
「会いたかった・・・・会いたかったよアルタイル!」
「僕も君にずっと会いたかったよ!ベガ!!」
ようやく再会した二人は歓喜の涙を流していた。
「アルタイルさん・・・ベガさん・・・・やっと会えたんですね・・・・」

「ありがとう・・・・僕達やっと出会うことが出来ました・・・・」
「いえ、そんな・・・」
「あ・・・・もう行かなくては・・・・」
「え?どこへ・・・・」
二人はパーティー用に準備した笹に手を触れた。

すると笹と二人の体が光り始めた!
「えっ!?あなた達はいったい・・・」
「みんな・・・本当にありがとう・・・・」
シュッ!
アルタイルとベガの体は一筋の光となって夜の空へと消えていった。

「こ・・・これはいったい・・・・」
その時
「いやー、遅くなって申し訳ありません」
出雲がパーティーに到着した。
「あれ?どうしたのですか?みなさん」
「いや、その、アルタイルさんとベガさんが・・・」
「アルタイル?ベガ?それって星の名前ですね。
日本では彦星と織姫と呼ばれていますが・・・・」
「それじゃ・・・あの二人は・・・・まさか!?」


夜空には綺麗な星と天の川が浮かんでいた。






空理空論さんへ
HAPPY BIRTHDAY TO YOU!
BY よしむら

1999・7・7

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