『キネマの天地へようこそ!外伝2 2話『密室(ゴンドラ)の二人』

 

Presented by 阿畑啓八郎

事はその日の午後4時頃に起こった。

ピーンポーン・・・
「はーい、今出ますぅ。」
シャオは台所からパタパタと走ってきた。
「あら、花織さん。」
「シャオ先輩、七梨先輩は?いるんでしょ?ねぇ、いるんでしょ?」
花織はそう言いながらつかつかとあがってきた。
彼女がこのあととんでもなく驚くことになるとは知る由もないのである。
唖然とするシャオを無視し、リビングへと入っていく花織。
「ふわぁー。し、し、ししし七梨先輩が二人・・・?」
「ああ、さっきの・・・」
七希は昼間の公園でのことを思い出していった。

「なーんだぁ、そうだったんだ。」
ひとしきり花織に説明すると彼女はにこっと笑った。
「でも本当にそっくりですね。あ、そっくりさんがいるということで、今晩も遊びまくりですぅ。」
七希は「これは何かありそうだな。」という目で太助を見ていた。
美穂も「かなり苦労するわね、太助君。」と思っていた。

「あのな、愛原、今日はちょっと取り込み中だから帰ってくれないかな。」
「え〜〜〜そんなぁ・・・(涙)」
またもや目の幅涙を流す花織。
しかし取り込み中なのは事実で、それに逆らえない花織はしぶしぶ家に帰った。

「ふぅ、やっと帰ってくれたよ。」
「ふふ、まだ苦労してるのね。」
疲れている太助に美穂は言う。
「ねえ、太助君、明日空いてる?」
「う、うん。でもなんで?」
「あしたね、4人で遊びに行かない?」
そして更に七希も言う。
「なんか、見てられないもんな。」
うんうんと美穂は頷く。そこで七希は前髪ふぁさぁと書き上げて、言い続ける。
「そこで、だ。俺達が協力しようじゃないか。」
太助は心中で山野辺に似た事するよな、こいつと思っていた。
「よし、決まりだ。遊園地へ行こう。ビシッと決めろよ、太助。」
なんだか無理矢理決められたようだがシャオは結構嬉しそうだった。
太助もシャオとふたりっきりになれるというのはちょっと嬉しかった。
まあ、間が持たなくなるのは昔と変わっていないが。
そんな光景を妖しく光る3人分の双眸が見つめていたことは誰も知らなかった。
もちろん、大変なことになるなんて知る由もないのである。

翌日・・・
見事に晴れ渡った晴空の下、そっくりな二人の少年とそして、その彼女(?)が出かけようとしていた。
例により、太助は前髪を上げている。少し恥ずかしいのか下を向いてもじもじしている。
七希はふぁさぁと前髪を書き上げ、行こうと言う。

さて、こちらは1つ目の双眸の主。
「へへ〜ン、あたしがこんな事であきらめると思ったのかしら?」
こちらは2つ目のそれの持ち主。
「へぇ、あれが例の『七梨にそっくり人間』か。本当にそっくりだな。
そんなことよりシャオと七梨の中を応援するとは、うんうん、あたしも応援しちゃお。」
さて最後に3つ目。
「きぃ〜、あの七希とかいうの、・・・・・・何とか懲らしめないとね。フフフ・・・」

まあだいたい想像はついたでしょうが、まあ話を続けます。
13時28分
話している間に○×遊園地に到着した。
「よし、今日は俺のおごりだ。じゃんじゃん遊ぼうぜ。」
「はいっ!」
「あ、あぁ。」
シャオと太助、対称的な返事を返すものの、結構乗り気なのであろう。
「行きましょ、太助様。」
「あぁ、行こうか、シャオ。」
シャオは久しぶりに太助とふたりきりになれるのでとても嬉しそうだ。
「ガツンと決めろよ、太助!」
後ろから七希が叫ぶが、太助には聞こえていなかった。

シャオはいつの間にか彼の腕に自分の腕を絡めて歩いていた。太助は真っ赤になって言う。
「シャ、シャオ?」
「太助様は、私と一緒にいるのがイヤですか?」
彼女は今にも泣きそうな顔で訊ねる。彼はあたふたしていたが、少し落ち着いてそれから言う。
「イヤなもんか。俺はシャオと一緒にいられることがすっごく嬉しいんだ。
夢じゃないかなとか思うときもあるけど、シャオが隣にいてくれるから・・・
そんなこと考えるより、せっかく来たんだから今日は思いっきり遊ぼうぜ。」
「・・・はいっ!」
そうして寄り添う二人は遊園地の雑踏の中に消えていった。
「よしよし、上手くやってるな。良いことだ良いことだ。
さて問題はどうやってあいつ等をしとめるかだな。」

