「まもって守護月天」《絶守冥天推参編+知教空天推参編》

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

*注・・・・・・この作品の中ではキリュウは別人になっていきます。ですので、『原作のキリュウが好きだ! 勝手にキリュウを

     壊すんじゃない!!』という方は、絶対に読まないでください! なお、空理空論さんのオリキャラ、“知教空天

     楊明”もいろんな意味で壊れてしまうので、『そのままのヨウメイが一番だ!』という方も読まない方が良いかも

     しれません。さらに、この話が主体となっているのは、“知教空天楊明シリーズ”の本編です。つまりパクりです。

     『人の作品パクるんじゃねぇ!』という方も読まない方が良いでしょう。さ、ら、に! この話はいろんな漫画

     や小説、そしてゲームなども少し――どころではなく――パクってます。ですので、『ふざけんな! んじゃあお

     まえの作品じゃねぇだろ!!』という方も読まない方が良いでしょう。すぁるぁにぃ! “知教空天楊明”の話

     と違う部分――いや設定のことね――が出てきたり、(つーかもうこの話――第壱話ね――で出てきてるし)楊明

     の能力が低下したり、敵さんの能力も低下したりしますので、そこのところもご了承ください。ちなみに、この

     小説が掲載されたということは、空理空論さんの許可を得たということになりますので、――あたりまえだ。空

     理空論さんのHPにしか送ってないんだから――そのへんの心配はないでしょう。(どのへんだ?)

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【第壱話 絶守冥天がやって来た!?】

 

ある日曜日、太助のもとになにやら大きな荷物――箱だ――が送られてきた。

「親父の奴、また変なもん送ってきやがって。なになに・・・・・・『3つ集めるとなにかが起こるという道具をすべてそろえた

 のでおまえにやろう。ちなみに父さんは3つ集めたがなんにも起こらなかった。はっはっは』か――良かった。○天シリ

 ーズは1つで出てくるからな・・・・・・じゃあなんなんだ?」

とりあえず太助は、箱の中から3つの道具を取り出した。

ひとつ目は、ピンポン球よりひとまわりほど大きい、蒼く透き通った宝石のような物。

ふたつ目は、鏡のまわりに模様――いや、文字かもしれない――ようなものが彫りこまれた鏡。

そして3つ目は、触ったこともない感触でできた鞘に収められている、やけに刀身の長い装飾の施されている剣だった。

とそこへ、ルーアンとキリュウとヨウメイ、そしてその人数分のお茶を持ったシャオが部屋へ入ってきた。

「あら? 太助様、それはなんですか?」

「見たところによると石と鏡と剣のようだが・・・・・・」

「んー、統天書で調べてみましょう」

「にしてもこの石綺麗ね〜。いくらで売れるかしら?」

シャオとキリュウとヨウメイの反応はいいとして、ルーアンの反応には少し問題があるかもしれない。

「なあ、これってもしかして精霊が宿っているとかそういうもんじゃ――ないよな?」

太助は一応精霊である彼女たちに聞いてみた。

「いいえ。私は初めて見ますけど」

「私も初めて見るが」

「さあ〜、あたしも知らな〜い」

「・・・・・・・・・・・・」

なぜかヨウメイが統天書に目を釘づけにしたまま沈黙している。

しかもやや顔面蒼白気味で。

「? どうしたヨウメイ?」

「いや、それがその――統天書に載ってないんです」

『え?』

太助たちが驚愕の声をあげる。

「載ってないということは、おそらく精霊具ではないと思いますけど・・・・・・」

いや、むしろそれすらを超越したものかも、とヨウメイは胸中で付け足した。

「そう、良かった」

現在七梨家に住んでいるのは6人。

太助、那奈、シャオ、ルーアン、キリュウ、ヨウメイである。

これ以上精霊が増えても居場所がないのだから。

ちなみに、いま現在ここにいない那奈は、翔子の家に遊びに行ったらしい。

「さてと、それじゃあちょっと見てみるとするか」

そう言って太助はまず蒼い石を手に取った。

 

 

