Travel Memories


最終話『2人』

 乎一郎は1人病院に向かって走っていた。ルーアンのことを気にしながら。
 話は数十分前にさかのぼる。
ルーアンを探すために公園でたかしと別れた乎一郎はルーアンを探して町を歩いていた。その時、
数時間前に戦いがあって数名が病院に運ばれたという内容のことを町の人が話していたのを聞いて、
乎一郎が話を聞いてみると、ルーアンらしき女性が病院に運ばれたという。
そこで乎一郎は病院の場所を聞いてそこに向かっているのである。
彼は途中で店に立ち寄ると、ルーアンのお見舞いにお菓子をいくつか買うと、再び走りだした。

 そして夜、太助とシャオはとある山の頂上にいた。あたりに人は居なく、太助達だけがそこにいた。
そして、2人から100メートル程離れたところから那奈と翔子が太助たちのことをこっそりと見ている。
ちなみにキリュウは寒いのが嫌になったのか1人でホテルへと戻っている。
「うわー、きれいな夜景ですね。」
とシャオが頂上から見える夜景を見ながら言う。
「うん、そうだね、シャオ。」
と太助。
「あのさ、シャオ。」
と太助がシャオに言う。
「何ですか、太助様。」
とシャオ。
「実はさ、父さんと母さんも昔ここに来たんだってさ。」
「え。」
「那奈姉が言っていたんだけどさ、
俺が1歳になるちょっと前に家族でここに来たことがあったんだってさ。
俺はほとんど覚えていないけどさ。」
「へー、そうだったんですか。」
「最初ここに来た時、
俺そんなこと知らなかったからいろいろ考え込んじゃって
シャオに迷惑駆けちゃったみたいでさ、ごめん。」
「いえ、気にしなくていいですよ、太助様。」
「そうか、ありがとう。」
といい感じの2人。
「そろそろ帰ろうか、シャオ。」
と太助が言うが、
「もうすこしだけ、ここにいませんか。」
とシャオ。
「じゃあ、もう少しにいようか。」
と太助も承諾した。そしていること数分、
「あ。流れ星だ。」
と夜空を指さしながら言う。そして2人は流れ星に向かって願い事をした。
(シャオ(太助様)とずっと一緒にいられますように。)
と。そして、
「寒くなってきたしそろそろ帰ろうか。」
と言って太助は立ち上がる。
「はい。」
と言ってシャオも立ち上がる。そして、2人は歩き始めた。その途中太助は、
「父さん達もここに来たときに流れ星を見たのかな。そして・・・」
とつぶやいた。

 そして翌日、彼らは出雲の車で帰り道を走っている。
「いや、悪いな、宮内。やりすぎちゃったみたいで。」
と出雲に謝る那奈。もっとも、本当に悪いと思っているかは多少疑問ではあるが。
「全くいくら何でもやりすぎなんですよ。」
と言ってため息をつく出雲。結局出雲とルーアンのけがは思ったよりもひどくなく、
その日の夜には退院し、ホテルに戻ることができたのである。
なお、2人の治療にあたった医師は大量の岩の下敷きになっていたにもかかわらず
怪我がひどくなかったことに驚いていたという。その後ろでは、
「ルーアン先生、お饅頭買ってきたんですけど、食べませんか。」
と乎一郎がルーアンに饅頭が入っている箱を差し出しながら言う。
昨日、彼がルーアン達が退院するまで病院にいたのは言うまでもない。
「あら、おいしそうね。じゃあもらおうかしら。ありがとね、遠藤君。」
と言いながらルーアンはいくつかの饅頭を手に取ると、口に入れ始めた。その横では、
「どうして七梨先輩達のこと見失ったりしたんですか。」
「だからいつの間にか行方を見失ったんだって言っているだろう。
第一、君だって人のことを言えないだろう。」
「そ、それはそうなんですけど。」
とたかしと花識が昨日のことについて言い合いをしていた。
結局、昨日たかしは太助達の後を離れた後、ずっと花識のことを探していたが、
見つからないまま夜になったので、とりあえずホテルに戻ったときに、
ホテルの前で鉢合わせしたのである。
その後、花識にどうして太助達を見張っていなかったのかと問いつめられ、
たかしは花識のことが心配だったとも言えず、見失ったと言い訳をしたのだ。
そしてキリュウと翔子は今回の旅行についての話をしていて、
太助とシャオは後ろで2人独自の世界を作っているようだった。
最もそのことに気づく物は誰1人いなかったが。
 旅行から帰ってきてから数日後、那奈は自室で両親への手紙を書いていた。
『よう、親父(母さん)。元気か。
 あ、そうだ。この前、旅行であそこへ言ったんだ。昔家族旅行であたし達が行った所だよ。
そこでよ、太助とシャオが昔の親父(母さん)達と同じようにあそこの山に行って、
いい雰囲気だったんだぜ。本当に昔の親父(母さん)達そっくりだったぜ。
それと、太助の奴何となくとだけど、昔ここに来たってことに気づいていたみたいだぜ。
 また、何か書きたくなったら手紙を書くよ。つーことでじゃーなー。』
という内容の手紙を。2通の手紙を書き終えた後、那奈は椅子に深く寄りかかると、
「それにしても太助の奴あそこまで悩んじまうとはな、
もしかしたらあいつにとってはいい思い出の場所だったのかもな。
まだ1歳になっていなかったとはいえ、たった1度だけの家族旅行だったからな。」
と旅行のことを思い出しながら独り言を言う。彼女は椅子から立ち上がると、
「さてと、手紙を出してくるか。」
とつぶやき、手紙を手に取ると家を出ていった。
 那奈は手紙をポストに入れると、
「旅の思い出か。今度どっか連れてってやろうかな。家族だけで。」
とつぶやく。そして彼女は再び歩き出した。

     Travel Memories 最終話 2人 完


     Travel Memories 完

<後書き>
 ふう、とりあえず完結しました。
どちらかというと、太助とシャオの話を書くのは苦手なのでありますが、
自分では精一杯努力して書いたつもりです。
それと、この小説をHPに載せてせて下さったお三方、
そして、これを最後まで読んで下さった方、本当に有り難うございます。
 例によって感想・批判などがありましたら、ZXH07164@nifty.ne.jpまでお願いします。
また、また何処かでお会いしましょう。
それじゃあ、また。

          「West Treasure Station」管理人 西本香哉



戻る