訪問者


「今日もいいお天気ですねえ・・・」
神社の境内を掃除しながら呟く出雲。
「こんなときはシャオさんの笑顔を思い出しますね」
出雲はシャオの笑顔を空に浮かべながらそう呟く。
「ああ・・・シャオさん!あなたは私の心の太陽だ!」
思わず訳のわからない台詞を口にする出雲。
「太陽がどうしたのですか?」
「おわっ!!」
後ろから突然声をかけられて驚く出雲。
「こんにちは、宮内さん」
「ヨ、ヨウメイさんですか・・・おどかさないでください・・・」
声の主はヨウメイであった。
「あなたが勝手に驚いただけですよ。それに、シャオさんは太陽ではなく、月ですよ?」
「・・・全部聞いてるんじゃないですか・・・」
「一応確認はとっておこうかと思いましてね」
ヨウメイは半分笑いながらそう答えた。
「で、何かご用でしょうか?」
これ以上論争するのは無駄と判断した出雲はヨウメイに用件を訊く。
「ああ、そうでした。実は、あなたに避難勧告を出しにきたんです」
「避難勧告?一体なぜですか?」
ヨウメイの言葉を理解しかねた出雲がヨウメイに聞き返す。
「あなたに災いが迫ってるからです」
「災い?冗談はやめてください」
出雲は馬鹿馬鹿しくなってそう言う。
「そうですか?そうですね、大体の方はそう言うんですよね・・・
しかし、そう言った人はことごとく悲惨な運命をたどりました・・・」
ヨウメイはそう返す。
様子が普通ではない。
「あ、あの?」
ヨウメイの様子を見た出雲は途端に不安になりだす。
「そうですか・・・今日で宮内さんともお別れ・・・寂しくなりますね・・・」
見ると、ヨウメイは目に涙を浮かべている。
「お別れって・・・縁起でもないじゃないですか」
出雲は完全にうろたえている。
「確かにあなたはいやな人だと思っていました・・・
しかし、これであなたの顔も見納めだと思うと、悲しくなって涙がでますよ・・・」
しくしくと泣き出すヨウメイ。
「わ、分かりました、分かりましたから泣くのはやめてください」
「では、避難していただけるのですね?」
「ええ、そこまでいうのなら・・・」
「よかった、では、こちらに・・・」
ヨウメイがそう言って出雲の背中を押したとき・・・
ぽろっ・・・
「おや?何か落ちましたよ?」
ヨウメイから落ちた何かを出雲が拾う。
「あっ!それは!」
「・・・ヨウメイさん・・・あなたねえ・・・」
それを見た出雲は表情を豹変させる。
出雲が拾ったもの、それは目薬だった。
「嘘泣きだったんですね・・・」
「ええ、そうですよ」
出雲の言葉をあっさりと肯定するヨウメイ。
「・・・・・・」
出雲は言葉も出ない。
「あの後、避難場所と称して、宮内さんをとある場所へとお連れしようかと思ったのですが」
「何処へ連れて行くつもりだったのですか・・・?」
「それは秘密♪です」
「これ以上は詮索しませんよ・・・」
出雲は付き合ってられないとばかりにそう言った。
まあ、どこに連れて行かれるのか聞くのが恐いということもあるのだが・・・
「え〜?」
ヨウメイはとても残念そうにそう言った。
「じゃあ、帰りますか」
「そうですか?お気をつけてお帰りください」
出雲は内心ほっとしながらヨウメイに別れの言葉を告げる。
「それでは、また」
ヨウメイはそのまま宮内神社を後にした。

「はあ・・・ヨウメイさんは相変わらずですねえ・・・」
出雲ははっきり言ってヨウメイが苦手である。
「いくら女性に優しく、がモットーでも限度がありますよね・・・」
出雲はそう呟いていた。
「はあ、掃除はこれくらいにしておきましょうか・・・」
ヨウメイのおかげでほとんど掃除には手をつけてはいないが、どっと疲れがでたのでこれで終了させた。
「さて、いつものようにシャオさんのところへ行きましょうか」
途端に元気になった出雲は早速準備を始める。

「今日は母特製の芋ようかんで行きましょう」
片手に芋ようかんの包みを持って神社の鳥居まで進む。
「でも、結局はルーアンさんがほとんど食べちゃうんですよね・・・」
出雲がそう呟く。
「はあ・・・私とシャオさんの間には邪魔な人が多いですから・・・」
「邪魔なのは・・・あなたのほうよ」
ふと、背後から声がした。
「この声は・・・まさか・・・」
声に危機感を感じ、おそるおそる後ろを振り返る。
シャキンッ!
出雲の首に何か、刃物らしきものが付きつけられている。
「ひッ!」
思わず小さい悲鳴を上げる出雲。
「宮内出雲・・・主の邪魔をする存在・・・ここで消えてもらうわよ・・・」
「レ、レイユウさん・・・突然なんなんですか・・・」
出雲は声の主にそう言う。
出雲が声をかけた相手は滅殺闇天 レイユウ。
主の邪魔をする存在を排除する役割を持つ闇の精霊である。
出雲ははっきり言ってレイユウを恐れていた。
彼女は暗殺のプロであり、狙った相手は確実にしとめることができるのである。
ましてや、自分は太助の恋敵でもあり、レイユウのターゲットとして狙われていたのである。
出雲は「とうとうこの日が来たのか」と恐れおののいていた。
「冗談よ」
と、言って出雲から刃物を離すレイユウ。
「冗談ではすみませんよ・・・」
「あなたを消すのは簡単だけど、主に止められているから冗談程度で勘弁してるのよ。少しは感謝しなさい」
「そ、そうですか・・・ははは・・・」
出雲は愛想よくそう受け答えする。
下手なこと言うと今すぐにこの場で消されかねないからだ。
「ところで、今ヨウメイが来てたわね」
「ええ、来てましたけど、さっき帰りましたよ」
「そう・・・すれ違ったのね・・・」
「ヨウメイさんに用があったのですか?」
「あなたが知る必要はないわ」
レイユウはそう言い放つ。
こういう突き放した言動は彼女の特徴である。
「ところで、その包みは何かしら?」
レイユウは出雲の持っている包みを見てそう訊く。
「ああ、これからシャオさんのところへ行こうかと・・・」
「ふ〜ん・・・」
レイユウはそう言うと、出雲からその包みを取り上げた。
「な、何するんですか!」
「私が届けておくわ」
「いいですよ、私が直接渡しますから」
「あなたをシャオに近づけるわけにはいかないのよ。それとも、私を倒してでも行く勇気があるのかしら?」
レイユウが破天槍を出雲に突きつけてそう言う。
「い・・・いえ・・・お願いします・・・」
出雲はこれ以上逆らうと危険と判断し、レイユウに届けるようにお願いした。
「それじゃ、これは届けておくわね。それと、今度会う時までに最後の言葉を考えておく事ね」
「最後の言葉って・・・」
「冗談よ」
内心恐怖で恐れおののいている出雲にレイユウは冗談の一言で返した。
次の瞬間にはレイユウはその場から姿を消していた。

