十字架―――セント・クロス―――

〜〜〜メイン・メモリー〜〜〜

本作品の登場人物の簡単自己紹介

人物名

所属先

皇 勅(すめらぎ みこと)

中央情報管理局の所長であり、人工知能

綾川 美智香

性別…女性 年齢23歳のキャリアウーマン

ルティア

高度情報通信ネットワークの対話型メインコンピュータ

Mami

立体映像 普段はルティアの中にいる 優しいお姉ちゃん

ティラ

3D立体映像

妖怪達

いわゆるエラーのこと

 

名前

簡略説明

高度情報通信ネットワーク

  通称 テラネット

*ナノ秒とは10億分の1

近未来の日本における日常的な情報網

950GB/秒のデータを同時に複数箇所に送付可。

高速の演算処理を行う(500GB/ナノ秒)

中央情報管理局

    通称ATH

テラネットの中心機構

コンピュータの管理・制御、及び通信を一手に担う。

TMO(大容量記憶装置)

一枚でMOディスク約100枚分

 

アンドロイド識別名

識別コード

主な仕事

   桜

A001〜099

自然環境保護

   木蓮

B001〜077

宗教を司る

   スミレ

C001〜110

政治関係

   ディジー

D001〜333

教育関係

   百合

E001〜777

育児関係

 

識別名

主な活動

目的&(効果)

工場の周りに木を植える

工場から出る排気ガスなどが浄化される

 

川などに石炭を置く

工場排水などが川や湖に流れ込むのを防ぐ

☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

木蓮

宗教活動

個人の良心を導く

☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆

☆☆☆☆☆☆☆☆☆

スミレ

政治

子供たちに良い未来を残すため

ディジー

教師

子供たちに様々な物を教える

百合

子守

母親や父親に代わって子供の面倒を見る

白百合―――α級特殊プログラム(プログラムコード 0100010−A)

 空気のような存在(特に役割はないが、精神安定剤の役目がメイン)

―――――幕開け プロローグ―――――

A・D2000 近未来の日本。

 人類はテラネットを作りだしたことで戦争がなく、平和な時間を過ごしていた。まるで昔の古き良き時代にタイムスリップしたみたいであった。

 さらに高度情報化システムの発達により、人類とロボットが共存するという夢の社会が実現された。 そして数十年の時が過ぎ、A.D20XX 4月―――桜の花が咲く季節

ATHの所長 皇 勅は、部屋の窓から外を眺めていた。

 澄み渡った空には桜の花びらが舞い、幻想的な風景を生み出していた。そんな幻想的な風景に包まれ、人々はのどかな日常を過ごしていた。

 皇はルティアの電源を入れ、一つ二つ会話のやり取りをした後、テラネットに関するデータを自分の持っているTMOにダウンロードした。

 数秒後、自分のTMOにダウンロードされたことを確認すると、ルティアの電源を切り、中央のソファーに身を沈めしばらくの間、目を閉じて物思いに耽った。

「トントン」

「失礼します。 第一秘書の綾川 美智香です。」と部屋に入ってきたのは、

濃紺のタイトスカートに白のブラウスの制服を着た、ロングヘアーの女性だった。

皇は彼女をチラリと見て、身を沈めていたソファーから立ち上がり、

「私に何か用ですか? 美智香さん」デスクの方に歩きながら尋ねる。

 「別に、用事という程のことではないのですけど……」美智香は、少しくちごもる。

いつもと違う雰囲気を、微妙に感じた皇は、

「美智香さん どうしました?」イスに座りながら、再度尋ねる。

 皇の再度の促しに意を決して、顔を上げると少しオドオドしながら、

 「申し訳ございません。私の不注意でテラネットにエラーが出たものと思われます。」と、深々と頭を下げる。

 皇は別段怒るふうでもなく、しばらく何かを考えていたが、

「ルティア聞きたいことがある 起きてくれ」と声をかけると、数秒のタイムラグの後、「ヴーン」という音がして、ルティアが自動的に立ち上がった。

(何と、ルティアは音声からでも自動的に立ち上がる。ただし音声認識は皇のみ)