手に取った瞬間、石に変化が現れた。

「へ? な、なんだ?」

石が蒼く輝き出したのだ。

太助が手に取ったその時に。

「たー様、ちょっと貸してくんない?」

こちらに右手を伸ばしているルーアンに、太助はそっと石を渡す。

と、石は太助の手から離れた瞬間、その輝きを失ってしまった。

「どうやらルーアン殿には反応しないようだな」

「そのようですね」

キリュウとヨウメイがそれを見た、そのままの結果を言う。

「不思議ですねぇ」

シャオはというと、こちらをのぞき込むような姿勢で不思議がっている。

「でもなにかが出てくる気配はないな」

太助が言った通りただ光っただけで、石からはなにも出てこなかった。

「じゃ次は鏡をと」

その言葉の終わりと同時に、太助は鏡に手を伸ばした。

 

 

と、やはり太助が手に取った――いや、触れた瞬間――にまた反応があった。

「またか」

今度は鏡の周りに彫ってある模様のような文字、あるいは文字のような模様が光り出した。

「太助様、私にも――」

そう言ったシャオに太助はそっと鏡を渡す。

が、やはり太助から離れた瞬間、鏡の文字は光を失った。

「先ほどと同じようだな」

「わたしたちと同じ条件で反応するんでしょうか?」

と、そこへまたキリュウとヨウメイが見たまま、いや、さらにそれに推測を付け足して言う。

「んー、じゃ最後は剣か」

太助は先ほどのふたつより、慎重に剣に手を伸ばした。

 

 

「で、どうすればいいんだ? これ」

太助は剣を両手に抱えたまま固まっている。

「鞘から剣を抜けばいいのではないか?」

「抜くって言われてもなぁ。一応これって剣みたいだし」

剣みたいだしではなく、これは明らかに剣である。

と、ここでキリュウが定番(?)の言葉を放った。

「試練だ。自分で抜刀されよ」

太助は、予想でもしていたかのような――実際は少ししていたが――嘆息をし、その剣を見つめ直す。

そうしていると、横に座っているシャオが心配そうな声をかけてきた。

「太助様、危ないですから気をつけてくださいね」

「ああ、わかったよシャオ」

自分の手の中にある剣を凝視し、

(なにも起こりませんように!)

