日常、当たり前の世界・・・
夢。
夢が終わる日。
雪が、春の日溜りの中で溶けてなくなるように…。
面影が、人の成長と共に影を潜めるように…。
思い出が、永遠の時間の中で霞んで消えるように…。
今…。
永かった夢が終わりを告げる…。
最後に…。
ひとつだけの願いを叶えて…。
たったひとつの願い…。
ボクの、願いは…
『けろぴー』
え!?
はっ!!
夢?
あの、頭の中に直接ひびくフレーズは一体・・・
「あしもとにかぜ〜 ひかりが〜まった〜」
とりあえずそのフレーズを口ずさむ。
「祐一、祐一!突然歌い出してどうしたの!」
俺の脇にはいつのまにか名雪が立っていた。
「おわっ!!名雪!!いつの間に!!」
俺はこれまでにないような驚きの声をあげる。
「さっきからいたよ。呼んでもゆすっても上の空だし」
名雪は心配そうな目で俺を見つめていた。
「なあ、俺どうしてたんだ?」
名雪の心配そうな目を見てたらこっちもなんだか心配になってきた・・・
「なんだかぼーっとしてたよ。なんだか魂がこっちになかったって感じで・・・」
俺、白昼夢でも見てたのか・・・?
「祐一、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。心配するなって」
「本当?」
「ああ。本当だ」
「本当に本当?」
「ああ、本当に本当だ」
「本当に本当に本当?」
「ああ、本当に本当に本当だ」
「本当に本当に本当に本当?」
「ああ、本当に本当に本当に本当だ」
(以下繰り返し)
「お前ら、本当に突っ込む奴はいないんだな。」
「き、北川!!なんでおまえがここに!!」
「何言ってんだ。ここは学校だろうが。」
そうだった・・・ここは学校だ・・・
「相沢君、今日はもう早退したほうがいいんじゃない?」
香織まで・・・
「そんなわけにはいかないだろ」
確かに白昼夢(?)ごときで早退するわけにはいかない(見る時点でやばいと思う)
「そう?じゃあいいけど」
香織はあっさりとそう言ってのけると自分の席へと戻っていった。
きーんこーんかーんこーん
「あ、休み時間が終わっちゃった」
名雪も自分の席に戻る。
これから退屈な授業か・・・
思わずまたぼーっとなるのかもな・・・
きーんこーんかーんこーん
今日の最後の授業終了のチャイムが鳴る。
今日も学校が終わった。
「祐一、放課後だよ」
「いちいち言わなくてもいい」
「だって、祐一、今日は学校にいるってことも忘れてたし、一応だよっ」
事実なために反論できない。
「今日はどうする?」
「ん?お前はどうするんだ?」
「今日は部活休みだから商店街にいこうと思うんだけど、一緒に行かない?」
「まあ、いいか」
というわけで俺と名雪は商店街へ向かうことになった。
「祐一とこうやって商店街歩くの久しぶりだね」
「ああ、そうだな」
しかし、俺と商店街歩くのがそんなにうれしいのか?
名雪はにこにこしながら歩いている。
しかも・・・
「祐一、腕組もうよ」
「は?」
名雪は俺の右手に自分の腕を絡めてきた。
「ば、ばか、何してんだ!」
照れくさくなって俺は手を離そうとする。
「え〜?」
「『え〜?』じゃない。恥ずかしいだろうが」
「でも、こうすると恋人みたいだよ」
「・・・・」
「あ、祐一赤くなってる〜」
「うるさい!!」
照れをごまかすために俺は名雪にちょっと怒鳴ってみせた。
「あれ?あのあたり人が大勢・・・」
名雪が指差した先には人だかりが出来ていた。
「なんだ?」
「行ってみようよ」
名雪は俺の腕を引っ張ってその人だかりに向かう。
「うーん・・・見えない・・・」
俺達はなんとか人をかき分けて中に入り込もうとしている。
何やってんだろうな?俺・・・
「はい、鯛焼き5つです。ありがとうございました」
どうやら人だかりの中心は鯛焼きの屋台らしい。
それにしても、どこかで聞いたことある声だな・・・
もう少し中心に入っていく。
そこにいたのは・・・
「あら、祐一さん、名雪。いらっしゃい」
あ、秋子さん!!
