〜前回までのあらすじ〜
守護月天シャオリュンは、未来の太助が作り出した人工精霊だった。
そして未来からやってきた彼女の目的は、この時代の太助に未来の太助のような人生を歩ませない事だったのだ。
しかし未来からやってきたシャオリュンに別れの時間が刻一刻と迫っていた。
彼女がこの世界に出現してから15回目の15夜に、彼女は元の時代に強制送還されてしまう。
果たしてそれまでに、太助は変われるのだろうか?
〜あらすじ終わり〜

「15回目の15夜って……それはいつなんだ、シャオ」
震える声で尋ねる太助くんに、シャオはまるで天に浮かぶ月のように穏やかに、優しくこう言いました。
「明日ですよ、太助さま。明日の夜、私は元の時代に戻ります」


守護月天(?)シャオリュン
第七話 さよならシャオリュン(下)


そこは夕暮れの空き地。
土管が3本積まれた、普段は近所の子供達の遊び場になっている場所でした。
眩しい夕日に照らされたそこにはすでに子供達の姿はなく、一抹の寂しさを感じます。
今ここに、2人の少年達が向き合っていました。
「何の真似だ、太助」
「いまさら説明が必要か?」
問うのは野村たかしくん。答えるのは七梨太助くんです。
たかしくんは懐から1通の手紙を取り出します。
そこには大きく『決闘状』と書かれていました。
「おもしれぇ、いい機会だ。二度と舐めた真似が出来ないように存分に叩き潰してやる」
ぺろりと舌なめずり。たかしくんは太助くんに襲いかかります。
対して太助くん。
いつもは逃げ出すか、もしくは殴られて泣きながら帰るのですが今日は違います。
「うぉぉぉぉ!!」
勇気を込めて、たかしくんにツッコンでいくのでした。


「はぁはぁ」
どれくらいの時間が経ったのでしょう?
すっかり日は沈んで、空には十五夜お月様。
冷たい灯りに照らされるのは、ボロボロになった太助くんと、ちょっぴり怪我をしているたかしくんです。
地面に叩き付けられていたボロボロの太助くん。
よろよろと起きあがり、まるでゾンビのようにたかしくんに迫って行きます。
「うわっ、しつけぇ!」
乱暴に払いのけるたかしくん。しかし太助くんはめげることなくたかしくんに迫ります。
その鬼気迫る迫力に、とうとうたかしくんは叫ぶようにして言いました。
「分かったよ、俺の負けだ。やってられるかっ!」
夜空に声が響き渡り、彼は逃げるようにして足早に空き地を去って行きます。
その後ろ姿を見送りながら、太助くんは崩れるようにその場に倒れ伏しました。
一人、月に照らされた彼が不意に影に入ります。
「やったよ、シャオ。俺、勝ったよ」
「そうですね」
倒れたままの太助の言葉に、優しげに彼を見下ろす影が頷きました。
「だからさ、安心して帰りなよ。俺はもう、大丈夫だから」
「はい、そうですね」
彼を見下ろす守護月天は、大きく夜空を振り仰ぎます。
「ありがとう、太助さま」
呟くようなその言葉は、冷たい月明かりに溶けて消えていったのでした。

第七話 さよならシャオリュン




















俺は目を覚ますと、まずはベットで寝ていることに気がついた。
体中痛いのは、昨日の喧嘩のせい。
その痛さのお陰で、昨日のことは夢じゃないことをまざまざと確認できた。
「いたた…」
体を起こす。
思わず走る痛みに言葉が漏れるけれど、それを聞いている人はもうこの家にはいない。
「学校、いかなきゃな」
ぶんぶんと首を横に振って、俺は身支度を整える。
那奈姉がいなくなってから、一人でやっていけていたんだ。
だから、ちゃんと一人でやっていける。
そうじゃないと、未来に帰ったシャオに怒られるもんな。


いつもよりちょっと早めの登校だった。
俺の前に2人の男が立ち塞がった。
「出雲さん、アイツだよ」
たかしだ。
ヤツの隣には和服姿の男がいた。ロンゲを後ろで縛った、ちゃらい感じの若者だ。
腰に刀のようなものを差している。
「なんだ、たかし。こんなヤツにやられたのか?」
「それがしつこくてさ。出雲さん、かるくノしてやってよ」
たかしの言葉に、出雲と呼ばれた男は俺に向かって1歩を踏み出した。
「太助、とか言うんだってな、オマエ」
「そうだ。何か用か?」
「オマエ、この私を千人切りの出雲と知ってその言葉遣いか?」
「太助、この出雲さんはなぁ、千人切ったことで超有名なんだぜ!」
と、これはたかしだ。
そんなたかしの言葉に、出雲はひとしきり笑ったあとに、
「もっとも切ったと言ってもだ。ほとんどは女の子を股間のエクスカリバーで、だがな」
「さすがだぜ、出雲さん!」
「まぁ、そんな訳で」
ズラリ
腰の刀を抜き放つ出雲。模擬刀?
いや違う、あの光り方は刃がついている。
「ちょっと痛い目に会ってもらうぜ」
「くっ!」
俺は構える。
昨日、たかしに勝ったとはいえ、あれは根性で勝ったようなものだ。
たかしの兄貴分であるコイツに果たして勝てるだろうか?
『大丈夫。太助さまはできる子だから』
弱気な俺の心に突如、シャオの声が届いた。
「そう、だね。ヤル前から気持ちが負けてちゃ、ダメだ!」
俺はたかしを、出雲を睨みつけて、
「うおぉぉぉぉぉ!!」
雄叫びを挙げて向かって行ったのだった。


こうして太助くんの戦いがここに始まるのでした。
先に待つのは度重なる苦戦と敗北。そしてリベンジに勝利。
ライバル達との戦いの末の友情にも目が離せません。
対立する敵の強さも、次第にレベルアップして行きます。
街のチンピラからヤクザ、若頭、組長、地元有力者、中央権力者へと。
やがては、この日本を闇から操る組織と対立して行く事となるのです。
戦いの末に太助くんが見つけ出すものは何なのでしょうか?
そして最後に立ちはだかる敵とは?
全てを裏から操っていたコードネーム「しゃおりゅん」とは一体何者なのでしょう?
そしてそして……
「ちょっと待ったーーっ!」
おや?
何故か太助くんが叫んでいますね。
「最後の敵って?! つか、シャオリュンって言ってなかったか??」
……謎が謎を呼び、この物語は『守護月天シャオリュン 天下一武闘会編』へと突入するのでした。
つづくっ!
「つづくなーーーー!!!!!」



はい。
つづきませんよ?

守護月天(?)シャオリュン
おわり


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