太助は祈るように胸中でそう叫び、恐る恐るゆっくりと鞘から剣を抜いていく。

そして、なにかの紋章らしきものが設えられている柄から切っ先までを、すべて鞘の中から抜き出した。

と、やはり今度も輝き出す。

今度は、刀身に設えられている模様のような文字、あるいは文字のような模様。

それが輝いている。

とりあえず太助は、そこから一度視界を外して鞘から出てきたそれを眺めた。

なにかの紋章らしき意匠が施されている柄。

柄の先には緑色の宝石のようなものがある。

そして刀身になにかの文字らしきもの――いまは光っているが――が設えられている、1メートルはある長い両刃。

結局のところ、それぐらいしか目立つところはなかった。

いや、その剣自体が目立つので、細かい部分までは気づかなかったのかもしれないが。

「見事な刃ですね」

と、こちらも剣を一通り眺めたのかヨウメイが感想を言う。

「やはり主殿に反応している」

キリュウがつぶやくようにそう言った。

そしてまたひとつひとつ手に取ってみる。

と、ちょうど3つすべての道具に触っている状態になった時、今度は鏡自体が輝き出し、そして鏡の中からまばゆい光と共に、“なにか”が現れた。

中性的な顔立ち、少し長めの柔らかそうな銀色の髪、そして閉じた瞼―まぶた―から現れた銀色の瞳。

背はだいたい165センチ、外見年齢(?)は太助と同じ頃といったところであろうか。

そして驚いたことに今度は女ではなく男だった。

「君がぼくの主人――だね」

銀髪の少年が口を開いた。

「まさか本当にこんな物を3つとも集める暇人がいるとは・・・・・・そこにいるのは守護月天と慶幸日天と万難地天と知教空天

 だね、多分」

銀髪の少年は驚いた様子も見せず、口もとに右手をあてて言った。

「どうやらここは平和な所らしいし、守護月天もいることだしね。ぼくの役目はないようだ。じゃ」

と言って銀髪の少年は鏡の中へ吸い込まれるようにもどっていってしまった。

ぽかーん、と口を開ける太助たち。

「な、なんだったんだいったい・・・・・・」

と、しばらくしてまた鏡が輝き出した。

鏡は誰もいない方向に向き、そして今度はさっきとは対照的に、銀髪の少年は放り出されるように飛び出してきて、そのま

ま壁に激突した。

「痛っつー、なにもぶん殴ることはないだろあのふたりは・・・・・・」

銀髪の少年は壁に激突した――あるいは殴られたと思われる――頭をさすりながら言う。

「大丈夫ですか?」

シャオが心配そうに銀髪の少年に声をかける。

「あー、平気平気。いつも通りぶん殴られただけだから・・・・・・」

少年は笑いながら言った。

「ぶん殴られたって・・・・・・いったい誰に?」

太助が銀髪の少年に尋ねる。

「鏡の中にいるって言えばいいのかな? ちょっと違うけど――まあそこにいるヒトたちに」

銀髪の少年は苦笑しながら言った。

「ところで君の名前は?」

太助は、とりあえずもっともなことを聞いた。

「ぼく? あー、そーいえばまだ言ってなかったね。で、ぼくは“絶守冥天 瑠星―ルーシェ―”。“命”を司る冥王星の精

 霊」

「絶守冥天? 聞いたことがありませんね。精霊のことなら統天書に載っているはずなのに・・・・・・」

ヨウメイが首を傾げて言う。

「あー、そーかもしれませんね。ぼくが一番古い精霊だし、それに主に仕えるのはこれが初めてだし」

『・・・・・・初めて!?』

4精霊が驚きの声をあげる。

「はい」

「一番古い精霊なのに!?」

「はい」

ルーアンが目を丸くしながら言い、ルーシェが素っ気なく答える。

「どうしてですか?」

今度はシャオがルーシェに尋ねる。

「いや、これを見りゃわかると思うのですが・・・・・・」

それを聞いた太助、シャオ、ルーアン、キリュウの3人は頭の上に疑問符を浮かべた。

「3つの道具を集めなければ出現しないうえ、それだけ心の清い者に巡り会う可能性がかなり低い、ということでしょうね。

 普通に考えれば」

ヨウメイが、さも知っていたかのように答える。

「その通り。大正解」

ルーシェは笑顔で言った。

「で、ルーシェの使命はいったいなんなんだ?」

太助がルーシェに尋ねる。

「あー、それもまだ言ってませんでしたね。ぼくの使命は主を“絶対に”守ること、そして主の邪魔者を“消す”こと。そ

 れだけです」(それだけってあんた、ふたつも使命あるじゃん)