  皇は、念のためルティア本体の電源も入れ、手元のキーボードから何かを入力した。

「カチッ カチッ カチッ カチ カチ ピッ」1・2秒音がしたかと思うと、いきなり皇の目の前に小型の空中ディスプレイが表示された。

 皇は無造作にディスプレイに目を走らせると、一つ二つの命令をルティアに送った。

それから、美智香の方を向き

「美智香さん。別にシステムそのものには、特段のエラーは見あたりませんよ。しかし、念のためにシステム・エンジニア(SE)を一人回して下さいませんか」

 美智香はすぐに踵をかえして、部屋を出ようとした。

「人間誰しもミスなんてあります。生きているのですから」皇は、美智香の背にそう声をかけると、再び目をつぶり瞑想に入った。

 美智香はその言葉に、一瞬足を止めたが、部屋を出てSEを呼びに行った。

 

***Mamiの七変化(しちへんげ)Ver.だよ***

「カツン カツン」遠ざかっていくハイヒールの靴音が聞こえる。

皇はタバコに火をつけながら、

「美智香さんにも困ったものだ。素直な性格はとても良いのだけど、もう少し…… 

まぁそれが、あの人らしいといえばあの人らしいけど……」皇は誰に言うでもなく呟いた。

「ハーい」突然、Mamiのノーテンキな声が部屋にひびいた。(元気娘Ver.だよ)

 「ジトーーー」皇は、ジト目でMamiを見つめる。

「ん〜 暗〜い どうしたの?」皇の首に抱きつきながら、耳元で小声で囁く。

 「ん〜 何でもない」皇は、疲れたように呟く。

「あ〜な〜た〜」Mamiは色っぽい声で近づくと、(お色気Ver.だよ)

「あ〜 どんより雲が見える」と素っ頓狂な声をあげた。(???Ver.だよ)

「それよりどうしたんだ お前が本体から出てくるなんて 何かあったのか?」

「別に〜 何〜もないよ」と、ケラケラ笑うMami。

 (あなたが元気ないから心配したんだよ。と、心の中でそっと呟く)

―――おいでませ 妖怪さん 良い旅を???

 A.D2000年に入り、コンピュータ文明の進歩によって、地球などに存在していた悪影響の因子はほとんど見られなくなった。

 とは言うもののそうなると、人は何かしら悪さをしたくなるものである。この世界にもご多分に漏れずそういう人たちがいた。

 そう、彼らこそ¥a(ニューアルファー)と呼ばれる妖怪(エラー)達だった。

俺の名前はティラ。(電脳空間“サイバー・テラネット”上での仮の名前)

 イヤ〜 実はさ テラネットに、エラーが出ていたのにMamiが気づかなくて、一時大変なことになったんだ。それで急遽、俺がティラになって、エラー退治に行くことに決まったってワケ。しかも、エラー数は何と8つ(これぞ、近未来Ver.逆八犬伝)まあそれはともかく。 さあ8つのエラー退治にLETS GO!!!

ぷよ ぷよ フワッ ふわっ プヨ プヨ チッ ちっ

 俺は、のんびりと電脳空間を漂っていた。(しかしあれだな、当然と言えば当然なんだけど、右を見ても、左を見ても、0と1の数字しかないな)

 俺が、依然としてのんびり漂っていると、突然目の前に0と1の数字が、次から次へと現れた。

「ハッ はっ ホッ ほっ トッ とっ」俺は、軽くステップを踏みながらよけていった。

そうして、7つの数字をよけて、ホッとしていると、

「カーン ボン きーん バーン ゴーン」8つの数字が俺を直撃した。

…………………………………

「フッこれぞ、七転び八起きならぬ、7よけ8直撃よ」と、ビシッとポーズを決めた途端、「カーン」数字の“1”がまともに俺を直撃して、俺は哀れ沈没してしまった。(合掌)

 「クスッ くすっ クッ くっ くっ」

 突然、可愛らしい女の子の声がしたかと思うと、目の前に着物らしき物を着た、小学生ぐらいのおかっぱの少女が現れた。

「あなた面白い人ね 名前なんて言うの?」鈴を転がしたような声で聞いてくる。

 「僕の名前は、ティラ 本名、石流寺 愛理 君の名前は?」

「私の名前は、秋の「き」に銀色の「ぎ」のローマ字表記で、kigiって言います。

それと一応、妖怪(小豆とぎ)なので、成り行き上あなたと戦わなければならないのです。」

  …………………「よ 妖怪? 君が???」俺は思わず耳を疑った。

「それじゃ 行きま〜す」と言うや否や、

kigiちゃんは、両手を前に指し出して何やら呪文を唱え始めた。

すると、無数の0と1がkigiの前に現れた、と思ったら、ものすごいスピードで俺の方に飛んでくるではないか。

 「ホッ ハッ とっ」 俺はかろうじてよけていく(と言っても、これではきりがない)

