まもって守護月天二次小説23

もう一人のサンタ



「本番まで後5分…」
「緊張して来たよ。」

『2年1組による演劇『もう一人のサンタ』が間も無く公演されます。』
放送が流れブザーが鳴る。
ついに本番…
スポットライトが中央一部を四角く照らす。
「たっく、何でクリスマスイブにデパートのエレベータに閉じ込められるんだよ。」
「閉店まで1時間……はぁ、ところで皆さんは何を買いに来たんですか?」
「私は彼女へのプレゼントを。」
「私は娘へのプレゼントよ。」
「何にするか決めてるのか?」
「おぃおぃ、何も今ここで決めなくても良いんじゃないか?」
「何言ってる、ここから出られるのが何時に成るか解らないんだぞ、今決めといても良いんじゃないか?」
「お前は何か買う物決まってるのか?」
たかしが龍太に話し掛ける。
「俺はまだ決めてない。」
「今決めといた方が良いぜ…ってお前良いもん持ってるな、
俺もお前みたいにマンガ持って来てれば退屈しないで済んだのにな。」
龍太の読んでいるマンガを取り上げる。
「返せよ!」
「ふ〜ん、『まもって守護月天』か、俺もこのマンガ好きなんだよな。」
龍太が無理矢理マンガを取り返し、読み始める。

全てが暗くなっる、ライトが点くと教室の風景があった。
「えぇ〜今年度から始まるクリスマス行事にこのクラスは演劇をやろうと思う!  台本はこの俺の書き下ろしだ!」
たかしが教卓の近くで言っている。
それに対し、皆は諦めたかのようにグッタリとしている。
「えぇ〜主役は投票の結果…龍太!お前だ。」
「…へっ? 俺?」
「そして、デパートの店長&主人公の妻役はルーアン先生、
その他、デパートに買い物に来たお客は、出雲と…花織ちゃん!?
で、妖精&主人公の娘の役は…また、花織ちゃん…警官は太助、ナレーションが俺、
サンタからプレゼントを貰う役は…山野辺、乎一郎と、キリュウちゃん、シャオちゃん以上。」
「ちょっと〜何で私が主人公の妻役なのよ!」
「仕方ないだろ、ルーアン先生投票で決めた結果なんだから。」
「じゃっ練習に入るぞ!」
「…やっぱり俺主人公なんて無理だよ…台詞間違えたり忘れたら大変だし。」
「何〜!今になってそう結う事言うな、間違えてもアドリブで何とかしろ!」
「アドリブなんて尚更無理だよ!」
「すべこべ言わず練習やるぞ!先ずデパートのバイトに遅れてきて起こられるシーンから!」

「何時間の遅刻だと思ってるの!」
「一時間です…スイマセン、ミセス・ルーアン。」
「ちょっと、私は『ミス』よ!」
「ひぃ〜スイマセン、スイマセン。」
「貴方、お酒臭いわね…遅れた理由はお酒を飲んでてって事!」
「スイマセン、最初は一杯のつもりだったんですけど………」
「一杯が二杯…二杯が三杯と…それで気が付いたら六時になっていたと?」
「……………(えぇ〜とセリフは)はい、その通りです!気が付いたら時既に遅し、こんな時間になってたわけです。」
「やれば出来るじゃないか、アドリブ!」
「へっ?」
「なぁ、今のは立派なアドリブだよな!」
「まぁ、アドリブだな。」
「アドリブと言えなくも無いが…」
「そうなんだ…これがアドリブ…」