「主を・・・・・・守る?」

シャオが驚愕の声をあげる。

「そ、主を守る、“絶対に”ね。まあ守護月天と違うのは“そば”で守るのではなく、冥王星のようにたとえ“どんなに離れ

 たところ”からでも守ることができるってとこかな。だから“寂しさ”や“孤独”といった心理的なものからは守れない。

 ぼくが守れるのは直接“命”に関わることだけだからね」

「それはいいのだが――邪魔者を“消す”というのはどういうことなのだ?」

キリュウの言葉を聞いたルーシェが口もとを少しほころばせて答える。

「ぼくの主な使命はそっちなんだ。“守ること”ではなくてね。ぼくは唯一“殺し”を専門とする精霊。それゆえぼくは平和

 なこの時代には必要ないんだ。だから一度鏡の中にもどったってわけ。もうひとつの使命である“主を守ること”はそこ

 にいる守護月天さんが専門だしね。まあこんな時代だからこそ必要とする人もいるんだけど・・・・・・」

とんでもないことをルーシェはさらっと言ってのける。

「殺、し・・・・・・?」

太助があからさまに驚愕の表情を浮かべて言う。

「そ、殺し。言ったでしょ? ぼくは“命を司る精霊”だって。まあもっとも、よほどのことがあるか主の命がない限りそ

 う簡単にはやらないけど」

とルーシェが言った後、しばしの沈黙が太助たちを包んだ。

そして、しばらく経ったあと、ルーシェが太助に最重要の質問をした。

「で、ぼくは必要ですか? それとも必要じゃないですか? まあ必要じゃなかったらまたもどるけど」

その言葉を聞いた太助はしばし悩んだ。

「あの、太助様・・・・・・」

「ん? なんだシャオ?」

「キリュウさんの時も言いましたけど――」

太助はシャオがなにを言うのかがわかり、その言葉を自分の言葉で遮った。

「わかってるよシャオ」

太助はシャオを安心させるように、穏やかに言った。

そして太助はルーシェに向き直り手を差し出した。

「よろしくな、ルーシェ」

ルーシェは少し驚いた表情を見せたが、少しだけ笑みを浮かべ太助の手を握った。

「よろしく、“主人殿”」

 

 

「で、ぼくはどーしたらいいんでしょう?」

「え? どうしたらって?」

「いや、さっきぼくが主人殿に必要か必要でないかを聞いた時、主人殿少し悩んでいたでしょう? ぼくが思うにその悩み

 の中に、ぼくがどの部屋で寝ればいいのかとかも含まれているような気がして・・・・・・」(感、良すぎ)

「う、そういえば・・・・・・」

図星だった。

と言うより太助はそのことを一番心配していた。

「まあ寝るところがなければぼくは“神天鏡―かてんきょう―”の中で寝ますけど・・・・・・」

この言葉に、その場にいた全員が顔を上げ、発生源であるルーシェを見た。

「そういえばすっかり忘れてたな。この剣と石と鏡はいったいなんなんだ?」

太助はいま自分が言葉にして並べた物を、指さしながらルーシェに尋ねた。

「あー、そーいえばすっかり忘れてましたね。そんじゃまずこの剣ですが“草天剣―そうてんけん―”と云います」

ルーシェはそう言うと鞘から剣を抜き、そしてそれを眺めながら説明した。

「で、この剣の能力ですが、刃で傷つけた物質を分解、再構成といった能力を持っています。簡単に言えば、切りつけたも

 のの姿を使い手の思い通りのものに変えてしまうということです。まあその力を発揮するには高度な精神集中を必要とし

 ますが・・・・・・あ、ついでに言っときますけどこれを使えるのはぼくだけですからね」

最後の注意はこちらに視線をもどしてからルーシェは言った。

「んでこの蒼い石は?」

太助がルーシェにまた尋ねる。

「この石は“八天玉―はってんぎょく―”と云います」

ルーシェはそういうと草天剣を鞘に収めた。

「ちなみに(ちなみにってあんた・・・・・・)この宝玉の能力は“万物の力を高めること”です。つまりあらゆる者――あるい

 は物――の力をUPさせること」

ルーシェはやはり、いま話の話題になっている物を眺めながら言った。

「で、その鏡は?」

太助は最後の鏡のことを尋ねた。

「あー、これは先ほども言いましたが、“神天鏡”と云います。で、この鏡の能力は“万物の力を封印すること”。つまりあ

 らゆる者――あるいは物――の力を制御、そして封じることができます。あ、ちなみに神天鏡の中に対象を封印すること

 もできますけど」

ルーシェの様子はやはり先ほどと同じだった。

「なるほどねぇ」

太助は少し疲れていた。

「で、話をもとにもどしますけどぼくはどのようにしたらいいんでしょう?」

「ん? ああ、そうだったな。さて、どうするか・・・・・・」

太助はまた悩んだ。

しばらくは自分の部屋で寝かせてもいいのだが、さすがに毎日というわけにはいかなかった。(なんで?)

この時太助は胸中で思いっきり叫んだ。

(ルーシェが女だったら良かった!!!)

――と。(どして?)

「あのー、もしよかったら・・・・・・」

太助はその言葉にあからさまに反応した。

(ま、まさか俺の部屋で寝させてくれなんて言うんじゃないんだろうな?)

