「まもって守護月天」《絶守冥天推参編+知教空天推参編》
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【第肆話 ルーシェ学校へ行く】
『いっただっきまーす』
「いただきます」(キリュウ)
今日も七梨家の朝が始まった。
やはり例によって食卓にルーシェの姿はない。
リビングにすらいない。
そう、まだ寝ているのだ。
「今日はルーシェどうするんだろう?」
「さあ、それはルーシェさんに直接聞いてみないとわからないんじゃないですか?」
太助の問いにヨウメイが答える。
「その前にルーシェ起こさないとな」
と、那奈が言い終わったと同時に、眠たそうな目をしたままのルーシェがやって来た。
「ふわぁ〜・・・・・・みなさんおはようございます」
『ああ、おはよう』(太助&那奈)
「おはようございます、ルーシェさん」(シャオ)
「おはようございます」(ヨウメイ)
「おはよう、ルーシェ殿」(キリュウ)
ルーシェはそのまま、すたすたとリビングのソファーに歩み寄り、それに座るとテレビをつけた。
「なあルーシェ、今日はどうするんだ?」
「そーですねぇ・・・・・・今日は学校行こうかな」
ルーシェはテレビを見ながら、気の抜けた声で言う。
そしてルーシェの言葉を聞いたキリュウが反応した。
「主殿、私も今日は行く」
「はいはい」
太助にはこうなることはわかっていた。
まあ誰でも――シャオは除く――昨日のあの場面を見ていればわかると思うのだろうが。
と、太助たちが朝食を食べ終えた頃、気づくとそれは、普通に歩いたら完全に遅刻する時間帯になっていた。(あんまり気に
しないでください)
太助たちは、あわてて学校へ行く準備をする。
そして1分後、ようやく太助たちは玄関の扉を外へと開いた。
「太助様、軒轅に乗ってください」
「ああ。サンキュ、シャオ」
というように、ルーアンは陽天心をかけた絨毯に、キリュウは短天扇に、ヨウメイは飛翔球に、とみなそれぞれの空飛ぶ乗
り物(?)に乗った。
と、ルーアンは玄関に突っ立っているルーシェに気づいた。
「ルーシェ、あんたはどうすんの?」
「んーそうですねぇ・・・・・・」
と言うと、ルーシェは宙へと跳ねた。
そして――
「我―われ―が背に鋼の翼!」
と叫んだ――ように聞こえた――。
するとルーシェの背中から一瞬にして2枚の銀翼が、はえるように現れた。
「これでよし、と」
ルーシェは宙に浮きながら言った。
太助たちはそれを呆然と見ている。
ヨウメイはもう慣れたらしく、あまり興味はなし、と言ったような様子だった。
と、太助が、
「なあルーシェ――それはなんなんだ・・・・・・?」
「音声魔術の一種で、飛翔用魔術、といったところで――あ、ちなみにこれは昨日話した音声魔術の“例外”です。それと
翼自身に浮遊力と自己推進能力がありますんで、翼をはばたかせて飛ぶといったようなものじゃないです。まあ一応翼は
動かせますけど・・・・・・」
ルーシェはそう言うと、一度翼をはばたかせてみせた。
「主様、早く出発しないと本当に遅刻しますよ」
「ん? ああ、そうだな。シャオ、行こうか?」
「はい、太助様」
そして太助たちは家を後にした。
太助たちは授業開始のチャイムが鳴る前に無事に学校へと到着した。
「ふぅ、良かった〜。どうにか間に合ったみたいだな」
「この時間でここからなら余裕で教室まで行けますね」
「太助様、それにしても今日はみなさん来るのが遅いようですね。通学路で走っている方を何人も見かけましたし・・・・・・」
「そういえばそうだな。寝坊でもしたのかな?」
「たー様。悪いけどあたし先行くわ。遅れてほかのやつら――先生たちのことよ――にぶちぶち言われるのはごめんだから」