その姿を見た俺達は思わず前につんのめりそうになった。
「お母さん!!」
「何やってるんですか、こんなとこで?」
「ああ、今日は鯛焼き屋のおじさんが急病で倒れてしまったので緊急に私が屋台の切り盛りをしてるんですよ。」
・・・なんで?
「6時までには帰りますから夕飯はそれまで待っててね」
いや、夕飯の問題ではないと思うが・・・
「鯛焼き6つ!!」
「了承」
見ると、秋子さんは鮮やかな手つきで鯛焼きを焼いていく。
これはもはや達人の域だ。
「はい、鯛焼き6つです。ありがとうございました」
秋子さんはにこやかに客に鯛焼きを渡す。
「それでは、秋子さん。俺達はこれで」
秋子さんの邪魔をしちゃいけないと思った俺はそう言う。
「そうですか。では、また」
秋子さんに見送られて俺達は屋台を後にした。
「ふう、しかしすごい人だかりだったな・・・」
「お母さんの鯛焼きって人気あるんだ・・・」
秋子さんの新たな一面に俺達はただ驚愕するしかなかった。
「鯛焼きといえばあゆだよな・・・」
俺はふと鯛焼き好きの少女のことを思い出した。
「うん、そうだね・・・」
名雪もそう言う。
「最近見ないな・・・」
「きっと元気だよ」
「だといいけどな・・・」
そう、あゆは今もどこかで鯛焼き片手に「うぐぅ」といっているに違いない。
「祐一、それは無いと思うよ」
名雪が俺の心の声につっこんできた!!
「お前、心が読めるのか!?」
「さっきから声に出してるよ」
・・・うかつだった。
以後、気をつけよう。
「祐一、百花屋に寄って行こうよ」
「おごりじゃないぞ」
「え〜」
「俺も今月はやばいんだよ・・・」
「う〜」
名雪は俺をじっと見ている。
じっと捨てられた子犬の目で俺を見る。
やめてくれ!!そんな目で俺をみるなあ!!
「分かった分かった、ただし一杯だけだぞ」
観念した俺は名雪におごることにした。
「うんっ!」
名雪はそれを聞くと同時に笑顔になる。
「で?何がいいんだ?」
「イチゴサンデー」
「まあ、名雪は一日一回イチゴサンデーを食べないと禁断症状が出るもんな」
「人を中毒みたいにいわないでよ〜」
「ちがうのか?」
「ちがうよ〜」
「ほら、さっさと入るぞ」
「祐一が変なこと言うからだよ!!」
俺達はそうやってふざけながら百花屋に入っていった。
いつもの生活、いつもの会話。
何気ない日常だけど、それが当たり前だけど、
俺はそんな当たり前なことが出来ることこそ幸せ、なんだと思う。
いつまでも、名雪と一緒にいられますように・・・
一緒に平和で当たり前のことができますように・・・
ところで、冒頭のあれは何かと言うと・・・
「先生!!月宮さんが、月宮さんが!!」
「どうした!!」
いそいで病室に向かう医師と看護婦。
彼らが病室についたとき・・・
「こ、これは・・・!!」
そこでかれらが見たものは!!
「けろぴー・・・」
そう、ベッドには奴が横たわっていたのである。
あゆは、最後の願いにより、けろぴーに転生したのだ。
(うぐぅ〜違うよ〜こんなのボクの願いじゃないよ〜)
しかし、けろぴーはぬいぐるみなのでしゃべることが出来ない。
(誰かがボクの願いに割り込んできたんだよ〜)
さて、それは誰でしょう?
(うぐぅ〜ボクこれからどうなっちゃうんだよ〜)
その後、けろぴーあゆはいろいろな過程を経て水瀬家にもぐりこんでいく・・・
その話はまた次の機会に・・・
終わり
後書き
とりあえず、あゆ属性の方々、ごめんなさい!!
妙な展開になってしまいました!!
しかし、なんだろうか・・・
山がないような・・・
ほのぼのやギャグを無理に詰め込もうとするときついですね。
さて、雲隠れするか(爆)