太助は口には出さず、思わず胸中で聞き返した。

「部屋、造ってもいいですか?」

『え?』

その場にいた全員が、おのおのの口から間抜けな声を漏らした。

「部屋ですよ部屋。一応ぼくはそーいうことも得意、ていうかできるんで。まあ、もしよかったらですけど・・・・・・」

「で、でも造るっていったいどこに・・・・・・?」

ルーシェは少し考える素振りを見せてから言った。

「うーん・・・・・・見たところこの家はどーやら2階建てのようですね。だったら玄関を正面として見た2階の右側の一番奥の

 部屋の上あたり、かな」

それを聞いたキリュウが反応した。

「ということは私とヨウメイ殿の部屋の真上ということになるな」

「へぇ、そーなんですか。なんか朝うるさそうだなぁ・・・・・・」

ルーシェはあからさまに嫌な顔をして言った。

「な、なにを言うのだ! だいたいなんでルーシェ殿はそのことを知っている!?」

「そ、そうですよ! どうしてそのことを知っているんですか!?」

「んー、そのことってなんですかぁ?」

ルーシェはあからさまにとぼけたふりをして言う。

『う、いやそれは・・・・・・』

ぶつぶつ言いながらキリュウとヨウメイは俯いてしまった。

「それで造っていいんですか?」

ルーシェが太助にもう一度尋ねる。

「うーん、そーだなぁ・・・・・・ま、いいんじゃないか?」

「ちょ、ちょっと主様。そんな簡単に決めていいんですか?」

「ヨウメイ殿の言う通りだ! 造るのに失敗して家が壊れたらどうするのだ!?」(キリュウ、人のことは言えんだろ)

ヨウメイは少し突っかかるような感じだが、キリュウは顔を真っ赤にして言っている。

「よほど自身がない限りこんなこと言うわけないだろ? それにもし失敗してもその時は羽林軍に直してもらえばいいし、

 シャオ、いいか?」

「はい、もちろんです」

シャオはそれがあたりまえだと言わんばかりに答えた。

「じゃあいいんですね? 良かったー。これで思い描いた通りの部屋が造れる」

ルーシェはさもうれしそうだった。

「造るのはいいんですけど、どうやってその部屋まで上がる気ですか? まさか私たちの部屋からなんてことは――」

「ないですよ、それだけは」

ルーシェは素っ気なく言った。

「ではどうやって上がる気だ?」

今度はキリュウがルーシェに聞く。

「うーん、そーですねぇ・・・・・・“転移の魔方陣”でも使おうかな?」

「? 転移の魔方陣?」

ルーシェの言葉を聞いた太助が尋ねる。

「後で見せてあげますよ。別に危険な物じゃないですからご心配なく」

ルーシェは笑顔を見せてから言った。

「大丈夫なのであろうか・・・・・・?」

キリュウのそのつぶやきは誰の耳にも届くことはなかった。

 

 

と、突如玄関のドアを開き、

「ただいまー」

「おじゃましまーす」

という声が七梨家に飛び込んできた。

言わずとも那奈と翔子である。

その声の発生した場所、玄関に4精霊たち、そして太助とルーシェが集まった。

「おかえり那奈姉。山野辺もいらっしゃい」

「よぉ七梨・・・・・・で、そいつ誰?」

翔子の言葉に一度にっこりと笑って答えるルーシェ。

「初めまして、主人殿の姉上殿に山野辺――」

ルーシェが考えるような素振りを見せていると、そこへ翔子の言葉が入ってきた。

「翔子だ」

「あー、すいません、山野辺翔子さん。ぼくは絶守冥天のルーシェです。よろしく」

と言ってお辞儀するルーシェにつられて2人ともお辞儀する。

その後で那奈は、

「太助、いくら美少年だからといってついに男まで連れ込んだか。おまえって奴は・・・・・・」

「ちょ、ちょっと那奈姉。変な言い方するなよ。文句なら親父に――」

慌てる太助を無視し、那奈はルーシェに向かって言った。

「それで、あんたはなにをすることが役目なんだ?」

「はい、主を絶対に守ることと主の邪魔者を消すことです」

那奈と翔子は、たがいに顔を見合わせてから言った。

「邪魔者を・・・・・・」

「消すこと・・・・・・?」

那奈と翔子の顔は少し引きつっていた。

「はあ・・・・・・俺が話すよ」

と言って太助は、その場にいる全員をリビングへと促した。

その時太助は、なんでルーシェは那奈が自分の姉だとわかったのだろう?