「主様、私も自分の教室へ行きますので・・・・・・」
「ああ、また後でな」
そう言うと、ルーアンは職員室へ、ヨウメイは1年3組の教室へと歩いていった
「それじゃ俺たちも行くか」
「はい、太助様」
「じゃぼくも主人殿の教室へ」
「では私も・・・・・・」
そして太助たちも自分たちの教室へと向かった。
「ふぅ、これでようやく安心できるな」
太助は思わず安堵の息を漏らした。
教室の時計を見ると授業開始まであと5分もある。
いま思うと、どうしてこんなに急いだのかと疑ってしまうくらいであった。
「んー・・・・・・ここが主人殿の教室かぁ」
「よう、今日はルーシェも来たのか」
「おはよう、ルーシェくん」
ルーシェが教室を見まわしていると、たかしと乎一郎がルーシェに声をかけた。
「おはよう、たかしくんに乎一郎くん」
「単刀直入だがルーシェ、おまえこれからどーすんだ?」
「へ? これからって?」
「俺たちが授業を受けてる間だよ」
「んー、そうだな・・・・・・校内探検(?)でもしようかな?」
「なるほど――まあそれが妥当だな」
「それでルーシェくん、キリュウちゃんはどうしたの?」
「? キリュウ? それがなにか?」
「いやだからさぁ・・・・・・」
「???」
やはりルーシェにはまったくわからないらしい。
「まあそれはよくわからないけど――ところでさ」
「ルーシェくん、どうかしたの?」
「いや、それがさ・・・・・・」
「なんだよ。もったいぶらずに早く言えよ」
「そうだよルーシェくん」
「いや、ね。さっきから妙な視線と変な威圧感がさ、なんかぼくに向けられてるような気がすんだけど、さ・・・・・・」
ルーシェがそう言うと、たかしと乎一郎は周りを見た。
たかしと乎一郎には、――普通誰にでもわかるが――それがなんだかがすぐにわかった。
以前にも那奈が言ったが、ルーシェは美少年の部類に入る。(一応そういうことになっている)
それが原因(?)であった。
つまり妙な視線、そしてヘンな威圧感の発生源は――クラスの女子、あるいはここに来るまでに、ルーシェを見かけて後を
追ってきたそのたの女子、それである。
しかしルーシェはというと、それがどういうことなのかがまったくわかっていないようであった。
「なあルーシェ、おまえ本当にわからないのか?」
「? なにが?」
「・・・・・・こりゃ重傷だ・・・・・・」
「あのさルーシェくん。とりあえずこの教室から、というより人のいないところへ行った方が良いと思うよ」
「ん? なんで?」
「いや、ほら、あれ・・・・・・」
乎一郎が指さした先、ベランダにはいまだかつて発せられたことのないほどの異様なオーラ(?)を周りに纏っているキリュウの姿があった。
「んー、キリュウはなんであんなになってるのかな?」
「――こりゃ死んでも治らないな」
「まあとにかくキリュウちゃんをつれてこの教室から出た方が良いと思うよ」
「なんで?」
「とにかくそうしなよ。それが一番良いって」
「そうだぞルーシェ。おまえは幸せもんだ。うんうん」
たかしの話は少しばかりずれていた。
「んー、じゃそーする」
「うんうん、それがいい、それがいいぞルーシェ!」
「ほら、早くしなよ。もうすぐ授業始まっちゃうから」
「あ、ほんとだ。じゃまた後でね。おーい、キリュウぅー・・・・・・」(ルーシェよ、なぜ近距離――かどうかは知らんが――で
『おーい』を使う)
ルーシェはキリュウのもとへと駆けていった。
そしてルーシェは乎一郎の案を伝えたのか、キリュウの表情はぱっと明るくなり、2人は教室から――キリュウがルーシェを連行するかたちで――出ていった。
「なあ乎一郎、あれって本当にキリュウちゃんか? 俺には別人にしか見えないんだが・・・・・・」