さてここには花織・・・はともかくどこで聞き当てたか不明な集団が来ていた。
ちなみに花織はこのことをルーアンを除いて誰にも言っていない事を言っておこう。
「で、なんであなた達もいるんですか?」
花織が訊ねると何とも下心丸出しの答えが返ってきた。花織も人のことを言っていられないが。
前髪の整った青年が前髪をふぁさぁとかきあげて言う。
「早く探しましょう。でないと太助君が何をするかわかったものではありませんからね。」
乙女パワーでここまでたどり着いたのはいいが、ここはすっごく広いのだ。
「うおぉぉぉぉ〜俺の熱き魂が呼んでいるぅ〜」
「野村先輩・・・うるさいです・・・」
さすがのたかしもこうやってさらりと言われると言い返しようがない。
というわけで太助・シャオ捜索隊のメンバーは休日の遊園地へと踏み出すのだった。

「ねぇ、太助様、観覧車に乗りましょう。」
「そうだな。」
シャオは太助の手をひいて、観覧車の方向へ走っていった。
そしてゴンドラに乗ろうとしたその瞬間のことである。
「あ、七梨先輩発見!」
不意に女の子の声が聞こえてきたのだ。
彼は慌ててゴンドラに乗り、ドアを閉めてもらった。
「ふぅ、助かった。シャオ、大丈夫?」
「は、はい。」
太助が外を見下ろすと諦めずに下でドッシリと構えている少女が約一人。彼はふぅとため息を漏らす。
そしてシャオの方へ向き直る。
「あの、太助様・・・」
「え、何?」

  ガターン!!ゴゴ・・・シュゥゥゥゥゥゥ

「きゃっ!」
彼女は叫びながら前のめりに倒れていった。
それは一人の少年のによって支えられた。
少年はこれ以上ないほど赤くなっていたが、半分恥ずかし半分嬉しの状態だった。
しかしこれが翔子の仕業だとは予測できなかった。これは、
『観覧者がいきなり止まり、シャオがふらっとくるから七梨めしっかり受け止めろよ作戦』だ。
「太助様、もう少しこのままでいていいですか?」
「ああ、いいけど・・・」
静かな時を経て、二人は元の位置に座り直した。・・・のではなく、シャオは太助の隣に腰掛けた。

あれからどれくらいたっただろうか、おそらく3〜4時間たっていただろう。
それくらいの時がたち、やっと動き始めた。
もう太陽が西に傾き、赤く染まっていた。
「シャオ、見てみなよ」
太助は夕日の方を見て隣に座っている彼女に言う。

二人の結末に幸せあれ・・・

to be continued・・・・

駄文 これは収録後に行ったインタビューの模様です。それではどうぞ。
阿畑(以後、K):シャオさん、今日のデートはどうでした?
「とっても楽しかったです。観覧車の中で太助様とふたりっきりですごくドキドキしました。」
K:その感情が何か、早く分かるといいですね。
「はい、ありがとうございました。」
K:さて次に愛原花織さんです。
「あなたですね、これを仕組んだのは。」
K:いや、僕じゃなくて翔子さんですけど。
「だってこの話はあなたが書いたんでしょ?じゃあそうじゃない。」
(阿畑、すたすたと逃げる。いやぁ、こう言うのには弱くて。)
K:さて、七希さん、美穂さん、今回の計画はどうでしたか?
「ちょっと邪魔者が入ったけど、同士が助けてくれたから。」
K:ど、同士って・・・?
「え?知らないんですか?翔子ちゃんのことですよ。」
K:そうだったんですか。おそらくはあそこでああなってこうなって・・・
「そうなんです。あのとき翔子さんが助けてくれなけれ・・・・」
K:あ、どうもありがとうございました。では、次。次は誰かな。
「あたしだよ。」
K:あ、翔子さん。どうでしたか?今回の作戦は。
「スカッとしたよ。あんなにうまいこといくなんて・・・くくくく、あのときの愛原のヤツの顔ったらなかったな。」
K:実行まで苦労したんですね。考えたのは僕だけど・・・
「え?今何て?」
K:いや、何も・・・今日はご苦労様でした。
(1分後・・・)
K:はぁ、太助君もシャオさんと帰っちゃったし、あとのみんなは話すのこわいし、帰ろ。


よこがき
はう、ちょっと書くのがこわかったです。
話がちょっと西本さんの「遊園地パニック」ににていると思ったのは僕だけかな?
ということで第2弾をお送りしたわけですが、ごらんになった御方、是非是非感想をお聞かせ下さい。
意見、感想、苦情はcaa62462@pop06.odn.ne.jp迄
阿畑啓八郎

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