と胸中で疑問をつぶやいたが、あまり深く考えないようにした。

 

 

「へぇ、なるほどねぇ。便利なんだな、その剣て」

ルーシェの使命とは対照的に、ルーシェの印象は那奈にも翔子にも良く、喜んでこちらこそよろしく、ということになった。

しかしキリュウとヨウメイは、

(そこまで信用していいのだろうか?)

と、悩んでいた。

そんなキリュウとヨウメイにルーアンは、

「もうちょっと彼のこと信用してもいいんじゃない? それに彼、一番古い精霊とか言ってたけど主に仕えるのが初めてな

 んでしょ? だったら精霊の先輩(?)としてあたしたちがいろんなこと教えてあげなきゃ」

と、そっと告げた。

その言葉を聞いたキリュウとヨウメイは、

「そうだな。そもそも私たちはルーシェ殿のことをほとんどなにも知らない。少し付き合ってみてそれで初めてわかること

 の方が多いからな」

「そうですね。ルーアンさんの言う通りです」

と明るく言った。

ちなみにその時、那奈がルーシェに草天剣を使ってなにかしてみろと促していたのは言うまでもない。

 

 

 

シャオの料理がいつものようにキッチンのテーブルに並べられる。

ちなみにこのテーブルは、ヨウメイがここに住むようになってから買った物で、以前の物よりもいくらか大きい。

そして、そのテーブルの上に並べられている料理を見たルーシェがシャオに尋ねる。

「シャオさん。もしかしてこれってぼくの分までありますか?」

「はい、もちろんルーシェさんの分もありますよ」

その言葉を聞いたルーシェが、済まなそうな表情を浮かべ、そしてそれに合わせた声音で言う。

「あのー、こーいうことははじめに言っとくべきだったんですが、ぼくちょっとここに来る前に事故で内臓――おそらくあ

 るであろう――をやられまして現在回復中なんです。あー、つまりいまはなにも食べられないんです。せっかく作ってい

 ただいたのに申し訳ありませんが・・・・・・」

「? 神天鏡の中でいったいなにをしていたのだ?」

キリュウが不思議そうに聞く。

「いえ、神天鏡の中ではなくてですねぇ・・・・・・まあぼくはこれまで絶守冥天の使命をなーんにもしていなかったので“星”

 に呼び出され、“星”の仕事を手伝わされまして。まあその結果事故が発生してぼくがその被害にあったというわけです」

「星?」

今度はヨウメイが聞く。

「そ、星。まあ正確に言うと“星女神―せいじょしん―”なんだけど――あ、ちなみに星女神っていうのはこの星で一番格

 上の存在ってとこかな」

ルーシェがそれを言い終わった後、しばしの沈黙が訪れた。

「・・・・・・知っていたか? ヨウメイ殿」

「まあ、一応そういう方がいることは知っていましたけど、さすがに会ったことは・・・・・・シャオリンさんは?」

「私は――知りませんでした。この地球―ほし―に女神様がいるなんて・・・・・・」

なにやら暗い雰囲気になってしまった。

「とにかくぼくはしばらくの間なにも食べられませんので。じゃ」

と言ってルーシェはリビングを出て行く。

「どこに行くんだ?」

太助がすかさず聞く。

「え? 屋根の上に視察に」

太助は少し考えたが、先ほどルーシェが言っていたことを思い出した。

「あ、部屋か」

「御名答。じゃぼくは屋根の上にいますんで――なにか用がおありでしたらお呼び下さい、主人殿」

と言ってルーシェはなぜか立ちどまった。

「もどれ」               

ルーシェがそう言うと、草天剣と八天玉と神天鏡がルーシェが首から下げている勾玉に吸い込まれていった。

そしてルーシェは瞼を閉じ、すぅー、と息を吸い、

「我は開く時空の扉!」

と叫ぶと、ルーシェの目の前の空間に穴が開き、その中にルーシェは入っていった。

「な、なんなんだいまのは・・・・・・」

それを目の当たりにした太助たちは、先ほどまでルーシェがいた場所をただただ呆然と眺めることしかできなかった。

 