「キリュウちゃんは恋をするとああなっちゃうんだよ、きっと」
「それにしてもあの変わりようは尋常じゃないぞ。悪霊にでも取りつかれたんじゃないか? 試練も二の次って感じだし」
「――たかしくん。それってキリュウちゃんにかなり失礼だと思うんだけど・・・・・・」
『キーン・コーン・カーン・コーン・キーン・コーン・カーン・コーン』
と、たかしたちの話が終わったと同時に、ホームルーム開始のチャイムが鳴り響く。
チャイムを聞いたクラスの生徒たちは自分の席に着き、ほかのクラスの生徒たちは自分の教室へと駆けていった。(悪がきばっかですな、この学校は)
1時間目が終わり、2時間目が終わってもルーシェとキリュウは帰ってこなかった。
そしてここには、いつものメンバーがだいたいそろっている。
「キリュウたち遅いな」
「そうですねぇ、どこかで迷っているんでしょうか?」
「この狭い学校でどう迷うっていうのよ」
「ま、まさか――もう駆け落ちかぁぁぁぁぁぁ!!!??」(『もう』ってなんだ『もう』って)
「野村くん、どうしたらそういう発想ができるんですか?」
「そうですよ野村先輩。寝ている間に脳の位置が少しずれたんじゃないですか?」
「花織ちゃん、それの方が絶対にないと思うよ。それに前から野村さんはこういう人だし」
「あ、それもそうだね」
その言葉に対し、たかしは反論しなかった。
と言うより、この話自体聞いていないようである。
おそらく自分の世界に入りこんでいるのであろう。
ちなみに乎一郎はというと、先ほどから、『ぼくの席・・・・・・』とかなんとかぶつぶつ言っている。
「まあそれはいいとして、統天書で調べればすぐわかることだろ?」
「ああ、そういえばそうですね」
「・・・・・・ヨウメイ、おまえ本当に知教空天か?」
「いやですね主様。軽い冗談ですよ」
「それにしてはあまりにも自然だったような・・・・・・」
「冗談は冗談です。それより調べなくていいんですか? キリュウさんたちのこと」
「ん? ああそうだった。で、どうなんだ?」
ヨウメイは統天書を開いた。
「んー、どうやら屋上にいるようですね。ルーシェさんは昼寝してますけど・・・・・・」
「はは、どーりで遅いわけだ」
「それにしてもルーシェったらよく寝るわねぇ」
「寝るのが好きなんだろ、きっと。キリュウみたいに夜遅くまで起きてる気配はないし・・・・・・」
「あの、みなさん・・・・・・」
と、シャオが心配そうな顔をして話に入ってきた。
「シャオさん、どうかしましたか?」
「その、そろそろ授業始まっちゃうんですけど・・・・・・」
「ん? ああ、そうですね。それでは私は購買に戻るとしましょう。ではまた」
「じゃ、あたしも行くわ」
「楊ちゃん、あたしたちも行こっ」
「うん、花織ちゃん」
おのおのが、おのおのの場所へと帰っていく。
そして、それからしばらくして授業開始のチャイムが鳴った。
『キーン・コーン・カーン・コーン・キーン・コーン・カーン・コーン』
昼休みを告げるチャイムが鳴り響く。
そして教師が教室を出たと同時に、キリュウとルーシェが教室に入ってきた。
「遅くなってしまってすまぬ主殿!」
「すいません主人殿。屋上で寝ていたらすっかり遅くなってしまって」
「ああ、知ってるよ。まあそれはいいとしてもうお昼だろ? いっしょにシャオの弁当食べようよ」
「ああ、私は構わないが――ルーシェ殿はいったいどうするのだ?」
「あ・・・・・・」
例によってルーシェは、まだ食べることができない。
と、それを聞いたルーシェは、
「ぼくのことなら気にしないでみなさんで食べてください。で、どこで食べるんですか?」
「今日は屋上で食べようと思うんだ。たかしたちとヨウメイたちも誘ってさ」(太助ってこんなことするかなぁ?)