何か武器はないのかと自分の体を見回すと、腰のベルトの所に赤いボタンが付いていたので、そのボタンを押すと、いきなり頭の中に言葉らしきものが流れ込んできた。

 「スモーキング・ネット」俺の叫び声に反応するかのように、俺の両手から無数の網状の煙が出てきて、飛んでくる0と1を次々とからめ取っていった。

……… 一瞬、目をパチクリさせたkigiだが、すぐに気を取り直して、

「やりますわね。 ではお次は、0と1の水の舞です」

無数の0と1が、膨大な水流と同時に襲ってきた。

 ある程度、目が慣れてきていた俺は軽々と飛び越え、高らかに叫んだ。

 「スモーキング・ミスト!」 声と同時に、勢いよく片手を前に突き出す。

たちまちkigiの回りに、煙でできた霧(ミスト)が出現し、あっと言う間にkigiを包んでしまった。

「ゴホッ ごほっ なかなかおやりになりますわね。」kigiは、少々煙にむせながらも、

「ならば、水と氷と0の舞」

 「何の スモーキング・バリア」

「うぬぬ、それならば1と0の流氷アタック」

 「それならば スモーキング・ランス」

……以下、説明は省略する。

 しばらくの間は、お互いに技を出し合っていたが、あまり何度も何度も繰り返したため、俺は手首をひねりかけ、Kigiちゃんは声がカラカラになりかけたので、どちらからともなく、攻撃をやめて休憩になった。

 「ゼィ ぜぃ ゼィ ぜぃ…」お互い、肩で息をして呼吸を整える。 しばらくして、

「ティラさん、私の負けですわ。 今まで戦ってくれて、本当にありがとうございました。

 とっても楽しかったです。さあ早く イニシャライズして下さいませ。」

Kigiちゃんは、ペコリと頭を下げる。

俺はそんなKigiちゃんを、優しい眼差しで見つめると、

「うん 分かった それじゃいくよ ネット・イニシャライズ・ヒーリング」

 俺の声に反応して、光のリボンがKigiちゃんを包んでいき、ゆっくりと光の結晶に変わっていった。

光の結晶に変わっていくKigiちゃんの瞳は、とても優しそうに微笑んでいた。

「ふぅー 何はともあれ 一つのエラーを元に戻したぞ」

ぷよ ぷよ フワッ ふわっ プヨ プヨ チッ 

再び俺は電脳空間を漂っていた。すると突然、100メーター先ぐらいの所から

「きゃい キャイ きゃー キャー」と言う、子供たちの笑い声が聞こえてきたので、

俺は、近くに遊園地でもあるのかな、と思い近づいてみた。

すると案の定、遊園地があって子供たちが遊んでいる。

 俺はしばらくの間、ベンチに座りそんな光景をボヤーと眺めていたが、ふとあることに気づき、細心の注意を払って辺りを観察してみる。

…………………… やっぱり何か変だ。遊園地自体が意思を持っているような?

「ホォーッ ほぉーっ ホォーッ さすがはティラさん よくぞ私の正体に気づきましたわね。」 突然、女の高笑いが聞こえたかと思うと、座っていたベンチが俺を襲ってきた。俺は反射的に飛び降り、手刀で彼女?の手を払った。

