……主殿…まだ怒ってるかな…
当たり前だな…シャオ殿に……怪我をさせてしまったからな…
ついカッとなって出てきてしまったが……
…もし……もしも………許してもらえなかったら……私は…
また…短天扇に帰らなきゃ…いけないの……だろうか………
そうだ。あれは…私が初めて主殿に出会った日…
主殿は…私を追いかけてきてくれた……一緒にいていいと言ってくれた…
そうだ。あれは…その翌日だったかな……
試練を進んで受けようとする人間なんて始めてみたぞ…
思えば……
何を笑っているのだ…ルーアン殿……
私が…私がこんなに真剣に悩んでいるというのに…
……………?
「あんたはたー様がそんなことで嫌うような人間だと思ってるわけ?」
「でもその度にあなたは傷ついてきたわ。でもね、あなたはそれでいいの?」
「せっかく巡り会えた主人なのよ!初めて出会えた試練を受け入れてくれる主人なのよ!」
「!?」
ルーアン殿のその言葉を聞くと私は駆け出した。
初めて自分が我が家といえるようになった家へ。
自分の思いを伝えるために。
待っていてくれた。
「バカ!怒るわけないだろ。確かにシャオが傷つけられたときは少し怒った」
「でもな、そのせいでお前がいなくなったらと思ったら…軽いもんだよ。なあシャオ」
いつだったかな………
私はあのときから…………
……………
誰かが呼んでいるな……
まさか…主殿!?
なんだ、ルーアン殿か……
「あんた、どこ行く気よ…」
「私は…主殿に嫌われてしまったのだろうか…」
「フフッ」
「何がおかしい!?」
「あんたねえ、ちゃんとたー様に確かめてみたの?」
「そ、そんなことを思ってるわけないだろう!」
「ならなんでそうたー様にはっきりいわないのよ!?」
「それは…」
「あんたはあたしやシャオリンよりつらい別れを何度も経験してるわよね」
「………」
「そう、主に嫌がられるためのようなもんだもんね。あんたの能力は」
「あなたもシャオリンと同じね。自分の幸せを望まない。
自分が万難地天だから、で片付けようとしてる」
「あたしがいいたいのはそれだけよ」
「…ルーアン殿、すまなかった。確かに私は今まで…」
「ストップ!!」
「その続きはちゃんとたー様の前でいいなさい」
何も考えずに、自然に体が動いたといっても過言ではないかもしれない。
私は…私は…
「まったく、あたしも変わったわね」
私は戻ってきた。
家の前には…
主殿が。誰かを探しているように。
主殿は……私を見ると微笑んでくれた。
そして…
「キリュウ!どこいってたんだ、心配していたんだぞ!」
「主殿…怒っていないのか?」
それを聞き私は初めてその後ろにいたシャオ殿に気づいた。
「ええ。私の傷は長沙でいくらでも癒すことができます。
…でも、心の傷は私たちじゃ治すことはできませんもの」
「それじゃあ…」
私が顔を上げると主殿は優しくこういってくれた。
「おかえり、キリュウ」
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