キネマの天地へようこそ 外伝2 完結話『Epilogue〜再会の時〜』
別れの日。
未来への約束を残して彼のそっくりさんは彼女と寄り添って去っていった。
あれから、何年の時が過ぎたであろうか。
またあのそっくりさんがは再会を果たそうとしていた。
ピーンポーン・・・・
「はいは〜い、今開けまぁす。」
彼の耳に入ってきたのはあの日の声とは違うものだった。
そして扉を開けたのは銀色の髪を持った子供だった。
「あらら、そういうことになっちゃったのね・・・・」
少女はきょとんと立ちつくしていたが、母親の声を聞いて、そちらの方へ駆けていった。
「あら、七希さんに美穂さん。いらっしゃい。」
そして、リビングにいた青年もひょこっと首を出し、歓迎する。
「ぱぱが二人いる・・・・」
それを聞いた少女を除く4人はそれぞれの笑い方で笑った。
涙を流しながら家の主が言う。
「立ち話もなんだし、あがれよ。」
「あ、ああ。」
また、8年前のように同じリビングの同じソファーに座り、昔のことを語り合った。
「で、七希の方は変わらずか?」
「いや、子供ができた。今、ここにいる。」
七希は彼女の方を向き、微笑んだ。
たしかに少しだけではあるが下腹部が大きくなっている。
「名前は決めたんですか?」
シャオが尋ねると彼女は少し下を向き、首を横に振った。
「ま、そのうち考えるさ。な、美穂。」
「そうだね、七希。」
しばらくして、先ほどまで退屈そうにしていた少女が父親の袖をくいくいと引っ張った。
「ああ、知らないんだよな。な、俺にそっくりだろ?」
少女の近くから離れ、そっくりさんの隣に腰掛けた。少女はこくこくと頷いた。
「ところで、ルーアンさんとかは?いないのか?」
「俺達結婚しただろ。それに、ルーアンはルーアンで仕事が楽しいっているし、
キリュウも山野辺と奈那姉の3人で旅に出たよ。」
「へぇ、翔子ちゃんがね・・・・」
太助はうんうんと頷くがハッと気付き、問い返した。
「って、何故山野辺のことを知ってるんだ?」
「だって遊園地にいたもん。」
美穂はくすくすと笑いながら言った。
その後聞いた話だが、そこで一度会っていたらしい。
さすがにここまで来ると笑い話だが・・・・
「それで、昔にあった妙に乙女チックな女の子はどうしたんだい?」
話はその後も盛り上がり、静まることはなかった。
数ヶ月後・・・・
「ねぇ、太助様、七希さんから手紙が届いてますよ。」
手紙の内容は『産まれた』ことを知らせるものだった。
それによると、男の子らしい。
「なになに、名前は『秀太』か。うん、いい名前だ。いい子に育つといいな、七希、美穂さん。」
FIN