キ―――ン ……めっちゃクチャ痛かった。

「まずは挨拶代わりの“ジェットコースター君の好きになったら一直線アタック”」

などと言う、とんでもないネーミングの技が俺を襲ってきた。

 「ウォーター・スレッサー」俺は、落ち着いてなんなく相手の技をうち砕いた。

「何の“お化け屋敷君の一度はおいでめっちゃ怖いからスマッシュ”」

またまた、妙なネーミングの技が俺に襲いかかってくる。

 「ウォーター・ハリケーン」俺は、一瞬のうちに全てをなぎ払った。

「ぬうぅ〜 よくもこの私 妖怪 から傘の攻撃を2度もよけましたわね。この罪は重いんですのよ〜〜〜」

 俺は、やはり妖怪だったか、しかしそれならば遠慮はいらんとばかりに、

 「ネット・イニシャライズ・ヒーリング」高らかに叫ぶと、両手を前に突き出した。

「何の“観覧車さんのラブラブ積み木崩しならぬボックス落とし”」

 ……な 何と。俺の放ったネット・イニシャライズ・ヒーリングは、観覧車さんの放ったボックスに命中して四散してしまった。当然、観覧車さんには何の被害も無し。

……俺はしばらく唖然としていたが、気を取り直して、

「ならば、ネット・イニシャライズ・ヒーリング乱れ撃ち」と、一斉乱射をした。

さすがに、これはたまらなかったのか 妖怪 から傘さんは、白旗をあげて降参した。

俺は体力と声量を大量に消費して疲れていたが、最後の力を振り絞って、

「ネット・イニシャライズ・ヒーリング」と叫ぶと、

妖怪 から傘さんは、何とも言えない色っぽい瞳で、光の結晶に変わっていった。

「メッチャクチャ疲れたけど、二つ目のエラーを元に戻したぞ!」

ザワッ ざわっ サワ サワ〜 サワッ〜 ざわ〜

 俺はいつの間にかに、電脳自然公園に迷い込んでいた。さすがにここに来ると、0と1の数字だけでなく、いろんな物がプカプカと浮かんでいる。

俺はジュースを飲みながら、

(ここって、昼間に彼女と一緒に来るとロマンチックなんだろうけど、夜に一人で来ると不気味だよな…などとアホな事を考えながら歩いていた。)

 「もしもし ちょっと良ろしいでしょうか?」突然、背後から可愛らしい声がしたので、俺はびっくりして振り向いたが誰もいなかった。

 「???」俺はしばらく辺りをきょろきょろ見回したが、いくら見回しても誰もいなかったので、首をかしげながら歩き始めた。

「もしもし あなたが今、一番欲しい物は?」いきなり声が聞こえたので、

 「一人になれる空間」俺は反射的に答えてしまった。

「分かりました では私に勝ったらご案内いたしましょう。」

 「???」俺は、今いち状況が飲め込めないものの、売られた喧嘩は買ってやると思い、

 「分かった どこからでもこい」俺は、啖呵を切った。(後で、思い切り悔やんだけど…。)

「それでは 参りますよ。」声の主は、おもむろに何か呪文を唱え始めた。

 するとどうだ、俺の目の前で、木の葉が集まって人間の姿に変わっていくではないか!しかも…あれは、Kigiちゃん?

「……ま まさか???」 俺は正直自分の目を疑った。

 「覚えておられましたか? さすがですね」声の主は、愉快そうに笑っている。

しばらくして、人間の姿に変わり終わると、

いやー あんさん お久しぶりでんな 元気してまったか?」ニコニコ、揉み手なんぞしながら話しかけてくる。

 「はっ?」俺は、しばらく目をパチパチさせた。

いやでんな あたいの顔 お忘れでっか うちでんがな あんたはんに倒された

 「Kigiちゃん……だよね?」俺は、自信なげに尋ねる。

あんさん 覚えていてくれたんどすか?」Kigiちゃんは、満面の微笑を浮かべた。

 「そりゃ忘れられるはずないよ。だってあなたみたいに可愛い子なんて、そういるもんじゃないから」俺が、少し照れながらもそう言うと、Kigiちゃんは、心底嬉しそうに微笑んだ。(何か見ているこっちまで、嬉しくなるような笑顔だ。)

 「しかし、Kigiちゃん なんか性格変わったね。 以前に比べて、明るくなったというか……」俺が、そこで口ごもると、

 「分かってます。あほになったと言いたいんでしょ」Kigiちゃんは、ニコニコしながら言う。

 「………」俺は、言うべき言葉を失った。

そんな様子を、初めは微笑ましく見ていた木霊だったが、

 「Kigi、いい加減 攻撃を始めておくれ」と、溜め息混じりに言う。

そんな木霊を、チラリと見たKigiちゃんは、少し苦笑しながらも、

 「はいはい 分かっております。今から始めます。」と、サラリとかわす。

俺は心の中で、やっぱり戦うのかと思い、

 「分かった ではKigiちゃん、お手合わせをお願いする。」と、攻撃の構えをした。

「では、Kigiも行っきまーす」

かけ声と同時に、呪文を唱えながら両手を前に突き出そうとする。

 俺は、Kigiちゃんの攻撃は、呪文詠唱が必要なのを知っているので、

  (心の中で、ゴメンと呟きながら、)

「アクアリング・フレアー」―――空気の結晶で相手の口をふさぐ。(呪文詠唱防御に効果)

「アクアリング・ロープ」―――空気のロープで相手の動きを封じる。

「アクアリング・リーズ」―――相手を分子レベルまで分解する。

(いずれも、殺傷能力なんて全くない。)