 

 

いつもと変わったような変わらなかったような食事が終わり、太助たちがお茶を飲みながらくつろいでいた時、ようやくル

ーシェは姿を現した。

「だいたいイメージはできあがりました。あとは行動あるのみです」

「ルーシェ、聞きたいことがあるんだ」

太助がそう言った瞬間、そこにいたみんなが太助の方を見た。

「ん? なんですか主人殿」

「さっきのあれはいったいなんなんだ?」

その言葉を聞いたルーシェはしばし沈黙し、そして口を開いた。

「失われた古代世界の力――“魔術”」

「魔術?」

「そう、さっきぼくが使った魔術は“音声魔術”。声を媒体として使う魔術です。で、“音声魔術”はさらにふたつに分ける

 ことができて、そのうちのひとつが“黒魔術”。そしてもうひとつが“白魔術”あっちなみにさっき使ったのは後者ですけ

 ど――それと呪文に意味はありませんから。あー、つまり声を出せばいいってことです。で、効果範囲は声の届く範囲。

 あ、さっき使った魔術はそれを無視できますけど。そんで、効果時間は――たいして長くありませんね。声を永久に保存

 しておくことは不可能ですから。まあ例外もありますけど」

ルーシェが言い終わると、はあ、という声がその場にいるルーシェ以外の全員の口から漏れた。

と、ルーシェはそれを無視し、さらに続ける。

「まあ、あれがぼくの能力――とでも言いましょうかなんと言うか。少なくとも魔術は、黒天筒や短天扇や統天書のような

 道具を使わずと使用できる“ぼくの力”です」

それを聞いた太助たちは、またもや、はあ、という声を口から漏らした。

「わかりましたか? 主人殿」

唖然としている太助にルーシェは声をかける。

「ん? ああ、わかった。もういいよルーシェ」

「そうですか? では早速行動を・・・・・・」

「え? いまやるのか?」

那奈がルーシェに尋ねる。

「はい、すぐ終わりますから。なんだったらみなさんも立ち会いますか?」

みんながみんなで顔を見合わせ、そして立ち会うことになった。

いや、ルーシェがそう言わずともそのつもりであったのだろうが。

「決まりですね。ではみなさん、ぼくの近くに寄っていただけませんか?」

太助たちはルーシェの言葉に従った。

そしてルーシェは先ほどと同じように瞼を閉じ、息を吸う。。

「我は開く時空の扉!」

とルーシェが言った瞬間、太助たちの足もとに穴が開き、その穴に吸い込まれるように落ちていく。

そして、リビングからは誰もいなくなった。

 

 

太助たちがルーシェの言葉を聞いた後に見たものは、自分たちが住んでいる町の夜景と、満天とは言えないが、星の輝く夜

空だった。

「ちょ、ちょっと、なんであたしたちこんなとこにいんのよぉ」

ルーアンがあたふたとしている。

「へぇ、すごいな。一瞬で屋根の上まで来ちゃったよ」

那奈は驚いていると言うよりおもしろがっている。

「で、これからどうするんだ?」

太助が先を促すようにルーシェに尋ねる。

「あー、ちょっと待ってください。えーとキリュウさんとヨウメイさんの部屋の上ってこのあたりですよね?」

「ん? あ、ああ、そうだが・・・・・・」

キリュウは少し驚いていたらしい。

「では――」

ルーシェがなにかぶつぶつとつぶやくと、10秒と経たないうちにそこにはあるはずのない部屋ができあがった。

「これで良しと――ん? ぼくなにか変なことしましたか?」

「はは、ははは・・・・・・」

太助はもう笑うしかなかった。

 

 

できあがったルーシェの部屋に太助たちは入った。

ちなみに、ルーシェの部屋には屋根の上に出るための扉――いや、窓か――がある。

ルーシェの想像した部屋とはどんなものなのか?