月日は流れ、本番…12月24日
「この物語の主人公龍太は何をやってもまるで駄目、」
逆サイドで太助が大きくジェスチャーしている。
「今回もアルバイトをやっとの事で出来るようになった。
ってお前は俺の横で何してんだ!」
太助がジェスチャーで何か訴えている。
「何々…犬のお客様にも解るように、同時通訳をしている?」
正解!と腕で大きく○を書いている。
「何かい、それじゃぁゴールデンレトリバー、マルチーズ、チャウチャウ、ヨークシャテリア、チワワとか
連れてきてどの犬が最後まで劇を見てると思う!」
またもジェスチャーで答える。
「何、パトラッシュ?そうだな、あの犬は主人の横で一生懸命…ってそんな犬いるか!
お前が俺の横で大きく動くから俺を見る客が居ないだろう!」
気にするな、と訴えている。
「解った、勝手にしろ、龍太はやっとの事でデパートのオモチャ売り場でのバイトを見つけ、
今日が初出勤だバイトの内容はサンタの格好をして売り場に来るお客の接待、
龍太は初出勤にも関わらずお酒を飲んで酔っていた、酔いすぎて右足だけが先へ進みなかなか前へ進めず
転んでしまった、丁度そこへ二人の子供が現れ…」
「サンタさんだ!」
「へ〜サンタっていたんだな。」
「翔子ちゃん…」
「何? えん……乎一郎………君。」
「何でも無い、それより、サンタさん大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、ちょっと足を滑らせただけだ。」
「サンタって事は、何かプレゼントくれるのか?」
「…ごめん、今日はソリを忘れてしまって…」
「えぇ〜プレゼント無いの?」
「君達が欲しい物は何だい?言ってくれれば来年には必ず用意するから。」
「僕はね、グローブが欲しい、ボクシングのグローブ。」
「私は…スケート靴。」
「解った、ボクシングのグローブと、スケート靴だね…
そうだ、約束の印この帽子を持っていてくれ。」
そう言って乎一郎の頭に帽子を被せる。
「解った…約束だよ!」
「約束だ。」

「やっとの事でデパートに着いたのは午後6時、1時間の遅刻である。」
「送れてスイマセン、ミス・ルーアン!」
「何時間の遅刻だと思ってるの!」
「一時間です…スイマセン、ミセス・ルーアン。」
「ちょっと、私は『ミス』よ!」
「ひぃ〜スイマセン、スイマセン。」
「貴方、お酒臭いわね…遅れた理由はお酒を飲んでてって事!」
「スイマセン、最初は一杯のつもりだったんですけど………」
「一杯が二杯…二杯が三杯と…それで気が付いたら六時になっていたと?」
「その通りです、ミス・ルーアン。」
「それと、帽子は!? サンタの帽子!」
「スイマセン、途中で落としたようです。」
「まぁ良いわ、兎も角帽子代分位は働いて貰わないとね、
良い事、お客様の前で絶対に息をしない事!良いわね、息をしちゃ駄目よ!」
「はいっ!」
「はいと元気良く答えて売り場に出て言い付け通り息をしてないでいる。」
「お父さん、このサンタさん息してないみたいだよ。」
「そうみたいですね…」
「しかし、これは人間の定めか、息をしないでいると次第に苦しくなり…ついに息をしてしまった。」
「臭〜い。」
「ちょっと、店長さんこのお店はお酒を召しただらしない人を雇っているのですか?」
「それは…龍太!アレだけ息をするなと言ったのにしたわね!貴方は首よ!」
「しかし、ミセス・ルーアン帽子代分も働いていませんよ。」
「私は『ミス』だって言ってるでしょ!もう良いわよ!服を脱いで出って頂戴!」
「けど、服を脱げって私はこの格好で来たから裸に…」
「そんなの関係無いわ…良く見るとその服シミだらけね…良いわ退職金換わり持って行って頂戴!」
「しかし、そんな事をしたら貴方のお店は…」
「そうよ、あんたのせいで赤字よ!二度と顔を見たくないわ即刻消えて!」

「はぁ〜またバイト首に成っちゃったよ…如何しよう、娘にプレゼントも買ってやれない…
それどころか、今年の正月が無事過せるのか…」
「落ち込んで下を向いて歩いていると、大きな袋が一つ落ちていた。」
「これは? まさかサンタの袋?だとしたら、娘は赤い手袋が欲しいって言ってたよな…
あの男の子はボクシングのグローブ、女の子はスケート靴だっけか…」
「龍太が袋を除くと…」
「うわっ!何だ?…赤い手袋…ボクシングのグローブ…スケート靴…
これは…本当にサンタの袋なのか? 兎も角これで!」
「急いで家に帰る、龍太が拾った不思議な袋は本当にサンタの袋なのか?」