「はあ・・・これではシャオさんに近づく事すらできないじゃないですか・・・」
出雲がそう言う。
「掃除の続きでもしますか・・・」
出雲はほうきを持って再びやりかけの掃除を始めた。
「お掃除ですか?宮内さん」
「うわッ!」
またもや後ろから声をかけられ、びっくりする出雲。
「だ、大丈夫ですか?宮内さん!」
出雲がびっくりしたことにびっくりした声の主が出雲を気遣う。
「メ、メイルウさんですか・・・はあ・・・」
「こんにちは、宮内さん」
声の主は覚醒光天 メイルウ。主の力の覚醒を行う光の精霊である。
この話では、七梨家にはシャオ達三精霊の他に、ヨウメイ、レイユウ、そしてこのメイルウがいる。
人間恐怖症であり、心を強くする暗示のかかっためがねを着用しないとまともに話もできない人である。
出雲にとっては最も扱いやすい精霊である。
「どうしましたか?メイルウさん」
「あの・・・レイユウさんを見ませんでしたか?」
「レイユウさんならさきほど帰りましたよ」
「そうですか・・・では行き違いですね・・・」
メイルウはそう言う。
「あの・・・お掃除手伝いましょうか?」
「いえ、女性にそんなことはさせられませんよ」
「いえ、私は皆さんのお役に立ちたいんです」
手伝いの申し出を断った出雲にメイルウがそういう。
真剣な目で見つめてくるメイルウ。
(シャオさんもいいが・・・しかし、メイルウさんもなかなか・・・)
それを見て出雲が萌えた(爆)
「分かりました。それではあちらのほうをお願いしますね」
「はい」
「ほうきはそちらの方にありますから」
「分かりました」
メイルウがほうきを取りにいこうとしたそのとき・・・
「きゃっ!」
樹の根っこに引っかかってメイルウが倒れそうになっていた。
「おっと!」
出雲がいそいでメイルウの腕を掴む。
どさっ!
「あれ?」
しかし、メイルウは倒れてしまった。
出雲はメイルウを掴んでいたはずの自分の手を見た。
「こ、これは・・・」
手には何か、布が握られていた。
出雲はそれからメイルウの方を見る。
そこには、上着が破れ、涙目で上着の破片を押さえているメイルウがいた。
しかも、メガネが壊れ、人間恐怖症モードが発動している。
そう、出雲は腕をつかんだつもりが、間違ってメイルウの上着を掴んでしまったのだ。
「いえ、これはですね・・・」
「来ないでください!!」
出雲が弁解しようとするが、メイルウはパニックに陥っており、出雲の話を聞こうとしない。

「メイルウさんはここにいますね」
「メイルウも行き違ったみたいね」
そこにヨウメイとレイユウがやってきた。
「あ・・・」
そして、そこで二人が見た光景が・・・出雲とメイルウ・・・
しかも、メイルウは上着が破れた状態・・・
「宮内さん・・・あなたって人は・・・」
「そこまで腐れ外道だったとはね・・・」
「い、いえ!これは違うんですよ!」
出雲が必死に弁解する。
「いやあ・・・来ないでください・・・」
メイルウが怯えた表情でそう言う。
その一言が、出雲の運命を決定付けた。
「この状況でまだ言い逃れする気ですか?」
「あなたにはそれ相応の最後が必要みたいね・・・」
二人は完全に怒りモードに入っていた。
もはや逃れようがないだろう・・・
「だから・・・あの・・・こ、これは・・・」
もはや恐怖で言葉が出ない状態の出雲。
「天罰です!」
「地獄へ・・・堕ちなさい・・・!」

カッ!!
その日、宮内神社という場所は、この世から消えてなくなったという・・・
めでたし、めでたし。
「めでたくありません!!」
どうやら、彼は生きていたようです。
「待ちなさい!天罰は終わってませんよ!」
「覚悟!!」
「うわああああ!」
その後、彼がどうなったか・・・
それはご想像にお任せします(笑)


後書き

初めに謝っておきます。
空理さんごめんなさい!!
ヨウメイを変に扱ってしまいました!
一応ギャグなんですけど・・・
う〜む・・・中途半端だなあ・・・
次回はほのぼのでも書いてみるかな・・・?


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