「んー、そうですか。それじゃぼくもいっしょに行きます。ひとりでいてもなにももすることないし」
「そっか。んじゃたかしたちとヨウメイたちを誘いに行くか。じゃ、まずシャオからだな――シャオ、屋上で弁当食べない
か?」
太助は鞄から弁当を取り出しているシャオに声をかけた。
「はい、太助様」
シャオはそう答えると、弁当を持って太助たちのもとへと寄ってきた。
「シャオはOKと。あとはたかしたちだな」
「俺たちならもういるぜ」
「うわぁ! ってなんだ。俺たちの話聞いてたのか?」
「いや、そうじゃない」
「じゃあなんで?」
「ルーシェ殿が連れてきたのだ」
「そういうことだ」
「ああ、なるほど。で、ルーシェは?」
「いや、私は知らないが・・・・・・」
「俺も知らないぞ」
ぱたりと話が止み、太助たちが、うーん、とうなっていると、
「ぼく、知ってるよ」
と、乎一郎が口を開いた。
「そういや乎一郎もいたんだっけ?」
「あ、ひどいよたかしくん」
「ははは、冗談だよ冗談」
「まあそれはいいとして、ルーシェはどこ行ったんだ?」
「ヨウメイちゃんたちを誘いに行ったんだよ。なんでも『その方が手間が省けるから』って」
「ほう、ルーシェ殿は意外と気がきくのだな」
「寝惚けてるようでしっかりしてるんだ、ルーシェって」
太助たちが感心していると、乎一郎が少し顔を赤らめて、
「ところで太助くん」
「ん? なんだ乎一郎?」
「あのさ・・・・・・ルーアン先生も誘っていいかな?」
「あ、ルーアンか。そういえば忘れてたな。じゃ誘ってきてくれよ」
「うん、じゃ誘ってくるね!」
と言って乎一郎は教室から出ていった。
「あの太助様、翔子さんも誘っていいですか?」
「あ、山野辺もいるんだったけか」(こいつ本当に太助か?)
「勝手に忘れるな」
と、太助の後ろには、いつのまにか翔子がいた。
「悪い悪い。とにかくここでこうしていても仕方ないし、とりあえず屋上に行こう」
「そうだな、と言いたいところだが・・・・・・」
「? どうした、たかし」
「――話に夢中になっててパン買いに行くの忘れてたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
たかしは、これでもかというほどの声量で叫んだ。
そのせいか、この教室にいる生徒全員が太助たち、つまりたかしを見やる。
とりあえずその視線を無視し、太助はたかしにこう告げた。
「と、とりあえずいまからでも購買行った方がいいんじゃないか? まだ売れ残ってるかもしれないし・・・・・・」(こういう時
は弁当を分けてあげましょう)
「くそぉぁぁぁぁぁ!! 俺の熱き魂は人垣などものともしないのだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」(叫びまくりですな、たか
し殿は)
たかしは雄たけびをあげながら、購買部へと走っていった。
「・・・・・・七梨、あたしらも行くぞ」
「・・・・・・ああ」
こうして、太助たちはようやく屋上へと向かって出発した。
太助たちが屋上に到着すると、すでにそこには、ヨウメイたちとルーアンと乎一郎がいた。
「あ、七梨先輩。来るの遅いですよぉ」
「あーん、たー様ぁ。来るの遅いぃ」
「だぁぁぁぁ! だからルーアン、ひっつくなぁぁぁぁ!!」
「ルーアン先生! 七梨先輩から離れてください!!」
早速、予想されていた事態が起こるべくして(?)起こった。
ちなみにキリュウは、あたりをきょろきょろと見まわしている。
「ヨウメイ殿、ルーシェ殿を知らないか?」
「ん? ルーシェさんならあそこに・・・・・・」
ヨウメイが指さした先には、屋上へと続く階段の出入り口となっている建物(?)の上だった。
まあやはりと言うべきか――ルーシェはそこで昼寝をしている。
「ルーシェ殿・・・・・・」
キリュウがそうつぶやくと、それに応えるように、ルーシェは突然、むくっと起き上がった。
「あ、キリュウ、それにみなさん。よーやく来ましたか」
「ああ、悪いな。いろいろあって遅れたんだ」
太助が苦笑しながらルーシェに言った。
「別にいいですよ。それよりたかしくんは?」
ルーシェはそう言うと、出入り口の建物からひょいと飛び降りた。
「ああ、たかしなら――」
とその時、階段の扉が開き、真っ白に燃え尽きたたかしが現れた。