「ただいま!」
「あら?早かったわね、バイトは?」
「…首に成った。」
「首に成ったですって!じゃぁ、正月はどうするの!」
「そんな事より、花織、お前は赤い手袋が欲しいって言ってたよな!」
「いぃ〜え!私はピンクの手袋が欲しいの!」
「えっ、そんな…ここには赤い手袋しか…」
「龍太が手袋を出すとさっきまで赤いものだったはずがピンクになっていた。」
「わ〜私これが欲しかったのよ!良く解ったわね。」
「お前は何が欲しい!」
「食べる物!パンよパン!」
「パンだな!」 パンが連なって出てくる
「わ〜じゃぁバターも。」
バターも連なって出てくる。
「じゃぁ牛乳も!」
牛乳も連なって出てくる。
「じゃぁ、俺は街の人たちにプレゼント配ってくる!」

「ねぇ、お金出して貰えば良かったんじゃない?」
「そうね、2万5円位?」
「少ないわよお母さん。」
「じゃぁ、200万飛んで5円。」
「何で5円に拘るの?」

「外へ出てバイト前に合った子供を捜している龍太…」
「やっと見つけたよ君達!」
「あっ、サンタさん!」
「袋見つかったんだ。」
「あぁ、来年って約束だったけど、今年の事は今年のうちにって思ってね。
はい、君がボクシングのグローブで、君がスケート靴だね。」
「わ〜本物だ!有難う!」
「有難う!じゃぁこれ約束の印、守ってくれたから返すよ。」
「これは君が持っててくれ、そうしたら来年も、再来年も来るよ。」
「うぅ〜ん、これはサンタさんの大切なトレードマークだよこれ無しじゃ駄目だよ。」
そう言って呼一郎は龍太に帽子を被せる。
「ありがとう、じゃぁね〜…何だか嬉しいな、お金は貰えないけど…この調子で!」

「あっ!ねぇ、君は何か欲しい物は無いの?」
「………」
「えっ!何?」
「…………」
「そうなんだ、恥かしがる事無いよ、僕も好きなんだ。はい、軒轅の人形。」
嬉しそうに走っていくキリュウ。
「この調子で街じゅうの人に配って回るぞ!」

「調子に乗って街じゅうの子供達にプレゼントを配って回る。」
「ふぅ〜…あれ?この道は見覚えがあるな…ここは、
そうか夢中で気が着かなかったけど俺は街を一周してきたんだ! やったぞ〜」
「ちょっと、龍太!」
「何でしょう、ミセス・ルーアン!」
「本当に、何度言ったら解るの、私は『ミス』よ!
そんな事より、これは何!私に対する嫌がらせ!」
「それは?」
「首に成ったからって私の店の商品を盗んでプレゼントするなんて!」
「窃盗は犯罪だぞ!署までご同行願おう。」
「これは違いますよ! 貴方も欲しい物を言ってください、この袋から出してあげますよ。」
「そうね…この美貌が長続きするような器具を頂戴。」
「はい、どうぞ!」
袋からランニングマシーンを取り出しルーアンに渡す。
「じゃぁね。」

「君は…確か、はい!これ、盗んだ物じゃないよ、受け取って。」
キリュウは笑みを浮かべながら人形を抱いて走っていく。
「ふぅ〜サンタの仕事って楽じゃ無いな…
けどあの笑顔があるんだ…出来れば来年も…再来年もやりたいな…
いや、駄目だ、今ごろ本物のサンタが捜している、やっぱ返さなきゃ。」
「それは返す必要はありませんよ、その袋は貴方の物なんですから。」
「あなたは?」
「私は妖精、その袋は貴方が拾うと思って路地に置いといたの。」
「すると俺は本物のサンタなのか?」
「そうです、来年も頑張って下さい。」
「解った!」