俺は流れるような3っつのこの連続技で、Kigiちゃんを浄化させた。

「やはりKigiさんではだめですか。 仕方ありません、私がお相手いたしましょう。」

 木霊は自分の周りに結界を張った後に、呪文を唱え始めた。

俺はその様子を、水月の構え(防御から攻撃へ結ぶ)を取りながら、じっと見つめていた。

 「スプリング・フォール

突然、俺の周りを木の葉が包んだ。

「ファイアー・…」俺が呪文を唱えるよりも早く、

 「アクアランス・ウォータ

木の葉が槍の形に変わり、俺を襲ってきた。

 「ファイアー・エンブランス

突然、俺の周りで自然発火が起こった。

「ちょ ちょっと タンマ」俺は慌てて、上空に飛んでかろうじて避けた。

 「ミラー・ラージュ」着地地点に現れた反射光に目がくらみ、俺は地面に激突した。

「どうです。 ティラさん参りましたか?」木霊は、愉快そうな表情をしている。

 「グッ 」俺は何とか立ち上がり、再び攻撃の構えをとった。

とは言っても、圧倒的にこっちが劣勢だ。(どうする)俺は間合いを詰めながら考えた。

どうしました。もう終わりですか?」木霊が一瞬気を緩めたのを、俺は見逃さなかった。

 「隙あり」俺は叫ぶや否や、相手の懐に飛び込み、相手の鳩尾に強烈なパンチをたたき込んだ。

クッ。」木霊は一瞬術を解いた。その隙を俺が見逃すはずがない。

 「ファイアー・ボルト」強烈な炎の固まりが、木霊に直撃した。

強烈な炎の固まりに焼かれた木霊が、断末魔の悲鳴を上げて消えた。

 「ハーッ ハーッ ハーッ ハーッ ハーッ」俺は精も根もつきて、地面に膝をついた。

〜〜〜時変わって、リアルワールドに戻ると〜〜〜

 ここで、久しぶりに現実世界に戻ってみよう。

現実世界では、テラネットの内部で発生したエラーの影響を全く受けることなく、人々は平和に暮らしていた。

 “桜”達がきれいにした自然に囲まれて、人々は平和を喜び、カップルは愛を語り合い、子供たちは“桜”達と一緒に掃除をしたりと、人々はのどかな生活を送っていた。

 “ディジー”達のおかげで、子供たちは学校に来るのが楽しみになり、毎日笑顔と笑い声に満ちあふれていた。

そんな光景を皇は、夕日に照らされた窓から眺めていた…。

 その傍らでは白百合が、にこやかに笑いながらティーカップに紅茶をいれていた……。

 再び、テラネットに舞台を移して、俺はのんびりと電脳空間を漂っていた。

 「もしもし 少しよろしいでしょうか?」背後から、おずおずとした声が聞こえたので、俺は反射的に“ファイアー・ボルト”を、相手に向けてぶっ放した。

「まいったか!」得意満面で振り向くと、そこにいたのは、可愛らしい女の子ではないか

 俺は内心“しまった”と思いながらも 「もしもし 大丈夫ですか?」と、声をかける。

「…………」いきなり、手紙を突きつけられたので、俺はその手紙を読んでみた。

 「………?」俺は首をかしげた。だって俺には、ミミズののたくった字のようなものを解読する能力なんてないから…

 「ウーン うーん…」それでも、俺は何とか解読しようと試みた。

「…ずいっ」再び、女の子が手紙を差し出したので、

 俺が先ほどと同じように手紙を開けると、そこには一言、

「kigiです。こんにちは」と、流暢な言葉で書かれていた。

  ………俺は思わずコケそうになった。

〜〜〜妖怪出現3重奏〜〜〜

俺は今までの連戦がたたって、電脳空間上でプカプカ浮きながらぐっすり眠っていた。

……………………………

「ウワッ!! つぶれる!」俺は自分の叫び声で目が覚めた。

「ハーッ ハーッ はーっ」額から流れる脂汗を手の甲で拭いながら、

「それにしても、何だったんだ?……?」俺は、首をかしげて考えたが分からなかった。

「もしかすると、予知夢かな?」と思っていると、いきなり目の前に“ででーんとした”巨大な白壁が現れたので、 やっぱり予知夢だったか!と、問答無用で「ウィンディー・ランス」を最大パワーで相手に向かって放った。

「ヒュッ」旋風の槍が、一直線に相手に向かって放たれた。そこまでは良かったのだが、

まともに直撃を受けた相手が、その反動で俺の方に倒れてきた。 俺はよけるまもなく、

見事相手の下敷きになった。

 (これがあの夢の言いたかった事なのか?)と、ぶちぶち言いながら何とか這い出た。

戻る