どうやら太助たちはただたんに、自らの好奇心から来るそれに興味があるようだった。

「へぇ、結構良い部屋じゃん」

これは翔子の感想。

ルーシェの部屋には、屋根への出入り口から見て左の奥にベッドがあるだけだった。

とりあえず太助は、ほかに目立つ物を探してみる。

ほかに目立つ物は――

と、太助がそれらを探しているその時――

「ん? ピアノ?」

那奈が部屋のすみにあったピアノを発見する。

「あー、それですか。ただのぼくの趣味ですからあまり気にしないでください」

「へぇ、ルーシェはピアノが弾けるのか」

「まあ一通りは・・・・・・」

「おもしろそうだな。なんか弾いてみてくれないか?」

那奈がルーシェに尋ねる。

「すいません、また別の機会ということで――」

「なーんだ、つまんないの」

「すいません」

ルーシェはもう一度謝った。

「これがさっき言っていた“転移の魔方陣”ですか?」

と、ヨウメイがなぜか開いていたドア――これは普通のドアだ――の向こうで、なにかを見つけたのかルーシェに尋ねる。

「そうです。それがさっきぼくが言ってた“転移の魔方陣”です」

「これが?」

ヨウメイの視線の先にあったものは、なにやら複雑な模様や文字やらで描かれた丸い陣だった。

「これはいったいどのようにして使うのだ?」

キリュウがルーシェに尋ねる。

「ただ乗るだけです」

ルーシェがそっと微笑み、答える。

「なあ。これはいったいどこへ繋がってるんだ?」

立て続けに、今度は太助がルーシェに尋ねる。

「キリュウさんとヨウメイさんの部屋とルーアンさんの部屋の間の廊下の奥のあたりかと思いますが・・・・・・」

と言ってルーシェは少し上を見上げた後、

「キリュウさん。寝惚けて魔方陣踏まないでくださいよ」

ルーシェは微笑みながら言った。

「あ、う、そ、その・・・・・・わかっている」

キリュウはそう言うと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「そろそろみなさんお休みになった方がいいんじゃないですか?」

と、そこへルーシェが言葉を放った。

「あれ? もうこんな時間か。んじゃルーシェ、おやすみ」

と言って太助たちは魔方陣の上に乗り、部屋から姿を消した。

「ふぅ、1日目は無事終了、か。 ?キリュウさん、行かないんですか?」

ルーシェが言葉を発した先には、いまだ顔を真っ赤にして俯いているキリュウの姿があった。

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

≪第壱話終わり≫

 

<あとがき>

えー、まずこの話を読んでなにをパクったのかわかった方はいらっしゃるでしょうか? 知っている方もいらっしゃるかも

しれませんが、まず手始めに(どーいう意味だ?)“魔術士○ーフェン”をパクりました。つーか“ルーシェ”という名前す

らある漫画よりパクってます。えーと――これからパクる予定の(と言うよりこれ書いてる時点ですでにパクってる)作品

等は・・・・・・まだ言えません。それと“瑠星”ですが、これはぼくが考えたあて字です。おそらく、と言うより絶対にどの国

の言葉でも“ルーシェ”とは読めないでしょう。ちなみにぼくのオリキャラ“ルーシェ”は、“まもって守護月天”の内容を

ぼくが知る前から存在していました。あとルーシェの正装(ようは精霊具から出てきた時に着ている服)は、“常習盗賊改め

方ひなぎく見参!”の石川夢幻斎の服を黒くした物と思っていいほど酷似しています。(つまりまたパクってるということ)

あとみなさん気づいていると思いますが、この第壱話は“知教空天楊明シリーズ”の本編の第一話、“知教空天楊明推参!”

を思いっきりパクってます! これからの話の中にこういうかたちの話がまた出てくるかもしれません。つーか出てきます。

空理空論さん、非常に申し訳ありません!!!!! えー、長いあとがきでしたが次回もご期待下さい。(期待してる人なん

ていないと思うけど・・・・・・)あ、ちなみにこれは加筆修正版です。(言うの遅っ!)

戻る