「あれ?あの子はさっきはいなかったよな…
君は何か欲しい物は有るかい?サンタが何でも叶えてあげるよ」
「わ…私は、太助様の愛が欲しい。」
「ちょ…ちょっと、いくらサンタでも人の心まではあげられないよ!」
「そんな…何でも叶えるって言ったじゃないですか。」
「シャオ!何言ってるんだ!。」
「太助様…」
「シャオ、俺は…俺はシャオの事が好きだ!」
「そ…それじゃぁ、ルーアンさんや、花織さんは…」
「それは…」
「やっぱり…」
涙を浮かべ走り去っていく。
「サンタでも叶えてあげられない事があるんだな…」
下を向いてトボトボ歩いて行く。
「サンタさん。」
「君は…」
「プレゼントを…太助様の愛を…」
「…ごめん、いくらサンタでも人の心はあげられないんだ…」
「そうですか…」
龍太に向って銃を構える。
「さようなら、サンタさん。」
ズキュ〜ン
「えっ…これは…」
「シャオ!何てことしてんだ!」
「主人公が死んじゃったら話が進まないじゃ無いですか。」
「何か変じゃ無いですか七梨先輩…」
「そうだ、シャオは恋愛感情に疎いはずだぞ。」
「まさか、シャオ、お前偽者なのか!」
「わ…私は本物…本物の守護月天シャオリン…。」
「シャオちゃんが偽者のはず無い!」
「そうですよ七梨先輩、私が変って言ったのはもっと違う事です。」
「そうだよ何か変だよ、この話自体、だって毎年この時期にイベントは無かったし。」
「じゃぁ、偽者は龍太か?」
「俺は…俺は本物の飯島龍太だ!
それに、俺は撃たれたんだよ!
何で自分から舞台を壊さなきゃいけないんだ!」
「確かに、自分が撃たれれば容疑者から逃れる事は簡単です。(ふさぁ)」
「俺たちの中に死んで逃げるような奴はいない!」
「私達はいつも作者の描いた通りにしか動けない。」
「そう、だからこの世界を作っている者が命令しなければ私達は動けないんですよ。(ふさぁ)」
「…小さい頃から虐められてた、心を開ける友達がいなくて、
何時も、アニメやマンガを見てた、時々悲しくなったりもした、
もし、俺がこの物語に登場できるなら…って考えて、妄想してる時もある、
俺は一人なんだ!親友、友達、そんなものは偽りでしかない!
だから羨ましかったんだ、けして裏切られない、強い絆がある、
好きと言う気持ちを理解できない、けど理解しようとする少女、
その少女に、気持ちを伝えられなくてどぎまぎする少年、 好きと言う気持ちを素直に出しても、けっして届かない女性、少年の、
主に嫌われることが当たり前と思って、素直な喜怒哀楽が出せなかった少女、
そうゆう、色々な物語が俺には無かった、
好きな人が如何とか、嫌いな人が如何とか、そうゆう事が話せる仲間が、
俺にはいないんだ!!!」
『……………………………………』
「はは…ははは…ははははは!そうさ、ここは俺が思い描いた妄想の世界!
皆デパートのエレベーターの中さ!」
「この妄想を一刻も早く止めさせないと!」

中央に四角くスポットライトが当たる。
「妄想が止まったのか?」
「いや、まだマンガを読み続けてる!」
「この妄想はあいつの本を破らないと止まらない訳ね。」
「あの本を奪え!」
全員で龍太に襲い掛かる。
「止めろ…止めろよ…皆止まれ!!!」
龍太以外全員の動きが止まる。
ちょっと離れた場所で。
「はぁはぁ…」
「その本を渡すんだ。」
「な…何で…何で君は動けるの!何で動けるんだよ、太助!!!」
「もう止めにしよう、こんな事して…」
「う…動かないで。」
「死んで逃げようとしないで、もう君の妄想も終わりだ。」
「そ…そうだよね、何時までもこんな事してて良いはず無いよね…」
「そうだ、現実世界に戻るんだ。」
「解ったよ…俺達、友達だよな?」
「そうだ、俺達は友達だ。」
太助が龍太の手からマンガを取る。
「Good bye best my friend!」
太助がマンガを破り捨てる。
「こんな妄想なんてしなくても君にはきっと良い仲間が見つかる、
最後に俺が動けたのは、君の妄想じゃなくて、俺自身が望んだ事……だから……」
太助の姿は無いが、龍太の耳元で囁かれる。
それと同時にエレベーターの扉が開き全員がそこから出て行く+幕が閉じ始める。
幕が再び開くと、全員が一列に並んで立っている。
「以上を持ちまして第一回公演を終了します、1時間お付き合い頂き真に有難う御座いました。」
全員が深深とお辞儀をする。



tatsuの後書き

はぁ〜長い…文化祭〜劇編〜一気に書き上げました
所要時間は…2時間半位かな…
ラジオ聞きながら書いてたんだけど殆どラジオの内容が入っていない
劇最後の太助の台詞『Good bye best my friend!』っての自信無いんだよな
タナに直されるのが落ちだろう
しかし…始めてかもこんな長編(?)
後は後夜祭だけ!張り切って行くぞ〜!
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