「あは・・・・・・あははははは・・・・・・」
さらにたかしは壊れかけている。
「ど、どうしたんだたかし・・・・・・?」
「ふ、それは聞かないでくれ・・・・・・」
「? あれ? たかしくんお弁当は?」
「え!? いや、そ、それはだな・・・・・・」
たかしはあからさまにあせっている。
「もしかしてたかし・・・・・・パン買えなかったのか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「図星みたいだな」
翔子が弁当の包みを開けながら言った。
「く、ああそうだよ! 買えなかったんだよ!! 出雲のやつ――女子ばっかりひいきしやがって。くそ、いつかあの前髪
ちょん切ってやる!!!」
「野村先輩、言ってて虚しくありませんか?」(花織)
「う・・・・・・」
「しかも少し考えることが地味ですね」(ヨウメイ)
「ぐ・・・・・・」
「それになんか負け惜しみみたいに聞こえるし・・・・・・」(熱美)
「はうっ・・・・・・」
「みっともなさすぎですよ、野村先輩」(ゆかりん)
「あうぅぅ・・・・・・」(撃沈)
たかしに次々と言葉の矢が突き刺さり、目には見えない血が吹き出た。
「たかしくん大丈夫かな?」
「結構効いてるね、あの様子だと」
乎一郎の問いにルーシェは素っ気なく答える。
ちなみにたかしは上を向いてたたずんでいた。
あえて付け足すならば、真っ白になって。
その後、そんなたかしの様子を見かねたシャオが、たかしに弁当を分けたため、たかしは一命(?)を取りとめた。
ちなみに、シャオのその行動に感激したたかしが、歓喜の雄たけび(?)をあげたのは言うまでもない。
ここは屋内。
正確に言えば七梨家の中。
さらに正確に言うならば七梨家の中のリビングである。
リビングに、その家に住む者たち――もちろん太助たちのことだが――の大半はそこにいた。
いまここにいないのは、台所にいるシャオと、職員会議で学校に残っているルーアンだけである。
シャオがしている夕飯の支度は、時間的に考えて、いま折り返し地点を迎えたところであろうか。
ルーアンの職員会議はちょうど終わった頃であろう。
太助はそんなことを考えながら、この沈黙の続くリビングで暇を持て余していた。
ちなみに宿題はすでに終わっている。
いままで――ヨウメイがここに来る前よりも早く、確実に。
そしてキリュウとルーシェは、これといってなにを見ているわけでもなく、ただぼぉー、としている。
那奈とヨウメイはただ黙々と――おかしなことだが――菓子を口へとほおばっていた。
太助は目の前にあるお茶を口へと運び、ごくり、と飲み込むと、なにかを思い出したのか、口を開く。
「なあルーシェ。学校、どうだった?」
ルーシェは、なにかに気づいたような様子で太助の方へと顔を向けた。
「んー、そーですねぇ。静かでもなし。かといって騒がしくもなし。まあ、あえて言うなら――普通、そうとしか言いよう
がないですねぇ」
「普通か、はは」
(もしルーシェが人間だったら、精霊が学校にいるってわかった時点で“普通”なんて言葉は出てこないんだろうな)
太助は胸中でそんなことをつぶやきながら苦笑する。
いや、言葉すら出ないかもな、と付け加え、太助はまたお茶を口へと運んだ。
そして再び、沈黙という名の闇がリビング一帯を包み込む。
そんな気まずい状況を知ってか知らずか、台所から流れてくるシャオの鼻歌が、この闇をちいさなちいさな光で照らしてい
た。
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≪第肆話終わり≫
<あとがき>
あー、ようやく書き終わった。第参話とのブランクが長すぎるような気がしますが――まあそれはいいでしょう。さて、こ
の次はどうしましょうねぇ。とりあえず空理空論さんのもとにして、オリジナル――とは言えないと思うが――を書こうか
な〜。もしこのまま“知教空天推参編”の話通りに進めていくと、“悲惨!? たかしが出したある条件”まで話が飛んじゃ
うんだよなぁ〜・・・・・・つーわけで、第伍話を期待――してるかはどうかは知らんが――して待っててください。ちなみにこ
れは加筆修正版です。(・・・・・・遅)
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